イランと米国間で戦争終結に向けた枠組み合意が実現し、19日にスイスのジュネ―ブで合意に関する覚書が米国とイランの両国代表によって署名されることになった。ホルムズ海峡の封鎖で世界の原油価格が急騰し、多くの国で経済的ダメージが生まれてきていただけに、日本を含む中東原油に依存する国にとってグットニュースだ。ただし、米国とイランの間で合意した内容はとみると、米国とイランが合意内容を全て公表していないこともあって、不確かさが払拭できない。

モハンマド・バケル・ガリバフ国会議長「イランが米国との合意を通じて最終勝利に向けた大きな一歩を踏み出した」、2026年6月15日、IRNA通信
これまでのメディア報道によれば、米国とイランは戦争終結とホルムズ海峡の封鎖解除で合意したという。覚書の署名後、60日間の交渉期間が設けられ、核問題、高濃縮済みウランの処分問題から、対イラン経済制裁の解除問題などについて本格的な交渉が始まるという。
イランはイスラエルとレバノンのシーハ派武装勢力ヒズボラとの戦闘の停止を米イランの合意に含まれるべきだと主張してきたが、実際は含まれているか分からない。一方、イスラエルが強く求めてきたイランの弾道ミサイル問題や中東地域の反イスラエル武装勢力への軍事支援の停止問題はどうなっているか。
米イスラエル軍は2月28日、イランの核開発計画を阻止するという名目でイランを空爆し、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師らイランの指導者を悉く殺害したが、その核問題については今後の交渉に先送りされた感じだ。
エルサレム・ポスト紙は15日、「イスラエル国防軍(IDF)とモサド(イスラエル諜報機関)の大多数は、イラン核合意は当事者間の力関係、そしてイスラエルが直面する脅威を考慮すると不十分として反対している」という。ネタニヤフ首相は今後もヒズボラとの戦闘を継続する意向といわれているだけに、米イラン間の合意が破綻する危険性は十分ある。
要するに、トランプ氏が14日、SNSで誇らしく報告したように、戦闘が終結し、ホルムズ海峡封鎖が解除されるというが、それらが実行されるかどうか依然、分からないというのが最も現実的な受け取り方かもしれない。ちなみに、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、トランプ米大統領の発言を引用し、合意内容にはイランが核兵器開発を行わないこと、そしてホルムズ海峡を直ちに再開することが明記されていると報じている
ところで、「米イスラエル軍との戦争を経験したイランは戦争前より危険なイランを生み出している」と警告する声がある。イラン専門家の政治学者で国際危機グループ(ICG)のイラン・プロジェクト・ディレクターのアリ・バエズ(Ali Vaez)氏は「この戦争は何の成果も上げていない。むしろ正反対で、状況を悪化させただけだ。より危険なイランを生み出した」と主張している。同氏がノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング紙(NZZ)とのインタビューの中で語った。同氏によると、「イランは停戦(あるいは合意)を望んでいるが、政治的・戦略的にそれをより差し迫って必要としているのはアメリカ側である」という。
バエズ氏は「テヘランの強硬派政権は新たな武器を手に入れたため、政権は勝利したと見ている。ホルムズ海峡を封鎖することで、世界経済を人質に取ることができるのだ。さらに、戦争への恐怖は薄れてしまった。世界最強の軍事大国の米国と、世界最高の情報機関であるイスラエルの支援を受けた攻撃に耐えることができたことで自信を深めている」というのだ。
バエズ氏によれば、「革命防衛隊内部の強硬派による新たな指導部が権力を掌握した。以前にも増して危険なイランが誕生した」というわけだ。
ハメネイ師死後、イランの実質的権力を掌握しているのはハメネイ師の息子モジタバ・ハメネイ師を後継者に担ぎ上げたイスラム革命防衛隊(IRGC)のアフマド・ヴァヒディ司令官だ。前任者が殺害された後、革命防衛隊のトップに上り詰めた。67歳の司令官は、イラン・イラク戦争で頭角を現し、後にイラン・イスラム共和国の軍事機構を形成した世代に属する。国防相と内相を歴任したヴァヒディ氏は、強硬路線を体現している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年6月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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