アゴラ 言論プラットフォーム https://agora-web.jp 経済、ビジネス、情報通信、メディアなどをテーマに、専門家が実名で発言することで政策担当者、ジャーナリスト、一般市民との交流をはかる言論プラットフォーム ja Tue, 30 Dec 2025 13:08:26 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html 不破哲三氏が夢見た「もう一つの日本共産党」 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html 不破哲三氏が死去した。今では共産党に日本が改革できると思っている人はいないだろうが、私の学生時代には共産党に対する期待もあった。それはリベラルな上田兄弟(上田耕一郎・不破哲三)が党の中枢にいて、スターリニストの宮本顕治と闘っていたからだ。

朝日新聞

委員長が「自己批判」して宮本顕治に屈服した

しかし1983年7月の『前衛』で、上田兄弟は「自己批判」を発表した。それは1950年代に彼らの書いた『戦後革命論争史』が「党内問題を党外に持ち出した」という反省だったが、当時、不破は委員長、上田は副委員長だったので、この自己批判に党員は驚愕した。

そこには深刻な党内闘争があり、上田兄弟はレーニンの「民主集中制」をゆるやかに解釈し、党外での議論も許す立場だったが、宮本議長は異論を厳格に排除した。この自己批判は、上田兄弟が宮本に屈服し、宮本のスターリニズムが勝利した転換点だった。

普通このような分派闘争は、党の主流と反主流の間で行なわれるものだが、不破は1982年に委員長になった最高責任者である。それが分派闘争を自己批判するのは異例だが、党としての処分は行なわれなかった。

なぜ自己批判が行なわれたのか。党を除名された松竹伸幸氏によれば、この時期に有力な党員から民主集中制に対する批判が相次ぎ、その対応をめぐって宮本と上田兄弟が対立し、最終的に上田兄弟が敗北したからだ。つまり党内の最高権力者は宮本議長だということを党内外に示したわけだ。

日本で育たなかった構造改革

この背景には、1950年代以来の路線論争があった。山村工作隊などの暴力革命路線が挫折したあと、上田兄弟などはイタリアのトリアッティなどの構造改革派の影響を受け、議会を通じて改革しようとしたが、宮本など戦前からの幹部は暴力革命路線を守ろうとした。

結果的には宮本が勝利を収め、上田兄弟は自己批判して党に復帰した。このとき党に復帰しなかった長洲一二や安東仁兵衛などが社会党の構造改革派として江田三郎を支援したが、社会党でも反主流として排除された。

1960年代は欧州でユーロコミュニズムが支持され、イギリスでもドイツでもフランスでもイタリアでも社民勢力が成長し、政権をとった時期だったが、日本では革新自治体止まりだった。極左的な社共共闘では、国政をになう政権はできないからだ。

予想外に長生きした宮本顕治

上田兄弟の本音は、1908年生まれの宮本が実権を失ったら、共産党を構造改革に軌道修正しようという面従腹背だったと思う。私は上田耕一郎には一度、取材したことがあるが、宮本のスターリニズムとはまったく違う気さくな人だった。

しかし宮本は権力を手放さなかった。彼が議長に退いたあと、上田兄弟は党内人事でリベラル派を起用しようとしたが、宮本はこれを阻止し、東大細胞の「新日和見主義」と呼ばれた新左翼勢力を追放した志位を35歳で書記局長に抜擢した。

書記局で人事を掌握した志位はスターリンに対するベリアのような役割を果たして党内の反宮本派を粛清し、その功績で2000年に46歳で委員長になり、不破は議長に退いた。この人事も宮本が主導したもので、このとき上田兄弟の路線は最終的に挫折したのだ。

日本の失われた政権交代

もし宮本が1980年代に議長を引退していれば、冷戦終了後に不破委員長がもっと大胆な路線転換ができたと思うが、宮本は90年代まで人事権を離さず、党の実権は宮本=志位路線に移った。その後も構造改革派の幹部は党を追われたが、不破氏だけは議長という名誉職の地位を守った。

その後の党の路線は極左化して、野党共闘からも排除されるようになった。しかし社会党がまだプロレタリア独裁を捨てていなかった1950年代に、上田兄弟は幅広い野党の連携による平和革命を提唱したのだ。

自民党という理念も政策もない政党が長く政権の座にいるのは、それに対抗する社会民主主義の党が育たなかったからだ。上田兄弟が党内闘争で勝っていたら共産党が野党の核になり、欧州のような政権交代できる社民勢力ができたかもしれない。合掌。

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Tue, 30 Dec 2025 07:52:30 +0000 Tue, 30 Dec 2025 07:52:30 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251226220847.html https://agora-web.jp/archives/251229001518.html https://agora-web.jp/archives/251228230545.html
https://agora-web.jp/archives/251229225703.html 2026年の抱負は「金持ちになるぞー」かな? https://agora-web.jp/archives/251229225703.html 年頭の抱負は年が明けてから考えるのではなく、年末にあらかた考えをまとめ、年初からそれを実行したいものです。私の住むコンドミニアムにはジムがついているのですが、1月の初めはいつも混んでいるのです。普段見かけない方もいらっしゃっるのですが、そういう人に限ってやけに頑張ってルームランナー(トレッドミル)で走っていたりするのです。だけど、ひと月もすればほぼ元の状態に戻ってしまいます。つまり常連だけであります。

daruma46/iStock

同様の傾向はフィットネスクラブでもそう。私が通うあるジムも年初は本当に混むんですね。私の会社の70歳の同僚も先週ジムに入会したそうです。「同機は?」と聞けば「シニア割引きで安いから」と。ではなぜ年頭の抱負は続けられないのでしょうか?

答は簡単。ジャンプしすぎるからなのです。つまり、今までやったことも経験したこともない世界を突然目指すので続かなくなるのです。年頭の抱負とは1年間という中距離走なのでどうやってそれだけ走り抜けるか、それなりの戦略が必要だと思います。365日とはフルマラソンのようなきつさではなく、5キロか10キロマラソン程度の距離です。それを踏まえて皆さんが考える抱負が「持続可能」かどうか、そこを考える必要があります。

痩せたいという方の話は苦しくもあり、笑いもあります。先日もある方が「今年に入って1キロ痩せた」と自慢していました。いいんですよ、本人がそれで満足していれば。1キロだけの減量ならセンナ茶を飲めば一晩で減らすこともできますが、すぐに元に戻ります。一定の科学や知識も必要でしょうね。そう考えると無理をして頑張るとその反動も大きいリスクがあるともいえます。

で、年頭の抱負で多くの方の共通の話題と言えば「お金持ちになるぞー」でしょう。このお金持ちというのが厄介者で、その尺度がないのです。例えば宝くじで10万円当たれば金持ちになった気分だし、株で50万円儲けても「次は100万円儲けるぞ」と意気込むもののあまり儲かった実感がないかもしれません。この違いは何かといえば実際にお財布にお金があるかどうかの心理的要因が強いのです。財布に10万円入っていれば「懐が暖かい」わけで「今日は上手いものを食べるぞー」になります。一方、株で儲かっても「そんなの証券口座の残高が増えただけでしょ」で実感はほとんどないのです。

どちらが良いのでしょうか?私は両方大事だと思うのです。私は個人口座で運用している株式で時折「30%獲得キャンペーン銘柄」というルールを作っています。この資金で買った株で儲かったら儲けの30%を自動的に引き出して好きに使えるというルールです。以前には1000㌦(約11万円)ルールというのもあり、1000㌦以上儲かれば1000㌦は引き出して普段なかなか買わないものを買うようにしたのです。つまり自己宣言型でそれが達成できなければ飴玉はないのです。だから必死になります。

すると不思議で戦利品であるお金を懐に入れると、いつもなら「これは高すぎるから買えないなぁ」という気持ちのタガが外れて「これ買っちゃう」になるのです。自分の褒美という感覚です。

年頭の抱負はメリハリが必要だと思います。マラソンだって途中で水分補給や時として流動食を口にするでしょう。私は自転車で長距離を走っていた時はジャージーの後ろポケットにカロリーメイトのような食べ物を持っていてそれを食べながら走ることもありました。つまり365日という中距離走には褒美や補給も必要なのです。人間そんなにストイックに生きることは出来ないのであります。

では最後に「金持ちになるぞー」はどうやったら達成できるでしょうか?こればかりは秘策はないのです。ごく普通にダイエットの逆版だと考えたらよいと思います。つまり「出と入り」の管理なのです。「出」が「入り」より多ければ体重なら減りますが、お財布は軽くなります。ならば出をまずしっかり理解することから始めたらどうでしょうか?

例えば多くの方が携帯電話でお金がかかると嘆きます。そんな時は「月に7000円の出費は当たり前だ」という意識を変えてみたらどうでしょうか?格安携帯キャリアなら半額以下になります。だけど皆さん、言うんですよね。「いやだー、そんな聞いたこともないキャリアなんて」と。だけど聞いたことがないのはあなただけで世の中では普通に存在しているのです。当然デメリットもあるでしょう。それを把握して自分の携帯の使い方と見直す努力は必要だと思います。私の日本の携帯なんて使わない月は1700円しかかかりません。使う月でも3000円かかったことはありません。

そうやって支出を見直す、すると今度は自然に入りを見直すことになるのです。「普通預金に100万円あるけれど、これって金利が高くなったからもったいなくない?」という意識が出来るでしょう。更に「銀行預金より株の配当の方が高利回りみたいね」と。そうやって考えを一歩ずつ派生、進化させていくことでお金との付き合い方が上手になっていくのだと思います。

私はフィナンシャルプランナーではないので各人の状況に合わせたプランのお話は出来ないのですが、一般的には多くの方の普段の金銭の使い方は惰性的な場合が多いと思います。その惰性を変える、そして変えるには環境を変える、環境を変えるには自分の周りにいる人や付き合う人を変える、それには知らない世界に第一歩を踏み出すということではないでしょうか?

せっかくもうすぐ365日のスタート地点に立つわけですからせめて3か月続けられる背伸びしすぎない程度の目標から継続ずる力をつけられたら良いですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月30日の記事より転載させていただきました。

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Tue, 30 Dec 2025 03:00:03 +0000 Tue, 30 Dec 2025 03:00:03 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251229001258.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html
https://agora-web.jp/archives/251229225727.html ナラティブ(物語)が人の心を捉える時代 https://agora-web.jp/archives/251229225727.html ナラティブ(narrative)という言葉を最近、耳にする機会が増えてきたように感じる。人工知能(AI)によると、ナラティブは、情報を伝えるだけでなく、人々の心に響き、行動を促す力を持つ物語の力を現代社会で活用する概念という。客観的な事実を羅列したストーリーとは違い、ナラティブは主観的な意味や感情、価値観が加わったもので、「物語をどのように語るか」に焦点が置かれている。

トランプ米大統領と会合したウクライナのゼレンスキー大統領、2025年12月29日、ウクライナ大統領府公式サイトから

EXTREMESCIENCE(過激な科学)というタイトルの科学関連情報を発信する動画「PIVOT」で脳科学者の茂木健一郎氏は「ナラティブは現在、軍事力以上に大きな影響がある」という趣旨の話をしていた。非常に興味深い指摘だ。社会学学者が「社会の活性化には失った神話の復権が必要だ」と主張していたことを思い出したが、ここにきて「神話」に代わって「ナラティブ」が拡散してきたわけだ。

ここでは当方が過去フォローしてきた取材対象圏から代表的な2つのナラティブを紹介する。

①ロシアのプーチン大統領のナラティブ

ロシアの最高指導者プーチン大統領は2023年5月9日、モスクワの赤の広場で開かれた第78回対独戦勝記念日の演説で、「わが国は犠牲国だ。西側がわが国を脅かしたからだ。国民は結束して祖国を守らなければならない」と檄を飛ばした。クレムリンの前に集まった8000人余りの軍関係者を前に、プーチン氏は自信をもってそのように語った。事実はロシア軍がウクライナに侵攻したのだ。プーチン氏の発言を聞いた西側メディアは、「プーチン氏のパラレルワールド(並行世界)」と呼んでいたほどだ。

プーチン氏は自身が生み出したナラティブの世界に生きている。ウクライナはロシアに帰属すると考え、キーウの解放こそが神の御心と信じている。プーチンはクレムリン前にキーウ大公の聖ウラジーミルの記念碑を建てた。聖ウラジーミルはロシアをキリスト教化した人物だ。プーチン氏は自身を聖ウラジーミルの転生(生まれ変わり)と思っている節がある(「プーチン氏は聖ウラジーミルの転生?」2022年3月28日)。

プーチン氏は聖ウラジーミルの転生?
プーチン氏は先月24日、ウクライナ侵攻への戦争宣言の中で、「ウクライナでのロシア系正教徒への宗教迫害を終わらせ、西側の世俗的価値観から守る」と述べ、聖戦の騎士のような高揚した使命感を漂わせた。ロシア軍のウクライナ侵攻から1カ月が過ぎたが、そ...

プーチン氏のナラティブを支えているロシア正教会の最高指導者、モスクワ総主教のキリル1世はロシア軍のウクライナ侵攻について、「ウクライナに対するロシアの戦争は西洋の悪に対する善の形而上学的闘争だ」と強調し、ウクライナ戦争は「善」と「悪」の価値観の戦いだから、敗北は許されないという。キリル1世はプーチン氏の主導のもと、西側社会の退廃文化を壊滅させなければならないというのだ。

フランス生まれのロシア系の歴史学者ミシェル・エルチャニノフ氏は、「通常の戦争の場合、相手と交渉し、時には譲歩することで刀を鞘に納めることができるが、『形而上学的闘争』(価値観の戦い)の場合、相手とは交渉(譲歩や妥協)できない。勝利するか敗北するかの戦いとなる」と指摘している。自身のナラティブの世界に生きるプーチン氏との和平交渉が難しいのは、ウクライナ側を含む西側のスタンスとプーチン氏のそれが全く異なっているからだ。ある意味で当然だ。

プーチン氏はKGB出身であり、プロパガンダの重要性を誰よりも知っている。そのプロパガンダを支えるためにナラティブが不可欠であることも分かっているはずだ。プーチン氏の物語は神話的ナラティブというべきかもしれない。

②安倍晋三元首相暗殺事件の山上徹也被告の生い立ちに関するナラティブ

ナラティブが大きな影響力を有しているのは政治の世界だけではない。日本では世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の公判が奈良地裁で開かれ、山上被告は無期懲役となったばかりだ。元首相が暗殺された事件だったこともあってメディアだけではなく、国民も大きな関心を示してきた。

読売新聞電子版は11月25日、「山上徹也被告の生い立ちは…安倍晋三元首相銃撃事件の被告父と兄の死、母の入信で教団への恨み募らせ」という見出しを付け、被告の生い立ちを詳細に報道している。

元武蔵野女子大学教授の杉原誠四郎氏は、29日付の世界日報社とのインタビューの中で、「文科省が家庭連合の解散命令請求を行う原因となった不法行為についてだが、文科省が解散事由とした被害報告にある『被害』は、被害者と名乗る者による被害申告にすぎず、教団側の不法行為が法的に確定したものではない」と述べ、問題点を明確に指摘している。

また、文科省が作成した被害者の陳述書には虚偽の陳述が多数含まれていたなど、多くの問題点が浮かび上がってきたが、裁判では山上被告の生い立ちや事件発生直後の供述が独り歩きしていった。公判が開始される頃には山上被告を巡るナラティブは真偽解明をぼかす最大の障害となっていった。

事件発生直後から左派メディアの関心は安倍元首相暗殺事件の全容解明ではなく、もっぱら旧統一教会に関わる山上被告の生い立ちに注がれた。その物語の前に、捜査段階の不祥事や法の拡大解釈といった諸問題は脇におかれ、焦点が外されていったわけだ。

ただし、山上被告の生い立ちのナラティブは被告自身が拡散したというより、左派メディアや共産党系弁護士団体が意図的に広げていったものだ。そのナラティブに心が動かされた国民の中には元首相暗殺者の山上被告に救援金を送ったというニュースが報告されている。

21世紀の現在、メディアの世界では様々な陰謀説やフェイク情報が囁かれているが、人々の心を揺さぶるナラティブ(物語)は、時には法の枠組みすら超え、周囲に大きな影響を及ぼすだけに、警戒が必要だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年12月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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Sat, 14 May 2016 08:38:59 +0000 Sat, 14 May 2016 08:38:59 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html
https://agora-web.jp/archives/251229225809.html 疑われたくないのなら尚更スパイ防止法に賛成したほうがいいよ https://agora-web.jp/archives/251229225809.html

※トップ画像は民主党が党の旗を作るのに日の丸を切ってしわしわにした上で
繋げ合わせたものを掲げていた時の画像

約1億5700万円の脱税で東京国税局に
刑事告発されたインフルエンサーの宮崎麗果とかいう人がいるようです。

この方は立憲民主党の白眞勲の娘さんなのですが、
マスゴミはこの事については徹底して伏せているようです。

マスゴミ得意の「記者クラブ談合」による情報隠蔽が露骨に思います。

これが自民党議員の子息だったらメチャクチャ叩かれていたでしょうに。

宮崎麗果氏インスタグラムより

ではまずは朝日新聞の記事から。

【半導体の秘密情報が中国企業に流出か警察の企業訪問で浮上した疑惑】

日本企業の先端技術の秘密情報が海外に流出する事件が相次いでいることを受け、警察当局が個別訪問や講演などを通して企業や研究機関などに注意を呼びかける「アウトリーチ」を強化している。茨城県警がこの活動中に、半導体製造に関する秘密情報が中国企業に流出した疑惑を突き止めていたことがわかった。捜査関係者の一人は「繊細な情報を扱う際は警戒感を高めて」と警鐘を鳴らす。

複数の関係者によると、流出したとされる秘密情報は、発光ダイオード(LED)の材料になる化合物半導体の単結晶を育成させる装置の図面。この装置は半導体製品の製造工程の初期段階を担うという。
~以下会員専用~
(2025/12/26朝日新聞)

・茨城県内の日本企業の男性幹部が秘密情報である装置の図面を不正に入手
・男性は中国人に数十万円で売却した疑いが強い
・被害に遭った企業はこの分野でも屈指の技術を持っていて納入実績もある
・疑惑の人物は2021年に49歳で病死ということになっている

いろいろと憶測を呼びそうな内容ですが、
やはり日本は本格的なスパイ取締法の成立を急ぐ必要があると思います。

お次はスパイ防止法に反対の立場で、
中国のスパイなんじゃないか?
というネットの指摘に法的措置をちらつかせて黙らせようとしている
立憲民主党がスパイ疑惑を抱かれても不思議では無い過去の話。

「国民の感情をコントロール」発言で
自分達が批判されている事に納得できていない岡田克也らですが、
良い機会なので岡田克也ら立憲民主党と
非常に関係の深い民主党沖縄ビジョンについて触れておきます。

特に岡田克也と言えば2002年にあの悪名高い
民主党沖縄ビジョンをまとめた人でもあります。

【魚拓】民主党:民主党沖縄ビジョン

-2025年12月29日13:48-ウェブ魚拓

【魚拓】民主党:民主党沖縄ビジョン
- 2025年12月29日 13:48 - ウェブ魚拓

岡田克也・立憲民主党常任顧問 Xより

鄧小平が提唱した中共の政策である「一国二制度」の導入や
沖縄の独立などを目的に
岡田克也、武正公一、渡辺周、岩本司、ツルネン・マルテイ、枝野幸男らが
この策定を進めました。

  • 軍事基地の縮小(中国などの周辺の脅威は無視)
  • 沖縄に時差を設けてなぜか北京時間の方に合わせる
  • 地域通貨の発行
  • 外国人3千万人ステイ構想
  • ビザ免除による東アジアとの人的交流促進
    (※民主党が東アジアという場合は特定アジアを指していた)
  • 一国二制度にする
  • 中国語教育
  • 無国籍児など多様化している国際児の教育を受ける権利の確立
    (※中国は一人っ子政策の弊害で2000万人を越える無戸籍児が問題になっていた)
  • 安全保障等で沖縄が自主自立の新たな道を切り開くこと
    (これと一国二制度を合わせれば日本からの切り離し)

また、民主党は2004年6月23日に
民主党「憲法提言中間報告」
というものをまとめて発表しています。

そこには
「国家主権の委譲や主権の共有へ」
「アジアとの共生」
「中央政府と地方政府の対等原則」
「課税自主権の明記」
などが書かれていました。

この後民主党は「地域主権」などと言い出して
要するに中央集権体制を壊していくことをあからさまに目指して行く姿勢を打ち出していきました。

つまりは地域毎にバラバラの国に切り分ける事で
日本を侵略したい意図を持っている不届きな連中にとって
「地方から切り取っていける状態を作る」
そういう状態を目指していたのではないかと、
当時の保守層の一部から危険視されていた思想が
沖縄ビジョンという形でもまとまっていたわけです。

ちなみに民主党沖縄ビジョンは1999年頃から民主党内で話が進められていたもので、
民主党、いまの立憲民主党に集まっている連中が
早い段階から異常な中共への傾斜を持っていた事がわかるものでもあります。

民主党というのは綱領のない政党でした。

自分達の本当の政策は隠して、選挙のたびに都合の良い事を言う。
その方が選挙に有利だと考えていたのか、
はたまた選挙互助会でしかなかったので
党としての基本政策をまとめる能力すらなかったのか。
そこはわかりませんが、
綱領の無い政党であることはみんなの党の渡辺喜美にも批判されていました。

そして後に野田佳彦が総理になると、この批判に対して
「我々には結党時の基本理念がある」
と言い張って、要するに基本理念があるのだから綱領が無いという批判はおかしいと、
そういう反論をしていました。

ではその民主党の結党時の目的とはなんだったのか?
外国人の地方参政権、人権擁護法案の実現でした。

先に挙げた民主党沖縄ビジョンの一国二制度や
その後民主党が党の方針として掲げていた地域主権などの中央集権体制の解体。
そうしたものと外国人参政権が合わさったらどうなるでしょうか?

しかも外国人三千万人ステイ計画です。

日本を我が物にしようという野蛮な国から見れば
民主党が地方から順番に切り取っていくための
その下地作りをしてくれているように見えるのではないでしょうか?

ですので2002年の民主党沖縄ビジョンは
当時の保守層でもネットを使える人達に
かなり危険視された政策でした。

それこそ岡田克也ら民主党の連中が
中国のスパイなんじゃないかと疑われてもおかしくないくらいに。

こうした過去を考えれば、
なおのこと岡田克也ら立憲民主党の連中に
少なくない人達が疑念を抱くのは当然ではないでしょうか?


編集部より:この記事は茶請け氏のブログ「パチンコ屋の倒産を応援するブログ」2025年12月29日のエントリーより転載させていただきました。

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Tue, 30 Dec 2025 02:50:09 +0000 Tue, 30 Dec 2025 02:50:09 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html
https://agora-web.jp/archives/251229234832.html 立憲民主党・蓮舫氏の「おひとり様女性」優遇政策に批判殺到 https://agora-web.jp/archives/251229234832.html 立憲民主党の蓮舫氏がX(旧ツイッター)に投稿した「おひとり様」政策をめぐり、与野党支持層やSNS上で批判が広がっている。単身女性支援を前面に出した政策提起が、公平性などの観点から反発を招いている。

  • 蓮舫氏は、次に取り組みたい政策として「おひとり様」政策を掲げた。
  • 一人で生きる選択をした女性が、貧困や孤独に追い込まれている現実は自己責任ではなく、政治が向き合う課題だと主張した。
  • 投稿は、単身女性の生活不安や孤立限定した政策対象として明確に位置付けた点が特徴とされる。
  • SNSでは「自ら選択した生き方の結果を政治が肩代わりするのか」という自己責任論が多く見られる。

  • 「特定の属性だけを支援対象にするのは不公平だ」という声が強い。

  • かつて民主党が掲げた「サラリーマンの負担軽減」という原点と矛盾し、結果的に現役世代の負担増につながるのではないかとの指摘がある。
  • 批判の一部は「なぜ女性だけなのか」という点に集中している。
  • 高齢期の孤独死や生活困窮は男性にも多いという統計がある中で、女性のみを問題化するのは逆に差別的だという見方が出ている。
  • 未婚や非婚は強制ではなく、結婚しない自由、家族を持たない自由を自ら選択した結果であり、原則として自己責任と考えるべきだという主張が目立つ。
  • 若い世代からは「自分たちの負担が増える一方で、将来への支援が見えない」という不満が噴出している。
  • 現役世代が結婚や子育てをしやすい環境整備こそ優先すべきで、単身者支援を拡大する政策は的外れだとの意見が多い。
  • こうした政策姿勢が、立憲民主党が若年層から支持を得られない一因になっているとの分析も少なからず見られる。

蓮舫氏の「おひとり様」政策提起は、単身女性の困難に光を当てる一方で、自己責任と公平性、現役世代負担の問題を改めて浮き彫りにした。特定の属性を優先的に支援する政策が社会的合意を得られるのか、また若年層の支持回復につながるのかが、今後の大きな論点となりそうだ。

Rシールの批判も記憶に新しい蓮舫氏

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Tue, 30 Dec 2025 02:45:31 +0000 Tue, 30 Dec 2025 02:45:31 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251226220847.html https://agora-web.jp/archives/251229001518.html
https://agora-web.jp/archives/251230000959.html 労働力人口が初の7000万人超えなのに人手不足なのはどうして? https://agora-web.jp/archives/251230000959.html 女性や高齢者の就労拡大を背景に、日本の労働力人口は過去最高水準に達しつつある。一見すると人口減少下での明るい材料にも見えるが、その内実を詳しくみると、経済成長につながりにくい構造的な問題が浮かび上がっている。

  • 総務省の労働力調査によると、労働力人口は2025年平均で初めて7000万人を超える見通しとなり、11月時点では7033万人に達した。人口減少が進む中でも、労働市場への参加者は増え続けている。
  • 増加を主導しているのは女性と高齢者で、女性の労働力人口は最低賃金の上昇や就労環境の改善を背景に大きく伸びた。65歳以上の就労も、雇用確保義務や企業側の制度整備によって拡大している。
  • 外国人労働者も増加傾向にあり、就業者全体に占める割合はなお小さいものの、前年比で高い伸びが続いている。結果として、労働力人口は従来の将来推計を上回るペースで増えている。
  • その一方で、1人当たりの労働時間は減少している。パートなど短時間労働の拡大により、就業者数は増えても、経済全体で投入される労働量は伸び悩んでいる。
  • 税や社会保険料の負担を避けるため、「年収の壁」を意識して就業時間を抑える動きも根強い。所得税の非課税枠引き上げなど制度見直しは進むが、社会保険加入や扶養の基準といった別の「壁」は残ったままだ。
  • 専門家の間では、就業者数の増加だけでは経済成長は難しいとの指摘が出ている。安倍政権下の働き方改革は、本来目指していた雇用の流動化を十分に進められず、残業時間の厳格な上限規制が中心となった。

  • 残業規制は労働環境改善に一定の効果をもたらした一方で、企業の柔軟な人材活用を妨げ、生産性向上につながりにくいとの批判もある。解雇ルールを明確に法制化し、労働者が企業から自由に移動できる環境を整える改革が必要だとの声が強まっている。

労働力人口は過去最高水準に近づいているが、労働時間の減少や制度的な制約により、経済成長への寄与は限定的である。今後は、単に働く人を増やす政策から、労働の質と流動性を高める改革へと軸足を移せるかが、日本経済の持続的成長を左右することになる。

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Tue, 30 Dec 2025 02:35:59 +0000 Tue, 30 Dec 2025 02:35:59 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251229075114.html https://agora-web.jp/archives/251228232445.html https://agora-web.jp/archives/251227123104.html
https://agora-web.jp/archives/251229001258.html 「お正月休み」は退職生活の予行演習 https://agora-web.jp/archives/251229001258.html 黒坂岳央です。

多くの人にとって待ちに待った年末年始の長期休暇がやってきた。

だが、この期間の過ごし方は、単なる日頃の休息以上の意味を持っている。この大型連休こそが「定年退職後やFIRE後の自分」を映し出す鏡なのである。

次々とやりたいことが湧いてきて楽しめている人、暇や余計な不安に押しつぶされそうになっている人、今の感覚を拡大した世界が退職後に待っている。

※こういう記事に「年末年始こそ一年で最も忙しい」と反発もあるだろう。主婦(主夫)やサービス業従事者などだ。本稿は「一人暮らしでお正月休みという大型連休」を迎える人を対象に書いている。

PeopleImages/iStock

お正月休みは退職後生活の「味見」

「いつかはFIREしたい」
「仕事から解放され、義務に追われずにのんびりしたい」

という人は多い。だが、それは経験したことがないからより輝いて見えるのであって、実体験すると「こんなはずではなかった」となる人もまた、多いのだ。

筆者自身、高卒後にニートになって1日中ゲーム生活という「退職後の味見」をしたことがあったが、耐えられずに働きに出た。また、脱サラして独立後に完全に仕事をやめてダラダラしてみたがやっぱり耐えられなかった。

人生の早い段階で「退職後の生活、自分に本当に合うか?」を確認しておくことは重要な意味を持つ。筆者は「何もしないより忙しく働いている方が楽しい」と分かったので、今はせっせと働いているし、一生忙しくなるように人生設計をしたいと思っている。

このお正月休みの大型連休は退職後の「味見」という感覚で過ごすのもいい。そして実際の退職はこれよりも遥かに過酷である。なぜなら帰省する親はすでに生きていなかったり、友達や同僚もいないからだ。

大型連休を楽しめる人、そうでない人

多くのビジネスパーソンにとって、会社という枠組みから外れる長期休暇は解放感に満ちたものである。しかし、数日経つと「やることがなくて持て余す」「結局、ベッドの上でスマホを見て一日が終わった」といった焦燥感に駆られる人も少なくない。

ここで、休暇の過ごし方を二つのタイプに分けてみる。

会社が決めたスケジュールや、世間の「正月はこう過ごすべき」という枠組みがないと、何をすればいいか分からなくなる「受動的に時間を消費」するタイプである。

もう1つは会社という枠が外れても、自分の興味関心の赴くままに、主体的に趣味、学習、創作で「主体的に時間を投資」できるタイプだ。

もし今、「暇すぎて将来不安、余計なことばかり考えてしまって狂いそう」と感じているなら、それは主体性が不足しているサインかもしれない。

自分の人生を生きているか?

お正月休みが退屈だからと、有り金を湯水のように使い込んで世界中を旅するとか、日替わりで色んな人に会いまくる、みたいな非日常で時間を埋め尽くすべきではない。それらは退職後の日常生活とはかけ離れており、予行演習にならないからだ。

そうではなく、地元の公園で運動をしたり、図書館で本を読んだり、家で食事を作ったりと一人でお金を使わず、お金をかけず、人に会わない地味な生活を送ってみることだ。

そうするとたちまち見えてくる。主体的に生きなければ、人生は早々に飽きることに。延々とショート動画をスワイプし続けたり、ソシャゲをしても必ず飽きる。大型連休には終わりがあるが、実際の退職後はそれが数十年続いていく。しかも老眼が進み、筋肉が衰えれば今のような受動的な暇つぶしすらできなくなる。

もしもこの味見に絶望したなら、生き方を見直すチャンスである。人生は主体的に自ら行動しなければ、何も始まらないし、受動的な娯楽だけで数十年楽しむことは非常に難しい。

その一方で、主体的に動けばお金を使わなくても人生は楽しい。筆者は記事や書籍を読み、仕事をする中での経験をこうして記事に書く生活を送っている。2026年で9年間になるが、全く飽きない。おそらく今後も書き続けるだろう。楽しい仕事を見つければ、人生は楽しくなる。

自らの意思と行動で自分の人生を生きているか?その答え合わせができ、生きがいを探すチャンスがこのお正月休みなのだ。

この連休で「将来、自分は危ないかも」と感じたなら、それは幸運だ。今のうちに会社の外に居場所を作り、消費ではない趣味を育て、自分自身を楽しませる運用を始めればいい。

2025年10月、全国の書店やAmazonで最新刊絶賛発売中!

なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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Mon, 29 Dec 2025 22:00:58 +0000 Mon, 29 Dec 2025 22:00:58 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251226205448.html https://agora-web.jp/archives/251226001000.html https://agora-web.jp/archives/251225010122.html https://agora-web.jp/archives/251223233456.html
https://agora-web.jp/archives/251229052149.html 年末に「戦後批評の正嫡」とふり返る、戦後80年/昭和100年 https://agora-web.jp/archives/251229052149.html

いよいよ戦後80年で、昭和100年でもあった2025年が終わり、ふたたび日本は歴史を忘れる眠りにつく。ひょっとすると永遠の眠りで、もう目覚めないこともあるかもしれない。

そうは言っても、「戦後批評の正嫡」になってしまった者としては、細々と “家業” みたいに81年目/101年目からも続けていくしかないのだが、最後にそんな今年をふり返っておこう。

「歴史を失くした10年間」のあとで|與那覇潤の論説Bistro
遠い将来に日本の歴史を書く人は、2015年から25年までのあいだを「歴史を失った10年間」と呼ぶだろう。そして、なぜそんなことが起きたのかを、不思議に感じると思う。 戦後70年の安倍談話の際は、検討する会議に入った人が「御用学者になった」とか、あの人を選ぶなんて「アベはヤバい」とか、準備中から色々言われた。そんな批判...

昭和時代は、1926年の12/25に始まり、89年の1/7に終わる。今年のnoteのうち、当該の時期の史実を参照したものを、その歩みに則して年表風に並べた(89年については、”冷戦の終焉” と重ねて記憶する人が多いので、今回は延ばしてある)。

大事なのは、歴史学者の(つまらない)授業みたいに、「何年に何がありました」と死んだ過去を扱うものではないことだ。むしろ激動の年だった2025年へと、直接つながる生きている歴史として、どの記事でも昭和史を “鑑” にしている。

それでも「年表は飽き飽きだなぁ」という人は、末尾に大切な付論をつけてある。目次からのジャンプでもいいから読んでくれたら、”歴史” のためにとても嬉しい。

“昭和の100年目” としての2025年

1928.10 ソ・五ヵ年計画開始

トランプは関税で「アメリカのスターリン」の夢を見るか?|與那覇潤の論説Bistro
今月に入ってから、まじめな政治経済のニュースはトランプの「相互関税」で持ち切りだ。相互もなにも、一方的に米国の側が関税を増額し、文句あんなら相互にしてみろやゴラァと言ってるだけだから、無茶苦茶である。 輸入品に課税しても、その分は販売時の価格に転嫁されるから、結局は米国内の消費者が負担する。そもそもインフレだから廉価...

1931.9 満州事変勃発

隠蔽された「8割削減」の真実: やはり、それは2度目の "満州事変" だった|與那覇潤の論説Bistro
今年の6月に岩本康志氏(東大経済学部教授)の刊行した『コロナ対策の政策評価』が、反響を広げている。2020年4月、当初は "専門家がエビデンス・ベースで" 発案したように報じられた「接触8割削減」の政策の、完全な無根拠ぶりが立証されているからだ。 西浦博氏の「接触8割削減」は計算違いだった : 池田信夫 blo...

1933.1 独・ヒトラー政権発足

ナチスを台頭させ、民主主義を滅ぼした「お気持ち司法」|與那覇潤の論説Bistro
今週発売の『文藝春秋』4月号にも、連載「「保守」と「リベラル」の教科書」が掲載です。なんとついに! 今回、歴史学者の著作が初登場(笑)。 東大西洋史の教授で、のち総長も務めた林健太郎が1963年に刊行した中公新書の古典『ワイマル共和国 ヒトラーを出現させたもの』です。 林健太郎『ワイマル共和国』 | 與那覇 ...

1935.2 天皇機関説事件始まる

ある "学会乗っ取り" の背景: トランスジェンダリズムは「戦前の右翼」である|與那覇潤の論説Bistro
今月の頭に、トランスジェンダリズムがダミーサークル化する動きについて報告した。「トランス女性は100%の女性なので、生物学的な性差を考慮せず、女性専用の施設を当然に利用できる」とする主張は、本場だった英米でも公的に否定されてメッキが剥げ、近日はもう人気がない。 そのため「新しいフェミニズムを学びませんか?」のように、...

1937.1 宇垣一成内閣流産

ゼレンスキー大統領は独裁者なのか: 「戦時下」の日本史から考える|與那覇潤の論説Bistro
日本の国際政治学者による「叩き込み」も空しく、プーチンとの手打ちに前のめりなトランプがゼレンスキーを「独裁者」と呼び、西側諸国で批判を集めている。もともとSNSでも言っていたのだが、2/19には集会の場で公に、ゼレンスキーが「選挙の実施を拒否している」と非難した。 ゼレンスキーは2019年の大統領選(4月に決選投票...
昭和を忘れた日本人は、なぜここまで未熟なのか:『江藤淳と加藤典洋』序文①|與那覇潤の論説Bistro
いよいよ5/15に、新刊『江藤淳と加藤典洋』を出す。病気の後は対談を併録するなど、他の方に助けられて本を作ることが多いので、100%自分の文章のみの純粋な単著としては、2021年の『平成史』以来、4年ぶりになる。 前から書いてきたとおり、ぼくなりに戦後80年、昭和100年を受けとめた著作だ。そのメッセージが伝わるよう...

1939.8 独ソ不可侵条約締結

AfDは「ヒトラーとスターリンの同盟」を再来させるか|與那覇潤の論説Bistro
前回の続き。『文藝春秋』のコラムをドイツ政治史の古典で書いたのは、もちろん2月の同国の総選挙で、極右と呼ばれるAfD(ドイツのための選択肢)の躍進が予見されていたからである。 よく指摘されるが、2013年に反EU政党として結成され、近年はむしろ「親露派政党」として知られるAfDは、旧東ドイツの地域で圧倒的に強い。も...

1940.2 斎藤隆夫「反軍演説」

なぜ、悪口や不謹慎にも「寛容であるべき」なのか: 日中戦争からウクライナへ|與那覇潤の論説Bistro
戦後80年を考える著書として、先月『江藤淳と加藤典洋』を出したところ、「この本の著者はヒトラーで、帯を寄せた学者はスターリンだ」という、ものすごい悪口が届いてしまった。それも、著名な評論家からである。 ふつうに考えてイミフだけど、でも、そういった「悪口芸」も含めて言論の自由だから、昨今流行りの民事訴訟ダーも刑事告訴ダ...

1941.12 太平洋戦争始まる

ウクライナ戦争に踊った「大きな少国民」(『Wedge』連載開始です)|與那覇潤の論説Bistro
20日発売の『Wedge』8月号から、巻頭コラムの連載を担当させていただいています。ずばり、タイトルは「あの熱狂の果てに」。 今日に至る、さまざまな歴史上の熱狂をふり返り、「……でも、いま思うとあれは何だったの?」を省察するのがコンセプト。毎回、写真家の佐々木康さんによる撮りおろしの扉もつきます。 ひと:佐々...

1945.8.6 広島で初の核使用

”主権潔癖症” が招き寄せる第三次世界大戦の足音|與那覇潤の論説Bistro
周知のとおり、6/13にイスラエルがイランを空爆し、交戦状態に入った。ウクライナ戦争と同様に当初、トランプの米国は両者に停戦を求めたが奏功せず、参戦の可能性さえ報じられ始めている。 イスラエルとイラン、攻撃の応酬続く イランは死者220人超と発表 - BBCニュース イスラエルとイランの対立は激しさを増し、...
「見えない原爆投下」がいま、80年後の世界を揺るがしている。|與那覇潤の論説Bistro
昨日発売の『潮』9月号で、原武史先生と対談した。病気の前には原さんの団地論をめぐり『史論の復権』で、後には松本清張をテーマにゲンロンカフェで共演して以来、3度目の対話になる。 今回はともに5月に出た、私の『江藤淳と加藤典洋』と原さんの『日本政治思想史』の内容を交錯させながら、いま、江藤と加藤から戦後史をふり返る意味...

1945.8.9 ソ連軍が対日参戦

資料室: 戦争の「敗けが見えた」とき、日本人はいかに現実から逃避するのか|與那覇潤の論説Bistro
開戦から4年目に入るのを前にして、ウクライナ戦争の「終わり」がようやく見え始めた。ただしそれは、当初予想された形ではない。 ウクライナと、支援してきた「西側」とが、ロシアに敗北する。日本もまた武器輸出こそ行わなかったものの、ずっとウクライナの側に立ってきたのだから、そうした「敗戦」を受けとめることを強いられるだろう。...

1945.9 昭和天皇・マッカーサー初会見

国が亡び、父が消えたあと、人はどう生きるのか:『江藤淳と加藤典洋』序文③|與那覇潤の論説Bistro
戦後80年の今年4月、特使として米国との交渉に臨む赤沢大臣が、トランプ大統領との対面に感動して「格下も格下」と自称し、MAGAキャップ姿の写真も撮られて、物議をかもす騒ぎがあった。 「大臣は格下じゃない」立民・徳永エリ氏、「格下」発言に苦言 赤沢亮正氏は「理解して」 赤沢亮正経済再生担当相は21日の参院予算...
資料室: あなたはまだ「ほんとうのムラ社会」を知らないー渡辺清『砕かれた神』|與那覇潤の論説Bistro
日本人は空気に弱い、とよく言われる。とくに有識者を名乗る人ほど口にする。そこには「インテリの私は違うけどね、フフフ…」といった自己卓越化と見下しがあるのだけど、そうした人のほとんどはコロナ以来、率先して空気に追従し続けて、信用を失ってしまった。 そんな軽薄なことになるのも、空気を読ませる母体であるムラ社会のリアリテ...

1945.11 独・ニュルンベルク裁判開廷

他人を叩くための "正義" は、いかにしてニセモノになるのか|與那覇潤の論説Bistro
日本でも四季が消えたかのように、夏から冬への転換が急になっている。この夏の異常な暑さが尾を引き、9月末くらいまではふつうにTシャツで出歩いていたのが、嘘のようだ。 その猛暑の下、稀に見るアツい参院選も7月にはあったが、近年メディアを挙げて「うおおおお!」してたはずの気候変動や脱炭素化は、なんの争点にもならなかった(苦...

1946.5 東京裁判開廷

人生で大事なことを、日仏の「戦犯裁判」がぜんぶ教えてくれる。|與那覇潤の論説Bistro
奇抜なタイトルの作品が、有名な賞を獲ると話題を呼ぶが、これを超える例は今後もないだろう。 「プレオー8の夜明け」。内容はおろか、ジャンルさえわからないが、1970年の芥川賞受賞作。 8はユイットと読み、フランス語で「中庭第8房の夜明け」の趣旨だ。あの戦争が終わった後、仏領インドシナ(ベトナム)のサイゴンで戦犯容疑者...

1946.5 『思想の科学』創刊

令和の大学教授は "ルー大柴" になり、そしてみんな信じるのをやめた。|與那覇潤の論説Bistro
お休みしていた『表現者クライテリオン』での連載「在野の「知」を歩く」が、ようやく復活! 先週末に出た9月号で、在野研究者と言えばこの人! の荒木優太さんと対談しています。 荒木さんのYouTubeではすでに、2分強でのPR動画も公開! ぜひ、再生して下さいましたら。 在野で研究する人は昔からいましたが(ていうか...
資料室: 参政党の "限界" を予見した敗戦直後の思想家―鶴見俊輔『戦争が遺したもの』|與那覇潤の論説Bistro
先月刊行になった荒木優太さんとの対談で、彼の研究対象でもある鶴見俊輔(1922-2015)の話をした。なので紹介するnoteでも触れたけど、いまはもう「誰?」という読者も多いだろう。 1979年生まれのぼく自身、あまり鶴見の記憶はない。朝日新聞系の媒体に、大御所的な扱いでたまに出る「左の偉い人」として、たとえば加藤...

1946.10 石川淳「焼跡のイエス」

戦争に敗けた後で、歴史を書くことは野蛮なのか|與那覇潤の論説Bistro
今月発売の『文藝春秋』2月号にも、連載「「保守」と「リベラル」のための教科書」が掲載です。戦後80年の最初の月に寄せて、私が採り上げたのは石川淳の代表作「焼跡のイエス」(1946年)。 敗戦直後を代表するこの短編のあらましは、ずばり、まずは以下のリンクから読めるところまで読んでいただくとして、文字数の関係でどうしても...

1946.11 日本国憲法公布

加藤典洋による、もうひとつの「普通の国」論(6/4 Air Revolutionに出ます) |與那覇潤の論説Bistro
2019年だと思うが、『永続敗戦論』の白井聡さんと話していて、「加藤典洋は『敗戦後論』を、北岡伸一に読ませたくて書いたのでは」なる噂を聞いたことがある。もちろんあくまで憶測で、白井氏にも確かな証拠があるわけではなさそうだった。 とはいえ、まったく無根拠というわけじゃない。『群像』の1995年1月号が初出の「敗戦後論」...

1948.6 椎名麟三『永遠なる序章』

ウクライナ戦争は「もうひとつの戦後日本」だったのか|與那覇潤の論説Bistro
憲法記念日にはあらゆるメディアが、1日限定の「護憲・改憲」操業に入るわけだが、読むべき中身はほぼない。その理由もはっきりしている。 「平和憲法を守れ」という知識人は、平和憲法を守ろうと思っている読者が必ず読む『世界』という雑誌にみんな書いている。憲法を改正すべきだとする読売の雑誌とは棲み分けて。憲法を守りたいと思っ...

1952.4 「片面講和」で日本独立

ウクライナ戦争は「もうひとつの戦後日本」だったのか|與那覇潤の論説Bistro
憲法記念日にはあらゆるメディアが、1日限定の「護憲・改憲」操業に入るわけだが、読むべき中身はほぼない。その理由もはっきりしている。 「平和憲法を守れ」という知識人は、平和憲法を守ろうと思っている読者が必ず読む『世界』という雑誌にみんな書いている。憲法を改正すべきだとする読売の雑誌とは棲み分けて。憲法を守りたいと思っ...

1956.10-11 ハンガリー動乱

反共主義から「ネットの中傷」を考える: ファンだからこそアンチになるとき|與那覇潤の論説Bistro
2021年春のオープンレター騒動の頃からSNSを騒がせてきた、「誹謗中傷の季節」が終わりを迎えつつある。とはいえ、ネットの誹謗中傷がなくなったり、減ったりしたわけではない。 まともな批判に「中傷だ!」と言い張って責任逃れをする人や、自分の加害行為には頬かむりして、被害を受けた時だけ「中傷された!」と喧伝する人が増えす...

1960.5-6 60年安保闘争

「歴史を誤用」する歴史学者を信じるのはもうやめよう。|與那覇潤の論説Bistro
いよいよ8月で、昭和史と「歴史の教訓」の季節性インフレがピークとなる。そんな時こそ、メディア上のニセモノを警戒しなくてはならない。 アゴラで野口和彦氏(国際政治学)が、興味深い記事を書いていた。「歴史に学んで」なにかを決断するとき、人は過去の史実Aが現状Bと「似ているから」といったアナロジーを用いるが、そのAとBと...

1966.5 中・文化大革命始まる

「紅衛兵」の時代がふたたび来るのか?(ニッポン放送・私の正論に出ます)|與那覇潤の論説Bistro
ニッポン放送の名物コーナー「私の正論」の収録に行ってきました。前々回の記事で村松剛に触れたタイミングで、彼の旧著と同じタイトルの番組からお声がかかるとは、奇縁を感じます。 1976年刊。 個人的には史論や文芸評論に比べて、 村松の正論(政論)はイマイチですが… 昨年末刊の『正論』2月号に寄せた「斎藤知事再選と「推し選挙...

1968.1 東大紛争始まる

父にならず「持ちこたえる」ことが成熟である。:『江藤と加藤』イベント告知!|與那覇潤の論説Bistro
「アゴラ」の池田信夫さんが声をかけてくれて、『江藤淳と加藤典洋』をめぐり行った対談が、早速公開されている。その末尾で『成熟と喪失』を主著とする江藤よりも、ほんとうは加藤の方が「成熟」していたんじゃないか、という話をした(31:00頃から)。 與那覇 なにが成熟なのかって江藤淳が〔『成熟と喪失』を書いた〕67年の...
反知性主義の勝利: 50年後に日本を呑み込んだ「見えない全共闘」|與那覇潤の論説Bistro
むむむ、と唸るnoteを読んでしまった。出てくる学者の固有名詞には知ってる人もいるので、そうした個別の評価は留保するとして、なかなかグサッと来ることを言ってると思うのだ。 著者のヤマダヒフミ氏は、なんか最近、人文書に見える "学者と社会の関係" がおかしくなってないか? と問う。特に疑問なのは、こんなノリの本が増えた...

1970.1 江藤淳「「ごっこ」の世界が終ったとき」

エマニュエル・トッドと江藤淳|與那覇潤の論説Bistro
共同通信に依頼されて、昨年11月刊のエマニュエル・トッド『西洋の敗北』を書評しました。1月8日に配信されたので、そろそろ提携する各紙に載り始めるのではと思います。 米国と欧州は自滅した。 日本が強いられる...『西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか』エマニュエル・トッド 大野舞 | 単行本 - 文藝春秋 ...
ウクライナ浪漫派の耐えられない猥褻さ|與那覇潤の論説Bistro
今年に入って2回、お会いした相手から「江藤淳のこの文章、いまこそ大事ですよね」と切り出されて、驚いたことがある。ひとりは『朝日新聞』で対談した成田龍一先生で、もうひとりはいまアメリカで取材されている同紙の青山直篤記者だ。 文章とは、江藤の時評で最も有名な「「ごっこ」の世界が終ったとき」。初出は『諸君!』の1970年...

1970.11 三島由紀夫自決

なぜいまポリコレは挫折し、かつもっと「挫折させるべき」であるのか|與那覇潤の論説Bistro
今週末に発売の『表現者クライテリオン』3月号に、フェミニストの柴田英里さんとの対談「「議論しないフェミニズム」はどこへ向かうのか?」の後編が載っています! 前編の紹介はこちらから。 今回も盛り沢山ですが、特に注目なのは、柴田さんに美術家としての哲学を伺うなかで―― 柴田 アイデンティティを構築する上では排除の段...
書評: ついに描かれた戦争の "前後史" の決定版―前田啓介『戦中派』|與那覇潤の論説Bistro
先日、編集者さんとの打ちあわせで言われたのだが、ぼくは業界でも「筆が速い人」の方に入るらしい。本人の自画像とはだいぶ違うが、でも想定外の事件の翌朝に記事を出したりはするから、たぶんそうなんだと思う。 ちなみに別の編集者さんからは、「なかなか落ちない人」として有名ですと聞いたこともある。新刊の執筆を簡単にOKしない人...

1971 米・ロールズ『正義論』

「国家の人格分裂」を治癒するために、政治にこそ文学が必要である。|與那覇潤の論説Bistro
発売から約1か月で、『江藤淳と加藤典洋』の増刷が決まった。江藤や加藤の名前を知らない人も増えたいま、まさにみなさんに支えていただいての快挙で、改めてありがとうございます。 このnoteで初めて告知を出したときから、ぼくは一貫して、社会の分断を乗り越えるための本だと書いてきた。江藤と加藤のどちらも、80年前の敗戦の受...

1972.2 あさま山荘事件(連合赤軍事件)

なんどもやってくる鮫島伝次郎のために|與那覇潤の論説Bistro
このnoteで以前告知した、三鷹の書店UNITEでのイベントを、来聴した毎日新聞の清水有香記者がネットの記事にしてくださった(冒頭のみ無料)。短縮版が、8/25の夕刊紙面にも載るらしい。 24色のペン:参政党躍進の裏にある「歴史の消滅」 與那覇潤さんの憂い=清水有香 | 毎日新聞  歴史が消えた。  あの戦...

1972.5 沖縄返還

なぜ日本のメディアは、ウクライナにもガザにも「飽きる」のか|與那覇潤の論説Bistro
5月に戦後日本についての歴史書を出すが、その次は「令和日本」の最大の課題である、堕落した専門家が振り回す社会の分析を書籍にする予定だ。温厚なぼくとしては「他人の悪口」で本を売りたくないが、穏当にことを済ませる試みを妨害し、嘲笑ってくる人がいるのではやむを得ない。 なにせ、休戦すらなく今日も続くウクライナ戦争でも、もう...

1972.6 田中角栄『日本列島改造論』

田中角栄は「トランプ革命」の先駆者だったのか|與那覇潤の論説Bistro
一見むちゃくちゃなトランプの高関税政策を支える思想として、「改革保守」という語を耳にすることが増えている。Reformoconの訳語なのだが、4月にご一緒したTV番組でも先崎彰容さんが、時間をとって詳説していたのが印象的だった。 ただ日本語の「改革」には平成期に(まさに保守派によって)多用された、グローバルな市場で...
「福田赳夫」が、令和の日本に必要だ|與那覇潤の論説Bistro
前回は、浜崎洋介さんとの対談動画(前編)にかけて、高市政権は経済でも外交でも、「安倍政権」をコピーすべきではない(=しようと思っても、その条件がなくできない)という話をした。 ……と書くと、安倍ファンだから高市さん大好き、な人はみんな怒って、後編(リンクは末尾に)のコメント欄は「與那覇は経済に無知!」の嵐なわけだが...

1973.12 江藤淳ほか「フォニイ論争」

資料室: フォニイ(贋物)な著作はいかにして書かれるか?―小谷野敦氏の場合|與那覇潤の論説Bistro
前回の記事でご報告したとおり、先週いよいよ『江藤淳と加藤典洋』が発売になった。ありがたいことに、版元違いのデイリー新潮も5/17に、タイアップでぼくの寄稿を載せてくれている。 トランプの爆走を生んだ「歴史の変化」が見えない人びと 「ニセモノ」の解説に騙されないために、いまこそ「江藤淳」を読み直そう(與那覇潤)(...

1975.11 昭和天皇、最後の靖国参拝

なぜ靖国問題はここまでこじれたのか|與那覇潤の論説Bistro
もうすぐ80年目の「8.15」だが、悼む日を静かに迎えるには、あまりに政治の情勢が不穏だ。歴史を語るコメントを石破茂氏が出すのかも、彼がいつまで首相なのかもわからない。 「やり遂げるべきだ」立民・野田代表が石破首相の戦後80年見解表明を後押し 衆院予算委 立憲民主党の野田佳彦代表は4日の衆院予算委員会で、石...

1976.9 河合隼雄『母性社会日本の病理』

令和という幼年期の終り:「母胎回帰」だったコロナ・ウクライナ劇場|與那覇潤の論説Bistro
浜崎洋介さんとの文藝春秋PLUSは、おかげで多くの方がご視聴くださったようだ。とはいえ、ウクライナを応援することを「ウクライナに耳あたりのよいことを言うこと」と取り違えてきた人には、なかなか受け入れがたい内容らしい。 こうした反応が典型で、そもそも ”you are not winning” と言い出したのは私ではな...
戦後の日本は、いかにして「母性社会」となったか:『江藤淳と加藤典洋』序文②|與那覇潤の論説Bistro
エコーチェンバーという用語がある。同じ意見の人だけで集まり、「だよね~、だよね~」「当然でしょ!」と思い込みを増幅させあう様子を、こだま(エコー)の響く部屋に喩えたものだ。 男も女も、どの国の人でもエコーチェンバーにはハマりうるのだが、不思議なことに、なぜか人はそれを性別や国の風土といった「自然っぽいもの」の表われだ...

1978.6 「大震法」制定

最初に "専門禍" を起こした地震学で、ようやく反省が始まっている|與那覇潤の論説Bistro
昨年8月8日の日向灘地震を覚えているだろうか。宮崎県で震度6弱を記録し、久々の緊急地震速報が響き渡った。長崎の原爆忌の前日のことだ。 それ以上に社会を緊張させたのは、2019年に運用を開始した「南海トラフ地震臨時情報」が初めて出されたことだ。お盆前のシーズンだったのに、旅行のキャンセルや海水浴場の閉鎖が相次いだ。"自...

1979.5 村上春樹デビュー

とりあえずビールをやめて、村上春樹は世界的な作家になった。|與那覇潤の論説Bistro
平成の後半、村上春樹さんが「ノーベル文学賞を獲るかも?」と報じられ出したとき、一定の年齢以上の人はびっくりしたと思う。1980年代から人気は絶大でも、イマドキのファッション(とSEX)の描写で売れてるだけのチャラい作家、みたいな偏見が、ずっと強かったからだ。 「両村上」と呼ばれ、始終ライバルのように比較されたのは村上...
『庄司薫と村上春樹』: なぜぼくは歴史学をやめて小説とか読んでるのか|與那覇潤の論説Bistro
5月以来、毎日のように『江藤淳と加藤典洋』の宣伝ばかり考えて送る夏なのだが、ネットで嬉しい感想を見つけてしまった。7/22の投稿で、書いてくれたのは画家ないし絵師の人らしい。 嬉しいと言っても、別に「うおおおおこれが戦後批評の正嫡! ひとり勝ち! 著者には批評の覇王をめざしてほしいッ!」みたく持ち上げてるわけじゃない...

1979.5 英・サッチャー政権発足

新自由主義という "幻" : サッチャー政権の本当の功罪|與那覇潤の論説Bistro
年内最後の『Wedge』連載「あの熱狂の果てに」で、いまなお続く "初の女性首相" をめぐる熱狂について考えている。日本と対比するのは、もちろんイギリスの有名なあの人だ。 高市早苗首相がかつて "目標" に掲げたこともあって、日本はおろか海外のメディアまでサッチャーと比較する昨今だが、そもそもみんな勘違いをし過ぎだ。...

1979.10-11 自民党で四十日抗争

公明党の連立離脱をどう見るか: プレイバックする1970年代|與那覇潤の論説Bistro
ご存じのとおり10/10、公明党の斉藤鉄夫代表は自民党の高市早苗・新総裁との会談後に「連立離脱」を発表した。 興味深いのは、外野の多くが高市氏と公明党とで溝になると見ていた、靖国神社参拝などのいわゆる "右傾化" ではなく、「政治とカネへの対策」が離脱の決定打になったことだ。 【速報】公明党が自民党との連立離...

1983.9 浅田彰『構造と力』

フジテレビ・中居くん問題を生んだ「終わらない80年代」|與那覇潤の論説Bistro
連日、メディアは中居正広氏のスキャンダルに端を発する「フジテレビ問題」で大荒れだ。1月27日の会見では社長・会長の辞任が発表された。 フジテレビ 港社長と嘉納会長が辞任 社長後任に清水賢治氏 | NHK 【NHK】中居正広さんと女性とのトラブルに社員が関与していたなどと週刊誌で報じられたことをめぐり、フジテ...

1985.10 米英・アパルトヘイト抗議曲 “Sun City”

戦後80年を「キャンセルをやめる年」に|與那覇潤の論説Bistro
あけましておめでとうございます。去年の師走に「2020年代の前半」が終わるという観点で、私たちの生きてきた時代を振り返るインタビューを出していただいたのですが、いよいよ2020年代も後半戦です。 世界は無根拠、だけど怖くない 與那覇潤氏インタビュー - 教育図書 アメリカでトランプ氏が再び大統領に選ばれ、日...

1989.11 独・ベルリンの壁崩壊

冷戦後の「自由のインフレ」が、デフレに転じつつある(BSフジに出ました)|與那覇潤の論説Bistro
昨秋に亡くなった際にも書いたけど、ポスト冷戦期に出た西尾幹二さんの『全体主義の呪い』(1993年)という本が好きである。西尾先生本人を好きかというと、色々あって微妙なんだけど、まぁそれはどうでもいい。 ベルリンの壁が崩れ、「自由」を手にしたばかりの東欧諸国の旅行記だが、当の西尾さんがニーチェの研究者として、そもそも自...

付論: 零れ落ちたもの

……いやー、自分で言うのもなんだけど、圧巻である。これを読んでる誰もが2025年を生きてきたわけだけど、ふつうここまで、逐一 “昭和のこと” とか思い出して暮らさんでしょ?(苦笑)

だいたいぼくだって生まれたのは1979年で、リアルタイムで覚えているのは最後のひとつ(冷戦終焉)だけなのだ。なんでこんなに “昭和” に囚われて生きてるのか、自分でもよくわからないが、まぁそんなことは別にいい。

二人の巨人と辿る戦後80年間の魂の遍歴 『江藤淳と加藤典洋 戦後史を歩きなおす』與那覇潤 | 単行本 - 文藝春秋
二人の巨人と辿る戦後80年間の魂の遍歴 小林秀雄賞受賞の著者が放つ渾身の文芸批評。『帝国の残影 兵士・小津安二郎の昭和史』『平成史』に続く近現代史三部作完結編。『江藤淳と加藤典洋 戦後史を歩きなおす』與那覇潤

これだけ詳細な(?)年表で、現在までつなごうとしても、どうしてもうまく嵌らない過去がある。「何々事件」のように輪郭を特定して、「何年の出来事」の形に加工するのが、難しい。

そうした過去はしばしば、同時代にはあまりにも自明視され、逆にいうと “あえて「事件」と呼ぶこと” 自体が抑圧されていたりして、表に出てくるまでに時間が経ってしまったりする。

たとえば、こうしたものだ。

学者が見捨てた「慰安婦」問題: 研究の "政治化" の果てに(『江藤と加藤』シラス配信!)|與那覇潤の論説Bistro
 今思うとお互いに強制連行された仲間だよ。ぼくら兵隊と彼女たちは。ぼくは日本軍はある意味で敵だと思っていた。いやおうなしに強制連行されて非人間的に扱われたんだからね。だから、寝る寝ないを別にして、もっとあの人たちと仲よくすればよかったなあと思う。 拙著『平成史』447頁より重引 (強調を付与) これが1997年、発足...

長く軍政が続いた韓国で民主化宣言が出たのは1987年6月で、久しぶりの大統領選挙は同年12月である。もう、ほとんど昭和は終わってしまっている。

民主化後にようやく口を開くことが可能になった、従軍慰安婦の問題が日韓を揺るがしだすのは、1991年12月の訴訟提起からで、もちろん元号は「平成」に替わっていた。

「慰安婦」訴訟の経緯 慰安婦問題とアジア女性基金
 1991年を皮切りに、アジア女性基金が償い事業を行った韓国、フィリピン、台湾の元慰安婦が原告となった訴訟が次々と始まりました。いずれも東京高裁、最高裁へと進みましたが、最終的に補償の請求は退けられました。

その平成には、「歴史家として取り組まないことはあり得ない」かのように喧伝されたこの問題だが、はっきり言っていまや、誰も取り組んでいない先のnoteで書いたとおり、過剰な “政治化” が学問の自由を掘り崩してしまったからだ。

日本側のキーパーソンだった上野千鶴子さんと、今年はお話しする機会を得たが、韓国で運動体が分裂して以降は、もうフェミニズムの内側にも関わろうとする研究者がいないくらいだと嘆いていた(文字数の関係で、活字には入っていない)。

同じ本を「違って読める」ときにだけ、その人は自由である|與那覇潤の論説Bistro
発売中の『文學界』7月号で、上野千鶴子さんと対談した。タイトルは、ずばり「江藤淳、加藤典洋、そしてフェミニズム」。ネットでも2つ、PR用の抜粋が出ている(もう1つのリンクは後で)。 「歴史なき時代における『成熟』とは何か?」 與那覇潤と上野千鶴子の白熱対論 | 文春オンライン 戦後を代表する文芸評論家、江藤...

さて問題は、あのころは散々、日本史の相対化とか、弱者のミクロな歴史とか、ナショナル・ヒストリーの枠組みを超えるとか言って、近日もフェミニズムとの “近さ” を誇示していた歴史学者のみなさんが、今年なんかしたかということだ。

ぶっちゃけ、なんもしてないんしょ? じゃあ、最初からエラソーにしなきゃいいのに(笑)。

オープンレター秘録③ 一覧・史料批判のできない歴史学者たち|與那覇潤の論説Bistro
学問的な歴史に興味を持ったことがあれば、「史料批判」という用語を一度は耳にしているだろう。しかしその意味を正しく知っている人は、実は(日本の)歴史学者も含めてほとんどいない。 史料批判とは、ざっくり言えば「書かれた文言を正確に把握する一方で、その内容を信じてよいのかを、『書かれていないこと』も含めて検証する」営みだ。...

というわけで、戦後批評の正嫡だけが、今年もちゃんと “フェミニスト批評” を企てて、汗をかいた令和の1年間だった。ぜひ、そこをしっかりと記憶して、来年こそおかしな批評論議人文論議終わりにしていきましょう。

ホンモノの "フェミニスト批評" だけが、ルッキズムを乗り越える|與那覇潤の論説Bistro
読まれた方は気づいたと思うが、5月に出した『江藤淳と加藤典洋』は「実を言うと、わたしなりのフェミニスト批評の企て」なのだった(317頁)。それについては、上野千鶴子さんとの対談でもダメを押している。 與那覇 批評家を自称する人も含めて、過去との接し方が悪い意味で「検索エンジン化」していると思うのです。江藤淳で言え...

