警察から感謝状の女性社長がトクリュウのリクルーターだった?

「会社の仕事」が海外犯罪への入口に

広島県警は8月17日、40代男性を海外に連れ出し、特殊詐欺などの犯罪に関与させようとしたとして、広島の株式会社First社長、前原里帆容疑者(32)と松本佑香容疑者(30)を逮捕した。

男性は同社の採用面接を受けたことがあり、その後、仕事を持ちかけられて関西国際空港から海外へ移動したという。警察は、男性を特殊詐欺の電話役である「かけ子」などとして犯罪に加担させる目的があったとみている。

男性は現地で不審に思い、日本大使館に逃げ込んだことで事件が発覚した。前原容疑者は容疑を否認し、松本容疑者は認めているという。

「表では人助け、裏では犯罪」の衝撃

この事件をさらに印象的なものにしているのが、前原容疑者の過去である。前原容疑者は約1年半前、行方不明になっていた高齢女性を助けたとして、広島県警から感謝状を受け取っていたという。

高齢女性を保護した「人助け」で警察から表彰された人物が、今度は男性を海外の犯罪拠点へ送り込み、特殊詐欺に加担させようとした疑いを持たれている。表では「人助け」。裏では「人を犯罪に巻き込む」。

表彰を受ける前原里帆容疑者 2024年12月23日 中国放送より

【参照リンク】「ここはどこですか?」突然現れた高齢女性 車で自宅に送り届けると家の前にはパトカーが… とっさの判断が生んだ奇跡の再会 TBS NEWS DIG 2024年12月23日

もちろん現段階ではあくまで容疑であり、前原容疑者は否認している。それでも、この落差には背筋が寒くなる。

感謝状を贈った警察も、まさかその人物を後に自ら逮捕することになるとは想像していなかっただろう。「会社社長」「警察から感謝状を受けた人物」という肩書があれば、相手が警戒心を解いてしまう可能性もある。

普通の求人に入り込む「トクリュウ」

警察は2人について、匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」のリクルーター役だった可能性があるとみて捜査している。これまで「闇バイト」といえば、SNSで「高額報酬」「即日現金」などとうたい、若者を特殊詐欺や強盗に勧誘する手口が注目されてきた。

しかし今回の事件が警察の見立て通りなら、より恐ろしい。普通の会社の面接を受けた求職者との接点を利用し、仕事の話として海外へ誘い出す。これでは本人が犯罪への勧誘だと気付かないまま、国外へ連れて行かれる可能性もある。

「怪しい闇バイトには応募しない」というだけでは防げない犯罪になりつつある。

「なぜこうなったのか」を徹底解明すべき

事件は2人を逮捕して終わりではない。なぜ、警察から感謝状を受けるような「善人」とみられていた人物が、犯罪グループと接点を持つに至ったのか。誰が指示を出していたのか。海外の犯罪拠点とはどのようにつながっていたのか。そして、同じように送り込まれた人はいなかったのか。

トクリュウの特徴は、必要な人間をその都度集め、組織の全体像を見えにくくするところにある。だからこそ、逮捕された人物だけを見ていては実態をつかめないだろう。

その背景を掘り下げれば、トクリュウが普通の企業活動や社会生活の中にどのように入り込んでいるのかも見えてくるはずである。警察は、背後の指示役や資金の流れを含め、組織の全容を徹底的に洗い出してほしいところだ。

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