いま民主党の直面しているのは「災害」ともいうべき緊急事態です。あと半年以内に選挙が迫っている状況で、代表の秘書が起訴されるという事件が発生し、党首を守っていると民主党の支持率はどんんどん下がり、政権交代も不可能になるでしょう。それなのに、きのう行なわれた民主党の代議士会には危機感が感じられなかった。世論調査では小沢氏が「辞任すべきだ」という声が60%を超えるのに、そういう意見をのべたのは小宮山洋子氏など2人だけ。執行部は思考停止状態です。
政治というのは、すべてトレードオフです。一方を取ったら他方から文句が出るという状況でつらい決断をし、優先順位をつけるのが政治の仕事です。残念ながら、現状では小沢氏には「黒」のタグをつけるしかない。常識的に考えて、党首の秘書が刑事被告人という状態で選挙を戦えるはずがないし、彼が首相になれるはずもない。彼を救おうとして時間を空費すればするほど、落選者が増えます。
たしかに小沢代表をやめさせることはマイナスも大きいでしょう。選挙区の実情をいちばん知っているのは彼のようだし、政権を取ってからも霞ヶ関を押さえる腕力をもっているのは彼ぐらいしかいない。しかし選挙については彼が選挙対策委員長にでもなればいいし、政権を取ってからは重要閣僚になればよい。いま最優先の問題は党にとってのダメージを最小化する危機管理であり、災害現場で「検察のやり方はおかしい」などと議論している時間はありません。
野党であるうちは、優先順位をつけないでバラ色の政策を主張し、「みんなよくなる」ということができますが、与党になると結果に責任を負わなければならない。そういう覚悟ができないまま突然、与党になった社民党は、瓦解してしまいました。ここで決断をためらい、ずるずると問題を先送りしたまま選挙に負け、代表も引責辞任するという最悪の事態になったら、民主党は二度と立ち直れないでしょう。今回の事態が、民主党の命運のかかったトリアージだということを、執行部は認識しているのでしょうか。