(ヘッダーは1989年2月、昭和天皇の大喪の礼。朝日新聞より)


編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2025年12月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。

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Mon, 29 Dec 2025 21:50:49 +0000 Mon, 29 Dec 2025 21:50:49 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251226220847.html https://agora-web.jp/archives/251228230405.html
https://agora-web.jp/archives/251228102453.html 北朝鮮の核武装ゲームにおけるジョーカー登場 https://agora-web.jp/archives/251228102453.html 武力建設における切り札

私は2025年4月、本論において「北朝鮮の核武装は完成の域へ:プーチン・習近平・金正恩の脅威」という論を展開した。北朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は、12月25日に、最高指導者金正恩総書記が「核動力戦略誘導弾潜水艦」の建造事業を視察し、現地で指導したことを伝えた。世界に向けた〝ビッグなクリスマスプレゼント〟といったところか。

キム総書記が視察した原潜
©KCNA 朝鮮通信

写真は、その原子力潜水艦(核動力潜水艦)の現在の姿であるらしい。

総書記は「我々は、武力建設において、超強力な攻撃能力こそが国の安全を守る最大の盾だと見ている」と述べたという。

この原潜の排水量は8700トンで、米国原潜のヴァージニア級だという。

これはいわばジョーカーの登場であり、核武装ゲーム(戦略)の切り札になるものである。

ただ最近の情勢によれば、北朝鮮はロシアとの「血盟関係」の見返りが充分に得られてないようで、原潜開発も先行き不透明の感は拭えない。

核の原潜配備とVLSの意義

4月に論じたように、北朝鮮は核武装を完成するために必須である〝核配備〟の問題に、現実的かつもっとも効果的な手段を手中におさめようとしている。

北朝鮮は国土が広くなく山がちで砂漠などはないので、地上配備(サイロや搭載列車の循環)の適地に乏しい。

そういった国情を鑑みるに、潜水艦+SLBM(VLS:ヴァーティカル・ローンチ・システム)は核武装の完成形として申し分のないものになろう。

VLSはミサイルの垂直発射システムで、垂直方向真上に発射できるので360°全方位に向けて攻撃および迎撃ができるというすぐれものである。また発射機が露天甲板上に露出していないので、保守管理がしやすく同時に耐候性も高い。

装備されたVLSのミサイルセルーMk41型
©Wikipedia

Mk41からのホットローンチの概念図
©Wikipedia

ホットローンチとはミサイル自身のエンジンを燃焼させて発射するシステムのこと

原潜の最大のメリットは、ディーゼル・エンジン式とは違って、きわめて長期間連続潜航を続けることができる。その間、海中に潜んでいるので外敵から捕捉される可能性を著しく低く抑えることができる。

動力である原子炉は、原理的には燃料交換せずに何年でも運転可能である。原子炉の寿命は約30年ともいわれる。ただ、実際には食料の補給や乗組員のQOL(保養)などの制約条件があるので、3ヶ月程度の連続潜航が限界とされている。

1960年に、米国の原子力潜水艦USSトライトンが、潜航したまま世界を一周した(オペレーション『サンドブラスト』)。その時の記録が84日と19時間であった。

連続哨戒(連続した監視・警備活動)の記録は、USSペンシルベニアが2014年1月から6月にかけて記録した140日が最長とされている。

USSペンシルベニア
©Wikipedia

韓国の動向

・原潜

2025年10月30日、韓国を訪問中だった米国トランプ大統領は、自らのSNSに「韓国が原子力潜水艦を建造することを承認した」と投稿した。ただし、これには2つの付帯事項がある。

一つ目は、この建造される原潜には核兵器は搭載せず通常兵器を搭載するということ。もう一つは、原潜の建造は韓国ではなく、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアで建造される見通しであること。

・核武装

韓国の核武装は半世紀以上前からある(本論『ムクゲノ花ガ咲キマシタ:韓国の核武装』)。朴正熙大統領の頃の話である(『890計画』)。

当時の世界情勢からとても許されるものではなかったので極秘裏に計画はすすめられたが当然の如く挫折した。その背景は単純である。韓国はNPT(核不拡散)体制のもとにあり、同盟国である米国の容認がなければととてもじゃないが計画を進めることなどできなかった。

核開発技術のキモである核物質、つまり高濃縮ウランないしはプルトニウム、の製造自体が事実上できなかった───米国が決して認めなかったのである。この辺の苦労は、北朝鮮やイランの歴史と事例をみれば明らかであろう。

・潮目が変わった──核の足枷

現行の米韓原子力協定では、韓国がウラン濃縮や使用済燃料の再処理(プルトニウムの抽出が可能)には米国の事前同意が必要とされている。この足枷ともいえる縛りは、1974年にインドがNPT体制を嘲笑うかのように核実験に成功して以来、より一層強化されてきた。

ところが潮目が変わった。

2025年11月14日、米国政府は韓国によるウラン濃縮および核燃料再処理の権限拡大を「包括的に支持する」ことを安全保障・通商交渉に関するファクトシートに明記したというのである。

このことをして、韓国は核燃料自立への一歩を踏み出したといえるかもしれない。

しかしながら、原潜や核燃料自立は、米国の北朝鮮が最早頑として核放棄などありえないことを実績として着実に積み上げてきた北朝鮮に対するカードに過ぎないと見るべき筋合いのことかもしれない。

どうする日本!?

日本ではいま官邸関係者から〝核保有すべき〟との発言がでてきて一部でハチの巣をたたいたように成っている。

独自核武装がありえないことはすでに幾度となく説いてきた。

日本はNPT体制のもとにある。仮に違反、果ては脱退などしようものなら、日本のウラン輸入の道はたちまちに途絶する。そうすれば、日本の原子力発電は立ち行かなくなる。原子力発電なくしては、DXもGXもない。

わが国は韓国がもしかしたら手に入れるかもしれない核燃料再処理の権利を、米国の許容のもとにとうの昔に手に入れている。1970年代からだから、50年以上が過ぎている。それなのに、いまだに六ヶ所村の国産再処理施設は竣工していない(2026年度中の竣工とは言われてはいるが・・・)。

半世紀を経て平和利用の核自立さえできていないわが日本。そんな核主権の権利はあってもその権利を持て余している国の核保有とは、一体なんだというんだろうか。

不可思議極まりない。

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Mon, 29 Dec 2025 21:40:53 +0000 Mon, 29 Dec 2025 21:40:53 +0000 https://agora-web.jp/archives/251228113349.html https://agora-web.jp/archives/251226211930.html https://agora-web.jp/archives/251227104653.html https://agora-web.jp/archives/251226212317.html https://agora-web.jp/archives/251226200357.html
https://agora-web.jp/archives/251229064548.html 本を出したい? その瞬間、もう始まっている https://agora-web.jp/archives/251229064548.html

alashi/iStock

結論から言う。本を出すのに資格なんていらない。

いや、正確に言えば「出したい」と思った時点で、あなたはもう著者の入り口に立っている。大げさじゃなく、本当にそうだ。

AIで加速する!出版の教科書」(加納敏彦著)きずな出版

昔の出版は違った。出版社に企画を持ち込んでも門前払い。編集者とつながるには人脈。文章力に自信がなければ、そもそも挑戦すらできない。私も20代の頃、企画書を何度も突き返された。「うちでは難しいですね」。あの一言の冷たさ、今でも覚えている。

でも、今は違う。

Kindle出版がある。電子書籍がある。印刷費ゼロ、在庫リスクゼロ。売れなくても損しない。必要なのは原稿と、想いだけ。

「いやいや、そうは言っても」と思うだろう。わかる。「自分なんかが本を出していいのか」「ネタがない」「文章が苦手」「忙しくて時間がない」。ブレーキ、かかるよね。私だって最初はそうだった。

ただ、そのブレーキを外してくれる存在が出てきた。AIだ。

2023年に広まったChatGPT。あれから何が変わったか。文章を「自分で考えて、自分で書く」時代が終わった。「問いを投げて、一緒につくる」時代になった。

たとえば「どんなテーマで本を書けばいいか」。昔なら何週間も悩んだ。競合書籍を調べて、自分の強みを分析して、ターゲット読者を想定して……。気が遠くなる作業だった。

今は違う。ChatGPTに「自分はどんなテーマの本を書けそうか」と聞くだけでいい。5秒でアイデアが出てくる。類書分析もやってくれる。目次案も、タイトル案も、PR文も。

便利すぎて怖いくらいだ。というか、正直に言うと最初は抵抗があった。「これって楽しすぎないか?」と。苦労して書くことに価値があると思っていた自分がいた。

でも、違った。

AIは道具だ。使いこなせば、自分の可能性が広がる。使わなければ、それだけの話。「こんなことを書いていいのかな」と迷うようなストーリーこそ、読者の心に刺さることがある。私はそれを何度も見てきた。

あとは「やってみよう」と決めるだけ。その一歩が、すべてを変える。

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)

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Mon, 29 Dec 2025 21:35:47 +0000 Mon, 29 Dec 2025 21:35:47 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229065604.html https://agora-web.jp/archives/251228232445.html https://agora-web.jp/archives/251228095024.html https://agora-web.jp/archives/251226205448.html https://agora-web.jp/archives/251226205010.html
https://agora-web.jp/archives/251226220847.html 浜通りのピルグリム・ファーザーズ:被災地で感じた日本の可能性とリーダーシップ https://agora-web.jp/archives/251226220847.html 2025年も終わりを迎えようとしている。読者諸賢は、どのような年末を過ごされているだろうか。
私自身は「先生は、文字通りの“師走”を過ごしてますね。」と、ある青山社中リーダー塾生に言われたが、確かにそうだな、と思う。今、このエッセイを今月5か所目の宿泊先である北海道で書いている。

11月29日-30日の沼田市(群馬)訪問から、宿泊を伴わないところも含めると、新横浜、鎌倉、草津、神戸、香取、静岡、現在いるむかわ町(北海道)と、あちこち渡り歩かせて頂き、それぞれの訪問先で感慨深い経験をさせて頂いたが、特に強烈な印象として残っているのが、福島県の沿岸部(浜通り)訪問である(ご存知の方も多いと思うが、福島は縦に3分して右から浜通り、中通り、会津と分けて表現する)。

主宰する青山社中リーダー塾11期生が5年目を迎えて卒塾を控える中、有志が「合宿」を企画して浜通りを訪問することになり、塾頭の私にも声かかかって一緒に現地入りすることになったわけだが、一言で言えば、そこに「新天地」が広がっているということがよく分かった。

imagedepotpro/iStock

【承】

浜通りでは、特に、福島第一原発のサイトがあった双葉町、大熊町、それに隣接する浪江町を訪問した。現地の方の話では、登録上の住人ではなく実際に居住されている人(実際に帰還されたり、移住したりしている人)の数でいうと、双葉町は200人ほど、大熊町は1000人ほど、浪江町は2400人ほどではないか、という話であった。

数字だけで見ると、その3つの町で最も多い浪江町でもあっても人口は限られている。過疎の町と言って良い。ただ、その住人の「質」たるや凄いものがある。一人一票の民主主義にあって、人間の「質」の違いを論じることは適切ではないかもしれない。はっきり言ってタブーであろう。

しかし、2泊3日という短い滞在ではあったが、都合、20-30くらいのサイトを訪れ、各所で様々な方とお話させて頂くと、文字通り、すごい人たちが集結していることを実感せざるを得ず、人間の「質」の違いというものを、自らへの反省も込めて痛感せざるを得ない。

少し考えてみれば当たり前のことなのではあるが、行ってみないと気付けなかったことというものは往々にしてある。

東京での常識的生活から見ると、「被災地で、人も少ないところで、さぞかし大変だろうに」と、無意識に、つい上目線の憐みの目で見てしまう場所に、敢えて帰還したり移住したりして居を構え、頑張っている人の集まりというのは、人間としての質が高い人、すなわち、普通の人がやろうとしない困難を引き受けて、新たに道を切り拓こうとする人たちの集まりであるに決まっているわけだ。私の言葉で言えば、まさにリーダー(始動者)の集うところ、ということになる。

そして、更に大事なことは、本人たちの認識の問題だ。彼ら/彼女らは、外形的には、困難な状況を自らの意志と努力で切り拓くリーダーということになるが、本人たちの意識としては、実は始動者云々という能書きを超越している。

要は、彼ら/彼女らとしては、単に非常に居心地のいい場所・コミュニティに身を置いて、生活や人生を楽しんでいるに過ぎないという事実である。あたかも、趣味を同じくする大学のサークルの仲間や、同じ夢を目指して頑張る高校の部活の仲間と暮らしているかのように、気の合う仲間たちとだけ過ごせる心地よき新天地にいる、ということに過ぎない。自然である。

大熊でキウイ・フルーツ作りを始めている26歳の原口さんは、和歌山県出身(大学も和歌山)であったが、なぜこの地にて頑張っているのかを聞いた際に、「気候その他の条件もあるが、ここにはしがらみがないから」と即答していた。

和歌山で同じことをやろうとすると、やれ農協との付き合いが、とか、先輩農家たちへのご挨拶が、などの調整・しがらみが生じていたと思うが、ここには、事実上、そうしたものが無いに等しいので(上の邪魔する世代がいないので)、気持ちよく仕事が出来るとのことであった。3人の仲間で手分けして営業や営農に取り組んでいて、東京にもしょっちゅう来ているようで、見るからに活き活きしていた。

三重出身のシェフで、東京でビストロを経営して成功させていた無藤さんは、敢えて浪江に移住して絶品の店を開業しているが、この地での暮らしを楽しみつつ新たな料理の開発に余念がない。私が夕食を楽しませて頂いた日は、極東の地を選んできている天才エンジニアと文学者のインド人夫妻(当地で出会って結婚となった模様)や、夫妻をサポートしている地元の老人たちや、国家プロジェクトのために赴任している内閣府職員とその友人らが来ていて満席だったが、よそ者の私も一気に溶け込ませて頂いた。料理をサーブした会話に加わったりしている無藤さんご夫妻も楽しげだ。

そして、大熊では、約10年ぶりに東日本大震災後のボランティア仲間(私と同じく埼玉西部の中高の出身)の南郷さんとも再会した(文字通り抱き合って再会を祝した)。彼は、少し南の広野町で「ふたば未来学園(中学・高校)」という被災地でリーダーを作る学校の立ち上げ・運営を軌道に乗せたあと、より困難な大熊町で全国初の公立の一貫校(子ども園・小学校・中学校)を立ち上げ、校長として活躍していた。生を実感しているかのような語り口が印象的だった。

大熊町の上記の1000人のうち、200人はこの学校に子どもを入れたくて移住してきている親や生徒などの関係者ではないか、という話も現地で仄聞した。例えば都会で不登校だった子が見事に蘇っているとのことだった。噂を聞きつけて、年々志望者が増加しているという。そして、南郷さんと共に校内を案内してくれた若き教師は、聞けば、ふたば未来学園の卒業生であった。

我々のことを色々と案内してくれた高橋さんは、同郷(やはり埼玉西部)出身で、元々霞が関の仲間だが(外務省→マッキンゼー→東の食の会)、家族を東京に残して月に一度ほどは、東京に戻りつつ、普段は単身赴任という感じで浪江で過ごしている。その地に身をおいて、現地の復興に汗をかいている。

彼と一緒にいると町で会う人・会う人が仲間という感じで、ちょっと移動してもすれ違う人との挨拶で忙しいくらいで、古の日本の町にタイムスリップしたかのような感じがある。町中にアートを入れて雰囲気を一変させたりしているが、非常に楽し気だ。「皆さん、被災地といって憐れむが、実はここには希望しかない。こんなに居心地の良い所はない。」と彼は言う。

高橋さんが連れて行ってくれた、かつて栄光を誇った大堀相馬焼(陶磁器)の集落には、帰還者が一人しかいないが、その一人である近藤さんは、圧倒される作品群を現地で作っており、芸術の心が足りない私でも感じざるをえない表現を焼き物等にこめられている。新たな女性の弟子も二人移住してきていたが、リーダー(始動者)としか言いようがない活躍ぶりであった。

【転】

今回の合宿を中心的に企画してくれた青山社中リーダー塾11期生の河田さん(環境省)は、普段はいわき市の環境省の出先機関に駐在しているが、仕事の中心は、汚染土の中間貯蔵の管理や今後の政策策定である。現地の息吹に触れ、これは合宿にしてリーダー塾生にも味わってもらわねば、と考えてくれたようだ。

サイト内を詳細に案内してくれた彼女は、10年の歳月をかけて中間貯蔵地に運び入れた汚染土を、2045年までに福島県との約束に基づいて県外で処分せねばならないという悩ましい課題と向き合いつつ、日々忙しいようだが、どこか楽し気でもあった。

滞在中、嬉しいサプライズで、経産省時代に大変お世話になった先輩の新居さんが、宿泊先のホテルをふらっと訪問してくれた。新居さんは、経産省のエースとしてずっと日の当たるポストを歩み続け、当時としては異例の40歳そこそこで本省の課長職に就くという大抜擢もされた方だが、震災後は志願して福島対応に回り、今は、復興庁の統括官として活躍されている。現地現場主義がモットーで、その日も現地を駆けまわっておられた。

また、同地でたまたま開かれていた会議に、経産省後輩で福島復興の担当をしている内山君が出席していて、トイレで偶然出くわした。かれも土日返上で現地入りしていたが、業務でしかたなく、というよりは、始動者の集まりである現地に喜んで来ているという感じであった。浜通りの息吹は、ともすると守りの業務に終始しがちな公務員たちにも、着実に良い影響を与えている。

浪江の駅近くには、FREIという国家を挙げての研究施設が出来る予定であり、外国人の研修者など300人以上が集結すると言われている。駅周辺も工事がはじまっていたが、隈研吾さんのデザインで、一帯は様変わりするようだ。先述の無藤さんのビストロのところで触れたとおり、内閣府の職員などもその事業のために既に駐在している。

浪江には、巨大な水素の実証プラントなどもあり、万博の大屋根リングの一部を担った巨大な製材所もあり、日揮の陸上養殖のプラントまである。南相馬のロボットテストフィールドなども有名であるが、福島の被災地を置き去りにしない、とばかりに、国家主導、大企業主導で様々なプロジェクトが浜通りで動き始めている。このトップダウン型の未来も一つの大きな希望である。

同時に、上でごく一部だけ触れさせて頂いた各人のリーダーシップ、双葉の浅野撚糸さんのような各企業のリーダーシップ(岐阜の企業だが、義侠心からか、今治タオルの原材料などになる「ふわふわの糸・生地」を、敢えて被災地で生産すべく、素晴らしい工場・ショップを双葉に建設・運営)、地酒の日本酒の鈴木酒造さん・haccobaさん(クラフト・サケ)といった地場からのリーダーシップ、即ち、ボトムアップからの未来づくりが主役であることは忘れてはならない事実だ。

ボトムアップとトップダウンのうまい配合・連携こそが未来を切り拓く気がしてならない。

【結】

どなたの発言だったか忘れてしまったが、記憶に残る一言は、「我々は、今のアメリカの始祖とも言える“ピルグリム・ファーザーズ”みたいなものだと思います。」というものであった。

「歴史の授業では、宗教的迫害を逃れてきた人たちみたいな言われ方ですが、最近の研究では、実はその多くは、ピューリタンではなく、国教会徒だったとも言われています。つまり、必ずしも迫害を逃れるために来たわけではなく、希望に導かれてきたわけです。しがらみのない新天地に来ること、そして実は、新天地そのものより、その新天地に惹かれて来ると言う同族の仲間たちに囲まれて、楽しく頑張りたいと思います」という一言こそ、私の胸や脳裏に電流を走らせてくれたものであった。

まもなく2026年がやってくる。果たしてどんな年になるだろうか、いや、どんな年にするべきだろうか。

高市政権には頑張ってもらいたいし、実際、経産省政権とも言われる中、かつての仲間たちがトップダウンで日本の国益最大化のために様々に尽力をしている。

16日には、かつての上司で高市政権の参与をしている今井尚哉氏と、それこそ5時間近く痛飲させて頂いたが、外交や経済活性のための打ち手のお話も伺ったが、さすがのご慧眼で感服もした。トップダウンの動きは重要である。

ただ同時に、我々日本人一人一人が、各場所で始動し、リーダーシップを発揮しないと未来はやってこない。浜通りのピルグリム・ファーザーズたちに学びつつ、私も来年も各地を駆け抜け、人材を育成し、日本の未来に貢献したいと改めて感じた次第である。トップダウンとの融合も、私ならではの立場で意識しながら。

正月に飲む予定の福島の地酒がうまそうだ。

素敵な出会いに感謝しつつ、読者の皆様の明るい2026年を祈りたい。

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Mon, 29 Dec 2025 21:30:46 +0000 Mon, 29 Dec 2025 21:30:46 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html https://agora-web.jp/archives/251229001518.html
https://agora-web.jp/archives/251229065604.html 町工場が潰れて何が悪いのか? 日本を衰退させた“自称経営者”という病 https://agora-web.jp/archives/251229065604.html

Cuckoo/iStock

働き方改革や最低賃金引き上げを巡り、「町工場が潰れる」「日本のものづくりが壊れる」というが後を絶たない。だが、率直に言えば、その多くは経営の失敗を制度のせいにしているに過ぎない。

そもそも、いわゆる「町工場の経営者」と呼ばれる人々の多くは、厳密な意味での経営者ではない。彼らの本業は技術者、あるいは職人であり、経営は兼業、もしくは肩書きにすぎない。技術力と経営能力を同一視する日本特有の甘さが、この問題の出発点である。

良いものを作れることと、利益を生み続ける事業構造を設計できることは、まったく別の能力だ。価格決定力を持たない下請体質、特定顧客への過度な依存、残業と休日出勤を前提にした生産計画 ― これらは外部環境ではなく、経営判断の結果である。それを「大手が悪い」「政策が悪い」と言い換えるのは、責任転嫁に過ぎない。

「我々は努力してきた」という言葉も頻繁に聞かれる。しかし市場は努力を評価しない。評価するのは付加価値であり、生産性であり、代替不能性である。何十年も同じ取引構造に安住し、価格交渉力も持たず、事業モデルの転換も行わなかった企業が、制度変更をきっかけに立ち行かなくなるのは、偶然ではない。必然である。

最低賃金引き上げや働き方改革は、企業を苦しめるための制度ではない。生産性の低い企業を炙り出すための「踏み絵」である。時間を切り売りしなければ成り立たない事業、長時間労働を前提とした利益構造は、もはや先進国の経済では持続不可能だ。それに耐えられない企業が退出することを「悲劇」と呼ぶのは、経済の新陳代謝を否定する態度である。

しばしば「町工場が潰れれば日本の技術が失われる」と語られる。しかし、失われるのは技術ではなく、経営能力を欠いた器である。技術や人材は、より生産性の高い企業や新たな事業体へ移るべきだ。非効率な器を温存することが、技術継承だという発想自体が誤っている。

日本経済の停滞は、企業が潰れなかったことの帰結である。退出すべき企業が退出せず、賃金も生産性も上がらない状態を長年放置してきた。そのツケが、今になって表面化しているに過ぎない。にもかかわらず、今なお「守れ」「配慮しろ」という声が支配的であること自体が、日本の構造問題を象徴している。

経営とは情緒ではない。結果責任である。経営の質を高める努力を怠ってきた企業が市場から退出することは、冷酷でも非情でもない。むしろ、日本が正常な経済に戻るために必要な過程である。

「町工場を守れ」という幻想を捨てられるかどうか。そこに、日本が次の段階へ進めるかどうかがかかっている。

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Mon, 29 Dec 2025 21:25:03 +0000 Mon, 29 Dec 2025 21:25:03 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229064548.html https://agora-web.jp/archives/251228232445.html https://agora-web.jp/archives/251228095024.html https://agora-web.jp/archives/251226205448.html https://agora-web.jp/archives/251226205010.html
https://agora-web.jp/archives/251229051353.html 佐倉市観光事業になぜマーケティングは組み込まれなかったのか③ https://agora-web.jp/archives/251229051353.html

工事が開始された2025年12月23日現在のふるさと広場の様子

(前回:佐倉市観光事業になぜマーケティングは組み込まれなかったのか②

一般質問に現れた三つの問い

前稿では、ふるさと広場拡張整備事業の前提と計画内容、そしてそれが一般質問を通じてどのように議会と接点を持ってきたのかを整理した。本稿では、その一般質問の中身を、個々の発言の羅列ではなく、「どのような種類の問いが、どの位置に置かれていたのか」という観点から捉え直してみたい。

ふるさと広場拡張整備事業をめぐる一般質問を通して浮かび上がるのは、大きく分けて三つの水準の問いである。

第一は、計画の策定過程や意思決定の透明性に関する問いである。誰が、どのようなプロセスで計画を決め、どこまで情報が公開され、誰がチェックしているのか。事業の中身以前に、その前提となる手続きの妥当性や説明責任が問われた。

第二は、事業の効果に関する問いである。拡張整備によってどのような成果を想定しているのか。それはどのような指標や数字で示されるのか。そして、その成果は市民にどのような形で還元されるのか。公共投資としての妥当性を、結果の側から確認しようとする問いである。

第三は、事業が現実に成立するための条件に関する問いである。誰を主要な来訪者として想定しているのか、どのように現地へ来てもらうのか、交通や生活環境への影響をどのように考えているのかといった、運用と実装の水準に関わる問いである。

三つの問いが示す水準の違い

これら三つの問いは、互いに対立するものではない。むしろ、同じ事業を異なる水準から確認しようとするものであり、本来であれば計画の初期段階から相互に接続されているべき論点である。

しかし、一般質問のやり取りを通じて見えてくるのは、これらの問いが必ずしも同じ重さで扱われてきたわけではないという事実である。プロセスに関する問いは計画の前提条件として重く扱われ、効果に関する問いは方向性レベルで整理される一方、成立条件に関する問いは、後段の調整事項として扱われがちであった。

この重さの違いは、どれかの問いが誤っているということではなく、計画の設計過程において、どの水準の論点が優先されてきたのかを示している。

問いの配置が映し出す設計の輪郭

重要なのは、これらの問いが一般質問という場で初めて現れたのではなく、計画段階での検討の配置が、結果として議会での問いの配置として可視化されているという点である。

一般質問は、行政内部で暗黙のうちに前提とされてきた設計の輪郭を、後から浮かび上がらせる役割を持つ。どの問いが前面に出て、どの問いが後景に退いているかをたどることで、計画のどこに重心が置かれていたのかが見えてくる。

次に問われるべき視点

ここまで整理してきた三つの問いは、ふるさと広場拡張整備事業の是非を単純に問うものではなく、事業を成立させるために不可欠な前提を、それぞれの水準から確認する試みであった。

次回は、これらの問いに対して、佐倉市の事前計画の段階で、実際にどの水準まで検討されていたのかを、計画文書や答弁の記述を手がかりに具体的に確認していく。そのうえで、なぜマーケティングや生活環境といった成立条件が、計画の中核に置かれにくいのかという点について、構造的に考えてみたい。

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Mon, 29 Dec 2025 21:20:53 +0000 Mon, 29 Dec 2025 21:20:53 +0000 https://agora-web.jp/archives/251226004011.html https://agora-web.jp/archives/251224092621.html https://agora-web.jp/archives/251222060838.html https://agora-web.jp/archives/251222001250.html https://agora-web.jp/archives/251221120838.html
https://agora-web.jp/archives/251229001518.html 議員定数削減法案は結局どうなった?自維から選挙制度改革案が出ていない? https://agora-web.jp/archives/251229001518.html 国民民主党の玉木雄一郎代表が、自民党と日本維新の会が提出した議員定数削減法案の内容を解説するとともに、抜本的な選挙制度改革案の提示や企業団体献金の規制強化において与党側の本気度が疑われる現状を指摘し、真摯な修正協議を求めます。

国民民主党・玉木雄一郎代表のYouTubeチャンネル「たまきチャンネル」。チャンネル登録をお願いします。

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Mon, 29 Dec 2025 21:10:18 +0000 Mon, 29 Dec 2025 21:10:18 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251226220847.html https://agora-web.jp/archives/251228230545.html
https://agora-web.jp/archives/251228230405.html 「タワマン成金」を羨ましがる必要はない https://agora-web.jp/archives/251228230405.html 日本経済新聞電子版によれば、今年住宅情報サイトに掲載された東京23区の築20年以上25年未満の物件の70平方メートル換算価格が1億円を超えたそうです(図表も同紙から)。

数年前にタワマンを購入した人たちは購入物件が値上がりして「タワマン成金」と揶揄されています。買い損ねた人たちからすれば、怨嗟の対象なのかもしれませんが、落ち着いて考えてみましょう。

まず、タワマン成金の人たちは確かに物件価格上昇の恩恵は受けていますが、マイホームとして購入している人は値上がりしたからといって売ることはできません。資産価値が上がったとしてもあくまで含み益に過ぎません。

株や投資信託も売却しないと利益が確定しないのと同じで持っているだけでは価格が上がっても下がっても関係ないのです。

また売却して利益が手元に残ったとして、その資金で新たに別の物件を手に入れようと考えても、新たに購入しようとする不動産の価格も上がっています。

高額のタワマンほど値上がり率が高くなる傾向がありますから、より広い物件を買おうとすればかなりの資金を追加しないと難しそうです。

売却しなくても、含み益を使ってマイホーム担保に借入することは出来るかもしれません。しかし、既に住宅ローンでかなりの負債を抱えていますから、追加借入でリスクを取るのはかなり慎重にした方が良さそうです。

このように考えていくと、マイホームとして購入したタワマンが値上がりしたといっても、日々のキャッシュフローには関係なく直接の経済的なメリットを感じることは無いと思います。

むしろ不動産価値が上昇することによって固定資産税が引き上げられるリスクが出てきます。

もしそうなればキャッシュフローからはマイナスの影響が大きくなってしまいます。つまり日々のお金の流れを考えれば値上がりしない方が良いのです。

これからマイホームを購入しようとしている人から見れば、数年前に購入した人たちは割安に購入した勝ち組に見えるかもしれません。

しかし、上記のように考えればそれほど羨むような成功でも無いことがわかります。

SNSでマウンティングしているタワマン成金を時々見かけますが、購入した人の多くはカツカツの住宅ローンの返済に追われて余裕が無いのが現実です。

「隣の芝生は青い」という諺があります。リアルな生活を知らないタワマン成金と自分を比較してストレスを感じることにはまったく意味がないことに早く気が付きましょう。

CHUNYIP WONG/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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Mon, 29 Dec 2025 21:00:05 +0000 Mon, 29 Dec 2025 21:00:05 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html https://agora-web.jp/archives/251228230545.html
https://agora-web.jp/archives/251229071226.html インフレ税って何? https://agora-web.jp/archives/251229071226.html このごろちょっとインフレ税が話題になっているので、チャットGPTに聞いてみた。

Q. インフレ税って何ですか?

  • 物価上昇(インフレ)でお金の実質価値が目減りし、全国民から負担を徴収するのと同じ効果が生じる、という経済学的な考え方です。
  • 法律で課される税ではないが、お金を貸している人が損して借りている人が得をします。最大のお金を借りているのは政府なので、税金をかけるのと同じ効果があります。
  • 誰がどれだけ負担しているか分かりにくいので、隠れた税金とも言われます。

Q. どういうしくみですか?

  • お金の価値が下がる:物価が上がると、同じ100万円で買えるモノやサービスが減ります。名目は同じでも実質的には目減りします。
  • 固定金利の債権が目減りする:国債や預金など、金利がインフレ率より低い場合、実質利回りはマイナスになります。
  • 借金が軽くなる:国債残高は名目額のままなので、インフレが進むほど実質負担は小さくなります。

Q. 誰が損して誰が得するんですか?

損する人

  • 現金・預金を多く持つ人(預金の7割は高齢者がもつ)
  • 年金受給者など収入が物価に連動しにくい人(基礎年金は物価スライドがある)
  • 賃金が上がらない人(労働組合に入っていないパート・アルバイトなど)

得する人

  • 借金している人(返済の実質負担が軽くなる)
  • 政府(国債の実質債務が軽くなる)
  • 株式や金(ゴールド)をもっている人

要するにインフレ税は、お金を貸している人が損して借りている人が得するのです。最大の借り手は政府ですから、政府は増税しなくても税収が増えます。法律も国会の同意もありません。政府にとっては夢のような税ですね。

