「朝日あげ」「はりま焼」で知られる米菓メーカー、播磨屋本店(兵庫県朝来市)が、2027年3月末で廃業します。直売店と通信販売をすべて終了し、事業譲渡も行わないということです。
老舗企業の廃業と聞けば、人手不足や原材料高、後継者難を想像します。ところが播磨屋本店は最後まで一筋縄ではいきませんでした。公式サイトに掲げられたのは、その名も「聖なる廃業のお知らせ」です。
おかきより「人類根本救済」
播磨屋本店によると、代表の播磨屋助次郎氏は今後、「人類根本救済」に専念するとしています。
播磨屋氏は長年、地球環境問題の根本には人間社会の競争原理があると主張してきました。「人間とは何か」「人生とは何か」「真の幸福とは何か」という壮大な問題を追究し、その答えにたどり着いたというのが本人の認識です。
同社は以前から、企業活動を「金儲け競争」ととらえ、環境問題の解決とは相いれないとの思想を打ち出してきました。2018年には事業縮小を「聖なるUターン」と表現しています。
今回の廃業は突然の決断というより、会社そのものが経営者の思想へと次第に吸収されていった末の結論とみるべきでしょう。
「地球革命」を訴える異色のおかき屋
播磨屋本店を有名にしたのは商品だけではありません。
「天皇」「地球革命」などの巨大な文字を掲げた大型トレーラーを走らせ、公式サイトや商品カタログにも政治、文明、環境問題に関するメッセージを大量に掲載してきました。
播磨屋氏の世界観では、人類は競争に勝つことを幸福と錯覚し、それが環境破壊につながったとされます。そこで「覇道」から共存共栄の「王道」へ戻るべきだと主張し、その役割を天皇にも期待してきました。
普通の企業がESGやSDGsを掲げることは珍しくありません。しかし、おかきを売りながら天皇と地球文明の行方まで論じる会社は、そうそうありません。
現実には人手不足と設備老朽化
もちろん、廃業を思想だけで説明するのも片手落ちです。
播磨屋本店では近年、人手不足が深刻化し、店舗閉鎖や定休日の導入が進んでいました。製造設備の老朽化を理由に販売終了となった商品もあります。地方の老舗メーカーを襲う、人材確保や設備更新の問題は同社にも押し寄せていました。
普通ならM&Aやブランド売却、事業承継を検討するところです。「朝日あげ」ほど知名度のある商品なら、引き取り手が現れても不思議ではありません。
それでも同社は事業譲渡をしません。
最後まで播磨屋本店らしい
播磨屋本店ほど、商品と企業思想の落差が大きい会社も珍しかったでしょう。
売っているのは昔ながらのおかきですが、その向こうには地球環境、文明論、天皇論が広がっています。ネットでは以前から「思想はともかく、おかきはうまい」と半ば愛情を込めて評されてきました。
そして最後も、単なる「経営不振による撤退」ではなく「聖なる廃業」です。
1862年創業の系譜を持つ老舗は、M&Aでも事業承継でもなく、おかきより人類救済を選びました。
最後まで播磨屋本店らしい幕引き、としか言いようがありません。








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