こんにちは。
結局のところ、この夏最大のイベントはニジェールのクーデターでも、プリゴジンの撃墜死でもなく、エヌヴィディアの今年度第2四半期決算だったと思います。
そこで今日は、エヌヴィディア決算が明らかにしたアメリカ経済の病巣について書くことにします。
決算自体はぶっちぎりの好業績
8月23日、水曜日の株式市場が引けたあと発表されたエヌヴィディアの決算自体は、担当アナリストの中でもっとも強気だった人の予想を上回るほど好調でした。
売上は前年第2四半期比で3.25倍、前年上半期比で1.69倍の増収、営業利益は四半期ベースで13.63倍、半期ベースで3.78倍、当期利益ではそれぞれ9.43倍と3.62倍というすさまじい大幅増益でした。
その結果、1株利益も四半期で2ドル乗せ、半期で3ドル乗せという期待を超えて第2四半期で2ドル48セント、上半期で3ドル30セントとなりました。
もちろん、強気派アナリストの予想を超えた好決算だったので、翌24日の寄り付きは前日の引値471ドルを6.6%も上回る502ドルだったのですが、ザラ場ではその後値下がりしつづけて、結局前日よりたった47セント高いだけの471.63ドルで引けたのです。
そのまた翌日の8月25日はどうだったかというと、引値は前日比11.45ドル安の460.16ドルと本格的な下げに転じてしまいました。
いったい何が起きていたのでしょうか?
いちばん単純な答えは、実際にエヌヴィディアの好業績が数字になって表れてみると、あらためて同社株がいかに割高かはっきり見えてきたということです。
同社をカバーしている30人強のアナリストのうち、今年度通期についていちばん強気な予想が売上で約580億ドル、1株利益で11.50ドルとなっています。直近の株価460ドルと比べると、株価売上高倍率(PSR)は19.7倍、株価収益率(PER)は40倍となってしまうのです。
つまりこの会社の業績にいちばん強気なアナリストの見通しどおりだったとしても、割高感が薄れる程度であって、順当に業績で買える銘柄にはならないということです。
なぜ、エヌヴィディア株は業績を見ればとうてい買えないほど割高な株価になっていたのでしょうか。
GPUでニッチを確立した銘柄
エヌヴィディアは1993年創業のいわゆるファブレス(製造部門を持たない)半導体メーカーで、創業時には製造部門のない「メーカー」という概念が理解されず、創業資金を掻き集めるのに大変苦労したそうです。
研究開発を半導体の設計に限定して、実際の半導体製造はファウンドリーと呼ばれる微細化技術の先端企業に委託するという業態は、たしかにどこかがやってみて成功しなければなかなかおいそれと投資家が出資してくれるコンセプトではないでしょう。
当然、1998~2000年頃のハイテクバブル膨張期には注目されていただろうと思ってしまいがちな業態ですが、当時株価は1~2ドル台で低迷しつづけ、このバブルが弾けたころにやっと5ドルを付けたあと、また長々と1~2ドルの株価が続くという「ボロ株」でした。
そのエヌヴィディアが、自社なりのニッチを見つけてそこそこ安定した収益増に転じたのは、独立型(discrete type)のグラフィックス・プロセシング・ユニット(GPU)の製造に特化するようになってからのことです。
GPUとは、その名のとおり、画像・映像処理に必要な複雑な演算を同時並行でいくつかおこなうことによって、仮想現実の世界を一層迫真的で臨場感のある画像や映像を創りだすために開発された処理装置です。
具体的にどんなところで迫真性や臨場感を高めるかというと、たとえばゲーム内に登場する人や動物や機械の動きに、影がまさに「影が本体に寄り添うように」動いてくれるかどうかといったところです。
何かが動くたびに、その影がぴったり本体と一致する動きをできるかどうか、ふつうのセントラル・プロセシング・ユニット(CPU)を使うと0.3~0.5秒かかっていた計算が0.1秒以下でできるかといった話になります。
もしこれが実写映像にしろ、アニメにしろ、台本どおりに動く映像であれば、いくらでも時間をかけて綿密に計算し、そのとおりに影を描いて行って完成したものを劇場公開なり、配信なりすればいいわけです。