Q. 高市政権の政策はインフレ税ですか?

  • 高市首相はそう言ったことがありませんが、マスコミは「インフレ税だ」と批判しています。
  • 来年度予算で財政支出が増えるのにプライマリーバランス(基礎的財政収支)が黒字になるのは、インフレ税のおかげです。
  • 2024年までの4年間で、政府債務の名目GDP比は20%ポイントも減りました。これは経済成長のおかげではなく、インフレで分母の名目GDP(実質GDP×インフレ率)が増えたためです。

日本経済新聞より

Q. インフレ税で円はどうなりますか?

  • 為替レートは通貨価値の相対的な関係で決まるので、他の条件が同じならインフレになると円は下がります。
  • 今は日本のインフレ率や金利は先進国よりやや低いが、これからインフレがひどくなると円が下がる可能性があります。
  • 円の目減りをきらう人が外貨建ての資産に移し替えるキャピタルフライトが起こる可能性もあります。

Q. これでよかったといえるんでしょうか?

  • 今の3%近いインフレがいつまで続くかはわかりませんが、今後も10年続くなら、政府債務は3割以上減り、英米並みになるでしょう。
  • ただしインフレは預金課税なので、預金の7割をもつお年寄りの資産は大きく減ります。
  • キャピタルフライトが起こると、円が暴落して日本経済がめちゃくちゃになるリスクもあります。
  • 政府と日銀がインフレ税をコントロールする新しいアコードをつくってはどうでしょうか。
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Mon, 29 Dec 2025 08:43:53 +0000 Mon, 29 Dec 2025 08:43:53 +0000 https://agora-web.jp/archives/251204134718.html https://agora-web.jp/archives/251123062104.html https://agora-web.jp/archives/251114125621.html https://agora-web.jp/archives/251027055216.html https://agora-web.jp/archives/251007054600.html
https://agora-web.jp/archives/251229075114.html トランプ氏、ベネズエラ領内攻撃を明言:第二次政権は「力による平和」を志向か https://agora-web.jp/archives/251229075114.html ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、トランプ大統領は先週のラジオインタビューで、米国が「大きな施設」を破壊したと発言し、ベネズエラ国内の麻薬取引関連施設を攻撃したことを示唆した。

米政府関係者は、この発言がベネズエラ領内にある麻薬施設への米国の攻撃を指していることを認めているが、作戦の詳細については明らかにしていない。

トランプ大統領とベネズエラ・マドゥロ大統領 トランプ大統領Xより

同紙によれば、この攻撃は中南米からの麻薬流入を阻止するための軍事作戦の一環であり、麻薬を積載していると疑われる船舶を標的にする米軍の取り組みと連動している。

トランプ大統領は「船が出てくる大きな施設があり、それを叩いた」と述べ、具体的な地名には触れなかったものの、ベネズエラを念頭に置いた発言だったとみられている。

こうしたベネズエラ領内への攻撃は単発の事例にとどまらず、第二次トランプ政権の一年目に見られた一連の軍事行動の流れの中に位置づけられると考えられる。

ナイジェリアでの限定的な軍事行動や、中東におけるイランへの空爆など、地域を異にしながらも、標的を絞った武力行使が断続的に行われてきた。いずれも大規模な戦争への拡大を避けつつ、軍事力の行使を通じて相手に明確なシグナルを送る点で共通している。

これらの動きを総合すると、第二次トランプ政権の対外姿勢は、大規模な軍事介入や長期的な紛争を回避する一方で、抑止力を維持・強化するためには限定的な攻撃も辞さないという特徴を持つとみられる。

軍事力の誇示と実際の行使を通じて安定を確保しようとする、いわゆる「力による平和」を志向する姿勢が、政権一年目の外交・安全保障政策の基調となっている。

 

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Mon, 29 Dec 2025 08:00:47 +0000 Mon, 29 Dec 2025 08:00:47 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251228225954.html https://agora-web.jp/archives/251228232445.html
https://agora-web.jp/archives/251228230545.html 高市総理ニコニコ予算案、さて?:各省庁の要求にポピュリズム的な大盤振る舞い https://agora-web.jp/archives/251228230545.html 高市政権で初となる26年度予算案が発表になりました。122.3兆円は25年度に比べて7兆円増。但し、その増分は国債費とか社会保障費の増大という比較的制御しにくい部分の増大となります。まぁ、一言で言えばせっかく企業景気の回復による法人税と個人所得増に伴う所得税の税収増、更には金持ち高齢者の死去に伴う相続税増収という「儲け」があっても利払いに消えるという自転車操業に近い予算案であります。

高市首相 首相官邸HPより

中身を概括すると各省庁の要求に対してポピュリズム的な大盤振る舞いが目立ちます。また医療費については医療従事者に3.2%アップを認めていますが、これは片山さつき氏が医療関係者に飲み込まれたともされています。

教育無償化も進んでいますし、給食も無償化を進めています。先般のガソリンの暫定税率の廃止など基本的には耳障りの良い財政政策が強く出た形となっています。

野党は国民民主が全面的に賛意ですが、立憲民主は「一応、文句を言っておかないと野党の面目丸つぶれ」という立ち位置に見えます。つまり年明けの国会の審議で大荒れになることはなさそうな気配です。

これに対して日経は社説で「責任の視点欠く過去最大の予算案」とぼろくそに近い評価です。経済評論家やインフルエンサーがいろいろ意見をしてくると思いますが、事業を営む者の目からの評価というと総花的でビジョンが良く見えない気がします。多分、評論家やインフルエンサーは過去最高に膨れ上がった予算や国債発行額などを踏まえた財政の健全性を様々な見地から評論するのだろうと思います。私はそうではなくて日本をどういう国にしたいのだろうという国家論があってその上で予算は決まるのだろうと考えています。

例えば起業家が上場する目的はとにかくIPOで資本を得るためだ、としてとりあえずビジネスの体裁はつくるけれど究極の事業方向性が定まらず、とりあえず人材もいるから経費予算は多めにとっておこう、という場合、株主の方は賛同するでしょうか?しませんよね。ある事業目的を明白に持つことでメリハリある予算支出にする、これが大事だと思うのです。

例えばガソリン税廃止、あるいは給食費や教育費無料になると多くの方は「助かる」と言います。では助かったそのお金は何処に行くか、ここはあまり追求しないのです。コメが高いからおこめ券を配ると言ったら結局おこめ券ではなく、各市町村バラバラの対応となり、それを配った政府は「竹下登型バラマキ」をやったね、と言われても仕方がなかったと思います。ある特定の声のでかい人たちの要求に「うまく乗り越えたぜ」という感じにしか私には見えないのです。

日本の20年後、30年後を考えたメリハリとは何でしょうか?社会保障費、特に医療費負担が問題になります。「医者の処方箋の方が市販のクスリより安いからねぇ」という話は当たり前に聞くのですが、こんなバカな話がまかり通っていること自体がおかしいのです。都会に行けば医者も人の子、決して儲からないのに街中〇〇クリニックばかりとなれば医療のレッドオーシャン化。だけど地方に行けば医者がいない、という実態をどう捉えるのでしょうか?それこそ医者に地方移住したら〇万円ぐらいのアイディアが欲しいものです。

防衛装備品の拡充。結構です。しかしもっと基本は自衛隊に入る人が少なくて防衛そのものが成り立たなくなりつつある現実はどう捉えるのでしょうか?私には地上戦なんて逆立ちしても想像できない時代にいると思います。それよりビデオゲーム顔負けの近代戦でしょう。原子力潜水艦を作るのに必要なのはSMRの技術。だけど原発アレルギーの日本にはそれの具体案すらできないのです。

少子化は当面止まりません。仮に「産めよ増やせよ」という時代が再び来ても平均移動線という考え方からすると人口が今の半分に向かっていくトレンドに歯止めはまずかからないのです。ならばコンパクトシティと社会インフラの再配置が必要なのです。だけど未だに新幹線を延伸させる話はあちらこちらにあります。なぜと聞けば「役人の仕事が無くなるじゃない。予算要求も出来なくなるし」と。本末転倒ですよね。申し訳ないけれどフルスペックの新幹線が地方に必要だとは思いません。時速200キロの準新幹線の議論がようやく出てきましたが、それで全然問題ないはずです。

要は何処に成長を求め、何処で現状の「インフラの店じまい」をするか、食糧自給の発想は今後もカロリーベースで行くのか、世界の物価との差異から今後5年程度で諸物価が5割上がる前提に立って何をどう対策するのか、という大所高所からプランされたものである必要があります。

もちろん、「5年後の話より今夜の飯」と言われれば元も子もありません。しかし、今の日本が置かれた状況は決して悪くないと思います。ただ富が高齢者に偏り、若年層が苦しむ傾向は強く、仮に日本の富(=アセット)を50歳代以下に限定した場合、どれだけ低くなるのか、そして生産年齢人口が生み出す収益(=フロー)が日本の将来像に見合うものか、この議論が欠落している気がしてならないのです。

別に高市氏を批判しているのではないのです。歴代総理は誰もそこを説明して政権の予算案を作らなかったのです。「どうせ巨額の赤字だし。俺が総理の代に何かできるわけじゃないし。日本は潜在的に金あるし」なのでしょう。でもそれが責任ある積極財政なのか、私にはよくわからないのであります。

予算を作るには国の大方針と10年後、20年後の日本をどう見据えたものかを語ったうえでの予算政策であるべきではないでしょうか?その点は私にはアメリカも中国もわかりやすいポリシーがあるように感じます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月29日の記事より転載させていただきました。

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Mon, 29 Dec 2025 03:00:45 +0000 Mon, 29 Dec 2025 03:00:45 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html
https://agora-web.jp/archives/251228225954.html 軍服姿のプーチン大統領からのメッセージ https://agora-web.jp/archives/251228225954.html ロシアのプーチン大統領は27日、ウクライナ侵攻を進めるロシア軍の司令部を訪問し、ゲラシモフ参謀総長からウクライナ東部ドネツク州や中南部ザポリージャ州の戦場の現状について報告を受けた。その後、「ウクライナが平和的な終結を望まないなら、我々は武力で解決する用意がある」と豪語している。

プーチン大統領、軍服で統合軍司令部を訪問し、ゲラシモフ参謀総長らと会談、2025年10月26日、クレムリン公式サイトから

 

興味深い点は、プーチン氏が軍服姿で登場したことだ。政治家が軍服で現れる時、権威の象徴、強いリーダーシップ、国家防衛への決意などを内外に示す狙いがある。

ウクライナのゼレンスキー大統領が米フロリダ州でトランプ大統領と会談する前日、プーチン氏は軍服姿でわざわざ司令部を訪問したのだ。単なる偶然ではなく、プーチン氏特有の計算されたパフォーマンスだろう。具体的には、「ロシアは特殊軍事行動の目的を放棄しない」というメッセージをウクライナと米国に向けて発信する目的があったはずだ。

ところで、プーチン氏は元来、軍服を好む指導者ではない。同氏は5月9日の対独戦勝80年記念軍事パレードでも背広姿だった。例えば、ロシア軍の前ショイグ前国防相もべロウソフ現国防相も軍キャリアはないが、プーチン氏は彼らを国防相に任命している。ショイグ氏は軍務を経験していないにもかかわらず将官の階級を得て、2012年に国防相に任命された。一方、アンドレイ・ベロウソフ現国防相は経済学者だ。彼はソビエト連邦で経済学を学び、プーチン氏の経済顧問として仕えてきた。プーチン氏は軍服より背広が好きなベロウソフ氏をあえて国防相に抜擢したのだ。

ちなみに、プーチン氏が最近軍服姿で登場したのは10月26日、統合軍司令部を訪問し、ゲラシモフ参謀総長らと会談した時だ。長距離核ミサイル「ブレヴェスニク」のテストに成功したことを内外に発表するためだった。

「ブレヴェスニク」(9M730)は、ロシアが開発中の原子力推進式巡航ミサイルだ。原子力エンジンによるほぼ無限の長距離飛行が可能で、アメリカのミサイル防衛網を突破することを目的としている。トランプ米大統領は5月20日、次世代のミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」を発表したばかりだった。「ブレヴェスニク」は「ゴールデンドーム」すら突破できることを、軍服姿のプーチン氏は誇示しようとしたわけだ。

プーチン大統領は軍の最高司令官だが、そのキャリアの核心は軍人ではなく「諜報員(スパイ)」だ。プーチン氏は1975年から1991年までの約16年間、KGB(ソ連国家保安委員会)に勤務していた。彼は正規軍の将軍としてキャリアを積んだわけではない。そして軍人のイメージよりも「冷徹で有能な実務家・政治家」というイメージを優先する傾向がある。プーチン氏にとって軍服は、あくまで「戦う指導者」を演出する必要がある際の政治的ツールに過ぎない。

ウクライナが主導して作成された20項目の和平案には、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟の放棄、ドンバス地方(ウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州)の領土割譲問題などのロシアの核心的要求は明記されていない。プーチン氏は同和平案がモスクワ寄りに大きく修正されない限り受け入れないだろう。

プーチン氏は軍事作戦の継続モードに入っている。2025年に入って戦況の報告を受ける際や軍の司令部(クルスク州など)を訪問する際に、迷彩柄の軍服姿で登場する機会が増えてきた。ウクライナや欧州諸国にとって警戒すべき兆候だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年12月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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Mon, 29 Dec 2025 02:55:53 +0000 Mon, 29 Dec 2025 02:55:53 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html https://agora-web.jp/archives/251228230405.html
https://agora-web.jp/archives/251228230628.html 普通の政治家は国民に訴える、でもあの人達は国民を訴える https://agora-web.jp/archives/251228230628.html

※画像は過去に某党が無許可で看板を
設置していた事を拡散された時の画像

米国議会が日本の高市総理の発言を支持する姿勢で動いています。

【「威圧を恐れることなく見解表明の権利」米下院も中国非難の決議案 高市首相答弁巡り】

米下院の超党派の議員は22日までに、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を受けて対日圧力強化を続ける中国の「威圧的行為」を非難する決議案を下院に提出した。「日本政府には地域の問題に関して経済、軍事的な威圧を恐れることなく見解を表明する権利がある」とした。

対中貿易交渉を重視するトランプ大統領が日中対立から距離を置き、日本への支持を打ち出せていないとの懸念が背景にある。提出は19日。

高市氏の答弁を巡っては、米上院外交委員会の超党派の議員も17日、中国を非難し、日米同盟への「揺るぎない支持」を表明する共同決議案を提出している。(共同)
(2025/12/23 産経新聞)

これが当たり前の姿勢でしょう。

日本の総理大臣にの○害を示唆するような発言を公然と行い、
それを謝罪もしないどころか
逆ギレで圧力を掛けてくるような中国共産党は野蛮すぎて話になりません。

自国の代表となっている人間の命を奪う事を宣言するような
そんな発言をしている輩を
媚中派の野党や自民党内の媚中派が妨害して
ペルソナ・ノン・グラータにして国外追放処分できない方が異常でしょう。

ところが長年日本の情報空間を独占し、
日本の民主主義を歪め続けてきた日本のマスゴミの主張はといえば

中国様のご機嫌を損ねるな!
中国様の経済制裁などの理不尽な対日圧力に対して日本が折れて意見を引っ込めろ!
間違っているのは高市だ!国際的に見ても非常識な中国様の対日圧力は正しいのだ!

というようなものです。

立憲共産党を中心として媚中派左翼政治勢力も
全く同じ主張を繰り返しています。

どれだけ日本のマスゴミと左翼が異常であるかがより際立っていると言ってよいでしょう。

そもそも1949年建国の今の中国は戦勝国でもありませんし、
少なくともこれまで台湾を実効支配したことはただの一度もありません。

ですが台湾は俺達のものだと主張するのみならず、
日本よりも力を持ったと確信して自信を持ってからは
公然と尖閣も沖縄も俺達のものだと主張しています。

中共としては台湾有事という侵略について
「俺達の国内問題」
という設定で行う事になるでしょう。

尖閣や沖縄も同じ理屈をすでに付けられるようにし始めているわけで、
この点からも台湾有事が日本の存立危機事態になり得るのは当たり前と言って良いでしょう。

異常なのは日本のマスゴミと左翼が作っている情報空間でしょう。

岡田克也ら立憲民主党と立憲民主党応援団であるマスゴミの仕掛けた
世論誘導に全く世論が動かず、
むしろ高市総理の発言が支持されているのが現状と言えます。

これに納得できない岡田克也が
「国民感情をコントロールしなければならない」
と発言したことで立憲民主党への批判が出て来ている状態と言えます。

岡田克也は中国共産党が台湾侵略を仕掛けた時に
米軍が巻き込まれても日本は動かず台湾を見捨てる言質を
高市総理から取ろうと国会でしつこくしつこく迫ったわけです。

これでSNSでは中国のスパイなんじゃないかとか
いろいろ指摘されるのは当然でしょう。

どう控えめに考えたって中国共産党に便宜を図るために必死に粘ったようにしか見えないのですから。

これに対して立憲民主党はというと
必死に高市総理に責任転嫁を繰り返すのみならず
批判には法的措置も採ると強調して
自分達への批判を黙らせようとしています。

さすがは国民感情をコントロールしなければならないとか言った上に
その発言を間違っていないと強調して
このまま押し切ろうという姿勢の立憲民主党だなと呆れるしかありません。

小西博之と杉尾秀哉のコンビが
モリカケの件での官僚詰問の画像がSNSで広められた時などに
開示請求~訴訟なんてことをやってます。

立憲民主党の議員達が焼き肉店(個室)で飲食して帰ったと思ったら
その個室に脱糞されていたことで店主がキレて
このことを週刊誌に報じられた事件があり、
この立憲民主党脱糞事件ではSNSでやはり批判が広まり、
この事件をイジった画像を作った人を訴えました。
この画像を作った人を見せしめにすることで
立憲民主党脱糞事件そのものや批判が拡散されることへの牽制も狙っていたように思います。

普通の政治家は自分達のやろうとしていること、
やっていることを知ってもらおうと国民に訴えるんです。

でも立憲民主党の政治家は国民を訴えるんです。

これまでずっとマスゴミに守られ続けてきて
自分達が問題を起こしてもマスゴミは守ってくれて、
でも同じ事を自民党の議員がやろうものなら
マスゴミと一緒になって自民党議員を徹底的に攻撃する。

自民党をディスれば自分達の議席に繋がる。
そんな感覚があたりまえになってきたのでしょう。

そういうことを続けて来た人達なので
自分達が誰かを批判する事は嬉々として行うが、
自分達が誰かに批判される事には我慢出来ない。

そういう幼さが肥大化してしまったように思います。

マスゴミによる世論誘導が効かなくなってきている現状において
これまでと同じやり方はかえって反発を食らうだけなのですが、
これまでずっと同じやり方しかやっていませんでしたし、
なんなら2009年にはその手で政権を取れてしまったのです。

そして民主党系の人達はこの方法で自力で政権を取ったと勘違いしてしまい、
立憲民主党となっても批判と妨害ばかり。

おまけに中国共産党の高市総理に対する過剰な圧力によって
むしろ有権者に
「中国ってヤバイ奴らだな」
という意識をかなり強めてしまったように思います。

結果としてかえって高市内閣の支持率を維持してしまう方向になっています。

ある意味で岡田克也ら立憲民主党と
民主党時代から彼らの応援団として動いてきたマスゴミによって
国民感情をコントロール(ただし逆方向に)できている
なんて言い方をしても良いのではないでしょうか?

岡田克也氏 NHK日曜討論より


編集部より:この記事は茶請け氏のブログ「パチンコ屋の倒産を応援するブログ」2025年12月28日のエントリーより転載させていただきました。

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Mon, 29 Dec 2025 02:50:28 +0000 Mon, 29 Dec 2025 02:50:28 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html
https://agora-web.jp/archives/251228232445.html 富士通などが新卒一括採用を廃止:「なんちゃってジョブ型通年採用」が揺るがす就活市場 https://agora-web.jp/archives/251228232445.html 新卒採用の前提が大きく揺らいでいる。象徴的なのが、富士通が打ち出した新卒一括採用の廃止とジョブ型通年採用への全面移行だ。これをきっかけに、企業・学生双方の行動が変化し、日本的雇用慣行そのものの持続可能性が問われ始めている。

参照:12月に大学4年生が就職活動…「通年採用」導入する企業増え、内定持ちながら「より良い企業」探す 読売新聞

  • 富士通は2026年卒から新卒一括採用を廃止し、職務内容を明示した「ジョブ型の通年採用」に完全移行する。採用人数を年度で固定せず、必要な人材を時期を問わず採る方針。
  • この動きに象徴されるように、通年採用を導入する企業は増加し、2026年卒では3割を超えた。人材不足を背景に、多様な学生を柔軟に確保しようとする狙いがある。
  • 学生側も変化し、内定を得た後でも通年採用を行う大企業や外資系に再挑戦する例が増えている。12月になっても就活を続ける大学4年生は珍しくなくなった。
  • 調査では、内定式後も就活を続ける学生は15%に上り、その3分の1以上は内定保有者だった。就活は早期終了型と長期化型に二極化している。
  • 一方、日本では職務が不要になっても簡単に解雇できず、ジョブ型正社員は他部門への異動が前提になりやすい。ジョブローテーションを経験していない人材が対応できるかは不透明だ。

  • この矛盾から、将来的にはジョブ型人材を契約社員で採る流れが強まる可能性もある。新卒が短期間で辞める前提なら、企業が新卒採用に力を入れる意味自体が薄れる。

富士通などに見られる決断は、単なる採用手法の変更ではなく、日本的雇用慣行がだらだらと終わっていく過程を象徴している。「ジョブ型通年採用」の拡大は学生の選択肢を広げる一方で、新卒一括採用という仕組み自体を空洞化さていくことになる。いま起きている変化のツケを将来誰が払うのか。その答えは、すでに次の世代に回り始めている。

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Mon, 29 Dec 2025 02:45:44 +0000 Mon, 29 Dec 2025 02:45:44 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251229064548.html https://agora-web.jp/archives/251229065604.html
https://agora-web.jp/archives/251228225545.html シルバーパス・敬老パスは「無意味」ではないが費用対効果は極めて悪い https://agora-web.jp/archives/251228225545.html 各自治体で長年続いてきた「シルバーパス」「敬老パス」。

高齢者の外出機会を増やし、健康寿命を延ばし、地域での消費を促す――こうした目的で導入されてきた制度です。

私はこの制度について、「全く意味がない」と言うつもりはありません。

実際、いくつかの自治体では一定の効果を示唆する調査も存在します。

しかし、結論から言えば、費用対効果という観点では、極めて悪い政策だと考えています。

シルバーパス 東京都HPより

名古屋市の事例が示す「ゼロではない効果」

たとえば名古屋市では、敬老パス事業について継続的な調査が行われています。

それらを見ると、

  • 外出頻度が増えた高齢者が一定数いる
  • 社会的孤立の防止に寄与している可能性がある
  • 医療費抑制効果を示唆する分析も一部にはある

といった点が指摘されています。

この点については、「効果はゼロではない」という認識は共有します。

問題は「かけたコストに見合っているのか」

しかし、政策評価で最も重要なのは相対評価です。

  • 年間で数十億円規模の財源
  • 利用者の多くは、もともと外出・移動が可能な元気な高齢者
  • 本当に支援が必要な高齢者ほど、制度を十分に活用できていない現実

これらを踏まえると、

同じ財源を使えば、もっと大きな効果を生む政策があるのではないか

という疑問は、どうしても拭えません。

仮に健康寿命の延伸や社会参加の促進が目的であれば、

  • 低所得高齢者への重点的支援
  • フレイル予防や介護予防への直接投資
  • 地域コミュニティづくりへの支援

など、よりターゲットを絞った政策の方が、はるかに効率的ではないでしょうか。

将来世代への投資という視点が欠けている

さらに深刻なのは、世代間の公平性です。

少子高齢化が進む中で、

  • 教育
  • 子育て
  • 若年層・現役世代への投資

は、明らかに後回しにされ続けています。

限られた財源を、

「すでに人口も投票行動も多い世代」に厚く配分し続けることが、

本当に持続可能な社会につながるのでしょうか。

私はそうは思いません。

減税という選択肢も、もっと真剣に議論すべき

もう一つの選択肢は、減税です。

シルバーパス・敬老パスのような一律給付型政策は、

  • 利用する人としない人の不公平
  • 行政コストの増大
  • 効果測定の難しさ

といった問題を常に抱えています。

それであれば、

  • 税や社会保険料を少しでも下げる
  • 現役世代・子育て世代の可処分所得を増やす

こうした形で、国民全体の自由度を高める方が、結果として経済も社会も活性化する可能性があります。

「続いてきたから続ける」政治を終わらせる

シルバーパス・敬老パスは、善意から始まった制度です。

しかし、善意で始まった制度ほど、見直しが難しい

だからこそ、政治が冷静に問い直さなければなりません。

  • 本当に効果はあるのか
  • 他にもっと良い使い道はないのか
  • 将来世代に胸を張れる選択か

私は、

「効果はゼロではないが、費用対効果は極めて悪い」

この現実から目を背けるべきではないと考えています。

限られた財源を、未来をつくるためにどう使うのか。

その覚悟が、いま政治に問われています。


編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2025年12月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。

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Mon, 29 Dec 2025 02:40:45 +0000 Mon, 29 Dec 2025 02:40:45 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html
https://agora-web.jp/archives/251228113349.html 石炭は台湾と日本の生命線だ:台湾封鎖シミュレーションが示したこと https://agora-web.jp/archives/251228113349.html

SHansche/iStock

2025年7月、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)は、台湾有事を想定したシミュレーションの第3弾を公表した。第1弾、第2弾が中国軍による台湾侵攻を扱っていたのに対し、今回のテーマは「台湾封鎖」である。侵攻よりも敷居が低いが、しかし経済・社会への影響は極めて深刻になり得る。

Lights Out? Wargaming a Chinese Blockade of Taiwan

Lights Out? Wargaming a Chinese Blockade of Taiwan
A Chinese blockade of Taiwan could see the greatest naval battles since World War II. Twenty-six wargames illustrated the risks to China, Taiwan, Japan, and the...

台湾が封鎖された場合、台湾単独ではそれを解くことができない。港湾と海上輸送を押さえられれば、台湾は外部からの物資流入を失い、時間とともに確実に追い詰められていく。封鎖を打破し、台湾を支えるには、米軍の介入が不可欠となる。そしてそのとき、日本は必然的に米国と台湾を支える後方基地、物流の拠点となる。

封鎖下では民間船舶の多くは保険料の高騰や乗組員の確保といった問題から使用不能となる。そのため、台湾政府や米国が関与・管理する限られた隻数の船舶を用い、日本を起点として台湾へ物資を運ぶピストン輸送が行われることになる。かくして、日本も、台湾封鎖と無縁ではいられない。

CSISの報告書が強調する台湾の最大の脆弱性は、エネルギーにある。台湾は日本と同様、エネルギー資源のほぼ全量を輸入に依存している。シミュレーションでは、液化天然ガス(LNG)の備蓄は10日から12日間で枯渇し、石炭も40日から45日で尽きるとされる。石油には146日分の備蓄があるものの、封鎖が長期化すれば、それもいずれ底をつく。封鎖がエスカレートすれば、発電所、送電線、備蓄基地などの、エネルギーインフラへの攻撃もありうる。結果として、電力生産は急激に落ち込み、経済と社会の維持が困難になる。

報告書は、台湾が進めてきたグリーンなエネルギー政策、とりわけ石炭火力の縮小や原子力の停止が、台湾の脆弱性を高めている、と明確に指摘する。そして提言として、原子力発電の利用拡大に加えて、燃料備蓄が容易な石炭火力発電所の維持を挙げている。脱炭素を理由に石炭火力を減らして、燃料備蓄が難しいLNG火力の利用を拡大することについては、供給途絶リスクを高めることになるとして、警鐘を鳴らしている。

この台湾のエネルギーに関する示唆は、日本にもそのまま当てはまる。日本政府は現在、第7次エネルギー基本計画において、発電に占める石炭火力の比率を現状の約3割から大幅に引き下げる方針を掲げている。

しかし、もし台湾有事などに伴って日本のシーレーンも封鎖されるならば、日本もまたLNGの在庫は2週間程度しかない。台湾と同様、LNG依存を高めた電源構成は、危機に対して脆弱になる。石炭火力発電所を一定規模で維持することは、安全保障上、重要な課題である。

ところがいま脱炭素政策の影響をもろに受けて、日本の石炭輸入を支えるサプライチェーンは弱体化しつつある。この流れは反転させねばならない。

台湾、日本をはじめとして、中国以外の石炭輸入国であるインド、韓国、ベトナム、マレーシア、フィリピン等と連携して、石炭供給のサプライチェーンを国際的に強化してゆくことを、インド太平洋地域における安全保障政策として真剣に検討すべきである。

データが語る気候変動問題のホントとウソ

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Sun, 28 Dec 2025 22:00:48 +0000 Sun, 28 Dec 2025 22:00:48 +0000 https://agora-web.jp/archives/251228102453.html https://agora-web.jp/archives/251226200357.html https://agora-web.jp/archives/251224233421.html https://agora-web.jp/archives/251224095135.html https://agora-web.jp/archives/251223065113.html
https://agora-web.jp/archives/251228103601.html 高市政権の外国人政策、成否を分けるのは「日本語力」だ https://agora-web.jp/archives/251228103601.html

nito100/iStock

高市政権が外国人政策を発表しましたが、今日は評価できる点とできない点を書きます。

私は海外生活が長く、外国人の立場で働いてきましたし、逆に外国人を雇用もしています。その経験を踏まえると、成功の鍵は「言語力」です。これが全てと言っても過言ではありません。長文ですがお付き合い下さい。

まず言語を学ぶという行為は、単にコミュニケーションを取る以上のことを意味します。言語を学ぶと、その言語特有の思考パターンを知ることができ、歴史や文化にも興味を持つからです。それで外国人政策の条件に「言語力」を含めるのは絶対必要です。その国で用いられる言語に精通できれば、外国人労働者が問題行動を起こす可能性も格段に低くなるからです。

例えば問題になっている在留資格「技能実習」は、2023年に新規で約18万人来日しましたが、同年に約9000人が失踪していて、非常に高い失踪率です。一方「特定技能1号」は同年に約4万人来日していますが、失踪者数は僅か348人で、技能実習よりも遥かに低い値です。

なぜこの差が生まれるのでしょうか? 待遇差もありますが、最大の差は言語力です。技能実習は日本語能力が不問で、多くは喋れない状態で来日します。そして意思の疎通で躓き、逃げる様に失踪します。逆に特定技能1号は来日前に日本語検定のN4が必須条件で、300〜400時間の学習時間を要します。彼らは意思の疎通が取れ、しかも日本文化への理解も深まるため、失踪の危険性は格段に低くなります。

これは日本に限った話ではありません。私はマレーシアで会社を経営していますが、この国は日本とは比較にならないほど外国人が多く、人口の10%を超えます。ただ事件や問題行動を起こす外国人の多くは、言語力が低く、意思の疎通が難しい人たちです。彼らは仕事を辞め、新しい仕事が見つからず、結果的に犯罪に手を染めます。この「言語力の低い外国人が問題を起こす」というのは、世界共通の傾向です。

さて日本の政策の話に戻ります。今回の高市政権の案では、人手不足が厳しい業界において、特定技能1号の枠の拡充が決まりました。これは評価できる点です。上述のように、彼らは日本語検定を既に受けており、日本社会に馴染む用意ができているからです。

一方で、技能実習の代わりにできる「育成就労」は全く評価に値しません。日本語検定のN5相当が条件ではありますが、試験に受かっていなくても、来日後に講習を受ければ良いことになっているからです。これは絶対ダメです。来日前に日本語を叩き込まないと、失踪の温床になります。

また特定技能1号で滞在する外国人は、熟練度次第で5年以内に「特定技能2号」に昇格が可能で、このビザでは家族が帯同できます。これに対しては「移民推進だ」と反対の声が大きいですが、私は是々非々の評価です。

外国人労働者の多くは簡素な生活を送り、収入の8割位を母国に仕送りします。これは国富の流出を意味するので、家族を呼び寄せた方が日本経済にも貢献できます。ただし、高市政権の案ではダメです。1号→2号の移行に言語力の規定がないからです。

