日本防衛のために、自衛隊に憲法上の正統性を付与せよ

日本防衛への自衛隊の役割の重要性

日本の防衛が、1954年創設の自衛隊と、1952年発効の日米安全保障条約によって全うされてきた事実は、どの世論調査を見ても日本国民の圧倒的多数が認めている。現在も「自衛隊違憲」を主張する日本共産党ですら、他国から急迫不正の主権侵害があった場合は、自衛隊を活用すると言っている(注1)

dronepc55/写真AC(編集部)

このように、今では、自民党は勿論のこと、共産党を含め、与野党を問わずどの政党も日本防衛に対する自衛隊の役割の重要性を事実上認めている。しかし、戦後、共産党や旧日本社会党は、自衛隊の存在そのものに激しく反対してきた。旧日本社会党に至っては、無防備の「非武装中立論」さえ主張していた(注2)

自民党は、このような野党の激しい反対運動にもかかわらず、ひたすら日本防衛のために自衛隊を創設し、充実整備してきたのである。

自衛隊の補完装置である日米同盟

のみならず、自民党は、このような自衛隊を補完するものとして、日米同盟関係の維持強化にも努めてきた。「補完」とは主として米国の「核抑止力」であり、米国の「敵基地攻撃能力」である。その結果、日本は憲法9条に基づく「専守防衛」を維持してきたのである(2019年9月13日付け「アゴラ」掲載拙稿「韓国の核保有も睨み、日本は米国との核共有を急げ」及び2019年10月23日付け拙稿「日本は敵基地攻撃能力の保有を急げ」参照)。

しかし、共産党や旧日本社会党は自衛隊を補完する日米同盟にも激しく反対してきた。主たる反対理由は、日米同盟により米国の戦争に巻き込まれるという「巻き込まれ論」である。しかし、日本は戦後70年以上平和と安全を守ってきたのであり、このことは、自衛隊と、これを補完する日米同盟の「抑止力」としての有効性を証明する。日米同盟は自衛隊の補完装置として、日本が将来自衛のための本格的核武装をしない以上は必要不可欠である。

共産党などの自衛隊・日米同盟反対論の危険性

もしも、戦後、共産党や旧日本社会党が主張した通り、日本に自衛隊も日米同盟も一切存在しなかったとすれば、北方領土のみならず、北海道占領計画を有していたソ連の軍事的覇権主義を考えると(注3)、日本は無防備の「真空状態」となり危険極まりない(注4)。その場合、日本はひたすら「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持」(憲法前文)するため、国連を含む平和外交に頼るしかなく、日本の存立と安全を戦後70年以上維持し得た保証は全くない。

その意味で、自衛隊と日米同盟に激しく反対した共産党や旧日本社会党がいかに危険で無責任であったかは明白である(2019年8月8日付け「アゴラ」掲載拙稿「安全保障の根幹を否定する安保関連法反対学者の会」及び2019年10月26日付け拙稿「日本学術会議は軍事研究禁止方針を再検討せよ」参照)。

戦後、日本防衛に多大な功績の自民党

ロシアの軍事介入によるクリミア半島併合、中国による国際法無視の南シナ海人工島軍事基地建設、常態化した尖閣諸島領海侵犯など、軍事大国による力による現状変更の試みや侵略行為は後を絶たない。自衛隊のさらなる充実強化と、これを補完する日米同盟の強化は、我が国に対する侵略行為を抑止するために必要不可欠である。

戦後70年以上、ひたすら日本防衛のために、共産党や旧日本社会党の激しい反対運動にも拘らず、自衛隊を創設整備し、これを補完する日米同盟を維持し、抑止力を強化して、日本国の存立と平和、日本国民の生命財産を守り抜いた自民党の歴史的役割と、その功績は多大であったと言えよう。

自衛隊に憲法上の正統性を付与せよ

しかしながら、戦後、70数年にわたって日本防衛に貢献してきた自民党ではあるが、「自主憲法制定」を党是とする自民党は、いまだその使命を果たしていない。それは現行憲法には自衛隊に関する規定が全くないことである。このことは、自衛隊には憲法上の正統性が付与されていないことを意味する。日本の安全保障及び各種災害救助活動に長年多大な貢献をしてきた自衛隊について、憲法上明確な法的根拠すら欠く状態をいつまでも放置することは到底許されない。

自衛隊を憲法上明記し、自衛隊に憲法上の正統性を付与することは、日本の安全保障にとっても極めて重要である(2019年9月14日付け「アゴラ」掲載拙稿「憲法上自衛隊明記は戦後日本の画期的大事業」参照)。

(注1)2016年参院選党首討論志位和夫委員長発言、2016年6月19日付け「産
経新聞」
(注2)石橋政嗣著「非武装中立論」2006年明石書店
(注3)2014年8月19日付け「産経新聞」
(注4)小泉信三著「私の平和論について」小泉信三全集10巻昭和42年文藝春秋社

加藤 成一(かとう  せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生終了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。ライフワークは外交安全保障研究。