ところが、ゲーム機に使われる映像は、そのときそのゲーム機でプレイしている人間の反射神経が鋭いか、鈍いか、だいたい常識的な動き方をする(たとえば自分めがけて矢や弾丸が飛んできたら避ける)か、意外な動きをするかで千差万別です。
その千差万別の動きに対応するために,同時に何通りかの違う演算をし続けていく必要があるわけです。
こう書いてきただけで、これはどうも「まじめに社会人として働いている人」は軽視しがちな分野だろうなと想像がつきます。実際、今も半導体部門全体の売上ではサムスン電子と首位争いをしているインテルは、この分野で決定的に立ちおくれてしまいました。
「何? 高速・高性能の画像処理機能が欲しい? じゃあ、CPUに画像処理だけ高速高性能化したものを組み込んであげましょう。そうすれば、画像処理をするたびにいちいちGPUカードを装着する必要もないし、お得ですよ」という方針を取ったわけです。
というわけでGPUについては、独立型とCPU組み込み型(integrated type)が併存しているわけですが、次第に独立型優位が鮮明になってきました。
一見、「半導体冬の時代」と呼ばれた2022年第3四半期に出荷個数が42%減の1400万個に落ちた独立型GPUは、18%減の6200万個に踏みとどまったCPU組み込み型に比べて分が悪いように感じます。
でも、実際にはGPUをCPUに組み込んだタイプは、ふつうのPCよりちょっと割高にできるけれども、あまり切実に画像処理の速さを求める消費者の期待には応えられない中途半端な商品になってしまっていたのです。
その最大の証拠が、2021年までは「独立型のGPUは必要ありません。CPU組み込み型で十分です」と言い張っていたインテルが、2022年には独立型GPUを販売していたという事実でしょう。性能が目に見えて良くなる分だけ価格も高く設定できるのです。
つい最近まで低迷分野だったGPU
じつは、CPU組み込み型をふくむ全体で見ると、GPUは堅実な成長を続ける半導体市場の中で、かなり低迷が顕著な分野でした。
ご覧のとおり、2011年第3四半期には1億4000万個を超えていた出荷が、最近では1億個に届くかどうかという程度まで落ちこんでいます。
半導体製造大手12社の中でGPU製造トップ3社、つまりインテル、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、エヌヴィディアがどんな地位にあるのかを見ておきましょう。
2001年から2021年までの20年間の売上増加率で見ると、AMDの4.1倍、インテルの3.1倍はともに劣等生4人組の中に混じり、比較的単価の高い独立型GPUに特化したエヌヴィディアだけが、ふつうの成績6人組の中で最下位の11.5倍と、なんともパッとしない実績です。
理由はふたつあります。ひとつは過去一貫して独立型の3~4倍のシェアを維持してきたCPU組み込み型GPUが、切実に画像処理の高速化を求める消費者にも、そんなことどうでもいい消費者にも受け入れられない中途半端商品だったことです。
もうひとつは独立型GPUが、安定しているけれどもあまり大きな成長は望めないニッチだったことです。従来、独立型GPUの需要層は2つのグループにほぼ限定されていました。
- ゲームのクリエーターや、プロ・アマを問わずそうとう真剣にゲームと取り組むゲーマーたち。つまりゲーム業界の人々。
- GPUの何通りかの演算を同時並行してできる機能を利用して、少しでも速く正解に到達しようとするビットコイン採掘業者たち。
1のゲーム関連需要はそれなりに伸びているのでしょうが、爆発的な増加が期待できる分野ではなさそうです。
2のビットコイン採掘業者は、PCも独立型GPUもつねに最新鋭機種に買い替えながら、膨大な電力を消費して演算を続けられる業者が限定される一方で、正解にたどり着いた場合にもらえるビットコイン数は半減し続けるため、市場規模は縮小に向かっているでしょう。
