古謝氏が先行する沖縄県知事選
沖縄県知事選(9月13日投開票)については、世論調査で朝日新聞が『古謝氏、やや先行 玉城氏、激しく追う』とし、読売新聞が『前那覇市副市長・古謝玄太氏が先行、現職・玉城デニー氏が追う展開』とし、保守系新人で総務官僚・前那覇市副市長の古謝玄太氏の優位を伝え、共同通信も互角といいながらも古謝氏の名前を先に報じているところを見ると、世論調査では5~10%ほど古謝氏が有利とみられているということだ。

古謝玄太氏Xより
沖縄県の政治状況については、私も沖縄総合事務局に1985~87年に在勤経験があり、継続的にフォローし、最近も『誤解だらけの沖縄と領土問題(増補改定版)』(清談社)を刊行し、そこでもこれまでの歴代知事選挙について詳しく論じている。
沖縄では、本土復帰前の1968年に初の主席公選が行われ、革新系の屋良朝苗が勝利した。次いで復帰後の1972年に初の知事選挙が行われ、事実上の再選となった。1996年にも革新系の平良幸一が勝利したが、任期途中に病気で辞任。1978年の選挙では、自民党代議士だった西銘順治が勝利し、3期務めた。
だが、息子の国政選挙進出を巡って信望を失い、革新系の学者・大田昌秀が勝利し、2期務めた。だが、経済の不振に不満が高まり、実業家で保守系の稲嶺恵一が県政を奪還し、それを通産官僚で沖縄電力の社長も務めた仲井眞弘多が継承し、それぞれ2期務めた。
しかし、2018年には、鳩山政権が普天間基地の辺野古移転問題を混乱させたなかで、自民党出身ながら革新系とオール沖縄を組織した翁長雄志が当選した。しかし、翁長氏は任期途中で病死し、2018年の選挙で元野党代議士の玉城デニーが当選し、現在2期目である。
玉城県政に吹き始めた逆風
玉城知事は普天間・辺野古問題で頑なな態度をとり、政府との関係も悪い。ただ、沖縄振興事業は事業の選別の主導権を自民党国会議員らが握っているというだけで、滞りなく行われているし、観光が絶好調なので経済について不満爆発というほどでもなく、3選目も有利な戦いとみられてきた。実際、今年前半の世論調査では、玉城が10%以上の差を付けていた。

玉城デニー知事Xより
ところが、看板のはずの普天間・辺野古問題について、移転工事反対行動の活動家の危険な妨害行為の巻き添えになって警備員が交通事故死したり、翁長の肝いりで設けたワシントン事務所がコンプライアンス上、問題が多いことが発覚したり、同志社国際高校の修学旅行における生徒事故死をめぐって反対派団体の抱える問題が一気に明らかになったりして、風向きが変わったにもかかわらず、玉城知事はこれを擁護する姿勢が強すぎ、信頼を失っていった。
古謝陣営が進める草の根作戦
それに対して、自民党側では、古謝は自民党、日本維新の会、国民民主党、参政党、日本保守党、そして公明党沖縄県本部から推薦を取り付けた。選挙の指揮では、選挙対策委員長(選対委員長)の西村康稔が新潟知事選挙で成功した、東京から有名人を送り込むことを避け、地道な草の根作戦を重視する戦法をここでも採り、成功している。
また、一時は、古謝と同じ宮古島をルーツとする下地幹郎元郵政改革相が出馬して古謝に不利に働くといわれていたが、告示直前に出馬を取りやめたことで、流れが加速した。
地元の自民党内には中央ベースでの話し合いに不満もあるが、古謝に有利な風が吹いている中では大事になっていない。
選挙戦では、有村治子総務会長、小林鷹之政調会長、萩生田光一幹事長代行、岸田文雄元首相、菅義偉元首相、鈴木宗男などが沖縄入りしたが、街頭での演説は控え、各種団体や地元企業を回ることに徹している。
高市首相が応援しないことが追い風という皮肉
しかも、高市首相も沖縄入りしていないし、予定もない。もともと高市首相は沖縄に寄り添った気持ちを語ることは少なかった。私は、いわゆる保守派の人たちは、沖縄より台湾の方が可愛いのだと思う(そういう疑問を投げかけると、同じくらい可愛いという人がいるが、自国の一部である沖縄と台湾を同列にするなど論外だ。そもそも沖縄戦では台湾防衛のために2個師団を移動させたのが沖縄戦の原因で、沖縄は台湾の犠牲になったのである)。

高市首相 自民党HPより
まして、台湾有事発言や戦争をめぐる見解で沖縄県民の気持ちを逆なでする可能性もあり、また、鍵を握るといわれる公明党が自公連立解消をめぐる高市首相のやり方を許していない現状では、首相の応援はマイナスのほうが大きいとみられている。女性週刊誌『女性自身』は「課題だった公明党=創価学会票も『高市首相が沖縄入りしなければ動く』という裏約束が守られていることを踏まえ、実数として出ています。これも古謝氏が追い上げている一因と言えます」と報じている。
そもそも、この選挙では革新系でも「しばき隊」などの活動が玉城候補の足を引っ張り、一方、保守系の過激な言論人などの発言が時限爆弾である。特に、沖縄戦において日本軍は県民を守るために戦ったなどという妄言を言う人たちが来ると、何が起こるかわからない。
しかし、何よりも高市首相が危険で、首相の応援がなければ保守県政誕生か、というのが現在の状況であるのは皮肉だ。
■
【関連記事】











コメント