3度目の大阪都構想をめぐって維新の吉村・反吉村が対立

日本維新の会が、また「大阪都構想」を前面に押し出し始めている。大阪市議会の委員会では、3度目の住民投票に向けた法定協議会の設置案が可決され、議論は再び動き出した。だが、その足元で起きているのは、維新らしいスピード感というより、吉村洋文代表への不満と、党内の意思決定をめぐる対立である。

都構想をめぐって独走する吉村氏

前代表の馬場伸幸氏が、4月13日の党会合で吉村氏に「私たちは吉村さんのしもべではない」と直言した。維新は長く「大阪の成功モデル」を国政に広げることを売りにしてきたが、いま党内では、その大阪モデルそのものが「吉村個人の政治日程」に振り回されているのではないかという不満がくすぶっている。

問題の中心にあるのは、3度目の大阪都構想である。吉村氏は、周囲との十分な調整を経ないまま、出直し知事選や都構想再挑戦を打ち出し、都構想が可決された場合には国政転出の可能性にも言及した。これでは、都構想に協力した地方議員や国会議員から「自分たちは選挙の道具なのか」という反発が出ても不思議ではない。

維新にとって都構想は、単なる制度改革ではない。党の原点であり、看板政策であり、支持者を結集させる旗印だった。だが、過去2回の住民投票で否決されている以上、3度目に挑むなら、なぜ再び問うのか、何が変わったのかを丁寧に説明する必要がある。ところが今回は、「副首都」構想と結びつけることで、議論の焦点がかえってぼやけている。

「副首都」と都構想の関係にも疑問が噴出

副首都構想をめぐっては、特別区設置だけでなく、道府県と政令市が結ぶ「連携協約」も行政体制の選択肢として想定されている。大阪市議会の委員会で可決された付帯決議も、都構想の実現前に連携協約によって副首都指定を受けることを念頭に置いたものと報じられている。(Nippon)

ここに大きな矛盾がある。連携協約で副首都指定を受けられるなら、なぜ大阪市を廃止して特別区に再編する必要があるのか。都構想は「副首都のために必要だ」と説明される一方で、実務上は「都構想なしでも先に副首都指定を狙う」という道筋も検討されている。これでは、有権者から見れば、都構想の必要性はますますわかりにくくなる。

維新内部の焦りを強めたのが、福岡市の動きである。福岡市の高島宗一郎市長は、関連法が成立すれば、連携協約によって早期に副首都指定を申請する考えを示したとされる。大阪側から見れば、「副首都」は維新が長年掲げてきた看板であり、福岡に先を越されることは政治的な打撃になりかねない。だが、その焦りが、都構想と副首都構想の関係をさらに混乱させている。

吉村・反吉村できしむ党内統治

吉村氏は大阪府知事であり、大阪維新の顔であり、日本維新の会の代表でもある。大阪政治では圧倒的な知名度と発信力を持つ。しかし、その強さが国政政党としての維新には弱点にもなる。大阪の論理、大阪の選挙、大阪の都構想が前面に出すぎると、大阪以外の議員からは「結局、大阪のための政党なのか」という不満が出る。

国政政党を目指すなら、本来は大阪ローカルの制度改革と全国政党としての政策を分けて整理しなければならない。ところが維新は、都構想、副首都、国政戦略、吉村氏の政治的進退を一体化させすぎている。その結果、党内では「吉村・反吉村」という対立軸が生まれ、政策の中身よりも、吉村氏に従うのか、距離を置くのかが焦点になってしまっている。

もちろん吉村氏の発信力が維新の最大の資産であることは間違いない。大阪での維新人気は、吉村氏の存在抜きには語れない。しかし、政党が一人の人気政治家に依存しすぎると、意思決定はトップダウンになり、異論は「反代表」と見なされやすくなる。馬場氏の「しもべではない」という言葉は、単なる感情的反発ではなく、維新が個人政党化しつつあることへの警告だろう。

「吉村党」の限界

維新はこれまで、「既得権益を壊す」「決められる政治」を売りにしてきた。しかし、いま維新が直面しているのは、自分たちの内部に生まれた権力集中の問題である。都構想を3度目に問うなら、まず問われるべきは大阪市民ではなく、維新自身ではないか。

なぜ都構想が必要なのか。副首都指定に連携協約で対応できるなら、特別区設置との関係はどう整理するのか。大阪以外の議員や支持者にとって、この議論はどのような意味を持つのか。そして、維新は吉村氏の政治日程ではなく、党としての合意形成に基づいて動いているのか。

維新のゴタゴタは、単なる内紛ではない。大阪ローカル政党から全国政党へ脱皮できるのか、それとも「吉村党」のまま限界を迎えるのか。その分岐点が、3度目の都構想をめぐる混乱の中に表れている。

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