ところが、2022年11月のチャットGPT-3.5の公開をきっかけに、この限定された需要層が飛躍的な増加に転ずる兆候が出てきました。
生成AIにはGPUが不可欠
生成(generative)AIもまた、何通りか同時並行で高速演算をしつづけるPCの存在抜きでは機能しません。
というわけで、エヌヴィディア今年度第2四半期決算最大の特徴はこれまでゲーム部門とほぼ同額か、その2倍程度に収まっていたデータセンター部門売上が、一挙にゲーム部門の4倍を超えたことです。
一目瞭然ですが、今回の決算で突出した伸びを示したのはデータセンターだけです。他の4部門はすべて「半導体冬の時代」と呼ばれる2022年(エヌヴィディアにとっては2023年1月に〆めた2023年度)の低迷を脱していないのです。
もう少し長期にわたってワークセンター部門の売上推移を見ると、次のグラフのとおりです。
生成AIが普及することによって、独立型に特化したエヌヴィディアのGPUに対する需要が「堅気」の企業のあいだで急激に高まっているのです。この事実は、ある重要な問題点を指し示しています。
これまでエヌヴィディアにとって上得意だったゲーム関連業界とビットコイン採掘業界では、生成AIにつきまとう幻覚症状(hullucination――見えるはずのないものを見、聞こえるはずのない音を聞くなどの錯乱状態に陥ること)は、ほとんど問題視していませんでした。
真剣なゲーマーがゲーム機が起こした錯乱状態を見れば「そう出ることもあるのか」と驚くでしょうが、ゲーム機の欠陥と思うよりはむしろ新鮮な闘争意欲を掻きたてられるのではないでしょうか。
また、ビットコイン採掘業者は同じ問題を解くのに数え切れないほどの量の演算をしていて、間違った答えがひんぱんに出るのは当たり前、たったひとつの正解を少しでも他の業者より速く出すことだけが重要なわけです。間違った答えのどこがどうダメなのかについて余計な時間をかけたりしません。
しかし、一般企業、医療機関、地方自治体などがデータセンターに生成AIを使えば、この錯乱状態は非常に大きな問題となります。錯乱状態はいわゆるバグとはまったく違います。
バグは、プログラミングの過程で本来そういう状態を想定して対処法も考えておかなければならなかった状態を見落としていたために、コンピューターが機能停止に陥ったり、でたらめな答えを出す現象です。丹念にプログラムの穴を探して埋めていけばいいわけです。
生成AIが起こす幻覚症状は、解決の糸口どころか、まだなぜこういう問題が生じるのかさえ突きとめられていません。
「この問題が解決できないうちは絶対に現実世界の人命や資産に関わる問題に生成AIを使ってはいけない」と警告する専門家もいますが、見切り発車でさまざまな業界が生成AIの実用化になだれ込んでいるわけです。
その咎めは、すでに出ていると思います。一時生成AIを使って自動車の自律走行を実現しようというブームが自動車業界で起きました。エヌヴィディアが自動車を独立した部門としているのも、このへんで需要が激増すると見ていたからでしょう。
ひとつ前の黒地に白抜き数値の部門別売上内訳に戻っていただくと、エヌヴィディアの2024年度第1四半期(2023年2~4月)で、この部門の売上はピークアウトしました。
理由は、自律走行が手動運転よりはるかに事故が多く、その原因はAIの幻覚症状らしいことがわかってきたことだと思います。
医療機関でとんでもない誤診が相次いだり、地方自治体で訳のわからない公文書が続出したりしたら、大変です。エヌヴィディアとしては「自社が提供しているのはGPUだけで、それがどう使われているかについてまで責任は持てない」ということでしょう。
ただ、だれが責任を取るかの問題ではなく、そうなったときにエヌヴィディア最大の稼ぎ頭であるGPUの売上がどうなるかが問題です。
急成長シナリオには落とし穴が一杯
取りあえず、この幻覚症状問題はそれほど大きな障害にならずに、「順調」に生成AIを使う一般事業者や政府・地方自治体などが増えたとしましょう。そうなったとき、エヌヴィディアは独立型GPUで従来どおりの90%近いシェアを維持できるでしょうか?
