『産経』の執念と無党派層の「良心」に負かされた玉城知事

敗戦が確定したときの玉城デニー知事

任期満了に伴う沖縄県知事選が13日投開票され、元那覇市副市長の古謝玄太氏(自民、維新、国民、参政、保守推薦)が、辺野古移設に反対する「オール沖縄」が支える現職の玉城デニー氏を約14万7000票の大差で破り、初当選を果たした。投票率は61.57%で、前回の57.92%を3.65ポイント上回った。

確定開票の結果は、有権者数者数:116万5704票、有効投票:71万7713票で、各候補の得票は、古謝玄太:42万3124票(58.95%)、玉城デニー:27万6060票(38.36%)となり、2人で97.3%を占めた。他の4氏の得票は合計で13千票に満たず、公示前の予想通り事実上、古謝vs玉城の一騎打ちであった。

筆者は公示日の9月3日の拙稿「『沖縄県知事選』の超大胆予想」で、「投票率が前回並みなら10万票差で、前々回並みの63%なら15万票差で、何れにしても『古謝氏が勝つ』と予想する」と書いた。友人に「こういうのは『木を見ず森を見る方が当たるよ』」と宣言した通りの結果になり、自分でも正直ビックリだ。

予想の参考にした「森」は、前回知事選の結果、およびここ最近の出来事に関する世論の動向と出来事に対する玉城氏の姿勢である。前回の結果は、玉城:339,767票、佐喜真:274,844票、下地:53,677票で、有権者数は1,165,610人、投票率は57.9%(前々回63.2%)、有効得票数は668,288票(57.3%)だった。

注目した世論の動向は、24年6月に警備員が巻き込まれて死亡した名護市の事故現場にこの6月、県警が信号機や横断歩道の整備を県に伝えた後も、玉城知事が『産経』がスクープした事故の防犯カメラ映像の視聴を頑なに拒んだこと。そして3月16日に起きた辺野古沖転覆事故で女子高生ら2名が亡くなった痛ましい事件だ。

これらの死亡事故——というより事件——は、普天間飛行場の辺野古移設に反対するヘリ基地反対協議会が主体で行ってきた極めて過激な抗議行動に原因があるのは明らかだ。それにも関わらず玉城知事は、これら過激な活動を拱手傍観したばかりか、国に対し辺野古埋め立てを阻止する訴訟を何度も繰り返し、全てに敗訴した。

こうした出来事の公平公正な報道は、抗議団体を擁護する論調でしか報道しない地元2紙『琉球新報』『沖縄タイムズ』が圧倒的なシェアを持つ沖縄では、多くの県民は偏りのない事実を知らずに過ごすことを余儀なくされて来た。が、時代はいよいよSNSがTVや新聞などの既存メディアを凌駕する状況となっている。

とりわけ『産経』がスクープを連発した、同志社国際高校生が乗った抗議船2隻が転覆し、生徒ら2名が死亡、10数名が負傷をした事件は、大手メディアも報道をしない中、複数のネット番組が『産経』記事を基に、あるいは自ら沖縄や同志社に出向き、取材した事件の真相を連日ネットにUPして、多くの視聴者に伝え、視聴者はそれをXで拡散した。こうした情報が沖縄県民に伝わらないはずがない。

この光景は兵庫県知事選で「斎藤2.0」が実現した24年11月を彷彿させた。この件ではメディアも斎藤批判一色だったが、斎藤氏が一人黙々と駅立ちを始め、選挙カーで県内津々浦々を回ると、いつの間にか複数の勝手連がその様子をネットに上げ始めた。そして立花孝志氏の選挙参入で、斎藤支持の勢いは最高潮に達した。

この様子を見て筆者も斎藤勝利を確信し、「投票率:50%、総投票数:227万票、斎藤氏:100万票、稲村氏90万票、他4名37万票」と予想して、投開票2日前の拙稿に以下のように書いた。この数字も「森を見た」のだが果たして結果は、投票率53%、斎藤:111万3,911票、稲村:97万6,637票であった。

