維新・立憲・国民の「国民連合政権構想試案」

 

維新と立憲の接近

日本維新の会の代表選では馬場伸幸氏が代表に選出され、立憲民主党では新たに元外相岡田克也氏、元財務相安住淳氏らベテランが執行部入りしたが、最近、維新と立憲の両党間の接近がみられるようになった。

維新の馬場氏は今後10年以内に自公政権に代わり政権獲得を目指すとしているが、そのための戦略として、維新としても孤立せずに野党第一党であり組織のある立憲との連携の必要性を認識したのであろう。立憲にとっても改革指向で勢いのある維新との連携は保守無党派層の獲得にプラスとの計算があろう。

国会運営を見ても、維新と立憲は「旧統一教会問題」をはじめとして、協調姿勢が顕著となっている。その背景には「旧統一教会問題」で苦境にある自民党岸田政権にダメージを与え、今後の政権交代への道筋を開く狙いも、両党にはあると思われる。

「共産党除外」の共通認識

維新・立憲の接近には「共産党除外」の共通認識があると考えられる。維新はもともと共産党とは「水と油」であり、共産党からは常に自公政権の「補完勢力」などと罵倒されてきた。

立憲は枝野幸男代表時代の2021年の総選挙で共産党との閣外協力合意問題が響き大敗したトラウマがある。立憲は今も共産党と共闘すれば選挙に勝てないとの認識を持っているであろう(2021年11月8日掲載「立憲民主党を惨敗させた共産党アレルギー」参照)。

従って、「共産党除外」で維新と立憲の認識は一致しているのである。「共産党除外」の背景には日本国民の根深い「共産党アレルギー(共産党拒絶反応)」がある(2021年11月13日掲載「立憲は共産党アレルギーを甘く見てはならぬ」参照)。加えて、安保条約廃棄・自衛隊違憲解消を主張する共産党の「非武装中立政策」がある。

 「自公政権崩壊」の可能性

最近の岸田内閣の支持率は、どの世論調査を見ても30パーセント前後の危険水域にまで凋落し、回復の見通しが立たない状態である。「旧統一教会問題」が最大の原因であるが、岸田首相の指導力への国民の疑問符も否定できない。

このまま支持率が回復しなければ、来春の統一地方選を控え「岸田おろし」が起こり、菅内閣の「二の舞」になりかねない。しかし、被害者救済などの「旧統一教会問題」の解決や自民党議員と旧統一教会との関係解消を国民が評価しなければ、「首相」を変えても自民党の政権運営は楽観できず、次期総選挙での自公の過半数割れ、ひいては「自公政権崩壊」の可能性も否定できない。

もちろん、「自公政権崩壊」には自民党政権に代わり得る野党の政権受け皿が不可欠である。そのための「政権選択肢」として、維新・立憲・国民三党による国民を安心させる安全保障政策をはじめとする「国民連合政権構想」が何よりも重要である。立憲は政権を獲得するためには特に安全保障政策において維新に大幅に歩み寄る必要がある。

維新・立憲・国民の「国民連合政権構想試案」

(1)日本の自主防衛力の強化

ロシアのウクライナ侵略を受け、抑止力がなければ他国から侵略されることが明らかとなった(2022年3月15日掲載拙稿「ウクライナ侵略の教訓:抑止力なき国は侵略される」参照)。日本は中国・北朝鮮・ロシアの核保有国に隣接し、「尖閣有事」「台湾有事」など近時軍事的脅威は高まっている。

「拡大核抑止(核の傘)」をはじめ日米同盟は極めて重要であるが、米国も自国の国益と自国民の安全確保が最優先であるから、安全保障を米国に全面的に頼り切るのは危険であり、ウクライナ国民と同様に、日本国民も常に「自分の国は自分で守る」自主防衛の覚悟が不可欠である。

日本の抑止力強化のためには、専守防衛に基づく「必要最小限度」の防衛力原則を見直し、現在の周辺国の軍事情勢に対応し柔軟に解釈変更する必要がある。したがって、ミサイル防衛システムの一層の強化はもちろんのこと、自衛のための長射程極超音速弾道ミサイル・長射程巡航ミサイル・長距離戦闘爆撃機・原潜・空母などの保有も「必要最小限度」の解釈変更により可能とする。