もちろん、会社側はそう主張しています。
「製造工程は台湾半導体に全面依存でも、創業以来の長い付き合いで最先端の製品を優先的に弊社向けに供給してくれるし、もし製造が追いつかないほど需要が伸びても、顧客は他社の代替品を使わず弊社の製品が届くのを待っていてくれる」と豪語しているのです。
エヌヴィディアが「供給が遅れても顧客は他社の類似品に流れず、弊社製品の供給を待っていてくれる」と主張する根拠は、GPUというハードだけではなく、CUDA(Compute Unified Device Architecture)というソフトが同時並行で複雑な演算をおこなうには不可欠だからということのようです。
しかし、独立型GPUでシェアが2位のAMDも同じようなタスクをこなすためのStream Processorsというソフトを開発していて、性能に格段の差はないという消費者団体の調査結果もあります。
今までは半導体全体が成長分野だったのにGPUは落ちこぼれ分野だったから、エヌヴィディアが独立型GPUで圧倒的なシェアを握るのを許していた他社も、GPUが成長分野になったら、ここに巨額の研究開発費を投じてくるでしょう。
そしてアイデアだけの勝負ということになると、半導体製造装置への投資ほど莫大な研究開発費がかかるわけではありませんから、群小業者の中から、画期的なアイデアで既存大手のシェアを食って成長する企業が出て来る可能性も高いと思います。
さらに、生成AIがほんとうに持続的高成長分野ということになったら、生成AIメーカー自体がカスタムメードのICを直接台湾半導体のようなファウンドリー大手に注文して、ファブレスで経営しているGPU製造各社の中抜きを図ると予測する業界アナリストもいます。
エヌヴィディアの持続的高成長を妨害しそうな敵は、既存大手の逆襲から思わぬ伏兵の出現まで、数え切れないほど存在します。
半導体の持続的成長に賭けるなら、答えはひとつ
とは言え、半導体に対する需要はまだまだ持続的に増えつづけるのはほぼ確実です。
そして、生成AIやGPU関連で業界全体がどう動こうと、絶対確実なことがひとつだけ存在します。
それは、超微細化技術はどんどん進歩するが、この分野で技術的蓄積と莫大な設備投資を毎年続けられる財務力を持っている業者は台湾半導体1社だけだという事実です。
2022年には、ついに製造工程だけに特化した台湾半導体の設備投資額が、いろいろな分野にカネをかけなければならない半導体一貫製造(integrated device manufacturer、IDM)の2強、サムスン電子とインテルを抜いて世界最大となりました。
世界最大の設備投資を続けられる技術力と財務力は、とうてい他社が超えることのできない壁です。仮に微細化技術では台湾半導体とまったく同じレベルに達している企業が、台湾半導体と同額の設備投資をすれば、現在の台湾半導体の売上の半分を奪えるでしょうか。
そんなことになれば、おそらく両社とも収益が設備投資負担に耐えきれずに巨額赤字で共倒れとなるでしょう。それくらい、傑出したファウンドリー大手としての台湾半導体の地位は安定しています。
しかも台湾証券取引所単独上場という制約はありますが、株価収益率(PER)は14~15倍で推移しているのです。
どう考えても、半導体市場の持続的成長に賭けるのなら、エヌヴィディアのような問題山積の企業ではなく、世界唯一のファウンドリー大手、台湾半導体以外にはないでしょう。
なぜアメリカの「成長株」は割高か
こうして見てくると、アメリカで独自のニッチを持っていて、そのニッチの成長が期待できる銘柄はとんでもなく割高だという事実に気づきます。しかし、その万年割高株をさらに買い上がるブル相場にも、やっとほころびの兆しが見えてきました。
S&P500採用銘柄中で時価総額トップ10社の時価総額シェアと収益シェアを比較した次の2枚組グラフをご覧ください。
今にして思えば、1998~2000年にピークに達した第1次ハイテクバブルは、まだ将来に希望を残すバブルでした。バブル絶頂の1999年にトップ10社の時価総額がS&P500全体の時価総額の約27%に達したとき、その10社の収益貢献は18%程度にとどまっていました。