例えば2号になる条件に、より難易度の高い日本語検定N2を課せます。また帯同の配偶者にもN4を必須にすべきです。こうすれば両親ともに日本語が喋れるため、仮に子どもがいても、学校や地域社会と意思の疎通が取れて日本社会に馴染むことが容易になります。

結論です。高市政権の外国人政策において、評価できる点は言語力が必須の特定技能の枠を拡充したことです。逆に評価できない点は、言語力が低くても来日可能な育成就労が残ったことや、特定技能2号への昇格に日本語試験を課していないことです。

言語は単なる道具ではありません。信頼を築くための基盤です。日本が外国人政策を成功させられるか否かは、「どれだけ言語力を重視するか」にかかっています。この点で改革を期待したいと思います。

長文お付き合い頂き、ありがとうございました。


 

(編集部より)この記事は、ちゃん社長(@Malaysiachansan)のポストから転載させていただきました。

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Sun, 28 Dec 2025 21:50:00 +0000 Sun, 28 Dec 2025 21:50:00 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html
https://agora-web.jp/archives/251228095024.html 税制改正大綱は不動産投資を締め付けるのか? 見落とせない2つの是正ポイント https://agora-web.jp/archives/251228095024.html

gorodenkoff/iStock

令和8年度与党税制改正大綱を受け、不動産投資家の間では「今回の改正は投資に逆風なのか」という声も聞かれる。しかし、結論から言えば、今回の大綱は不動産投資そのものを一律に抑制する内容ではない。一方で、投資の在り方について、明確な方向性が示されている点は見逃せない。

まず押さえておくべきは、今回の大綱において、不動産所得課税や譲渡所得税、減価償却制度といった、投資家の損益に直結する税制に大きな改正は盛り込まれていない点である。少なくとも現時点では、「不動産投資全体を対象とした増税」や「包括的な規制強化」が意図されているわけではない。

しかし、大綱を丁寧に読み込むと、不動産投資に関して是正の対象として明確に意識されている論点が2つ存在する。

一つ目は、貸付用不動産の評価方法の見直しである。大綱では、「公平かつ円滑な納税環境の整備」という枠組みの中で、「不動産に係る公平の確保」が掲げられ、その一環として賃貸不動産の評価方法について検討を行う方針が示された。背景にあるのは、都市部を中心に、賃貸不動産を活用することで、実勢価格と相続税評価額の乖離が過度に拡大しているケースが増えているという問題意識だ。

もっとも、この点については、「関連団体等の意見を聞きつつ検討する」と明記されており、来年度から直ちに制度改正が実施される性格のものではない。過去の税制改正の運用を見ても、相続税評価という制度の根幹に関わる論点については、問題提起から実施まで一定の検討期間が設けられるのが通例である。したがって、現時点では「検討フェーズに入った」と理解するのが妥当だろう。

とはいえ、相続税対策を主目的として、評価圧縮効果のみを前提に不動産を取得する投資手法については、中期的な前提条件が変わる可能性を織り込んでおく必要がある。一方で、収益性や事業性に基づく賃貸経営そのものが否定されているわけではなく、過度な評価圧縮に依存したスキームを是正しようとする政策的メッセージと受け止めるべきだ。

二つ目は、新築マンションを中心とした短期売買への対応である。大綱では、不動産価格高騰への対応として、投機的取引の抑制が明示されている。特に、新築マンションの引渡し前後に行われる短期転売や、居住実態を伴わない売買が問題視されている点は明確だ。

この点については、短期譲渡所得税の税率引き上げなど、即座に税制改正が行われるわけではなさそうだ。しかし、金融機関への注意喚起や業界団体を通じた指導、取引実態の把握強化といった行政運用によって比較的早期に市場へ影響を及ぼす可能性がある。過去を振り返れば、不動産市場においては、税制改正よりも先に金融機関の融資姿勢が変化することで、市場環境が転換した例は少なくないので、注意が必要だろう。

その意味で、キャピタルゲインを狙った短期転売型の投機的取引は、今後一層やりにくくなる可能性が高い。一方で、中長期保有を前提とした賃貸運用や、実需に基づく投資まで否定されるものではない点も重要だ。

これら2つの論点を踏まえると、今回の税制改正大綱が示しているのは、「不動産投資の全面否定」ではなく、「投資の選別」であると言える。節税効果や短期的な値上がり益に過度に依存する投資については是正の対象としつつ、事業性や持続性を伴う投資については、相対的に静観する姿勢が読み取れる。

不動産投資家にとって重要なのは、条文上の改正点だけを見るのではなく、その背後にある政策の意図と時間軸を正しく理解することだ。今回の大綱は、不動産投資を一律に抑え込むものではない。しかし同時に、「どのような投資が望ましいか」という基準を、これまで以上に明確に示し始めた転換点である。投資家は、このメッセージをどう受け止め、次の戦略を描くかが問われている。

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Sun, 28 Dec 2025 21:40:23 +0000 Sun, 28 Dec 2025 21:40:23 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229064548.html https://agora-web.jp/archives/251229065604.html https://agora-web.jp/archives/251228232445.html https://agora-web.jp/archives/251226205448.html https://agora-web.jp/archives/251226205010.html
https://agora-web.jp/archives/251227121556.html 東広島市・西条の酒蔵で飲んだくれ歩き https://agora-web.jp/archives/251227121556.html

広島市の東隣、東広島市に来ました。わかりやすいですね。今回はその中心駅である西条(さいじょう)駅で下車。いつもはひとりが多いのですが、今回は広島に転勤した同僚とともに訪問。ふたり旅です。

旅の目的は日本酒。西条は7つの酒蔵が集まる日本を代表する酒蔵の町。駅を出て左に折れればすぐに酒蔵通りに入ります。

駅を出るとすぐに酒蔵の名前が書かれたレンガ煙突が目に入ります。西条市の南部、海に近い安芸津地区三津は良質な土があり、海が近くて搬出しやすいためレンガの工場がありました。ここでも主に安芸津レンガが使われているそうです。他の酒蔵の町でもこのようなレンガ煙突は多く見かけます。レンガ煙突を見ると酒蔵の町に来たなぁ、と改めて実感しますね。

ポストも酒蔵の待ちしよう酒蔵の町仕様。こういうのいいですね!

それでは酒蔵で試飲タイムといきましょう。まずはこちら白牡丹酒造。なまこ壁の蔵のような建物が酒蔵の伝統を感じさせます。瓦は西条特産の西条瓦。石見地方出身の職人が焼き始めたことや、ここで出る年度の質の影響もあって石州瓦と同じ赤い色をしているのが特徴です。

コイン(300円)を購入してボタンを押すとお酒が出てきます。頂いたのは芸陽男山。江戸時代の酒の製法である生酛(きもと)造りで、酒造りの原点に立ち返って造られた酒造りの伝統を感じさせるお酒。芸陽男山の名称も明治時代に使っていたものを復活させました。辛口の酒が冷えていた体を温めてくれます。

続いて立ち寄ったのは西條鶴。明治時代後期に建てられた黒格子が特徴的な渋い建物。手前にある天保井水は江戸時代に掘られたもので今も酒造りには欠かせないものです。

「白ラベル」を飲みました。

うぇーい

頂いたのは女性人気No.1という「酒蔵限定酒・無濾過純米生酒」。甘くすっきりとした味わい。これはだまされて飲んじゃいますね。公式HPによると焼鳥や、広島名物お好み焼きとも相性がいいようです。

こちらは酒蔵通りの一番奥、賀茂泉酒造の「酒泉館」という建物。かつては広島県の日本酒醸造研究試験場として使われていましたが、現在は土日祝日のみ、酒の資料館やカフェとして営業しています。あとにも出てきますが、西条の酒蔵の多くは別館として洋館を持っています。明治時代から大正時代にかけて規模が大きく拡大したため、その時代に流行していた西洋風の建物が多く建てられたものと考えられます。

こちらの井戸は意外に新しい平成生まれ。

資料館には酒にまつわる本がずらり。

最後に寄ったのは賀茂鶴酒造。第三醸造なんてある通り、7つの酒蔵の中でも大きな規模を誇ります。

こちらにも入口のところに洋館がありました。どうも本店の入り口に使われている模様。

こちらでは500円で飲み比べセットを頂きました。これはお得。右手大吟醸は金箔入りの大吟醸で賀茂鶴酒造の看板商品。金箔は桜の花びらの形になっていて、これは昭和天皇の金婚式に盃に桜の花びら型の金箔を浮かべたことがきっかけで、平成に入ってから市販品にも採用したのだそうです。さわやかな感じで飲みやすい看板商品です。

実は写真に載せていない試飲も結構していて、いい感じに酔いが回ってきました。

お好み焼きに~

隠れた広島名物、花ソーセージ!

というわけで電車に乗って広島駅に帰ってきました。ここからは広島名物で宴会。結局また酒を飲み、共通の上司の悪口とか愚痴とかを言い合って憂さを晴らしました。楽しい広島の夜でした。

酒蔵の集まる町、西条。駅前すぐの場所にあってふらっと立ち寄ることができます。日本酒好きにはたまらない飲み歩きにもってこいの場所です。広島に来た際にはぜひ寄ってみてください。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。

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Sun, 28 Dec 2025 21:35:56 +0000 Sun, 28 Dec 2025 21:35:56 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html https://agora-web.jp/archives/251228230405.html
https://agora-web.jp/archives/251228101305.html 「隠す服」と「包む服」は、全然違うという話 https://agora-web.jp/archives/251228101305.html

AzmanL/iStock

鏡の前で、ため息をついた経験がある人、手を挙げてほしい。

——はい、私です。

新しい自分が動き出すふだん着物の魔法」(シムラアキコ 著)きずな出版

若いころは何を着てもそれなりに見えた。少なくとも、そう思っていた。それがいつからか、二の腕が気になり始め、ウエストが主張し始め、「前はもっと楽に着られたのに」が口癖になった。

クローゼットの中の「着られる服」が減っていく。それに比例して、気持ちも縮んでいく。これ、結構キツい。体型の変化より、その精神的ダメージのほうがキツいかもしれない。

で、何が言いたいかというと。

着物は違う、という話だ。

着物にはサイズがない。いや、正確にはあるんだけど、洋服みたいな細かい区分がない。S・M・Lとか、7号・9号・11号とか、そういうのがない。平らな布を体に巻きつけて、紐で留める。それだけ。

だから、1サイズくらいの変化なら着付けで調整できる。2サイズ以上変わっても、仕立て直せば同じ一着を着続けられる。「サイズが合わなくなったから捨てる」が発生しないのだ。これ、地味にすごくないか。

ここからが本題なんだけど。

世の中には「体型をカバーする服」がたくさんある。ゆったりしたシルエット、体型補正下着、黒で統一、縦ラインを強調——テクニックは山ほど紹介されている。

でも、それって全部「隠す」発想なのだ。

着物は違う。「隠す」んじゃなくて「包む」。この違い、伝わるだろうか。

着物を着ると、外に出ているのは首・手首・足首だけになる。三つの「首」。人間の視線は自然と細い部分に集まる。だから、全体の印象がすっきりする。太くなった二の腕は袖の内側に収まり、脚のラインは裾の奥。見えない。

帯の位置を調整すれば、ウエストもヒップも誤魔化せる——いや、誤魔化すんじゃない。美しく見せられる。衿を広めに合わせれば、肩幅も顔の大きさもバランスが取れる。小顔効果も抜群だ。布の面積が広いから。

そして、これは男性にも言えることなんだけど。

体に幅が出るほど、着物姿には風格が出る。洋服だと「太った」になるところが、着物だと「貫禄が出た」になる。不思議なものだ。いや、不思議じゃないか。もともと日本人の体型に合わせて作られた服なのだから、当然といえば当然だ。

年齢を重ねた体を「隠す」服は、確かにたくさんある。でも着物は「美しく包む」服だ。今の自分を否定しない。矯正しない。そのまま受け止めてくれる。

鏡の前に立って、「今の私も、悪くないかも」と思える。

これ、すごいことだと思う。服にできることの中で、一番大事なことかもしれない。

まあ、着付けが面倒という声はあるだろう。わかる。最初は時間がかかる。でも、慣れれば10分。洋服のコーディネートに悩む時間を考えたら、大差ない気もする。知らんけど。

とにかく。

体型の変化に凹んでいる人、一度試してみてほしい。

隠すんじゃなくて、包まれる感覚。これは、着てみないとわからない。

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)

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Sun, 28 Dec 2025 21:30:05 +0000 Sun, 28 Dec 2025 21:30:05 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229052149.html https://agora-web.jp/archives/251226220847.html https://agora-web.jp/archives/251226210256.html https://agora-web.jp/archives/251227054032.html https://agora-web.jp/archives/251225023050.html
https://agora-web.jp/archives/251228095758.html 「高市1.0」は国民に希望を与えている https://agora-web.jp/archives/251228095758.html

首相官邸HPより

昨年の晦日、本欄に「今年のトップニュースは『トランプ2.0』」と書いてから早一年が経った。今年のトップニュースには国民の多くが「高市1.0」を挙げるはずで、筆者もそれに賛同する。

石破降ろしの最中、強面で鳴る保守派弁護士高井康行氏が、某ネット番組で総裁選に名乗りを上げた高市氏を「いつも抜き身の刀をぶら下げている」と、期待半分、懸念半分に評するのを見て、「上手いことをおっしゃるなあ」と膝を打った覚えがある。筆者も似た印象を彼女に懐いていたからだ。

が、いざ総裁に選ばれ総理指名を得た後の様子を見ると、この「慎太郎ばりの寄らば切るぞ」や「負けず嫌いの勉強家振り」に加え、随所で発揮される「飾らない関西のおばちゃん風」や女性らしい繊細な気配り」といった彼女の「地」が、政権と日本の風向きを良い方へ良い方へと向けているように思える。

例えば公明の連立離脱である。悪夢の石破総裁はほんの1年足らずの間に、自公連立与党を衆参両院とも過半数割れに陥らせた。よって、高市氏は総理指名までの短い間に、政策面で組める野党を連立に引き入れない限り総理の目が危うくなる。そこで彼女は国民民主および維新の会との協議を急いだ。

そうした中、10月19日週に予定された総理指名まであと10日というタイミングで、公明が突然連立から離脱した。政治と金の問題に係る公明提案に今ここで飲め、との要求に高市氏が応じないとの理由だった。が、彼女は公明に恋々とせず、あっという間に維新との連立協議を成立させ、災いを福に転じた。

この新たな連立与党が11月28日、追加歳出18.4兆円という大規模補正予算を閣議決定し、これに国民民主のみならず公明も賛成したのである。背景に国民民主が主張していたガソリン減税や178万円まで103万円の壁を引き上げたことなどに伴う驚異的な世論の支持があったからのことだろう。

実に補正予算の9割以上を経済対策に充てる高市政権の「責任ある積極財政」は、経済成長によって税収増を図りつつ財政の持続可能性を担保するというジレンマへの挑戦だ。その道具立ての一つに基礎的財政収支の黒字化目標を、「単年度ごとの検証」から「数年単位での確認」に変更したことがある。

これに筆者は、トランプ大統領がこの9月半ば、「企業の決算開示を四半期から半期にすべき」と述べたことを思い出した。米経済界の重鎮も短期主義が経済に悪影響を及ぼすとして同様の主張をしていたと報じられた。かつて米国にこれを無理強いされたことも、日本経済の長期低迷の一因だったと思う。

これらは彼女の「寄らば切るぞ」の一面だが、そのトランプ氏が沈黙していることで一部に「疑米論」のある、「台湾有事」に係る「高市答弁」を巡る中国との一件も同じ類の出来事だ。高市氏は、間違っていなければ引かないが、かといって強くも出ず、粛々と事を進めるのである。犬の喧嘩も負けた方が吠える。

そのトランプ氏の米中の関税交渉を含む一連の勝負を、習近平氏の勝ちと評する識者が少なくない。が、筆者には異論がある。対中関税は、不動産バブル崩壊とそれも関連した2900兆元(約6.5京円)もの途方もない債務を抱える地方政府に、救いの手を打てないほど弱体化しつつある中国経済に確実に打撃を与えている。

トランプ氏も、彼の外交政策「America First」ついてCSISの副社長が評した、「『実利主義』ではないが実利的、『現実主義』ではないが現実的、『理想主義』ではないが原則的、『タカ派』ではないが強硬、『ハト派』ではないが抑制的で、それは伝統的な政治イデオロギーに根ざしたものではない」を実行しているだけだ。

彼は核大国のトップを悪し様に言わず尊重する。また流血を嫌い、抑止を優先する。派手に敵対すれば支援者らの留飲は下がるかも知れないが、国益=「America First」にそぐわないからだ。その代わりホワイトハウスや国防総省や議会が司司で仕事をする。12月に相次いで公表した国家安保戦略対中報告書、上下両院の超党派決議案などがその証左である。

が、関税を含む経済面での政策や制裁は別だ。例えば関税。ベッセント財務長官は本年1月、「輸出によって現在の経済状況から抜け出そうとしている中国は、米国市場のシェアを維持するため価格を下げ続ける」と述べ、将来は「アイスキューブの様に融ける」とも言った。目下ほぼその通りに進行しつつあり、第3四半期の経済成長は年率4.3%を見込む(『Newsmax』)。25年度(24.10-25.9)の関税収入は前期比1180億ドル増の1950億ドルとなり、これを原資にした減税や給付金も近々行われる。

前記『Newsmax』は、批評家やアナリストは関税が物価上昇や貿易相手国からの報復に繋がり、長期的な経済成長が鈍化する可能性があると警告していたが、目下のところそれらの予測は当たっておらず、ガソリンも「Drill baby drill」で大幅下落したと記している。どうやら「TACO(Trump always chicken out)」は負け犬の遠吠えのようだ。

制裁では、10月下旬に発動したロシア石油大手ロスネフチとルクオイルへの制裁により、ロシアの石油収入は大幅に減りつつある。米国指定の撤退リミット11月21日を控えて、12社近いインドと中国の主要な買い手が、12月渡しのロシア産原油購入を見送る意向を表明し、更に効果が出始めた。

トランプ氏の話が長くなったのは、10月28日に米海軍横須賀基地に停泊する空母ジョージワシントンでの高市氏の振る舞いに言及したかったからだ。トランプ氏が主導する「PEACE THROUGH STRENGTH」の看板前で、その日初対面のトランプ氏の横でした仕草こそ「関西のおばちゃん」のそれだった。

高市政権は一般会計総額122.3兆円となる26年度予算案を12月26日に閣議決定した。これを1月召集の通常国会に提出し、3月末までの成立を目指す。4月には米中首脳会談のためトランプ訪中が予定されていることから、それまでに成立させて3月中の高市総理訪米が望まれる。

ならばここは、手取りを増やす施策を盛り込んだ大型補正予算案をある意味ともに組んだ国民民主に連立を持ち掛け、早期に予算を成立させて解散総選挙を打ち、そこで圧勝した上でトランプ大統領との首脳会談に臨むべきではなかろうか。きっと多くの国民も高市自民を応援することだろう。

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Sun, 28 Dec 2025 21:20:57 +0000 Sun, 28 Dec 2025 21:20:57 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251226220847.html https://agora-web.jp/archives/251229001518.html
https://agora-web.jp/archives/251227123104.html 投資家に問う、「需給を読む」とは? https://agora-web.jp/archives/251227123104.html 個人アクティビストの田端信太郎氏が、投資家がよく口にする「需給」という言葉の表面的な理解を否定し、価格変動と需給の相互作用や市場経済の本質的なメカニズムを理解することの重要性について解説します。

著名な実業家であり、経営者、マーケティングのエキスパートとして広く知られる田端信太郎氏のYouTubeチャンネル「田端大学 投資学部」。コツコツ積立だけでは満足できない!周囲を出し抜く!そんな株の醍醐味を味わいたい方へ。「田端信太郎の株道場」入会はこちらから。

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Sun, 28 Dec 2025 21:10:24 +0000 Sun, 28 Dec 2025 21:10:24 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251229001518.html https://agora-web.jp/archives/251228232445.html https://agora-web.jp/archives/251228094247.html
https://agora-web.jp/archives/251226211954.html 「トケマッチ」と「カニカニ詐欺」に感じる報道への違和感 https://agora-web.jp/archives/251226211954.html 年末の報道番組を見ていたら、トケマッチの首謀者逮捕が報道されていました。トケマッチとは高級腕時計のレンタルサービスを提供していた会社が、所有者から預かった時計を返却することなく、転売してトラブルになった詐欺事件のことです(写真はテレビ局のサイトから)。

見ず知らずの営業者を信用して自分の高級腕時計を貸し出ししてしまうリスク管理の甘さには驚きしかありませんが、この事件をメディアが執拗に取り上げるのは何故でしょうか?

それは「トケマッチ」というサービスの名称にあると思います。ちょっととぼけた名称で貸出しした時計が「溶けて」しまった。富裕層の被害者たちに対する視聴者の複雑な感情が反映していると感じます。

それが証拠にほとんどのニュース報道では高級時計詐欺と報道するだけではなく「トケマッチ」という固有名詞を何度の繰り返し紹介しています。

もしこのサービスの名称が高級腕時計レンタルといった平凡なものであったら、ここまで騒がれる事はなかったでしょう。

これと同じ匂いを感じるのが「カニカニ詐欺」です。

これは年末に主に高齢者に対し売れ残ったカニを安く販売すると電話などで言葉巧みに勧誘し、クオリティーの低いカニを無理矢理送り付ける電話商法のことを指しています。

この手の押し売り商法は、カニに限らず様々な商品で行われています。年末の風物詩ということでカニが話題になっているんだと思いますが、なぜ「カニ詐欺」ではなく「カニカニ詐欺」なのでしょうか?

これはオレオレ詐欺と同じように視聴者に対してキャッチーな名称だからだと思います。

2つの消費者トラブル報道に共通するのは、大した事件でもないありがちなトラブルをキャッチーな名前をつけることによって面白おかしく報道しようとする姿勢です。

トケマッチは高級腕時計を持っている富裕層が損をしたある意味自業自得な事件ですし、カニカニ詐欺も信頼できる通販サイトで購入すれば発生し得ないトラブルです。

ニュースの視聴者ウケするネタが見つからない。だからメディアが名前を使ってたいしたニュースでもないものを大げさに報道する。

このようにしてメディアの報道の価値は下がっていくのだと納得しました。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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Sun, 28 Dec 2025 21:00:54 +0000 Sun, 28 Dec 2025 21:00:54 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html https://agora-web.jp/archives/251228230405.html
https://agora-web.jp/archives/251228094247.html 高市政権の122兆円予算は大増税の緊縮予算 https://agora-web.jp/archives/251228094247.html 「過去最大」「積極財政」という言葉だけで、122兆円予算を理解したつもりになるのは早い。

実質、税収、財政指標——数字を並べると、別の解釈が成り立つ。高市政権の予算を、表と裏から読み直してみたい。

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Sun, 28 Dec 2025 09:46:19 +0000 Sun, 28 Dec 2025 09:46:19 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251229001518.html https://agora-web.jp/archives/251228232445.html https://agora-web.jp/archives/251227123104.html
https://agora-web.jp/archives/251126160123.html 【更新】122兆円の予算は「インフレ大増税」による緊縮予算 https://agora-web.jp/archives/251126160123.html 来年度の一般会計予算が閣議決定された。総額は約122兆3000億円となる見通しだ。マスコミはこれを「史上最大」とか「放漫財政」とか騒いでいるが、名目GDP比では今年度並みである。高市首相と片山財務相が約束したように補正予算を組まないとすると、今年度の133兆円から実質ベースで1割も削減する緊縮予算で、プライマリーバランスも黒字になる。

積極財政を掲げた高市政権が、なぜ緊縮予算を組んだのか。それは物価を上げて税収を上げたインフレ増税のおかげである。政府支出や公共料金は名目ベースで固定されているが、たとえば消費税収は物価が上がると増えるので税収は上がるからだ。

税収の増えた原因はインフレ税

ここ5年、財政収支が改善した最大の原因は、島澤諭氏も示すようにインフレ税である。2020年を100とする消費者物価指数でみると、今年10月は112.7。つまりこの5年間に政府の実質債務は約13%減ったのだ。税収面でみても、2020年度から25年度までに税収が約20兆円も増え、財政赤字が減った。

日本経済新聞

財務省の「2025年度プライマリーバランス赤字ゼロ」という目標は実現可能だったが、高市首相は財務省の原案を「こんなしょぼいものはだめだ」と一蹴し、財政赤字を11兆円以上増やす21.3兆円の補正予算を組んだ。

意図的にインフレを起こして政府債務を削減するインフレ税のアイディアは新しいものではなく、その理論的な研究は多いが、結論はおおむね一致している。すべての個人に一律課税するインフレ税は消費税に近く、国民が合理的なら資源配分のゆがみが少ない。

最大のメリットは、所得税のかからない金融資産にもかかる資産課税の役割を果たすことだ。その捕捉率は100%で脱税は不可能だから、富の分配は公平になる。政府の補助金や公共料金はすべて名目ベースなので、インフレで軽減される。だから「インフレは不公平だ」という批判は誤っている。

特にインフレ税でしかできないのは、世代間の所得分配を公平にする効果だ。金融資産の7割をもつ老人の預金が目減りする。社会保障給付の減額は政治的にきわめて困難だが、インフレで実質的に減額できる。年金はマクロ経済スライドの先送りで大幅に過払いになっているので、凍結すれば実質額が減る。

円安で資本逃避が起こると通貨危機になる

ただしインフレ税には欠点がある。ほとんどの人は課税に気づかないので、知らないうちに毎年3%増税され、預金がこの5年で1割以上減った。特に日本人はデフレに慣れていて貨幣錯覚が強いので、インフレ税を取りやすい。金融リテラシーの低い老人や専業主婦などに負担が集中する。

他方、インフレになると円は減価するので、合理的な人は実物資産や海外にキャピタルフライトが起こる。国際資本移動が完全なら、インフレ税は無効である。インフレ税は金融資産への一律課税だから、消費をゆがめないという意味の(事後的な)効率性は高いが、それが事前にわかっていると無効になるのだ。

今の円安の原因は日米金利差ではなく、高市政権によるインフレ税のリスクである。それは日本国債がデフォルトするリスクではなく、インフレ税で実質債務のデフォルトが起こるリスクなのだ。その証拠に、高市氏が自民党総裁に当選した10月4日にドル/円は6円も上がり、その後ほとんど下がっていない。

インフレになると円が下がる(外貨が上がる)が、これは輸入品への一律課税になり、物価が上がる。これによって名目金利が上がるので、元利合計の政府債務が増え、さらにインフレになる…という悪循環でハイパーインフレになる可能性もある。

円安はコントロールできるか

インフレ税は、日銀にはコントロールできない。高市首相が「積極財政」を掲げている限り、債券市場は国債を売り、外為市場は円を売る。トルコのようにバラマキ財政と低金利でインフレが激化するとキャピタルフライトが起こり、円が暴落する。

インフレと円安をコントロールするには、バーナンキも指摘したように、財政と金融の協調が必要である。政府と日銀のアコードを改正して3%のインフレ目標を設定し、日銀が国債を引き受けて為替レートをコントロールする必要がある。

インフレ税は、先進国では前例のない実験である。トルコやアルゼンチンの例をみると、資本逃避で国内の産業が壊滅するリスクもあるが、幸か不幸か日本人の現金志向は変わらないので、円安はゆるやかに起こるだろう。

消去法で考えると、膨大な政府債務が積み上がっても与野党ともにバラマキや減税ばかり主張する日本の状況では、財政の抜本改革は不可能である。法改正も国会の同意も必要ないインフレ税は政治的に容易であり、唯一可能な財政再建策ともいえる。

 

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Sun, 28 Dec 2025 06:00:23 +0000 Sun, 28 Dec 2025 06:00:23 +0000 https://agora-web.jp/archives/250518022350.html https://agora-web.jp/archives/2055318.html https://agora-web.jp/archives/2042433.html https://agora-web.jp/archives/250306033105.html https://agora-web.jp/archives/240909082244.html
https://agora-web.jp/archives/251227062116.html 【2025年】人気記事ランキングTOP10 https://agora-web.jp/archives/251227062116.html 2025年も残すところあとわずか。今年もアゴラをご愛読いただきありがとうございました。

年末恒例、2025年アゴラでアクセス数の多かった人気記事TOP10を紹介いたします。

gustavofrazao/iStock

2025年アクセス数 TOP10

1位:ガソリンの駆け込み給油をしてはいけない(黒坂 岳央)

ガソリンの駆け込み給油をしてはいけない
黒坂岳央です。 補助金縮小でガソリン5円程度値上げになるニュースが話題を呼んでいる。だがガソリン代が上がること自体が問題ではない。値上げ前の駆け込み給油で大行列を作ったことである。 歴史を学ぶことでわかるのは、人類がいかに歴史か...

2位:鈴木農水相の目玉政策「おこめ券」が自治体に拒否されJAへの利益誘導は失敗か(アゴラ編集部)

鈴木農水相の目玉政策「おこめ券」が自治体に拒否されJAへの利益誘導は失敗か
政府が物価高対策として推奨する「おこめ券」を巡り、自治体の反発が広がっている。配布事務の負担や費用対効果の低さに加え、政策全体の妥当性にも疑問が強まり、高市政権の経済政策への不信感を深める事態になっている。 政府は物価高への対...

3位:ハマると人生が破滅する「3つのS」(黒坂 岳央)

ハマると人生が破滅する「3つのS」
黒坂岳央です。 偉大なる投資家・ウォーレン・バフェット氏は「ハマると破滅する3つのLがある。Liquor=酒、Loan=借金、Love=恋愛だ」といった。 これをなぞらえて、筆者は「ハマると人生が破滅する3つのS」があると思って...

4位:水素は失敗すると分かっているのに…(松田 智)

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豪州と欧州で停滞する水素プロジェクト 昨年11月のニュースだが、関西電力が丸紅などと豪州で計画していた水素製造事業から撤退するとの報が流れた。プラントや収支計画などの基本設計を詰める中で、製造コストが想定以上に高く、採算に合わないと判...

5位:Switch2を確実に手に入れる方法(金尾 泰之)

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4月4日の拙稿「進化するSwitchが次に食い荒らすのは何処か」で紹介したNintendo Switch 2が市場に投入された。 結果、Switch2は初動4日で世界販売台数350万台に到達。社会現象となった初代Switchが...

6位:中国人は本当に日本の土地や不動産や水源を買いまくっているのか、実際に調べてみた(永江 一石)

中国人は本当に日本の土地や不動産や水源を買いまくっているのか、実際に調べてみた
ふと沸き起こった疑問・・・・ 「マンションのオーナーが中国人に変わったらいきなり賃貸料を値上げされた」 「中国人がマンションを買って規約違反の民泊をしている」というマスコミの報道がありましたよね。 先日はニセコで中国人が建築物を建てて...

7位:薪ストーブ地獄の始まりと顛末②(青山 翠)

薪ストーブ地獄の始まりと顛末②
2016年の初夏 2016年の冬から始まった連日連夜の煤煙地獄は、その年の5月中旬、汗ばむ季節まで続いた。 それまで地域を覆っていた濁って燻った重たい空気が消え去った。 近隣の家屋はやっと安心し窓を開き換気ができ、洗濯物を...

8位:職場で関わってはいけない40代の特徴(黒坂 岳央)

職場で関わってはいけない40代の特徴
黒坂岳央です。 若い頃、筆者は40代以降の中高年に対して、「立派な人も多いが、一方でどこか対応が面倒なタイプも一定数いる」と感じていた。そして、自らがその年齢になって、「なぜ面倒な中高年が生まれるのか」が実感をもって理解できるようにな...

9位:職場で言うと信用が消える「一発アウトなNG発言」(黒坂 岳央)

職場で言うと信用が消える「一発アウトなNG発言」
黒坂岳央です。 「発言」ほど誰でも気軽に出来て、あっさり人生を終わらせるものはない。たった一言がそれまで蓄積した信用を蒸発させてしまう危うさがある。そして本人は気づかないまま、相手から無言でレッドカードをされてしまう発言があると思って...

10位:地球温暖化が加速した原因は中国とインドの大気汚染の減少 (池田 信夫)

地球温暖化が加速した原因は中国とインドの大気汚染の減少
2024年の世界平均気温は1.6℃で、パリ協定の努力目標1.5℃を超えた。これについて日経新聞を初めとするマスコミは「脱炭素化の加速が必要だ」と騒いでいるが、それは逆である。脱炭素化で温暖化は加速するのだ。 24年の世界気温上昇1.6...