これらの自衛のための保有は、対中国・対北朝鮮・対ロシアへの有効確実な「反撃能力」となり、日本の自主防衛力・抑止力を格段に強化する。これは米国にとって北東アジア防衛の負担減になるから米国も歓迎するに違いない(2022年1月14日掲載「日本防衛に極めて有効な射程2千キロ以上極超音速弾道ミサイル」参照)。

さらに、日本の核抑止力を格段に強化するため米国との協議により、ドイツなどのような「航空機投下型核共有」に加え、「ミサイル発射型核共有」「潜水艦発射型核共有」などの「日本型核共有」を導入する。「核共有」は日本の領土・領海・領空に核を配備し、これを米国と共同運用するものであるから、「核の傘」よりも、中国、北朝鮮、ロシアの核恫喝や核攻撃を抑止するのに極めて有効である(2022年3月8日掲載「核の傘を格段に強化する核共有」参照)。

これらの日米同盟を基軸とする日本の自衛のための「自主防衛力の強化」は、外交と車の両輪であり、日本の平和外交の重要性を決して否定するものではない。もとより、自衛隊に憲法上の正統性を付与し、且つ日本の自主防衛力・抑止力の保有を憲法上根拠付ける「自衛隊明記」の憲法改正は、日本の安全保障上も極めて重要であるから、憲法9条の改正を行う(2019年11月24日掲載「日本防衛のために自衛隊に憲法上の正統性を付与せよ」参照)。

(2)国家の5か年計画による持続可能で強力な経済成長戦略の構築と遂行

国家の5か年計画で、AI(人工知能)・情報・通信・半導体・超高性能コンピューター・ハイテク・宇宙開発・ロボット・ドローン・省エネ・先端医学・再生可能エネルギー・環境保護産業などを含む先端科学技術産業及び先端科学技術研究開発への国家による人的物的集中計画投資と、国家的支援体制を構築し遂行する。上記国家5か年計画は日本の持続可能で強力な経済成長戦略としてきわめて重要である。

政府と日銀は政策面での連携を強化する。日銀は異次元の金融緩和を続け、企業の投資を増やし、国民所得向上による経済成長を目指したが、政府は2度にわたる消費税増税を行い、国民の購買力(有効需要)を減退させ、企業の投資を減らし、結果的に経済成長にマイナスの影響を与えた。こうした政府日銀の「政策不一致」を繰り返えさない。

異論はあるが、500兆円を超える企業の内部留保は年々増加しているので、日本経済の成長のために、経済界と政府との合意による内部留保の具体的活用策を検討する。具体的には個別企業・経済団体・政府・党・専門家・有識者を交え、政府内に「企業内部留保活用調査委員会」を設置し、内部留保の具体的活用策を協議検討する。

私案では、「内部留保課税」ではなく、あくまでも経済界と政府との合意に基づき、各企業からの内部留保額に応じた一定比率の内部留保金拠出により、政府または民間に「企業内部留保基金」を設け、これを従業員の賃金上昇や社会経済基盤投資等に振り向ける。内部留保金拠出企業には税制上の優遇措置等を行い、将来、拠出企業が経営悪化した場合には、拠出金の返還を行う。仮に内部留保の1パーセントでも5兆円になる。

(3)全国民の生活を保障する社会保障制度の確立

年金・医療・介護・生活保護・子育てなど日本の社会保障制度は整備されてきた。しかし、今も、少子高齢化、男女の賃金格差、非正規雇用の増加、低賃金ワーキングプアー、パート、シングルマザー・教育格差など、課題は多い。これらの課題を解決する社会保障政策としてベーシックインカム(最低所得保障制度)を導入する。

国民は国から定期的に一定額の給付金を受領することによって、生活の安心安全が得られ、日々の社会生活が充実し、出生率も向上する。当然、国民の購買力(有効需要)が増加し、企業にとっても売り上げが増え利益である。企業の収益が増加すれば賃金も上昇し、企業投資も増加する。そのため税収も拡大するから、国の財政も改善強化され、経済の好循環が可能になる。

ベーシックインカムについて、自民党は否定的であるが、維新、立憲、国民、共産、社民、れいわ、NHK党などの野党はいずれも肯定的である。維新・立憲・国民による「国民連合政権」は、持続可能で経済が成長する活力ある「日本型福祉国家」を目指すものとする。

以上の「国民連合政権構想試案」は、自民党政権に代わり得る、内政・外交・安全保障に関する「政権選択肢」を国民に提供する趣旨のものである。