
(前回:佐倉市議会発言削除事件④:議長の秩序維持権はどこまで及ぶのか)
これまで、地方議会における「応答・反論する討論」の性質と、それを地方自治法129条による議長の秩序維持権によって制限することができるのか、という問題を考えてきました。
最後にもう一つ、本件で問われている問題があります。
議員の発言が議会の公的記録から削除された場合、何が失われるのでしょうか。
議員が議会で発言するということ
中津川市議会事件の控訴審判決は、議会で発言することについて、議員として「最も基本的・中核的な権利」であるとの評価を示しています。
また、議会運営に関する実務書や地方自治法の逐条解説においても、議員の発言は議会活動の中核をなすものとして重視されています。
さらに、佐倉市議会基本条例をはじめ、全国の地方議会が制定している議会基本条例では、「議員間の自由闊達な討議」などを通じて論点を明らかにしていくことが、議会のあるべき姿として掲げられています。
もちろん、こうした理念規定から、直ちに「先行討論への応答・反論が法的に保障されている」と結論づけることはできません。しかし、議員が互いの主張を受け、それに異なる見解を示すことは、少なくとも「自由闊達な討議を通じて論点を明らかにする」という議会像と矛盾するものではないでしょう。
本件は、発言する機会そのものを奪われた事件ではありません。
私は実際に討論を行い、その討論を最後まで終えています。
しかし、その後、発言の一部が佐倉市議会の正式な記録から削除されました。
私は、このことによって少なくとも三つの不利益が現在も継続していると主張しています。
第一に、自らが実際に行った討論の一部が、佐倉市議会の正式な会議録・動画に残らないこと。
第二に、公的な記録に基づいて、自らがどのような政治的判断をし、なぜそのような発言をしたのかを市民に説明することができないこと。
第三に、発言部分が削除された状態が公開され続けることによって、その部分に何らかの不適切な発言があったとの評価を受け得る状態が継続していることです。
これらが単なる政治家としての事実上の不利益にすぎないのか、それとも法的に保護される利益の侵害として評価されるのか。
この点も、本件で裁判所の判断を求めている問題の一つです。
「何を言ってもよい」という訴訟ではない
ここまでの議論について、一点明確にしておきたいと思います。
私は、「議員であれば議場で何を言ってもよい」と主張しているわけではありません。
議会が議事を円滑に進め、秩序を維持するために、一定の発言規制が必要であることに異論はありません。
しかし、その秩序維持のための権限によって、議案に対する他の議員の主張を取り上げ、応答し、反論するという討論のあり方そのものまで制限できるのか。
そして、それが許されるとすれば、その法的根拠と限界はどこにあるのか。
私は、そこが本件の核心だと考えています。
佐倉市議会だけの問題なのか
地方議会における討論を、あらかじめ用意された意見を議員が順番に表明するだけの場と考えるのか。
それとも、異なる意見が示され、それを受けて別の議員が応答し、反論しながら議論を積み重ねていく場と考えるのか。
これは、佐倉市議会だけの問題ではありません。
地方議会における「討論」という制度を、私たちはどのようなものとして考えるのかという問題でもあります。
以上の点について、私は今回提出した準備書面で主張し、8月17日の弁論準備手続で陳述しました。
これを受け、被告である佐倉市は9月18日までに準備書面を提出する予定です。
次回の弁論準備手続は、9月28日に行われます。
今後、被告がどのような反論を行うのかも踏まえながら、本件について引き続き報告していきたいと思います。
本件訴訟を通じて、地方議会における「討論の自由」と「議場秩序の維持」の境界が、より明確になることを期待しています。








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