2025年のランキングは、黒坂岳央氏の記事がトップ10のうち4本を占める結果となりました。

1位の「ガソリンの駆け込み給油」をはじめ、3位の「人生が破滅する習慣」、8位・9位の「職場での処世術」など、インフレや先行き不透明な社会情勢の中で、読者の関心がマクロな経済論議よりも、いかに個人の生活や資産を守り抜くかという「生活防衛」や「自己衛生的」なテーマに強く向いた一年だったことがうかがえます。

政策面では、2位の「おこめ券」や4位の「水素エネルギー」など、政府の補助金行政や実現性の乏しい国策プロジェクトに対する批判的な論考が多くのアクセスを集めました。効果の薄いバラマキや、官製市場への納税者としての厳しい視線は、依然としてアゴラ読者の大きな関心事です。

一方で、5位の「Switch2」や7位の「薪ストーブ」の顛末記など、政治経済にとどまらない個人のライフスタイルや趣味に関する話題もランクインしており、硬軟とりまぜた多様な視点を提供できた一年でもありました。

2026年も、アゴラは聖域なき言論プラットフォームとして、皆様に価値ある情報と議論をお届けしてまいります。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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Sat, 14 May 2016 08:38:59 +0000 Sat, 14 May 2016 08:38:59 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html
https://agora-web.jp/archives/251226211909.html 進化する慈善活動:富裕層の使い切れない資産の使い道 https://agora-web.jp/archives/251226211909.html 年末の風物詩といえば募金。赤い羽根共同募金とか歳末助け合い募金、NHK歳末たすけあいなどが知られていると思います。が、募金する人はなんとなく良いことをしているような気がするけれど実際にそのお金がどのように使われているかを知るチャンスはあまりありません。小額なら気にもならず、なんとなく良いことをしたぐらいのスーッとした気持ちになるのでしょう。

では震災など巨大災害が起きた時の募金はどうでしょうか?確かに募金で集めたお金はその災害被害の対策に使われると思いますが、実際にはどういう流れで自分のお金がどこに行ったのか知ることはなかなか難しいものです。また募金の種類によっては事務経費がかかるところがあり、2割ぐらいのお金が人件費や事務費用で使われ、1万円寄付したのに実際には8000円しか相手に流れないこともあります。よって最近では募金の際に「直接全額〇〇に寄付されます」と謳っていることもあります。

もう少しレベルアップしてくると社会貢献があります。これは何かあった時の募金ではなく、恒常的にある目的意識を持って資金を注入したり労力をかける行為です。英語でフィランソロピー(Philanthropy) と称するものです。日本ではどちらかといえば天災など何かあった時に寄付がどっと集まる傾向がありますが、北米では定常的な寄付が社会全般に広く浸透しているので誰でも気になることへ金銭的社会貢献はしやすく、多くは一定額の税控除の対象になります。これがいわゆる富裕者層になると巨額の寄付をすることがよく知られています。

ビルゲイツ、ウォレンバフェット、ジョージソロス、ビルクリントン…彼らは巨額の寄付をしていますが、基本的な考え方は社会循環であります。富裕者層はその所有資産の多さから、時として激しい批判にさらされますが、彼らは何らかの形で社会貢献していることが多く、その資金が社会に循環し、様々な社会活動に利用できるようになっています。

ダイエットコークを飲みながらビル・ゲイツ氏とカードゲームに興じるバフェット氏

ただ、彼らが出す寄付の額は巨額であり、使い方次第では逆に批判される種にもなりかねません。事実、それらはフィランソロキャピタリズム(Philanthrocapitalism)と称し、その資金の出し手はフィランソロピストと称され、社会一般ではあまり受けは良くないのです。ただ私から見れば慈善活動の進化形の過程にあると考えています。つまり批判する人はフィランソロピストは名声を気にして、その資金供与の社会的責任を負わないなどと声をあげるのですが、それはこれから皆が考えていくべき課題であると思います。

ビルゲイツ氏やメタのザッカーバーグ氏らの考え方の中には、自分が死ぬまでに使い切れない資産を抱えている中で、死んだ後に無駄に巨額資産を子孫に相続するのではなく、大半は社会に還元し、自分には自分の余生が困らない程度に過ごせるだけ残せばよいという考え方があります。これにはひどく同情し、また賛同したいのであります。

私も今年、カナダ連邦政府から教育財団運営の認可をもらったのでその活動が来年から本格化します。といってもまだ資金ゼロであり、来年から機能化させます。私はここにある実験を組み込んでいます。「無限もやし」とか「無限がちゃ」といった言葉がありますよね。この「無限」の仕組みを取り込むのです。

まず寄付をする私の利潤追求会社では通常の業務以外に資金運用をしています。このブログでよく話題にするように北米の株式市場や資本市場で運用しています。運用者は私です。その運用益は毎年増えこそすれど、減ることはありません。配当収益と利息収入が多いのですが、一定額をデリバティブを組み込んだものに投資をしています。もちろんキャピタルゲインもありますが、それはおまけ。その運用益から一定額を財団に毎年寄付します。財団は受け取った資金を基金として同様に運用します。こちらの法律で基金の4-5%は毎年、実際に寄付が求められるのでそれを実行しますが、4-5年目以降は基本財産である基金が毎年の寄付資金流入と運用益で雪だるま式に膨れ上がるのです。

実際に財団が寄付を行うのは財団の運用益内で留めることで基本財産の基金に手を付けることなく、毎年増える結果になり、寄付可能額が毎年増える仕組みなのです。これが私の計画する「無限寄付」であります。まぁ、これも考え方としてはいろいろ言われるのでしょう。

ただ、ここで述べたのはあくまでも財団の財政の話であり実際に私がフォーカスしているのは何にどうお金が使われるのか、であります。現在、あるカナダの大学と具体的な話がまとまりつつあり、来年からそこに資金を継続的に提供する予定ですが、そのお金が何にどう使われるのか私なりに把握しています。

私は万能者ではありません。小さな個人事業主の上に、私自身、あらゆる方面の仕事をしているため、財団運営の細かい話などもできないのです。ただ財団が健全な形になるには私の資金運用能力が問われます。いかに安定的に運用益を得るか、これが私に求められる期待と使命だと思っています。また、誰にどんな形で使われ、それが喜ばれるのか、成果はあるのか、というところは把握したいわけですが、自分の財団だからそれが可能になるのです。

ひろの壮大な実験の一つだと思っていただければ結構です。もしも5年か10年たってこの仕組みがワークするなら日本でもカナダでもいろいろな人が展開したらよいでしょう。

くれぐれも私が一番重要だと思っていることは寄付したお金が生かされてほしいということです。もらう側は時として「タダだから」という「フリーマネーただ乗り論」となる場合もよく耳にします。せっかく出すのだからありがたいと思ってもらえるようなそんな仕組みを作るのが私のこれからの仕事かもしれません。

慈善活動は進化するものなのです。そして往々にしてそれは異形のところからスタートし、怨嗟も含め、必ずしも良く思われないこともあり、社会のいびつさを感じることもありますが、そんなことを気にしていたら何もできないので私はあえてスタートする前にプランをご披露させていただきました。誰だってある程度の年齢になったら社会還元したいと思うことがあると思います。その表現の一環だと思っていただければ嬉しいです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月28日の記事より転載させていただきました。

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Sun, 28 Dec 2025 02:55:09 +0000 Sun, 28 Dec 2025 02:55:09 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html
https://agora-web.jp/archives/251227120046.html 物価高なのに過去最大の予算でインフレ促進、日銀はインフレ抑制の利上げという矛盾を高市首相は知っている https://agora-web.jp/archives/251227120046.html 政府は26日、122兆円という巨額の26年度予算案を決めました。高市首相の「責任ある積極財政」は政治的なスローガンですから、何が日本の財政問題か矛盾かについては語っていません。

市場は日本の財政の先行きに懸念を持っていますから、金利高、円安になっています。積極財政を続けるならば、主要国の中では日本だけにない財政独立機関を設け、政権、政治とは距離を置いた財政政策の提言、検証、チェックをしていくことにしなかったのか。高市首相の一存で財政政策をやっていくのではないというメッセージを市場に送るべき時でした。

新聞社説は「歳入面はインフレ頼み、歳出面も与野党による要求丸のみが目立つ」(日経)、「利払い費は2.5兆円増え、13兆円となり、予算全体の増加分7.1兆円の3分の1を占める」(朝日)、「税収は過去最高の83.7兆円を見込んだ。その反面、国債の元本返済、利払いを含む国債費は過去最大の31.2兆円に膨らんだ」(読売)と指摘しています。

インフレ税となぜ言わぬメディア

そこまで指摘するのなら、「物価高によるインフレ税がまさに導入されているに等しい」と、主張してほしいものです。インフレ税とは俗称で、正式の税制用語ではありません。政府はそう言わないから、メディアはインフレ税という言葉を使って高市財政の問題点を洗い出すべきなのです。

税収は7.6%増はインフレ下でモノ、サービス価格が上昇し、消費税が4.5%増の26.7兆円に増えたことが大きい。法人税も企業の価格引き上げなど売り上げ増などで7.1%増の20.7兆円になりました。

国債残高は1100兆円をこえているのですから、税収増は国債の償還(返済)にあてることを最優先しなければなりません。それを積極財政の名のもとに税収増をバラマキに使い、それでも足りないので新規国債を29.6兆円も覇発行しているのです。

ケインズ主義に疑念を持ったブキャナン氏

米国の経済.財政学者のブキャナン氏(1986年、ノーベル経済学賞)の学説を紹介しましょう。「不況期の財政赤字(国債発行)には反対がない。好況期になったら財政を黒字になるように増税、歳出抑制(国債償還)をしようとすると、有権者の抵抗が大きく、それができない」、「景気回復したら財政状態を改善しようは無理で、最初から均衡財政に努めるべきだ」と。伝統的な財政政策であるケインズ主義に批判的な主張でした。

まして好況期に財政拡張(積極財政)をすべきではないです。現在、企業業績は改善し、名目賃金は上がる好況期です。それなのに高市首相は「積極財政で経済を強くする」と、繰り返し発言しています。ブキャナン氏いうあるべき財政政策と真逆のことをしているのです。

徒党を組んで動くリフレ学者に失望

こともあろうに、経済財政諮問会議の民間議員の学者、専門家4人が連名で「名目GDPの国債残高比を下げることを求める」などと提言しました。アベノミクスの不成功で消えたはずのリフレ派(超金融緩和、財政拡張)の人たちです。学者、識者は徒党をくんではいけません。あくまで個人として発言して責任を負い、間違ったら検証、釈明することです。

アベノミクスを後押しした人達でしょう。日銀自身が一年前、アベノミクスに否定的な検証報告を公表しました。それに対する見解をまず明らかにして、提言するのが学者としての筋道です。懲りない人たちです。

インフレを後押しする高市氏の真意

高市政権は国家債務(国債残高)の名目GDP(26年度691兆円)比を下げていけば、財政は健全化に向うと主張しています。名目GDPはインフレ下では増加し、その比率は下がるでしょう。高市氏は2,3%程度のインフレの継続を望んでいると、私は推測します。インフレのほうが税収も増え、財政運営がやりやすくなる。ですから、「景気回復とインフレ期に財政膨張させるべきではない」という経済理論とは真逆のことをやっているのです。

国債利払い費は26年度は13兆円です。それが28年度には16兆円、34年度には25兆円と急速に増えていきます。26年度の国債費(元本の償還、利払い費)は31.2兆円で、社会保障費(39.3兆円)に接近し、利払い費だけでもすでに防衛費(8.9兆円)を超えています。

インフレで税収が増えると、瞬時に使ってしまう。その後から国債費がどんどん増えていく。時間差がある。どうやって将来、予算を組めばいいのかを想像すると、恐ろしくなる。現在の税収増に喜んでいてはいけない。

日本はどこの先進国にもある財政独立機関(政権から独立し、財政展望を持ち、持続可能な財政政策を提言する)を設立すべきです。このままでは、どこぎかの時点で消費税率引き上げ(26年度の消費税収は26.7兆円)が不可避になるでしょう。そうでもしないと、市場が納得しない。国債償還の60年ルール(60年で完済)を80年ルールとかに変更しようと、だれかが言い出すかもしれません。単なる国債償還の先のばしにすぎません。

高市首相 首相官邸HPより


編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2025年12月27日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。

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Sun, 28 Dec 2025 02:50:46 +0000 Sun, 28 Dec 2025 02:50:46 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html
https://agora-web.jp/archives/251226211930.html AI、ウクライナ和平案の行方に懐疑的 https://agora-web.jp/archives/251226211930.html ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、米国の政治誌「アクシオス」との会見で、「トランプ大統領と28日の日曜日、フロリダ州のトランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」で戦争終結計画について話し合う予定だ」と語った。

欧州首脳たちと和平案について電話会談をするゼレンスキー大統領,2025年12月26日、ウクライナ大統領府公式サイトから

ゼレンスキー氏は「トランプ氏との会談では、2022年から続く戦争終結に向けた枠組みについて合意に達することを期待している。合意すれば、その和平案に対し国民投票を実施する用意があるから、ロシア側は少なくとも60日間の停戦に同意しなければならない」と述べている。

「トランプ氏が日曜日にゼレンスキー氏と会見する」というニュースが報じられると、「会談は米国とウクライナの和平案での重要な和解を意味する。トランプ大統領は以前、合意が達成可能な場合にのみゼレンスキー大統領と会談すると述べていたからだ」と受け取る声が聞かれる。オーストリア国営放送(ORF)のワシントン特派員は26日、夜のプライムタイムのニュース番組で、「トランプ氏が日曜日、ゼレンスキー氏との会談に応じたということはいい知らせだ」と述べ、会談で何らかのブレークスルーが期待できるかもしれないと述べている。

ゼレンスキー氏は「我々は一日たりとも無駄にするつもりはない。20項目の和平案は90%完了している。我々の今の仕事は、全てを100%確定させることだ」と述べ、トランプ大統領との会談が望ましい結果をもたらす可能性があることを示唆している。

一方、トランプ大統領は、26日のニュース誌「ポリティコ」に掲載されたインタビューの中で、「私が承認するまで、彼(ゼレンスキー氏)には何も残らない。彼が何を持っているか見てみよう」と述べ、「ゼレンスキー大統領との会談はうまくいくと思う。また、プーチン大統領ともうまくいくと思う」と強調した。

ウクライナが依然として支配するドンバス地方の一部をロシア側に明け渡すという要求については、まだ合意に至っていない。なお、独軍事専門家は27日、ドイツ民間放送ニュース専門局NTVとのインタビューで「ゼレンスキー氏にとって、ドンバス地方(ウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州)の放棄は自殺行為だ」と指摘、領土の割譲問題が如何に難しいかを説明している。

ロシア紙コメルサントの報道によると、プーチン大統領は最近、交渉の意向を示したが、ウクライナ東部のドンバス地方全体の併合を主張している。プーチン氏の立場は、8月の米ロ首脳会談でロシア側が提案した内容と変わらず、ドンバスはロシアに帰属する一方、それ以外の地域での部分的な領土交換の可能性を排除していないというものだ。

キーウが米国のウクライナ戦争終結計画の改訂版を提示したことを受け、モスクワは「ウクライナが協議を妨害した」と非難した。ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は26日、ロシア国営放送で、「改訂版はモスクワがここ数週間ワシントンと交渉してきた内容とは根本的に異なる。ウクライナとその支援国、とりわけ紛争の解決に賛成していないEUは、協議を妨害する動きを強めている。この危機を引き起こした問題を適切に解決しなければ、最終合意に達することは不可能だ」と強調した。

最後に、人工知能(AI)のチャットGPTにウクライナ和平案の成功の見通しなどを聞いてみた。

―ウクライナ和平20項目は成果を挙げるだろうか。
「ゼレンスキー大統領が提示した20項目和平案の成功率は、現時点では非常に低い。なぜなら、領土問題(クリミア、東部地域)と『NATO加盟断念・中立化』の核心部分でロシア側との隔たりが大きく、米国も調整中であり、ロシアが修正に反発する姿勢を示しているため、根本的な合意形成が極めて困難な状況だからだ。成功には、米欧の『安全保証』の具体化とロシア側の譲歩が不可欠だが、現状は双方の要求が真っ向から対立している」

―成功を阻む主要要因は何か。
「領土問題の深刻な対立だ。ゼレンスキー案は自国領土からの撤退を拒否し、米国の提案した自由経済地域についても国民投票にかける案を主張しているが、ロシアは現状の占領地維持を強く求めている。また、『安全保証』と『中立化』の相違だ。ウクライナはNATO加盟国並みの安全保証を求めているが、ロシアはNATO加盟の断念と中立化を要求しており、この点での妥協が難しい。ロシアは和平案の修正に反対しており、修正に応じる姿勢を見せていない」

―和平案の今後の行方について
「米欧からの強力な安全保証だ。ウクライナが侵攻されないための具体的な安全保証が提供されれば、ウクライナ側の交渉余地が広がる可能性がある。領土問題の一部を国民投票にかける案が、合意形成の糸口になる可能性も排除できない。20項目はウクライナの基本姿勢を示すもので、交渉の出発点としては重要だが、ロシアが受け入れ可能な形に修正される見込みは低く、合意に至るまでの道のりは非常に険しい。いずれにしても、ロシアと米国の間での調整が続いており、2025年末から2026年初頭にかけての首脳級の交渉が、この案が実効性を持つかどうかの分岐点になると予測される」


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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Sun, 28 Dec 2025 02:45:30 +0000 Sun, 28 Dec 2025 02:45:30 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html https://agora-web.jp/archives/251228102453.html
https://agora-web.jp/archives/251227123451.html 中国共産党の対日制裁で、日本観光で稼いできた「一条龍」中国人に大打撃 https://agora-web.jp/archives/251227123451.html

さて、日本のマスゴミが「中国様の機嫌を損ねるな!」
というために高市総理が間違った発言をしたかのように騒ぎ立て、
これに中国共産党が乗っかって対日制裁を行っているのが現状ですが、
こんな記事が出て来ました。

【在日の中国系観光事業者が苦境 日中対立のあおりで】

中国政府による日本への渡航自粛要請を巡り、日本で中国人旅行客を対象として「一条龍(一匹の龍)」と呼ばれるビジネスを展開してきた同国系企業が苦境に立たされている。

中国政府は11月14日、自国民に対し日本への渡航自粛を呼びかけた。これは11月7日の高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁に報復する動きと見られており、中国はこの発言を内政干渉とみなしている。

中国人客は訪日外国人の中で最大の割合を占めて…
~以下会員専用~
(2025/12/25 日経新聞)

中国のビジネスモデルは
中国人がその商流の末端までも中国人で独占し
利益を中国人だけが独占する「一条龍」というものが大きく、
このため中国共産党が進める一帯一路戦略においても
アジアやアフリカで展開される開発は
「現地の人を採用せず中国人労働者を現地に連れて行って工事を行う」
というものになっています。

中国共産党が対日制裁として日本への観光旅行を制限していますが、
それによって被害を受けているのは
この一条龍を形成して利益を上げてきた中国人が主となっています。

日本のマスゴミの言う
「高市の発言のせいでホテルが赤字だー!」
等々騒いでいるものがどれもこれも中国人経営のものだった事は
このブログでも以前取り上げたとおりです。

しかもこの一条龍には違法民泊や白タクなんかも含まれています。
そういうのが行き詰まるのはむしろ大歓迎ではないでしょうか?

一条龍モデルの大きな問題点は、
日本の治安、インフラ、公共設備等々を利用しながら、
金銭的利益も、利用者のデータ等々も全て中国に回収される形になっている事です。

日本経済への寄与は極めて限られたものになります。

中国が日本のいろんなものにフリーライドして稼ぐビジネスモデルなのです。

こんなものを観光立国などとほざいて
積極的拡大の旗振りをしていた菅義偉や彼のブレーン、
さらにオーバーツーリズムが問題となっても
中国への過剰な譲歩を拡大しようとした岩屋毅などは
批判されて当然ではないでしょうか?

そして日本の利益にならない事がわかってきた以上、
制限をすることで日本と日本人の利益になるものが拡大していくようにすべきでしょう。


編集部より:この記事は茶請け氏のブログ「パチンコ屋の倒産を応援するブログ」2025年12月26日のエントリーより転載させていただきました。

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Sun, 28 Dec 2025 02:40:51 +0000 Sun, 28 Dec 2025 02:40:51 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html
https://agora-web.jp/archives/251227230239.html 「フラット35」利用者急増の裏で住宅ローン証券の逆ザヤが問題に? https://agora-web.jp/archives/251227230239.html 都心の住宅価格高騰と金利上昇を背景に、日本の住宅ローン市場は大きな転換点を迎えている。フラット35の融資上限引き上げ、固定金利への回帰、50年ローンやペアローンの拡大が同時に進み、若年世代の住宅取得は長期の賭けになりつつある。

  • 住宅金融支援機構は、フラット35の融資限度額を2026年4月から8000万円から1億2000万円に引き上げる。
  • 上限額の見直しは約20年ぶりで、都心部の住宅価格高騰への対応が目的。
  • 日銀の利上げを背景に、変動金利の上昇リスクを避ける動きが強まり、固定金利型ローンの需要が拡大している。2025年7〜9月のフラット35利用申請は前年同期比で約5割増加。
  • 住宅ローン利用者の約4人に1人が返済期間35年超の超長期ローンを選択している。さらに20〜30代を中心に、50年ローンや夫婦で借りるペアローンが急増している。

  • 都内では1億円超の物件が珍しくなく、単独ローンでは購入が難しい。
  • 金利はやや高めだが、審査は比較的緩やかで、個人事業主や団信に通らない人も利用可能、ペアローン対応で、借入上限は最大2.4億円な上、保証料不要、手数料が低い。

  • ただしフラット35を担保とする住宅ローン担保証券では、金利上昇を受けて買い手不足が目立つ。低金利期に発行された債券の含み損が拡大し、売却が難しい状況だという。

  • フラット35の金利が証券利回りを下回る逆ざやも発生し、制度拡大が進む一方で、金融市場の歪みも広がっている。

フラット35の融資上限引き上げは住宅購入を後押しする一方、50年ローンやペアローンを前提とした「長く働き続ける人生設計」を若年世代に求める制度でもある。住宅政策の拡充が家計の安心につながるのか、それとも将来リスクを先送りするのかが、今後の大きな論点となる。

MASA Sibata/iStock

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Sun, 28 Dec 2025 02:35:47 +0000 Sun, 28 Dec 2025 02:35:47 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251228230405.html https://agora-web.jp/archives/251229075114.html
https://agora-web.jp/archives/251226210256.html 日本人はストリートピアノの本当の意味を何も知らない https://agora-web.jp/archives/251226210256.html 日本ではテレビ番組などで日本や海外のストリートピアノを扱った番組が出始めたため、近年は日本国内の様々なところでもストリートピアノを置くようになりました。

しかし私がなんだか違うなと感じているのは、日本のテレビや動画では、なぜかプロの演奏家や芸能人がストリートピアノを弾いてそれを番組にしたり、動画にして再生数を稼いでいるということです。

2025年12月9日発売の私の最新書籍である『世界のニュースを日本人は何も知らない7 フェイクだらけの時代に揺らぐ常識』でも解説しましたが、日本人は海外からやってきた新しいことの歴史や背景を知らないので、その根源を理解せず、表面的になぞっているだけだということがよくあります。

そもそも実はストリートピアノというのが始まったのが、イギリス北部のシェフィールドです。

2003年にアパートに引っ越したけれども、中古のピアノを置く場所がなかった大学院生のダグ・ペアーマンさんが、ケンブリッジ大学を卒業した従兄弟のヒュー・ジョーンズさんの勧めに従って、シェフィールドの街中の道に中古のピアノを置いて「弾いてください」と掲示したのです。

シェフィールドのストリートピアノ Wikiwandより

日本の皆さんはシェフィールドがどういうところか知らない方が多いと思いますが、ここはもともとスプーンやフォークなどの金属製品を作っていたヨークシャーの街で、今は製造業がすっかり下火になったイギリスでは、過疎化している感じの街です。

ヘビーメタルとハードロックに詳しい方であれば、デフ・レパードというバンドの出身地であることをご存知だと思います。もともと工業町ですから、デフ・レパードのメンバーも工場で働いていました。

デフ・レパード Wikipediaより

私はここに何回も行っていますが、かつての元気はなく、それといった仕事もないので、若い人はロンドンや海外に行ってしまいます。ヨークシャーの街はどこもそんな感じです。

イギリスというのは日本に比べると大変格差の大きなところです。

今だけではなく、昔から音楽に触れることができる人々というのは、中の上の階級に限られています。

クラシック音楽やバレエといったものは、裕福で高学歴の管理職になるような人々や富裕層のものです。

日本のようにたくさん楽器店があるわけではなく、教室も個人レッスンが主体なのであまりありません。

日本はヤマハやカワイ楽器がピアノやエレクトーンを売るために全国に音楽教室を作り、格安の楽器を売ってくれたので、音楽が大衆に普及しましたが、イギリスを始めとして欧州ではそうではありません。

やはり音楽というものに階級的な縛りがあるので、大衆にクラシック音楽を普及させようという意図が音楽界にもメーカー側にもなかったのです。

そしてイギリスは日本よりも格差が凄いですから、公立の学校でも音楽の授業は全く充実していません。

多くの人は楽譜も読めませんし、合唱すらきちっとできません。

今ではさらなる予算カットで、公立の学校は音楽の時間がほとんどないような状況のところも多いので、音楽に触れさせたい親は自費で音楽教室に子どもを通わせます。

私立の学校の場合は、学校の中でほとんどの生徒が小さな頃から個人レッスンを受けるので、ピアノやバイオリン、チェロ、トランペットといったオーケストラで使われる楽器を演奏することができます。

さらに彼らがイギリス国教会系の学校やカトリック系の学校に行っているのであれば、教会向けの合唱を熱心にやりますから、プロ並みに歌うことができます。

しかし、公立の学校では合唱コンクールに出ることさえも大変困難なのです。

公立の学校では、音楽の代わりに麻薬や暴力が当たり前になっています。

イギリスというのはそういう環境なのです。

そしてこれは欧州の他の国や北米でもあまり変わりません。日本人が理解していない格差です。

そういう格差がある中で、ピアノをアパートに置けなくなった若い人が、道に使わなくなったピアノを置いて誰でも弾いていいとやってくれたのです。

ペアーマンさんとジョーンズさんは、単にピアノを人に活用してほしいと思っただけでした。

しかし、ペアーマンさんが大学院生で、ジョーンズさんはケンブリッジ大学を出ているということからもわかるように、彼らはイギリスの中の上の階級であり、知識階級です。

つまり彼らは音楽に触れる環境にあって、親がピアノを買うことができる富裕層だったのです。

そういう方の少なからずは、特にイングリッシュ系の場合は、やはりキリスト教的な考え方がありますので、社会に貢献をしなければならない、何かを与えるべきだという考え方があります。

これはイギリスだけではなく、北米や欧州の中流以上の階級の中にある考え方です。

つまり、パブリック・グッドというものに対して貢献をすること。これはキリスト教的な精神の根幹の一つでもあります。

社会に貢献をすることが神に対する奉仕だからです。自身は無神論だと言っている人でも、潜在意識の中にそのような感覚があります。

ですから、彼らは奉仕活動やボランティアに大変熱心です。日本人の私から見ると、まるで何かに取り付かれたように一生懸命奉仕活動をやるのです。そしてクリスマス時期ともなれば募金を熱心にやります。

彼らが寄贈したピアノにより、ピアノに一生触れることがないたくさんの人々がピアノに触れる機会を得ました。その中には、一度もピアノのレッスンを受けたことがない人や、ピアノを見たこともない人も多かったのです。

そして、寂れていたシェフィールドの街中にも楽しみがもたらされました。ピアノの周りに人が集まって、街中に音楽が流れるようになりました。

そのような環境では、何か悪いことをしたり、暴力を振るうという人も抑制されます。つまりこれは、街の中にたくさんの花を植えるのと同じことなのです。

欧州や北米では、街中の犯罪を防止するために、素敵な花壇を作ったり、ベンチを置くことがあります。

これは環境を整えて暴力を防止するための施策であり、コミュニティを作るための手段なのです。そして、この無償のピアノがその役割を果たしたわけです。

そして2008年になると、シェフィールドよりもさらに街が荒れているバーミンガムで、「Play Me, I’m Yours」というプロジェクトが始まり、ピアノが置かれるようになります。

この試みは海外でもニュースになり、ヨーロッパを中心に各国に広がっていったのです。

つまり、ストリートピアノのもともとの歴史やその背景にある精神を考えた場合、たくさんのピアノのレッスンを受けて音大に行ったような人やプロになった人が、ピアノに触れる機会がない人や素人の人を差し置いて、プロの技をみせびらかすといったことは、その精神には全く合わないということなわけです。

むしろコミュニティを作り上げるという信念を破壊するような破壊的な行為であります。

プロが流暢にピアノを弾いてしまったら、ピアノに全く触ったことがない人や初心者が、触ってみようと思う気分が削がれてしまいます。

音楽というのは、人の心に潤いをもたらし、喜びを与えるものでなければなりません。

しかし、それがプロや裕福な人々が、自分が受けてきた教育や技能をみせびらかす自己承認の道具になってしまっては意味がありません。

この人々は一体、何のために音楽をやるのでしょうか。自分のことを自慢するためですか。

音楽というのは、聞く人がいて成り立つものです。聞く人たちのことを全く考えない音楽は、ただの自己満足に過ぎません。思いやりや社会への奉仕といった精神からは、全くかけ離れたものになってしまいます。

私は、プロが自慢げな顔でストリートピアノを弾いて動画を上げているのを見ると、とても悲しくなります。

あなたたちがたくさんのレッスンを受けられたのは、保護者の資産やお金がたくさんあったからであり、そういったお金は、社会のたくさんの人々がサービスや商品を買ったり、税金を払ってきたからこそ成り立っているものであります。

世の中の人々がいなければ、あなた方の保護者もお金を稼ぐことはできないのです。

日本ではこのように、ストリートピアノがただ単にかっこいい何かだと思われていますが、その歴史を考え、またストリートピアノが最初に置かれた場所の格差や、経済的な厳しさといったものにも目を向けてほしいと思うのです。

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海外かぶれの日本人が言わない 欧米住んだら地獄だった件

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Sat, 27 Dec 2025 22:00:56 +0000 Sat, 27 Dec 2025 22:00:56 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229052149.html https://agora-web.jp/archives/251226220847.html https://agora-web.jp/archives/251228101305.html https://agora-web.jp/archives/251227054032.html https://agora-web.jp/archives/251225023050.html
https://agora-web.jp/archives/251227104653.html 「ロシア崩壊」の可能性に全てを賭ける「ウクライナ応援団」の苦境 https://agora-web.jp/archives/251227104653.html ロシア・ウクライナ戦争の停戦協議が、じりじりと進んでいる。今やゼレンスキー大統領のウクライナ政府も、「20項目の和平案」を出し、ドネツク州に経済特区を設置するといいう対案を出してくるところまで来た。「20項目の和平案」については、まだまだ非現実的な要素がある。さらなる協議が続くだろう。しかし対案に対案で応じるやり取りが見られるようになっている。トランプ政権発足前と比べれば、すでに大きな変化が訪れていることは明らかである。

この状況で、苦しい立場に陥っているのが、「ウクライナは勝たなければならない」と「主張」してきた、世界中の「ウクライナ応援団」の方々である。もうウクライナは勝たなくていい、とは言えないので、過去の言説については黙っているか、微妙な修正を加え始めている。しかしまだ停戦を支持はしたくないため、とにかくいずれにせよ何とか戦争が続いていくことを望んでいるようである。

ウクライナ政府提案20項目和平案と日本の識者の動向:千々和泰明氏の議論を題材に
本稿は、トランプ政権下で進展する停戦交渉とウクライナ政府の20項目和平案を踏まえ、欧州・日本の疲弊と日本の専門家言説を検討する。とくに千々和泰明氏の議論を題材に、停戦拒否と戦争長期化を正当化する前提――ロシア全面占領意図や「アフガン化」類推――の妥当性を批判し、現実的目標を欠いた支援継続の危うさと専門家の責任を指摘する...

