電子書籍市場の混迷 続き

2011年02月03日 14:29

朝日新聞出版は、酒井法子の『贖罪』を電子書籍化し、2月3日に配信を開始した。アップルiPhone/iPad向けはApp Storeから、ソニーReader向けはReader Store、シャープGALAPAGOS向けはTSUTAYA GALAPAGOSから、ドコモスマートフォン向けは2Dfacto/hontoから、KDDIスマートフォン向けはLISMO Book Storeから、と多くの電子書籍端末向けに多くのネット書店から配信するというのが特筆すべき点である。

日刊スポーツの記事には「同時発売は異例と言える。今後の電子書籍業界の方向性を占う試金石としても、注目を集めそうだ」とあった。

ほぼ同じタイピングで『iPhoneでソニーの電子書籍読めません 採用を拒否』との記事が朝日新聞のサイトに掲載された。それによるとアップルは「他社経由で購入した電子書籍を読めるソフトを採用するには、アップル経由でも同じものを購入できるような仕組みにすることを求めている」そうだ。同じ内容の記事はWall Street Journal電子版にも”Apple Rejects Sony E-Book App”として掲載されている。


同時期に起きた二つの出来事は何を意味しているのだろうか。

利用者の側から市場に要求することは次の三点であろう。

1. どんなネット書店からでも、希望する電子書籍を購入できる
2. どんな電子書籍端末でも、購入した電子書籍が閲覧できる
3. 年月が経ってもこれらの状況が継続される

つまりネット書店と電子書籍端末の間で、相互運用性(互換性)が保証されることである。前の記事にも書いたように、これこそが電子書籍市場を拡大していく決定的な要因である。

その視点に立つと、一見独善的に思えるアップルのソニーへの姿勢は間違ってはいない。両社のネット書店の品ぞろえを一致させるべき、という立場からの要求だからだ。ソニーも対抗するのなら、アップル側の電子書籍をソニー側で販売できるようにすべきと要求すればよい。

問題は、そのように多数のネット書店向けに電子書籍をそろえるために出版社が担わなければならない負担である。端末フォーマットがばらばらなので、個別にデータ変換しなければならないのが負担になるのだ。

そのため、酒井法子の『贖罪』のように売れると期待できれば出版社も費用をかけるが、売れないものは取り残されることになる。わが国では年間におよそ8万点の新刊が出る。ほとんどは売れない書籍だから、新刊のうちどのネット書店でも販売できるものの数は限られることになる。これでは電子書籍市場が拡大するはずもない。今こそ端末フォーマットの統一化に向けたリーダシップが求められる。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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