「良い値上げ」と「悪い値引き」

『永井経営塾』の月イチ・オンラインワークショップでのこと。

この日のテーマは「価格」でした。

参加された皆様に、自社がこれまで取ってきた価格施策をまとめて発表いただきました。

するとある方が、こんな事例を発表されました。

「顧問料を10%値上げしたら、お客が離れてしまいました」

そこで私は尋ねてみました。

「解約したお客様はどの程度で、売上はどう変わりました?」

解約したお客は全体の5%程度で、売上は5%上がったそうです。

さらにどんなお客が解約したかを詳しく伺うと、当初の契約時点から、価格にうるさいお客様だったそうです。

つまりこの方は、10%の顧問料値上げによって「価格にうるさいお客」がいなくなり、「価値を高く評価する顧客」が残った状態になっています。

これは良い値上げです。

逆に、私自身がお客として経験した事例で、こんなことがありました。

弊社で、あるサービスを契約しました。

こちらが何も言わないのに、先方は20万円のサービス料金をいきなり75%値下げして、5万円で提示してきました。

この時、私はこう思いました。

「20万円のクオリティーのサービスを、5万円で提供してくれるなんて、太っ腹だな」

実際に提供されたサービスは20万円にははるかに及ばないクオリティーでした。

仮に標準価格が2〜3万円ならば最初からあまり期待しませんし、仮にクオリティーが低くても「仕方ないな。いい勉強になった」で終わったでしょう。

しかし期待値は20万円に設定されています。

「これは一体、何なの?」と思ってしまいました。

これは、悪い値下げです。

最初に標準価格20万円を提示されると、お客の期待値は20万円にセットされます。仮に75%に大幅ディスカウントしても、この期待値は変わりません。

こんな「ナゾのディスカウント」はせずに、シンプルに最初からディスカウント価格を標準価格として提示すれば、お客の期待値はムダに上がることがなくなります。

あるいは、サービスの価値を20万円に見合う品質まで挙げる努力をした上で、ディスカウントはせずに堂々と20万円を提示すべきです。

ちなみにこの会社は高品質サービスをアピールしていますが、この会社からサービス提供を受けた人たちに話を聞くと、クオリティーが期待を大きく下回るのでリピート契約しない人が多いようです。

つまり、

  • 「良い値上げ」:高品質に見合わない安い価格は、やばいお客を呼び込んでしまう。価値に見合った価格に値上げすべきである
  • 「悪い値引き」:低品質に見合わない高い標準価格を設定して、大幅値引きすると、顧客の期待値をムダに上げる。むしろ最初からディスカウント価格を標準価格に設定して、ムダに失望するお客の数を減らすべきだ

高い価値を提供しているのであれば堂々と高い価格を、それなりの価値ならば小細工せずにそれなりの価格を、設定すべきなのです。

しかし一方で、こんな悩みもよく聞きます。

「自社の価値が、高いのか低いのかが、そもそもよくわからない」

ここで簡単な判定方法があります。

  • お客に標準価格を提示して、価格を理由に契約しない人が1人もいなければ、おそらくその価格は安すぎます。値上げを検討すべきです
  • 「価格が高いのでやめる」という人が10-20%程度であれば、その価格は適正です。
  • 「この内容で、この価格は高すぎる」と言う人が多ければ、その価格は高すぎます。まず価格に見合うように価値を上げることを考えるべきです。もし難しければ、標準価格を下げることを検討すべきです。

ちなみに稲盛和夫さんも、こうおっしゃっています※1)

「お客様が納得し、喜んで買って下さる最大限の価格。それよりも低いといくらでも注文が取れるが、それ以上高いと注文が逃げるギリギリの一点で注文を取れ」

重要なことは「値引きをしないこと」です。まず価値に見合う標準価格を設定すること。そして値引きは徹底して避けるべきです。

価格はお客に対する重要なメッセージです。

そして価格1つで会社の利益が左右され、お客様の満足度も変わります。その目安は、御社が提供する価値と価格が見合っているか、否かです。

御社の標準価格は、低すぎるでしょうか? 高すぎるでしょうか?

【参考文献】
※1)「稲盛和夫の実学」稲盛和夫著


編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2026年8月4日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。

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