なぜ遊休不動産は生まれるのか:日本企業の資産構造を考える

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(CREが変える経営財務 ⑥)

企業が保有する遊休地や空き倉庫、使われなくなった社宅や事業所跡地は、なぜ長年にわたって放置されるのか。経営者がその存在を知らないわけではない。固定資産台帳には記載され、固定資産税も支払われ、維持管理にも費用がかかっている。それでも、活用や売却という具体的な意思決定には進まない。

この問題は、良い活用案が見つからないという不動産の技術的課題ではない。むしろ、企業の資産構造と意思決定のあり方が映し出された経営の問題である。

国土交通省の令和5年法人土地・建物基本調査によれば、法人が所有する宅地などのうち、低・未利用地は1,060平方キロメートル、面積ベースで12.4%を占める。駐車場や資材置場も含まれるため、その全てが直ちに処分すべき遊休不動産とは限らない。しかし法人保有地のおよそ8分の1が活用のあり方を見直す余地を残しているという事実は軽くない。

遊休不動産の多くは、最初から使われていなかったわけではない。かつては工場であり、営業所であり、社宅であり、あるいは将来の事業拡張を見込んで取得した土地であった。保有した当時には、それぞれの合理性があった。問題はその後に生じる。

事業環境が変わり、生産拠点が移転し、人員が減少し、営業所が統廃合され、働き方が変わることで、不動産が果たしていた役割は失われていく。しかし、役割の喪失に対して、保有判断そのものが更新されることはない。同調査でも、低・未利用地の74.8%が5年前から同じ状態のままであることが示されており、遊休不動産は一時的な現象ではなく、長期にわたり判断が更新されないまま残り続ける傾向を裏づけている。

遊休不動産とは、使われなくなった不動産ではなく、見直すべき時期を過ぎても経営上の位置付けが再設定されないままの不動産である。

この意思決定の停滞を支えているのが、「いつか使うかもしれない」という言葉である。将来の事業拡大、新拠点の必要性、子会社による利用、地価上昇への期待——こうした可能性を完全に否定することはできない。

しかし、いつ、何の事業に、どれだけの投資をもって活用するのか、その事業は実現可能なのか、他の投資機会と比べて優先順位は高いのかという問いに答えられないのであれば、それは戦略ではなく判断の先送りにすぎない。実際、同調査では、5年前から低・未利用地だった土地のうち、売却や転換の予定がない土地が443平方キロメートル、低・未利用地全体の41.8%にのぼる。

遊休不動産は、何かを決めた結果ではなく、何も決めなかった結果として残るのである。加えて日本企業には、土地を保有していること自体が信用力や安定性の象徴であり、売らずに残すことが安全策であるという感覚が根強く残っている。

しかし地価が一様に上昇する時代はすでに終わり、同じ市内であっても、駅周辺と郊外、幹線道路沿いとそれ以外とでは不動産価値の差が大きく開いている。活用方針のない土地を持ち続けることは、企業の資本を固定化し、将来の選択肢を狭める行為にほかならない。

遊休不動産が生む負担は、固定資産税や維持管理費にとどまらない。老朽化した建物であれば修繕や倒壊のリスクが、土地であっても境界や不法投棄の管理責任が生じる。むしろ深刻なのは機会損失である。売却すれば借入金の返済や本業投資、人材採用に資金を振り向けられたかもしれず、賃貸化すれば安定収益を得られたかもしれない。この損失は損益計算書に直接大きく表れないため、経営課題として認識されにくい。

さらに背景には、判断の分断がある。前々回、CRE戦略が失敗する理由として不動産判断と経営判断の分断を取り上げたが、遊休不動産はその典型例である。

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管理部門は税務と維持管理を、経理財務部門は簿価や資金調達を、事業部門は現場の遊休化を、経営陣は成長戦略をそれぞれ把握しているが、その情報が一つの経営判断に統合されない限り、不動産は誰も処分しないまま残り続ける。遊休不動産は、担当者不在から生まれるのではなく、関係者はいながら全体最適の判断主体が存在しないことから生まれる。

したがって、最初に問うべきは活用方法ではなく位置付けである。賃貸マンションやテナント誘致、駐車場、物流施設といった収益化の選択肢を検討する前に、その不動産を今後も持つ意味があるのか、保有するなら何のためにいつまでどの程度の投資をして活用するのか、売却するなら資金をどこに振り向けるのかを問う必要がある。この順序を誤ると、活用の議論は場当たり的なものにとどまる。

遊休不動産は、資産ではなく経営課題である。それは過去の保有判断が更新されず、現在の経営戦略との接続を失った資産にすぎない。保有を続けるか、賃貸化するか、売却するか、本業のために再利用するか、承継に備えて資産構造を整理するか。答えは企業ごとに異なるが、共通するのは、遊休不動産を「いつか使うかもしれない資産」として放置しないことである。

企業不動産は、経営戦略の中で役割を与えられて初めて経営資本になる。その見直しとは、土地や建物を処分することではなく、企業の資本を未来の成長へ再配分するための経営判断である。

次回は、遊休不動産を見直す際に、保有、活用、売却をどのような基準で選択すべきかを考えてみたい。

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