しかし今やウクライナ支援に具体的な戦略的な目的があるとは言えない。戦争継続そのものが目的化している印象だ。

苦境を脱するためには、むしろさらにいっそう対ロシア経済制裁を強めるべきだ、という主張もある。しかし財政問題と低成長に悩まされる欧州や日本の主要ウクライナ支援国は、満身創痍の状態だ。中国とインドに二次制裁を科して、世界戦争を挑むかのような冒険的な行動をとれる状態とは思えない。

そもそも欧州と日本の二次制裁などに、中国とインドが屈服する可能性が乏しい。仮にアメリカが加わっても難しいことに変わりはないが、今のトランプ政権ではアメリカがそのような過激な案に同調する可能性が乏しい。

BS-TBS 報道1930 12月25日放送より

アメリカは、2025年7-9月期の成長率が4.3%だったことが話題になったが、年率で2%程度は確保できそうである。日本のネトウヨ勢力が盛んに「崩壊近し」と喧伝している中国については、2025年の経済成長率は5%程度が見込まれている。インドは7%程度を維持する見込みである。さらに「ウクライナ応援団」が「崩壊近し」と喧伝しているロシア経済も、日本や欧州同様に、1%程度の成長は確保するようである。

中国経済以上にロシア経済も失速していることは確かなようだが、昨年のロシアの経済成長率は4%を超えていた。「ウクライナ応援団」系の方々は、「昨年よりも数字が下がっている」、ということをもって「ロシア経済崩壊近し」と主張するのだが、果たしてそこに話の飛躍がないかどうかは判然としない。

しかし本来であれば「ウクライナは勝たなければならない」ので、仮に戦場でウクライナ軍がロシア軍を駆逐して勝利を収めることが難しいことがようやくわかってきたとすれば、それを公に認める前に、ロシアが崩壊してくれなければ、困る。

誰が「困る」のかというと、ずっと「ウクライナは勝たなければならない」ので、「日本はウクライナの求めに応じてどこまでも支援し続けなければならない」と主張してきた「ウクライナ応援団」系の政治家や官僚、あるいは学者や評論家の方々が、「困る」。

上述のようにロシア経済が失速してきていることは確かなようだが、ウクライナ経済がさらに厳しい状態にあり、外国援助に完全に依存した状態にあることは、周知の事実である。戦争が終わった後も、仮に「崩壊」はしないとしても、相当に長期に渡って、ウクライナが外国援助に依存した状態が続くことは、必至である。日本は、相当に長期にわたり、ウクライナを財政的に支え続けることになる。

欧州でもドイツ経済の低迷が著しい。長く欧州経済を支えてきた牽引車であるだけに、欧州全体に懸念が立ち込める。しかし日本同様に、軍拡路線に舵を切る覚悟だけは確かなようである。

それで、果たして、日本経済は万全なのか。万が一にも、ロシアや中国よりも先に、日本経済が立ち行かなくなる、などという「想定外」の事態が起こる可能性は、全くないのか。

もちろん日本社会の中枢を形成するに至った「ウクライナ応援団」系の方々にとっては、政治家や官僚であっても、学者や評論家であっても、その可能性は、絶対に語ってはいけないタブー中のタブーである。もはや行くところまで行って確かめるしかないようである。

(補足)ウクライナを支援する国際政治学者たち:「慶応系」と「(早稲田/)防衛研究所系」
 本稿は、前回の記事の議論の補足として、一般に「ウクライナ応援団」とも総称されており、互助的関係も築いているウクライナ支援の論陣をはる研究者たちを、「慶応系」と「(早稲田)防衛研究所系」の二つの大きな系統にそって、リスト化しておく。

国際情勢分析を『The Letter』を通じてニュースレター形式で配信しています。

篠田英朗国際情勢分析チャンネル」(ニコニコチャンネルプラス)で、月2回の頻度で、国際情勢の分析を行っています。

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Sat, 27 Dec 2025 21:55:52 +0000 Sat, 27 Dec 2025 21:55:52 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html
https://agora-web.jp/archives/251227010831.html 「専門家」が大凋落した2025年を偲び、祝い、送る。 https://agora-web.jp/archives/251227010831.html

いまや思い返すのも難しいが、今年が始まったとき、アメリカの大統領はバイデンだった。後に副大統領にすら老衰ぶりを貶される彼の下で、「ウクライナを勝たせる」という不可能な試みへの投資が、だらだらと続いていた。

政権がトランプ(第2次)に替わるのは、1/20である。直前まで、日本のセンモンカは彼をコントロールして「バイデンと同じ路線を採らせることができる」と、真顔で語っていた。当時の文字起こしに基づき、実証しよう。

資料室: 戦争の「敗けが見えた」とき、日本人はいかに現実から逃避するのか|與那覇潤の論説Bistro
開戦から4年目に入るのを前にして、ウクライナ戦争の「終わり」がようやく見え始めた。ただしそれは、当初予想された形ではない。 ウクライナと、支援してきた「西側」とが、ロシアに敗北する。日本もまた武器輸出こそ行わなかったものの、ずっとウクライナの側に立ってきたのだから、そうした「敗戦」を受けとめることを強いられるだろう。...

東野篤子氏(ニッポン放送で)
「トランプさんに対するインプット、……『こういう解決法しかないですよ』ってこと、一生懸命叩き込んでいかないといけないですし、叩き込み甲斐はあるんだろうと思うんですよね。
(中 略)
だから変えていくっていう、トランプをいかに変えていくかっていうことをもう少し意識した方がいいのかなと思うんです」

放送日は2025.1.9

こうした専門知がただの誇大妄想、いわば専門痴(センモンチ)にすぎなかったことは、2/28のホワイトハウスからの配信で、全世界に晒される。それを受けて、私は当時こう書いた。

アメリカで「公開処刑」されたゼレンスキー: 日本への教訓|與那覇潤の論説Bistro
現地時間の2/28、ホワイトハウスの執務室でトランプ、ヴァンスとゼレンスキーが言い争う様子は、世界に衝撃を与えた。日本でもここまで多くの人が一斉に話題にする海外の映像は、9.11のツインタワー以来、記憶にない。 なぜそんな事態が世界に配信されたか、見立てはおおむね3つに分かれる。 ① トランプとヴァンスが無知で粗...

ホワイトハウスから叩き出されたのは、ゼレンスキーのみではない。

ウクライナの主張であればすべてを肯定的に扱い、「疑問を寄せるだけでも許さない!」とばかりにTVやSNSで振るまってきた、日本のウクライナ応援団もまた、米国の正副大統領に「公開処刑」されたのだ。

拙note、2025.3.2
(改行を追加)

そして2025年、公平に言って信用を失い凋落したのは、ウクライナの専門家だけではなかった。20年のコロナ禍から始まった、センモンカを “名乗る” だけでウハウハな時代がいよいよ閉じられた1年を、noteでふり返りたい。

自然・社会科学も、人文学も崩壊

冒頭から続けて、起きた月順にいってみよう。

4/16に英国の最高裁が全員一致で、生物学的な女性とトランス女性は「異なる」と評決する。ここ数年、 #トランス女性は女性です とSNSで喚き続けたトランスジェンダー問題のセンモンカの主張は、公的に否定された(笑)。

旧統一教会化するオープンレターズ?:「現代フェミニズム研究会」を読み解く|與那覇潤の論説Bistro
5/10(土)に、専修大学で第1回の「現代フェミニズム研究会」が開催される。参加費や事前の申し込みは不要で、誰でも聞きに行けるそうだ。 第1回とあるとおり、立ち上がったばかりのサークルのようなもので、正式な学会等ではないから、ふつうの人は存在も知らないだろう。しかし、ネット上のトランスジェンダー問題ウォッチャーにとっ...
トランスジェンダー "ブーム" の終焉: 「言い逃げ学者」の責任を問う|與那覇潤の論説Bistro
昨年の米大統領選でトランプに敗れた、カマラ・ハリスが回顧録を刊行して話題だ。もっとも大手のメディアでは、「バイデンを老害としてdisった」みたいなゴシップばかりが採り上げられる。 ハリス前副大統領、新著で「身内」酷評 米民主党に困惑広がる | 毎日新聞  昨年の米大統領選で敗れたハリス前副大統領(60)の回...

5/26には、1980年に南海トラフ地震の予測モデルを提唱した専門家が、初めて公の場で誤りの可能性を認めた。客観的とされる自然科学の、半世紀近くメディアで定説だった知見ですら、そうしたことは常に起きうる。

最初に "専門禍" を起こした地震学で、ようやく反省が始まっている|與那覇潤の論説Bistro
昨年8月8日の日向灘地震を覚えているだろうか。宮崎県で震度6弱を記録し、久々の緊急地震速報が響き渡った。長崎の原爆忌の前日のことだ。 それ以上に社会を緊張させたのは、2019年に運用を開始した「南海トラフ地震臨時情報」が初めて出されたことだ。お盆前のシーズンだったのに、旅行のキャンセルや海水浴場の閉鎖が相次いだ。"自...

6/25に、2020年春のコロナ禍初期に採られた「接触8割削減」の無根拠さを立証する学術書が出る。当事者も8/26有料記事で、実質的に指摘を認め、むしろ「あの対策は自分のせいじゃなかった」と言い始めた(苦笑)。

学問の信用を崩壊させるのは「言い逃げおじさん」である: 西浦博氏の場合|與那覇潤の論説Bistro
ちょうど4年ほど前に、初めて「言い逃げ」をタイトルに冠した記事を出した。ある歴史学者が炎上した際、叩けば叩くほどウケるときには散々罵りながら、形勢が変わるやダンマリを決め込む姿勢を批判してのことである。 この事件は、日本の学界におけるキャンセルカルチャーの走りだったが、私はそんな人文学者の矮小な争いだけを視野に入れて...

遡って6/11には、専門家の立場から「政府に物申す」と自称してきた、日本学術会議の法人化が決まる。20年の秋には英雄のように扱われた学者が国会前で座り込むも、足を止める人は乏しく冷ややかにスルーされた(失笑)。

日本学術会議を敗北させた「A級戦犯」は誰か?|與那覇潤の論説Bistro
今月11日に、日本学術会議を法人化する法案が成立した。いわゆる「6名の任命拒否」問題が浮上したのは2020年10月だから、4年半超をかけての決着で、太平洋戦争より1年長い。 法人化に伴い、日本学術会議の会員は、①総理大臣による任命ではなく、会議が自ら選ぶ形となる。一方で、②運営の評価や監査を行う役職は、会員以外から総...

どのくらいシカトされたかというと、7/20の参院選に向けて “極右台頭” への不安が高まった際、メディアが報じた「守るべき憲法上の自由」に、学問の自由は入れてもらえなかった(涙笑)。もはやサヨウナラ状態である。

メディアも見捨てた「学問の自由」を、この際、削除する改憲ってどうだろう?|與那覇潤の論説Bistro
「参政党の当否」をめぐる論争が、収まらない。おかげで支持される理由の取材が、関係者でないぼくにまで来て、まずJBpressで記事になっている。全2回で、どちらから読んでもOKだ。 【與那覇潤が斬る参政党現象】「専門家は間違えない」という神話はすでに崩壊…戦後と震災後の反省を思い出せ 評論家・與那覇潤氏に聞く② ...

ダメを押したのは、9/29に出た著名な虚偽告発事件での有罪判決だ。学術会議問題で知性の代表を気どった科学史の専門家は、判決で反証されてもなお自説の誤りを修正せず、クズ人間の典型として広く罵声を浴びた(怒笑)。

なぜ日本の学者は「まちがえても撤回できない」のか|與那覇潤の論説Bistro
学者とは人柄を知らない時には、まったく素晴らしく偉い人に思われるのだが、近づけば近づくだけ嫌になるような人柄の人が多い。 学問が国民とまったく遊離しているという時の学者の典型は専門家である。 まったくの利己主義、独善主義、そして傲慢、しかも出世に対する極端な希求。早く、こんな型の学者の消え去る日が来ますように。 上...

社会の「役に立つ」と称する分野がどれもダメになっていた11/27からは、むしろ「役に立たない」分野でビジネスできるのがイイんすよと誇る、”令和人文主義” の識者が大炎上を起こした。自称だったはずの呼び名が、いまや蔑称である。

「令和人文主義」はなぜ炎上したのか: 日本でも反転した "キャンセル" の潮流|與那覇潤の論説Bistro
アツい! いま、令和人文主義がアツい。 …といっても、まともに働く会社員の人はわからないと思うが、先月末から令和人文主義なる概念が、「そんなの要らねぇ!」という悪い意味で大バズりしてるのだ。いわゆる炎上で、その熱気が地獄の業火のようにアツい。 たとえばYahoo!の機能でXを解析してもらうと、「令和人文主義」の印象...

私自身も12/19に、自分に不利な資料を削除させて「自身の不祥事の隠蔽」を謀る歴史学者たちの背信ぶりを公表し、人文学のあり方に問題を提起した。想像以上の反響と共感をいただき、驚くとともに感謝している。

自分の不祥事は "歴史否定主義" する歴史学者たち: 令和人文主義を添えて|與那覇潤の論説Bistro
1997年に「新しい歴史教科書をつくる会」が発足して以来、平成を通じて "歴史修正主義" といえば絶対悪の代名詞だった。とりわけ学者の世界がそうで、ほとんど "人種差別主義" と同じくらい、存在自体が許されないものという感じだった。 とはいえ、まじめな研究の結果として歴史像が "修正" されることは常にある。それに...
"歴史否定主義者" 玉田敦子氏が行った「noteへの削除要請」について|與那覇潤の論説Bistro
当方の着信時刻で12/17の18:05に、「運営事務局(note)」名義のアドレスからメールが届いた。 前回も触れたとおり、中部大学で歴史学を講じる玉田敦子教授が、私の記事を削除するようnoteに要請してきたので、それを取り次ぐ形である。 noteはマメなサービスで、書いた記事に1つ「いいね」(スキ)が付くごとに...

返す返すも、輝かしい1年だった。実は、起きたことは他にもある。

もう「被害者ぶりっ子」は通じない

このnoteの読者はご存じのとおり、犯したまちがいが批判を集めるようになっても、言葉が過ぎた相手に名誉毀損の訴訟をしかけ、「誹謗中傷の専門家」に転職してメディアにしがみつく人は多い。

ReHacQは「一流のメディア」になるために何をすべきか|與那覇潤の論説Bistro
ReHacQ(リハック)というネット世代に人気があるらしいYouTubeのチャンネルに、国際政治学者の東野篤子氏が出演し、話題になっている。 ヘッダーは、彼女が「自分はネットで叩かれる」旨を繰り返す箇所の一部だが、カタカナでセンモンカと書く人は私の知るかぎり私しかいないので、ウクライナ論壇に批判的な拙noteもお読...

要は「私は被害者!」と叫んでアテンションさえ集めれば、自分のあら探しはやめてもらえるだろうと当て込むわけだが、その終わりがはっきりしたのも、2025年だった。2月の時点で私は、それを予測し警鐘を鳴らしている。

反共主義から「ネットの中傷」を考える: ファンだからこそアンチになるとき|與那覇潤の論説Bistro
2021年春のオープンレター騒動の頃からSNSを騒がせてきた、「誹謗中傷の季節」が終わりを迎えつつある。とはいえ、ネットの誹謗中傷がなくなったり、減ったりしたわけではない。 まともな批判に「中傷だ!」と言い張って責任逃れをする人や、自分の加害行為には頬かむりして、被害を受けた時だけ「中傷された!」と喧伝する人が増えす...

2021年春のオープンレター騒動の頃からSNSを騒がせてきた、「誹謗中傷の季節」が終わりを迎えつつある。とはいえ、ネットの誹謗中傷がなくなったり、減ったりしたわけではない。

まともな批判に「中傷だ!」と言い張って責任逃れをする人や、自分の加害行為には頬かむりして、被害を受けた時だけ「中傷された!」と喧伝する人が増えすぎて、「誹謗中傷!」と叫んでも以前のような共感を集めなくなった。よいか悪いかはともかく、そんな事態が進んでいる。

拙note、2025.2.17
(強調を追加)

フェアに言って事態は、私の予想をも超えて進んだ。すでに同月、かつては批判することなど “あってはならない” レベルの扱いだった、あまりに著名な性被害者の信用が失われ始める。

#MeToo な季節の終わり|與那覇潤の論説Bistro
3/3(現地時間では前日)に発表される米国のアカデミー賞では、伊藤詩織監督の作品が長編ドキュメンタリー部門の候補になった。ところがご存じのとおり、日本での評判はいま、きわめて悪い。 性暴力の被害を訴えてきた彼女が、裁判以外では使用しないとの約束で入手したホテルの監視カメラの映像を、無許可で映画に流用していることが判...

加速のギアを入れたのは、8月の甲子園の際に露呈した強豪野球部の暴力問題だった。十分な対応を取ってこなかった高野連が、あたかも問題への批判自体が「誹謗中傷」だと言わんばかりの公式声明を出し、逆に炎上する。

2025.8.6
(赤線は引用者)

さらなるスイッチは、9月に始まった自民党総裁選だ。他の候補への中傷を含む「ステマ」が判明して辞任した広報担当が、自分への批判こそが中傷であり “耐えかねて辞める” かのような姿勢を示して、炎上に輪をかける。

2025.9.27

問題を大きくしたのは、当の広報がデジタル大臣の経験者でもあったことだ。で、中傷と呼び換えて批判を封じる相手には、むしろ “もっと” 批判を浴びせる空気がネットに定着する。

2025.9.28
「消し込み」の意味はこちら

そして11月には、かつて “神聖不可侵” の扱いだった性被害者が、ついに「カルト」の語を使って報じられ始める。

「残念ながら法的な問題は解決されていません」 伊藤詩織さん元代理人がコメント 映画は12日から公開(小川たまか) - エキスパート - Yahoo!ニュース
 伊藤詩織さんが監督を務めたドキュメンタリー映画『Black Box Diaries』が明日12月12日から東京・品川の映画館で公開される。 映画を巡っては、民事訴訟で伊藤さんの代理人を務めた弁護士ら

東京新聞は11月26日付夕刊のコラム「大波小波」の中で、「伊藤〔詩織〕氏を特別な性被害者として神聖化し、告発のためなら多少の人権侵害には目を瞑ってもいいとして擁護する人々も存在する」と指摘。

「自分が応援する人や仲間をやみくもに庇い、間違いがあっても見過ごし批判する人たちを攻撃する仕草は、このところさまざまな場所で見られる危うい現象だ」「カルト的な権威者を作り出すべきではない」と厳しく批判している。

小川たまか氏、2025.12.11
(強調は引用者)

まさに私自身が、類似のそうした「カルトとの戦いの先駆者である。その意味でも実に、報われる1年だった。

東野篤子氏と「ウクライナ応援ブーム」は何に敗れ去るのか|與那覇潤の論説Bistro
東野篤子氏とその周囲によるネットリンチの被害者だった羽藤由美氏が、経緯を克明にブログで公表された。1回目から通読してほしいが、東野氏の出た番組に批判的な感想を呟いただけで、同氏に煽られた無数の面々から事実をねじ曲げて誹謗される様子(3回目)は、私自身も同じ動画を批判したことがあるだけに、血の凍る思いがする。 東...
あのオープンレターズは、いま。4年前に "キャンセル" を誇った学者たちの末路|與那覇潤の論説Bistro
6回分連載した「オープンレター秘録」を、あと1回で完結させたいのだが、時間がとれない。この春に戦後批評の正嫡を継いでしまい、歴史の他に批評の仕事もしなければならず、忙しいのだ。 そんな間に、キャンセルカルチャーの潮目じたいが大きく変わった。未来に目覚めて(woke)現状変革を唱える急進派が、"時代遅れ" と見なす保...

26年、いよいよ「人民裁判」開廷か

私がカルト化する「専門家」の問題を採り上げたのは、まだコロナ禍が現在進行形だった時期である。2021年7月の対談で、すでに

第2回 「いのちの現場」はどこにあるのか | 磯野真穂×與那覇潤「コロナ禍に人文学は役に立つのか?」 | 磯野真穂 , 與那覇潤 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、1回目の緊急事態宣言が出されてから1年4か月あまり。理系の専門家が主導するコロナ対策の裏で、見過ごされている問題はないのか。人文学の視点から何か提言できることはないのか。人類学者の磯野真穂さんと、(元)歴史学者の與那覇潤さんが話し合いました。※この記事は、2021年7月16日にジ...

本当の意味での科学的な精神は消え去り、むしろ「科学教」という看板を掲げた事実上の宗教が生まれているような気さえします。

と、明快に述べている。

そこから4年経って、嬉しいことに “本当に” 進んだメディアは、まったく同じ言葉遣いをするようになった。以下のnoteに教えてもらったのだが、今年の7/28に英紙Financial Timesは、

自称リベラルの「反省」が見られない件|輝くような黄色
1 高木俊介先生が、下記の記事を紹介されていました。 ようやく出てきたリベラルからの反省。 「新型コロナ禍の経験を無視して、これほど多くの若い有権者がなぜ右傾化しているのか理由を調べるのは時間の無駄だ」 「リベラル派は「科学に従え」と主張したが、科学への信仰と混同していた」 — しゅん(高木俊介) (@ragsh...

米国のリベラル派の不寛容さは新型コロナ禍で際立った。ワクチン接種に反対する保守派がリベラル派以上におかしかったことは言い訳にならない
(中 略)
リベラル派は「科学に従え」と主張したが、科学への信仰と混同していた。科学とは試行錯誤の過程であり、異論に耳を傾ける余地があってこそ成り立つ。

日本経済新聞(転載・有料)、2025.8.1

と、書いている。センモンカどうしの「庇いあいカルト」は解体され、罪を裁かれなければならない。そのことはこのnoteでも、2024年3月の記事以来、繰り返し述べてきた。

しかし、当時から現在までの20か月強のあいだにも、正しくない判断を下した者がいる。理由が無知か、怯懦か、はたまた強欲や悪徳なのかは知らないが、なんせ2024年7月の時点でも

① 専門家が予想を外して権威を失い、メディアの信頼を損なうなどという現象は、與那覇が言っているだけで、世間では起きていない

② コロナもウクライナも、もう「今はホットイシューではないので」、そんな検証は載せてもバズらない

との旨をぬけぬけと記し、「お前なんてもう売れてないから、批判を書かせてほしいなら、バズったチャラいライターのマネでもすればぁ?」と、侮辱を重ねる業界人さえいたのだ。

ある編集者への手紙|與那覇潤の論説Bistro
以下は2024年12月23日に、ある編集者に送ったメールの全文である。とくに返信のないまま1週間が経ったため、目次と強調を附して公開する。 1. 今年を閉じるにあたって 爾来ご無沙汰しています。世界が大きく動いた2024年も終わりつつありますが、どうお過ごしでしょうか。 ご存じかどうか、米国では今年、議会が20...

一昨日、つまり2025年のクリスマスに、かねて予告している次回作『専門家から遠く離れて(仮)』の聞き書きを終えてきた。完成稿になるのはまだ先だが、なにせ日取りが日取りだけに、気分が変わったところもある。

上記の人物を典型として、この問題でこちらから “出禁” にした人や媒体は、いくつもある。聞き書きの仕上がりを待つ2026年1月の月内を、寛容さにチャンスを与える、最後の期間にしたい。

その間に連絡があった場合のみ、”和平交渉” を行うことは可能だ。むろん興味がないなら、無視すればいい。来るべき人民裁判で「被告席と証人席」のどちらに座るか、選ぶのは本人である。

「彼らはクリスマスだと知っているのだろうか?」|與那覇潤の論説Bistro
バンド・エイドをご記憶だろうか。救急用品の名前にかけてあるけど、「バンドが助ける」の意味でBand Aid。1984年の12月、エチオピア食糧危機の救済のために、当時の英国ポップス界の人気者が集まり、”Do They Know It's Christmas ?” というチャリティ・シングルを出した。 アフリカを応...

参考までに、今月届いた『群像』1月号で始まった高木徹氏の連載から、一節を引いておこう。

著者は元NHKプロデューサーで、1990年代のユーゴスラビア内戦がいかに、国際報道の過程で “演出” されたかを描くルポ『戦争広告代理店』で広く知られる。センモンカならぬ、そんなプロ中のプロが、いま、こう書く。

202601
「群像」最新号(群像2026年1月号)のページです。文×論。ジャンルを横断して「現在」にアクセスする月刊文芸誌。

いま「認知戦」や「ナラティブ」といった用語が日本で脚光を浴びている。たいていは「中露の情報戦に気をつけろ」という文脈で語られる。それはたしかにあるだろう。

だが、例えばゼレンスキー大統領の発信は「ナラティブ」ではないのか? 欧米の首脳やメディアに現れる言説は「認知戦」ではないのか? そもそも「認知戦に気をつけろ」と言うこと自体が認知戦ではないのか?

『群像』2026年1月号、95頁

久しぶりに、続きが楽しみな連載ができた。なにせ私自身が2024年11月に、こう書いている。

『ウクライナ戦争は起こらなかった』|與那覇潤の論説Bistro
フランスの現代思想家だったボードリヤールに、『湾岸戦争は起こらなかった』という有名な本がある。原著も訳書も1991年に出ているが、お得意のシミュラークル(いま風に言えばバーチャル・リアリティ)の概念を使って、同年に起きたばかりの戦争を論じたものだ。 ボードリヤールは当初、「戦争になるかもよ?」というブラフの応酬に留ま...

センモンカが解説するウクライナ戦争は、「ほんとうの戦争」とは別に関係がない

本人にも、また視聴者やフォロワーにも区別不能になった「戦争の幻想」と戯れ、「堕落したシミュレーション」の中でごっこ遊びをしているだけだから、ちょこっとミスプレイをしたくらいでは、訂正も反省もする気はない。

拙note、2024.11.5

訂正し反省する人が出るのかを、年明け後の最初のひと月は待ってみたい(候補となる人には、このnoteもメールで送る)。願わくばそこから、ほんとうの意味での知性や、学問や、専門性が甦えるさまを見たいものだ。

いまや「ウクライナ応援団」として揶揄されるセンモンカたちの世界では、毎年末にお決まりのあいさつがあるらしい。もちろん私も、ウクライナを応援するひとりとして、ぜひ唱和に加わろう。

Say it again,

Happy, and Victorious New Year!

Happy, and Victorious New Year!|東野篤子
2022年2月にロシアによる全面侵攻が始まってから、心から幸せで希望に満ちたお正月を迎えることはありませんでした。 この時期になると思い出すこと、そして、取り出して眺めるものがあります。 「思い出すこと」とは。 2022年の暮、ゼレンスキー大統領は米国に飛び、議会で支援の継続を求める演説を行います。 ...

編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2025年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。

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Sat, 27 Dec 2025 21:50:31 +0000 Sat, 27 Dec 2025 21:50:31 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html
https://agora-web.jp/archives/251226093139.html ワインの聖地に生まれた二つ星の現在地:ラ・ターブル・ド・パヴィ https://agora-web.jp/archives/251226093139.html フランス南東部ボルドーから少し内陸に入ったところにある、サン=テミリオン。ここはボルドー地方を代表するワイン産地の一つであり、小さな丘の上にある中心地の村は1999年にユネスコ世界遺産に登録されている。葡萄畑に囲まれたかわいらしい村には季節を問わず観光客やワイン関係者が世界中から訪れ、フランスの人気観光地の一つになっている。

サン=テミリオン
alxpin/iStock

そんな美しい村の中心に、周囲に広がる葡萄畑を見下ろすように建つ「オテル・ド・パヴィ」。世界のトップホテルレストランが加盟する”ルレ・エ・シャトー”のメンバーでもある名門ホテルだ。名前を見て、ワイン愛好家ならすぐに、”シャトー・パヴィ”を思い浮かべるだろう。

”シャトー・パヴィ”は、サン=テミリオン産ワインの最高評価である”プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA”に輝く、このエリアトップのワインシャトー。同シャトーのオーナーが、「オテル・ド・パヴィ」も経営しており、ホテルの食部門にも力を入れている。

「ラ・ターブル・ド・パヴィ」のサロン。
壁を飾るサン=テミリオンの街は、精巧な寄木と白蝶貝で作られたアート作品。

ホテルのレストラン「ラ・ターブル・ド・パヴィ」は、ミシュランガイドで2つ星の評価。シェフを務めるのは、パリとフレンチアルプスきってのウィンターリゾート地クーシュヴェルでそれぞれ3つ星レストランを手がけているフランス料理界のトップ、ヤニック・アレノだ。

アレノがこの地で考えるガストノミーは、サン=テミリオンの気候風土が育む豊かな食材を、”シャトー・パヴィ”へのオマージュを感じさせる唯一無二の独創的な料理に昇華させたもの。アレノは以前から、発酵や香りの抽出といった技術に力を入れており、ワイン作りと共鳴する料理スタイルを持っている。地元の食材の魅力、とりわけ豊富な野菜やきのこ、ハーブなどのクオリティにフォーカスして2025年初めから提供しているヴェジタリアンコースは秀逸だ。

肉厚のほうれん草で、コールラビ、カプシーヌの葉、揚げた生姜の花をくるんでタコスのように食べるカナッペ。季節の野菜の旨みをクリアに引き出し、菜の花と洋梨を浮かべたスープ。文字に書くと味の想像が難しいが、どの料理も、意外性と驚きに満ち溢れ、芯のしっかりした唯一無二の美味しさを湛えている。

野菜やハーブの魅力と可能性に感動する料理の数々。

最高のグラン・クリュワインが、恵まれたテロワールを生かして育てた極上ブドウと一流の醸造家によって生まれるように、ここでは、最高の野菜料理が、地元の素晴らしい野菜をヤニック・アレノというトップシェフによって創造されている。

野菜料理の最高形の一つと出会える、「ラ・ターブル・ド・パヴィ」。もちろん肉や魚を使った料理のクオリティも抜群だ。ワインは、”ハウスワイン”である”シャトー・パヴィ”をはじめ、オーナーが所有する魅力的なワインを蔵出しで楽しめるなど、ワイン好きの琴線もくすぐる極上レストラン。ミシュランが3つ星をつける日も遠くないのではないだろうか。

素晴らしいディナーを満喫した後は、落ち着いた雰囲気の部屋での心地よい眠りが待っている。

朝、ホテルのテラスに出れば、サン=テミリオンの村と丘陵を埋める葡萄の木々が、目を楽しませてくれる。

Hotel de Pavie
Notre restaurant à Saint-Emilion, La Table de Pavie, possède 2 étoiles au Guide Michelin. Il y est proposé une cuisine créative, accompagnée des meilleurs vins ...