前回21年7月の選挙は、有権者総数:453万人、投票率:41.1%、総投票数:186万票、斎藤:85.9万票(46.2%)、金沢:60.1万票(32.3%)、他3名:40万票(21.5%)。ここ最近の投票率は40%だがこれだけ話題になれば50%はあり得る。斎藤氏が前回86万人の9割を得れば77万票、投票率UP分41万票の半分がこれに乗れば100万票だ。残る127万票を稲村氏7割、他4名3割で分け合う。「斎藤2.0」はある。

一方、今回の沖縄県知事選で「森を見る」ための基礎数字は、一つは前回の県知事選のデータであり、他は沖縄県民の党派性と無党派層の傾向だった。前者は、有権者数1,165,610人、投票率57.92%だったので、投票集約68万票を基礎とした。後者の一つは8月24日の『沖縄タイムズ』社説で、こう書いてあった。

沖縄の選挙では、強固な岩盤保守層が2〜3割、強固な岩盤革新層が2〜3割と言われてきた。残りは無党派で、この層への浸透が勝利の鍵とされる。

無党派層の割合については、22年に『琉球新報』が「43%」と書き、『毎日』が24年に「48%」と報じていた。そこで、玉城岩盤支持と古謝岩盤支持をそれぞれ25%とし、残りの50%を無党派層と置いた。投票率を前回並みとすると、岩盤票は玉城と古謝が各々17万票ずつで、残りの34万票が無党派層の票となる。

無党派層とは、確固たる思想信条に基づいて候補者を選ばないことが所以=浮動票なのだから、最近の大きな出来事に左右され易い。その大事件こそが辺野古関連の出来事であり、9月初めに同志社国際高校の引率教師が死亡した件も報じられ、失われた尊い命は4人になった。これが無党派層の「良心」を動かすと考えた。

そこで、無党派層34万票の過半は玉城氏には行かないと考え、それを古謝氏に23万、玉城氏に11万割り振り、古謝17万+22万=39万票、玉城17万+12万=29万票と置いて、「10万票差で古謝勝利」としたのである。結果は投票率が3.65ポイント(約4万票)上回ったため、古謝票が42万まで増えた格好だ。

選挙後、それまで『産経』が独走した辺野古事件の報道をメディア各社もし始めたことが話題だ。その一つに『NHK』が13日に報じた、無党派層の61%(大いに考慮した:24%、ある程度考慮した:37%)が辺野古転覆事件を考慮したとの数字がある。やはり辺野古に関連した一連の事件が玉城氏を負かしたのである。

最後に米中間選挙の話。これも筆者は「米国人は共産党が嫌い」という「森」だけを見て、共和党が上下両院とも制すると思う。各選挙区の候補者の政策・人柄・知名度・資金などの「木を見た」予想はむしろ間違う。話題のDSA(米国民主社会主義者)の多くは民主党予備選では勝てても、本選挙では共和党候補に勝てまい。

2年後にはいなくなる「トランプが嫌い」とか、戦争が終われば原油と共に下がる「物価高」よりも、「米中間選挙に向けた左右2つの『世論調査』」で触れた「McLaughlin」調査が示すように、「米国の有権者の多くが、大きな政府による社会主義と定義される政治には、はるかに消極的であると結果」の通りになると思う。米国国勢調査局は15日、25年の実質世帯所得の中央値が87,460ドルと最高値を記録したと発表した。経済も順調なのである。

調査対象者のカテゴリー別の結果

  • 無党派層:資本主義候補40% vs. 社会主義候補31%
  • 穏健派層:37ポイント多かった民主党支持が6ポイントに減少し、31ポイントが共和党支持へ
  • 女性層:18ポイント多かった民主党支持が1ポイントに減少し、17ポイントが共和党支持へ
  • ヒスパニック系:18ポイント多かった民主党支持がほぼ互角になり、18ポイントの共和党支持へ
  • 55歳未満の有権者:僅かに民主党支持が多かったものが、共和党支持が7ポイント上回る
  • 既婚有権者:有利だった共和党のリードが、57%対30%に拡大
  • アフリカ系:民主党への支持は著しく低下し、共和党への支持が12ポイント増加

 

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