東武鉄道の死亡事故は見張りが誤って「退避完了」の旗を振った?

栃木県鹿沼市の東武日光線・新鹿沼駅で20日、除草作業中の男性作業員4人が特急「スペーシアX2号」にはねられ、全員が死亡する重大事故が起きた。

事故当時は複数の見張り員が配置されていたにもかかわらず、なぜ4人もの作業員が列車の進路上に残っていたのか。東武鉄道の会見から、安全確認の仕組みが機能しなかった可能性が浮かび上がってきた。

スペーシアX号(朝日新聞)

「全員退避」を確認してから旗を出すはずだった

東武鉄道の説明によると、昼間に線路内で作業する場合、列車見張り員が列車の接近を確認すると、作業員に退避を指示する。作業員と作業指揮者が安全な場所に移動し、全員の退避を確認した後、見張り員が列車の運転士に退避完了の旗を振って合図する。

今回、この合図として見張りが緑の旗を上げ、運転士側も警笛を鳴らして応答したと東武鉄道は説明している。つまり通常の手順なら、旗が出された時点で「作業員は退避済みで、列車が通過してよい」という状態になっていなければならないが、実際には4人が線路内に残ったまま列車と接触した。

「安全」の合図が誤って出されたのか

ここから浮上するのが、作業員の退避が終わっていないのに、見張り員が誤って「退避完了」の旗を出したという可能性だが、現時点では断定できない。東武鉄道も会見で、見張り員が退避を誤認して合図したのか、それとも合図を出した後に何らかのトラブルが起きたのかについて、「決めつけた考え方をしない」としている。

それでも、運転士から見れば、見張り員による了解合図は安全確認の重要な情報である。運転士も警笛で応答した以上、少なくとも列車側との合図のやり取り自体は行われていたことになる。問題は、その前段階である「作業員全員の退避確認」が本当に行われていたのかという点だ。

3人もいた見張り員が「意思疎通できず」

さらに不可解なのは、見張り員が1人ではなかったことだ。東武鉄道によると、今回の作業には3人の列車見張り員が配置されていた。上り線の作業では、現場から315メートル離れた中継見張り員と現場近くの見張り員が連携し、必要な見通し距離525メートルを確保する仕組みだった。

ところが東武鉄道はその後、駅から離れた見張り員は所定の場所にいたものの、駅近くの別の見張り員とは「意思疎通ができる状態ではなかった」と説明を修正した。

これが事実なら、単純な「見張り員1人のミス」では済まない。複数の人間を配置して安全性を高めるはずの仕組みが、連絡手段や配置、確認方法のどこかで機能していなかった可能性がある。

人間の「確認」に依存した安全対策だったのか

東武鉄道は、見張り員を適切に配置して列車接近を確実に把握できれば、営業列車が走る昼間でも線路内で作業できるとしている。今回もその規定に基づいて除草作業が行われていた。

しかし、4人もの犠牲者が出た以上、「規定通り見張り員を置いていた」というだけでは十分ではない。列車接近の把握、作業員への退避指示、退避完了の確認、見張り員同士の連絡、運転士への了解合図という一連の手順のどこか一つが崩れただけで、多数の人命が危険にさらされる仕組みだったのではないかという疑問も残る。

今回の事故は、見張り員が誤って「安全」の旗を振ったことで起きたのか。それとも、その見張り員に正確な情報が届かない仕組みになっていたのか。原因究明では個人のミスだけでなく、なぜ誤った判断や連絡不全を別の人間が止められなかったのかという、安全管理システム全体の検証が必要になる。

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