 

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Sat, 27 Dec 2025 21:40:38 +0000 Sat, 27 Dec 2025 21:40:38 +0000 https://agora-web.jp/archives/251227121556.html https://agora-web.jp/archives/251225065321.html https://agora-web.jp/archives/251224234017.html https://agora-web.jp/archives/251222002013.html https://agora-web.jp/archives/251220120814.html
https://agora-web.jp/archives/251227054032.html 着物で自転車に乗る60代を見て、私の「常識」は崩れた https://agora-web.jp/archives/251227054032.html

petesphotography/iStock

結論から言う。着物は自由だ。

いや、正確には「ふだん着物」は自由だ、か。この区別が大事なのに、なぜか誰も教えてくれない。成人式で振袖を着て、窮屈な思いをして、「もう二度と着ない」と思った人、多いんじゃないか。私もそうだった。

新しい自分が動き出すふだん着物の魔法」(シムラアキコ 著)きずな出版

話が変わるようだけど、聞いてほしい。

習っていた茶道の先生——当時60代——がいた。お稽古が終わると、着物姿のまま自転車にまたがって「じゃあ、また来週ね!」と手を振って去っていく。その後ろ姿が、今でも目に焼きついている。

着物で、自転車。

乗れるんだ、と思った。というか、乗っていいんだ、と。

あの瞬間、私の中の「着物=特別な日のもの」という思い込みが、ガラガラと音を立てて崩れた。大げさじゃなく、本当にそうだった。

そもそも、かつての日本人は毎日着物を着ていたわけで。季節が変われば素材を変え、縫っては解いて、布の命を使い切る。それが当たり前だった。「ハレの日」だけじゃない。「ケの日」——なんでもない日常——こそ、着物の本来の居場所だったのだ。

それがいつの間にか、結婚式と成人式専用みたいになってしまった。おかしな話である。

で、私はどうしたか。

先生の真似を始めた。最初はデニムの着物から。洗濯機で洗えるし、多少汚れても気にならない。半幅帯を締めて、足元はスニーカー。これ、全然アリなのだ。草履じゃなきゃダメなんてルールは、ハレの日用。ふだん着物には関係ない。

着物のままコンビニに行く。ソファでうたた寝する。車も運転するし、新幹線にも乗る。何も制限されない。制限されると思い込んでいただけだった。

ただし——これは言っておかないといけない——自転車は注意が必要だ。オイルで裾が汚れるし、縫い目に負担がかかる。私も丈夫なデニム着物のときしか乗らない。先生みたいに絹の着物で乗る度胸は、まだない。

「クローゼットを開けてもときめかない」

最近、こういう声をよく聞く。わかる。洋服のコーディネート、正解がわからなくなってくるのだ。年齢を重ねると特に。何を着ても「なんか違う」。

そういう人にこそ、ふだん着物を勧めたい。

木綿、ウール、ポリエステル、デニム。選択肢はいくらでもある。絹みたいに水洗いできないわけじゃない。ザブザブ洗える。気軽なのだ。

帯を締めた瞬間、背筋がシャンと伸びる。これは本当。姿勢が変わると、気持ちも変わる。大げさに聞こえるかもしれないけど、世界があなたを丁寧に扱い始める——そんな感覚がある。道で見知らぬ人に「素敵ですね」と声をかけられることも増える。

魔法みたいだ、と思う。いや、魔法なのかもしれない。

まずは一着。休日の朝に袖を通してみる。それだけでいい。

自転車に乗るかどうかは、そのあと決めればいい。

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)

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Sat, 27 Dec 2025 21:35:32 +0000 Sat, 27 Dec 2025 21:35:32 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229052149.html https://agora-web.jp/archives/251226220847.html https://agora-web.jp/archives/251228101305.html https://agora-web.jp/archives/251226210256.html https://agora-web.jp/archives/251225023050.html
https://agora-web.jp/archives/251226205448.html 資格にとらわれずやりたいことを見つける具体的な方法(横須賀 輝尚) https://agora-web.jp/archives/251226205448.html

chachamal/iStock

大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。なにもないところから資格を使ってどう稼ぐのか?資格を取ることで人生を逆転させた、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』から、再構成してお届けします。

資格にとらわれないために自分の棚卸しをしよう

資格の取得には大きな労力が必要ですから、ついついアイデンティティを資格そのものに求めてしまいがちです。そうならないために、まずは自分自身の棚卸しをしましょう。なぜ、この棚卸しが必要かというと、「資格にとらわれず、自分自身のやりたいことを見つける」必要があるからです。

これから資格を取ろうと考えている人が、深く考えずに資格の選択からしてしまうと、その資格にとらわれてしまうことが多々あります。そこで、資格選択の前に自分自身について深く知っておきましょう。

次のワークをやってみてください。非常に簡単なワークですが、あなた自身の方向性を見いだすためにとても重要なワークになります。

(1)自分自身のストーリーを書き出そう
自分の人生の中で、強く印象に残っているものは、自分の方向性を見つけるきっかけになります。たとえば、私が資格関係のコンサルタント業を始めたのは、過去の自分が「資格によって救われた」ことを人生ストーリーから見つけることができたからです。

そのほか、自分自身が困った経験や成功した経験を思い返すといいでしょう。たとえば、過去、ある人にいただいたアドバイスがきっかけで、人生を前向きに考えることができたという出来事があれば、コミュニケーションを仕事にすることがひとつの選択肢になります。

(2)自分自身のスキルを書き出そう
あなた自身のスキル、キャリアを全部書き出してください。あなたの得意な分野が見つかります。これから取ろうとする資格だけでなく、過去のキャリアから自分自身がやってきたことを書き出します。これは今後の戦略に使いますので、過小評価することなく、自分自身を客観的に見てください。

ちなみに、私自身の主なスキルは、「法律」「手続き」「話すこと」「書くこと」「企画立案」「戦略構築」などです。コンサルタント業は、この中の「話すこと」と「書くこと」、「戦略構築」などから現在の活動につながっています。

これが「行政書士」しか念頭になければ、当然「法律」と「手続き」でしかものごとを考えなくなります。ですから、資格から離れることが重要なのです。

自分が本当にしたいことを「資格抜き」で考えよう

自分自身の棚卸しをしたあとで、今度は具体的に「やりたいこと」を見つけます。ここでは、「やりたいこと」「できること」「やれないこと」「やりたくないこと」の4分類で考えていきます。

自分自身の人生戦略をつくるのですから、「やりたくないこと」「やれないこと」ばかりを選んでも不幸です。これは、自分自身がやりたいと思う方向性を見つけるためのワークになります。

(1)あなたがやりたいことを「資格抜き」で書いてください
(2)あなたができることを「資格抜き」で書いてください
(3)あなたがやりたくないことを書いてください
(4)あなたがどうしてもできないことを書いてください

ここまで書くことができたら、少なくとも「分野」と「向かうべき方向性」が見えるはずです。「法律」の分野で個人相手に仕事がしたい。「人と話すこと(コミュニケーション)」の分野で、個人相手に話すような仕事がしたい……。現状では、必ずしもできなくてもかまいません。あなたが本来やりたいことの「分野」が見つかることが重要なのです。

せっかく資格を取得しても、自分が本来進みたかった分野と違っていたら、試験勉強のモチベーションも続きませんし、また仕事を精力的にこなすこともできないでしょう。

たとえば私がやりたいことは、「企画、話すこと、書くこと、出版、組織での仕事、スタッフ教育、新規ビジネス、コンサルティング、相手のモチベーションアップ」などです。そして、できることが、先ほども挙げた「法律」「手続き」「話すこと」「書くこと」「企画立案」「戦略構築」。

やりたくないことは、「飛びこみ営業、テレアポ」など。できないことは「細かい管理、大きな会社へのアドバイス、昇進する方法を伝える」などです。

やりたくないこと、できないことを挙げるだけでも、本来あなたが進みたい方向がわかるようになりますので、簡単な作業ですが重要なワークになります。

資格が「ステータス資格」か「スキル資格」かを見極める

あなたが選んだ資格が行政書士や社会保険労務士のような「スキル資格」である場合は、どうしても資格そのものが必要になります。スキル資格はその資格がないと活動できないため、資格を取得することが目的になりがちです。

私の場合、行政書士の仕事ありきでスタートしてしまったので、やりたいこととマッチしたのは幸運な偶然でした。しかし、本来は「相続をテーマにした仕事がしたい」などの目的があって、「では、それに必要であるから行政書士を取る」という形であるべきです。

これから資格を取得する人は、本当に必要かどうかを、自分自身のやりたいことと照らし合わせて考えてください。自分自身がやりたいことの中で、「法律的な規制があるから資格を取る必要がある」というのが本来の形です。

これに対し、「ステータス資格」を選択した場合は、資格の取得も重要ですが、「本当の実力」を磨くことも重要ですので、資格取得を目的にすることなく、先を見据えておきましょう。

「ステータス資格」は種類が豊富にあることが多いので、能力アップのための受験と、「信頼」を得るための受験を分けると効果的です。

たとえば、表向きは「ソフトウェア開発技術者」を名乗って、「プロジェクトマネージャー」などの資格も勉強して能力を高めておくというのがひとつの方法になります。

フリーランス戦略を練る

働きながら資格の取得を目指している人は、やりたいことが見つかっても、必ずしもすぐに会社を辞めなければならないわけではありません。会社に勤めながら準備をすることも十分可能です。

一方で、もし、あなたが自分の能力に多少なりとも自信がある場合、すぐにフリーランスで動くことを視野に入れてもかまいません。どこにチャンスが転がっているかわかりませんので、もし活動できる状態であれば、躊躇せずにフリーランスで活動をしてみてください。

具体的には、フリーランス活動用の名刺をつくって、セミナーや異業種交流会などに参加してみることが挙げられます。そこで反応を見ながら、本当に仕事が取れれば、フリーランスとしての成功の第一歩となります。

仮にその活動で仕事がなくてもリスクはありませんので、積極的に動いてみるのがいいでしょう。アクションを起こしてみることで、可能性はより高まっていきます。ただし、会社には就業規則などで副業の規定があることがありますので、その点は十分気をつけて活動してください。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
士業専門の経営コンサルタント。2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、のべ全国3,000名以上の士業から相談を受け、相談件数は優に2万件を超える。主な著作に『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業BIBLE』(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。最新刊『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。
X(旧Twitter) : @yokosuka_ai

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年8月1日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

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Sat, 27 Dec 2025 21:30:48 +0000 Sat, 27 Dec 2025 21:30:48 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229001258.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html
https://agora-web.jp/archives/251227130234.html 過去最多を更新しつづける日本の医師数:一方で「患者不足」の到来が迫る https://agora-web.jp/archives/251227130234.html 国内の医師数は過去最多を更新し続けているが、地域や診療科の偏在は依然として解消されていない。

一方で、地域・診療科の偏在は解消されず、将来的には人口減少による「患者不足」が医療構造そのものを揺るがす可能性が指摘されている。医師不足と医師過剰が同時に進行する日本医療の現状と将来像が、各種統計から浮かび上がってきた。

  • 厚生労働省によると、2024年末の医師数は34万7772人で過去最多となり、1982年の約16万8000人から約2倍に増加。
  • ただし、人口10万人当たりの医師数は、最多の徳島県と最少の埼玉県で約1.8倍の差となっている。首都圏周辺で医師が少なく、地方の一部で多い構造が続く。
  • 産婦人科・産科は前年より143人減、外科も749人減と減少が続く。
  • 小児科は増加し、診療科間の需給格差が拡大。
  • 高齢化と医師不足対策を理由に、2009年以降、医学部定員は拡大。また、地域勤務を条件とする「医学部地域枠」が大幅に増加しており、医師は毎年3500~4000人規模で増え続けている。
  • 人口がほぼ横ばいの中、医学部定員は1989年より大きく増加している。このため、医師の需給は2029~2032年頃に均衡し、その後は過剰になるとの推計されている。

  • 医師養成には時間がかかり、需要変化への調整が難しい。国は医学部定員の適正化を検討している一方、医師不足に悩む地域からは削減への反対が強い。

日本の医師数は過去最多を更新する一方、地域・診療科の偏在は解消されず、人口減少に伴う「患者不足」が現実味を帯びてきた。医師不足への対症療法として続けられてきた医学部定員拡大は、将来的には需給の大きな歪みを生む可能性がある。医師養成数の調整、地域・診療科偏在対策、医療提供体制の再設計を一体で進めなければ、医師過剰と患者不足が同時に進行する構造的問題は避けられない。

日本医師会HPより

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Sat, 27 Dec 2025 21:20:33 +0000 Sat, 27 Dec 2025 21:20:33 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229234832.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251229075114.html https://agora-web.jp/archives/251228232445.html https://agora-web.jp/archives/251227230239.html
https://agora-web.jp/archives/251226203003.html 正味の稼ぎが少ない日本政府:付加価値(純)の国際比較 https://agora-web.jp/archives/251226203003.html

filo/iStock

1. 日本政府の純付加価値

今回は、日本政府の正味の稼ぎである付加価値(純)の国際比較についてご紹介します。

GDPとは稼いだ付加価値の合計で、付加価値の多くは企業が生み出します。

一方で、家計や政府も付加価値を生み出します。

稼いだ付加価値は粗付加価値ともいわれ、固定資産の減価分である固定資本減耗を含みます。

通常、この粗付加価値は付加価値(総)とも表現されます。

英語では、Value added, grossと表記されます。

企業経営においては、付加価値から減価償却費を差し引いた純付加価値が重要とされます。

同様に、GDP統計ともいわれる国民経済計算においても、減価償却費に相当する固定資本減耗を差し引いた純額(Net)が重要とされます。

付加価値においても、付加価値(総)から固定資本減耗を差し引いた付加価値(純)が計算され、公開されています。

英語では、Vaule added, netと表記されます。

政府の稼ぎである付加価値を国際比較してみると、日本の政府は先進国ではかなり少ない方になります。

一方で、政府の固定資本減耗は先進国で中程度で、稼ぎの割に固定資産の維持費用が多い状況です。

付加価値から固定資本減耗を差し引いた正味の稼ぎである付加価値(純)は一体どの程度の水準なのか着目してみましょう。

図1 付加価値・固定資本減耗 一般政府 日本 (OECD Data Explorerより)

図1が日本の政府の付加価値(総)固定資本減耗付加価値(純)の推移です。

日本の政府は稼ぎとなる付加価値(総)が停滞していて、固定資本減耗がやや拡大傾向のため、正味の付加価値(純)はかつての水準よりも目減りしています。

この付加価値(純)には、雇用者の賃金も含まれますので、公務員の人数や給与が抑制されてきた様子も読み取れます。

その割には固定資産への支出(総固定資本形成)やその維持費(固定資本減耗)が多いというのが日本政府の特徴のようです。

これは、日本の場合政府だけでなく、企業にも当てはまる傾向と言えます。

2. 1人あたりの推移

政府の付加価値(純)の水準について、人口1人あたりのドル換算値と、対GDP比で国際比較していきましょう。

まずは人口1人あたりの推移から見てみたいと思います。

図2 付加価値(純) 1人あたり 一般政府 (OECD Data Explorerより)

図2は政府の付加価値(純)について、人口1人あたりのドル換算値(為替レート換算)の推移を表現したグラフです。

日本は1990年代は他国と同程度でしたが、停滞傾向が続くうちに、他国との差が大きく開いています。

韓国にも2010年代には追い抜かれています。

2023年にはアメリカやカナダの約4分の1、フランスの3分の1以下、ドイツの半分未満です。

日本の政府の正味の稼ぎは相対的にかなり低い水準となっているようです。

日本は民営化も進み、生産面で見れば政府の稼ぎの少ない小さな政府ということになりそうですね。

3. 1人あたりの国際比較

人口1人あたりの政府の付加価値(純)について、より広い範囲で国際比較してみましょう。

図3 付加価値(純) 1人あたり 一般政府 2023 (OECD Data Explorerより)

図3は、主に先進国で構成されるOECDにおける、政府の付加価値(純)の水準を比較したグラフです。

日本は1,722ドルで、OECD34か国中31番目の順位です。

上位はノルウェー、デンマーク、スウェーデン等北欧諸国や、ルクセンブルク、スイスなどの所得水準の高い国が並びます。

日本の政府が稼ぐ正味の付加価値は、金額で見れば非常に少ない水準である事がわかります。

4. 対GDP比の推移

次に、もう1つの比較方法として対GDP比についても眺めてみましょう。

図4 付加価値(純) 対GDP比 一般政府 (OECD Data Explorerより)

図4は主要先進国における政府の付加価値(純)対GDP比の推移です。

日本は5~6%くらいで推移していて、他の主要先進国と比べるとかなり低い水準が続いています。

2000年代以降は徐々に低下傾向なのも確認できますね。

韓国に抜かれ差が開いているとともに、2023年ではフランスやカナダの半分未満、イギリスやOECD平均の半分近くの水準です。

5. 対GDP比の国際比較

最後に、政府の付加価値(純)対GDP比について国際比較してみましょう。

図5 付加価値(純) 対GDP比 一般政府 2023年 (OECD Data Explorerより)

図5が2023年の国際比較です。

日本は5.1%でOECD34か国中最下位となっています。

先進国の中で最も政府の稼ぐ正味の付加価値の割合が小さい国ということですね。

6. 政府の付加価値(純)の特徴

この記事では、政府の付加価値(純)について国際比較した結果を共有いたしました。

日本の政府の付加価値(純)は金額で見ても、対GDP比で見ても先進国の中ではかなり少ない水準となります。

そもそもの付加価値(総)が少なく、固定資本減耗は先進国中程度ですので、差引の付加価値(純)は殊更少なくなるようです。

政府による公共投資の維持費用はそれなりに高いけど、政府の労働者(公務員)による正味の付加価値が非常に少ないという特徴があるようです。

図6 雇用者報酬 対GDP比 一般政府 (OECD Data Explorerより)

公務員への労働の対価となる雇用者報酬について見てみても、日本は圧倒的に小さな割合である事がわかります。

大きな政府、小さな政府という表現がありますが、生産面において政府の付加価値を見ると日本は小さな政府と言えるのかもしれません。

高福祉・高負担と言われる北欧や、フランスは真逆の状況なのが興味深いですね。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2025年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。

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Sat, 27 Dec 2025 21:20:03 +0000 Sat, 27 Dec 2025 21:20:03 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251230000959.html https://agora-web.jp/archives/251229052149.html
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メディア業界に精通し、放送・配信ビジネスの舞台裏を知り尽くす元テレビマン・下矢一良氏が解説するYouTubeチャンネル「下矢一良の正直メディア」。チャンネル登録お願いします。

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Sat, 27 Dec 2025 21:10:10 +0000 Sat, 27 Dec 2025 21:10:10 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229064548.html https://agora-web.jp/archives/251229065604.html https://agora-web.jp/archives/251229001518.html https://agora-web.jp/archives/251228232445.html https://agora-web.jp/archives/251228095024.html
https://agora-web.jp/archives/251227032640.html 米倉涼子さんがHPのコメントで自宅への家宅捜索を認める https://agora-web.jp/archives/251227032640.html ドラマ「ドクターX」などで知られる女優の米倉涼子氏が、自宅に捜査機関が入った事実を認め、捜査への協力と将来的な活動再開の意向を明らかにした。週刊誌報道を受け、本人が初めて公にコメントしたことで注目が集まっている。

  • 10月11日、「文春電子版」は、8月20日に厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部(マトリ)が都内自宅マンションに家宅捜索に入ったと報じた。
  • 本格的な捜査が行われていると報じられているが、逮捕や起訴などについて公式発表は出ていない。捜査は継続中とみられるが、コメントでは米倉氏の協力は一区切りついたと説明している。
  • アルゼンチン人ダンサーのパートナーと同棲していたとされるが、捜査との関係は明確になっていない。
  • 捜査関係者の話として、捜索時に大麻に関係するとみられる物が押収された可能性や、その後、米倉氏が複数回にわたり任意の取り調べを受けたと伝えているが、これらはいずれも当局の公式発表ではなく、報道に基づく情報となっている。

  • 米倉氏は取材に対し、「自宅に捜査機関が入りましたことは事実です」と述べ、家宅捜索自体は認めた。

米倉涼子さん公式サイトより

  • 一方で、12月下旬まで正式な公式声明は出していなかった。
  • 12月18日早朝、自宅周辺に異変があるとの情報から報道陣が集結したが、結果的に大きな動きはなかった。
  • 公式Instagramは8月19日を最後に更新が止まっている。
  • 米倉は「自宅に捜査機関が入りましたことは事実です」と述べ、家宅捜索があったことを認めた。
  • 心身の状態に問題はないと説明し、捜査には全面的に協力する姿勢を示した。
  • 26日夜の声明で、状況が整い次第、活動再開を目指す考えを明らかにした。
  • 米倉氏は『エンジェルフライト』が映画化され、2026年2月13日からPrime Videoで独占配信されるという大型案件を控えている。

今回の件は、週刊誌の報道と本人からの限定的な情報が先行している段階であり、違法行為があったことの有無は確定されていない。今後は捜査当局の正式な発表とともに、米倉氏の芸能活動への影響が注目される。

]]> Sat, 27 Dec 2025 04:03:22 +0000 Sat, 27 Dec 2025 04:03:22 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229064548.html https://agora-web.jp/archives/251226205010.html https://agora-web.jp/archives/251226201441.html https://agora-web.jp/archives/251225064653.html https://agora-web.jp/archives/251223235200.html https://agora-web.jp/archives/251226212317.html 「固有の領土」という言葉は欧米にはなく日中だけが使う https://agora-web.jp/archives/251226212317.html 政治や経済を論じるときに、論理的な議論ができないと思ったら、英語やフランス語でどう言うか調べてみると、犯人は和製漢語であることが多い。誤訳だったり、突拍子もない超訳だったりする。

「固有の領土」という言葉もそのひとつである。これも、国際法の世界で使われる法律用語ではないのみならず、英語やフランス語(国際法はフランス語で成り立ってきた世界だからこそ重要だ)に訳せないのである。

明治時代から使われ始め、戦後の日本政府がポツダム宣言受諾で放棄したわけではない土地について使っていたのを、1970年代から中国も盛んに使うようになった。

したがって、欧米では意味のない言葉だが、日中間では共通概念になっている。そのあたり頭の整理をしたので紹介したい。

明治時代からマスコミでよく使われていたが、正式に使われたのは1947年の国会答弁で、1951年の国会決議で使用されたことで一気に広まった。社会科教科書では1960年代から記述がみられる。また、中国も1970年代からこの表現を日本以上に好むようになった。

この言葉を文字通り言えば、ある国家が古くから領有し、ほかの国家に支配されたことはない領土ということになるのだろうが、そういう意味で使われているのでもない。

ただ、東アジアにおける理解としては、近代国際法が万国公法として承認されてから日が浅いので、そのときからずっとある国の領土として認められてきたという意味で理解すると、外交的にも意味のある捉え方だ。

西洋近代国際法は、1648年のウェストファリア条約で確立されたものということになっている。それまでは、封建的な相続財産の論理が主流だったのである。

一方、東洋では中国による冊封を基準とした秩序があったと、戦後日本の西島という東京大学教授が言い出して、冊封体制という言葉が教科書にまで載っているのだが、そんな外交実態もなかったし、中国では冊封体制などという言葉は存在もせず、そもそも統一的な国際法秩序は存在しなかったのである。

それがアヘン戦争以降、中国も日本も西洋各国と条約を結ばざるを得なかったので、万国公法(国際法)の原則に基づいて、アジア諸国同士の関係も律することになった。

このときに、日本はいちはやく万国公法を忠実に守った論理で新規の領土獲得を図り、また、中国が一方的に勢力圏だと主張するのを押さえ込んでいった。

琉球はもともと島津領であって、清国に朝貢していたとしても、そんなものは国際法上意味がないと言い、同様に朝鮮は完全な独立国だと主張したのである。

清国は理論武装が遅れたことも響いて、朝鮮、琉球、そしてフランスによってベトナムへの宗主権を否定されることになったが、領土の外縁部を近代国際法の論理で自国領であると主張する条件の整備に着手した。

台湾については、宮古島の島民が漂着したところ先住民に殺された賠償を要求されたのに対して、「化外の地」と国際法上ありえない説明をして日本に派兵されたのに懲りて、日本に賠償を払ったうえで実効支配の確立に努め、台湾省を設置した(清国は自国領としての責任を最終的には認めて日本はそれに基づいて賠償金を取ったのだから、清国が化外の地として扱っていたから固有の領土といえないというのはおかしい)。

さらに、アロー号戦争や日清戦争を経たのちに残った領土をもって、国際的にも国際法秩序における清国の領土が確定したのであって、そこには、満州、蒙古、新疆、チベットなどが含まれていた。

一方、孫文らは満州族の支配から脱するべく運動し、この論理では、清国から漢地(万里の長城の内側。ほかに漢帝国の領土をもって漢地とすべきといった意見もあった。それだと朝鮮やベトナムも入る)は離脱するつもりのようにみえたし、満州、蒙古、新疆、チベットは清国に残るか独立するかするのが順当だった。

ところが、辛亥革命の過程で、漢人で清国総理大臣だった袁世凱が孫文と取引をして、中華民国をもって清国の承継国家とし、皇帝や満族・蒙古族の貴族には特権を与えることにしてしまった。

孫文(右)と蔣介石

この論理は流れとしては不自然だったが、法的には問題がなかったので、国際社会は承認するほかなかった。

したがって、清国が近代国際法秩序に参加したときから、満州、蒙古、新疆、チベットは一貫して中国の領土だったわけで、これをもって中国が固有の領土という東洋的表現で主張するのは正しい。

台湾については、上記のような台湾征討をめぐる経緯ののち、清国の近代的支配が確立したのちに、日本に割譲されたものである。満州については、満州国が独立したが、世界各国のうち三分の一程度の承認を得たところで終戦になり、満州国は消滅し、中国の実効支配が回復した。

モンゴル(外蒙古)は満州国と同じ立場だったが、毛沢東が政権を取ったことにより中華人民共和国が独立を認め、台湾の中華民国政府ものちに独立を認めた。

このほか、新疆に東トルキスタン政府がソ連の後押しでできたり、チベットなどが独立を模索したことはあるが、いずれも国際的な支持を得られないまま鎮圧された。しかし、もともと中国の領土として国際的に認められていた土地での反乱を鎮圧したのだから、侵略ではない。

このような経緯であるから、日中間では、沖縄は日本の固有の領土である。台湾は中国の固有の領土だが、中華人民共和国政府の実効支配は確立されていない地域で、日本は独立を承認することは将来ともしないが、武力による解決は好ましくないと考えている土地、尖閣諸島は日本が実効支配をしているが、中国はそれが不当だと考えていることは日本側も知っている土地といった整理で、対立を煽るようなつまらない言辞は互いにやめたほうがいい。

ただ、今回の騒動は、高市総理の失言が発端なのだから、潔く撤回しないと代償は大きいと思う。それなりに外交を分かっている人で、高市発言が適切だったと言っている人はほとんどいない。ただ、外交官経験者では、言ってしまったのだから撤回せずに取り繕うべきだと言う人が多いが、こんな馬鹿なことで対立を長引かせていいことはない。

以前とは、国力(政治・軍事・経済)の差が大きくなっているのだから、長引けば日本のほうのダメージが大きいのが現実だ。貿易でも日本にとっては20%、向こうにとっては数パーセントにすぎない。口惜しいが、もはや日中は対等の大国ではないという自覚がないと戦えない。

日中首脳会談 10月31日 高市首相Xより

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Sat, 27 Dec 2025 03:00:17 +0000 Sat, 27 Dec 2025 03:00:17 +0000 https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251228102453.html https://agora-web.jp/archives/251229075114.html https://agora-web.jp/archives/251228225954.html https://agora-web.jp/archives/251226211930.html
https://agora-web.jp/archives/251226195825.html 2025年 マネー、外交、政治、社会現象の総決算 https://agora-web.jp/archives/251226195825.html 一年最後の「今週のつぶやき」は「今年のつぶやき」として1年を振り返る特別編にしています。その2025年、話題は多かったと思います。改革に向けた動きが多かったと思いますが、人々はなにかブレイクスルーを期待しているのでしょうか?

早速本題に入りたいと思います。

踊ったマネー、表彰台は金銀銅

まぁとにかく小銭稼ぎはやりやすい年だったと思います。日本では新NISAが普及してきた中で「おっ、結構上がっているじゃん」とにんまりしている方も多かったでしょう。でも上がったのは株価だけではありません。金利も物価も上がりました。悲鳴を上げたのが「貯金ゼロ層」。30年近いデフレと低成長で「ライフワークバランス重視」=「今が良ければよい」=「年金、払わないし、貯金がなくても大丈夫。でもスマホにはお金をかける」という公式が成立していた層にとっては令和の大転換に「マジ?」。

日本版格差時代とするなら貯金や資産のあるなしがモノを言い、堅実な人ほど懐は温かくなった気がします。だけど日本の株価もアメリカ次第。東から昇るお天道様をみて太陽の色は「ゴールド色じゃないか!」と思っている方もいるでしょう。金銀銅は年末になっても連日高値で「ヒカリものは強い」という印象を打ちつけました。何、AIを忘れてもらっちゃ困る、というでしょう。昔の名前で出ているアメリカ大手ハイテク株で年初来安値と高値の差が2倍以上あったのはエヌビディア、グーグルとテスラ。へぇ、案外頑張っているじゃないかという印象ですが、昔の名前で出ているあの三菱重工で儲けたという話を誰もしないのと同じことです。

外交

トランプ氏は外交の主役を演じるほどいぶし銀の演技力はないけれど「目立ったで賞」は差し上げます。イスラエル問題は取りあえず収まりました。だけどイスラエルは来年の攻撃目標をイランに据える気かも。ネタニヤフ氏は懲りない男なのです。ウクライナ問題は「ようわからん」が本音。確かにここに来て動きはあるけれど領土問題はたやすくないでしょう。この背景の一つに締まりのない欧州を見ています。やれEU、やれNATOというけれど本当はどの国もみんな我儘だけど我慢しています。それが爆発すれば欧州の危機が本当にやってきます。

東アジアに目を向ければ中国が本当に冴えなかったと客観的に申し上げます。14億人いるならもっと想像力逞しく経済だって成長ができるはずなのに「ブラックホール習近平氏」に14億人のエネルギーを吸い取られてしまい、国家の体をなしているとは思えない散々な状況です。経済不況に就職難、政府高官の腐敗となれば期待するのはトランプ様のほほ笑みのみ。東南アジア諸国も中国サマサマから一歩引く感じが見えてくる中で日本がもっと存在価値を上げてもよいのかなと思います。世界が疑心暗鬼だからこそ、日本は安心安全の外交を着実に進め、目先の「飴玉外交」ではなく、しっかりと果てしなく続く道を築いて欲しいと思います。日本はチャンスです。

トランプ大統領と高市首相 首相官邸HPより

政治

世界がなぜ疑心暗鬼になったか、その一つに行き過ぎた民主主義(ポピュリズム)の反動を見ています。つまり個の権利をそれぞれが主張すれば収まりどころがないのは目に見えています。だからこそ、明白な目的意識をもった政権が強くなる時代になったとみています。併せてバラバラのベクトルを一方向に集約するには強力な国家論が手っ取り早いのであります。世の中の趨勢にはうねりがあるのですが、今は強い国家が正解。よって正道は日本やイタリア。邪道が英国や韓国。

で、日本の場合は石破マシュマロ政権に「焼けばおいしいけれどちょっとだけで結構」と賞味期限を迎え、突然、辛さ10倍の高市政権を選ぶこのギャップに「日本人はマゾやなぁ」と海の向こうから眺めておりました。就任2か月、刺激が強すぎて汗だくになりながらも「食べて、食べて、食べ続けている」うちにこれは旨いと異様な高支持率に国民民主の玉木さんも「僕もやっぱ与党に入りたいなぁ…」と思うほどに。野田さんは申し訳ないほど冴えなくなり、私から見れば「老けたなぁ」と。野党が頑張らないと日本総与党の時代になってしまいます。

社会現象

お前はそれを選ぶか、と言われるかもしれませんが、伊東市と前橋市の市長様の話題は堪能させていただきました。両名とも言葉で謝罪、気持ちで闘志なのですね。伊東市は決着がついたけれど前橋の件、実は私はなんちゃ思っていないのです。ラブホなんてファッションホテルでカラオケしに行くところという面もあるのです。また私が秘書の時は某ホテルに年間契約の部屋があり密談はそこで行いました。日本は安くて手軽に密談するところが少ないし、その昔「電通」元幹部から直伝だったカラオケ屋会議は狭い上に他の部屋の歌声が嫌なのです。ラブホミーティングはちょっとした冒険的アイディアだったけど一般良識ある市民の目という点で市長さんが行くにはふさわしくないかもですね。

万博ですが私は会期中2度も大阪に行きながらも暑さに耐えきれず。一度なんて大阪城の入場券売り場まで行って暑さの中、長蛇の列を見て、「帰ろっ」。なのに万博に10回、20回行く人たちが多い関西人の逞しさになぜ、と聞けば「子供相手の絶好の時間つぶしや」に思わず「ほんまかいな?」。暑さに関しては世界どこでも異常なほど。ここバンクーバーも毎年この時期は寒波が来るのに私は半そでシャツにジャンバー着ているだけ。日本では熊も餌がなくて山から下りてきたわけで社会現象というか気象現象にも翻弄された2025年でありました。

後記
ひろの2025年は病院との格闘でありました。肝臓と膝と眼科の専門医にかかり続け、膝は手術でひと段落、眼科は昨年手術して経過観察が続いているけれど先週、「来年再手術かなぁ」と先生に言われ「再来年以降に先延ばしを」と懇願する私。歳をとるとどうしてもカラダのあちらこちらに異常が出てくるのだけど内臓系は数字で管理するので早めに対策すればコントロール可能。実際肝臓は医者が驚くほどの改善。そうしたらホームドクターに「でもコレステロールがダメよ」と言われ、「ははっ、2026年の改善目標にさせて頂きます!」。新たな健康度達成目標ができたわい、ぐらいの感じであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月27日の記事より転載させていただきました。

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Sat, 27 Dec 2025 02:55:25 +0000 Sat, 27 Dec 2025 02:55:25 +0000 https://agora-web.jp/archives/251230071525.html https://agora-web.jp/archives/251229225703.html https://agora-web.jp/archives/251229225727.html https://agora-web.jp/archives/251229225809.html https://agora-web.jp/archives/251229234832.html