でも、バブルが崩壊して他社の業績が激減したとき、これら10社はしっかりしたニッチを持っていて業績の目減りを小さく抑えられたので、2002年には収益シェアで28%近くまで上昇していたのです。
それに比べて、2021年にピークアウトした第2次ハイテクバブルとほぼ同じ時価総額シェア、32%近くまで迫った今年の6月末、AIバブルの収益シェアは第2次ハイテクバブルピークの約34%から12~13パーセンテージポイント下の21.5%まで落ちこんでいるのです。
つまり、今度のAIバブルは業績の先読みをしているバブルではなく、業績の後追いをしているうちに、業績のほうがずるずる下がっているバブルなのです。
この先行きに暗い展望しか持てないバブルという特徴は、ナスダックというこれから大きくなるであろう企業を育てるための株式市場の値上がり株総数から値下がり株総数を引いた数値にも表れています。
もともと新興株主体のナスダックのような市場に上場している銘柄の大部分は,時価総額が小さいままにとどまるか、いつか淘汰されて消えていきます。ほんの一握りの銘柄が、どんどん時価総額も増え、もっと大きな市場で取引きされるようになっていくのです。
ですから、2003年以来一度も上昇株の出来高が下落株の出来高を上回った結果としてこの数値がプラスに転じたことがないのは、不思議ではありません。
しかし、2008~12年の長い低迷期にも一度も記録したことのないマイナス30万株を超えて(下落銘柄の株数が上昇銘柄の株数より30万株以上多い状態)、しかもまだ増えつづけているのに、ナスダック総合株価指数は急上昇を続けているのは異常です。
あまりにも極端に人気銘柄に買いが集中し、その人気銘柄の時価総額がどんどん増加しているので、時価総額の低い多くの銘柄の株価が下げ続けていることが、総合株価指数にほとんど影響しなくなっているのです。
いつかこの異常な状態は解消するでしょうが、ひょっとするとエヌヴィディアがあれだけの好決算を発表した直後に下げに転じたことがそのきっかけになるかもしれません。
アナリストより学生の判断が正しい
ある人材紹介企業が、毎年コンピューター科学専攻学生の就職希望企業ランキングを発表しています。
2023年版は次の表が示すとおりでした。
今年の春先に調査した結果なので、もう生成AIブームの話や、その生成AIはエヌヴィディアが得意としている独立型GPUを大量消費することなどは、話題になっていたはずです。
ですが,エヌヴィディアのランキングは11位から10位へとたったひとつ上がっただけでした。むしろ、去年は10位だった任天堂が2つランクを上げて8位になっているほうが目立ちます。
学生たちは生成AIは実社会で活用しようとすると問題が噴出しそうなので、実用化はゲーム程度にとどめておいたほうがいいと、直感しているのではないでしょうか。
また去年は悲惨な決算で19位まで順位を落としたインテルが、今年は8ランク上がって11位と、エヌヴィディアのすぐ下に迫っています。長年の大企業病を克服して立ち直りの兆しが見え始めたのでしょうか。
そもそも学生のほうがコンピューター関連業界・半導体業界のアナリストより、信頼できる判断をしていると思います。
まず、証券会社のアナリストが「長期展望」について話をするのは、現状ではとても割高すぎて買えるはずのない銘柄を強引に買わせようとするときぐらいで、彼らが長期というのは翌年度のこと、超長期でも3~5年先のことしか見ていません。
それに比べて、学生が就職先を選ぶときには、少なくとも証券会社のアナリストよりはずっと本気で長期的な展望を考えています。そして、目先の業績急成長にもかかわらずエヌヴィディアブームが短命に終わることも,彼らはしっかり予測していたのではないでしょうか。
生成AIにはつきものの幻覚症状があちこちで表面化してきたとき、スケープゴートにされるのは、業績も伴わずに時価総額が肥大化したエヌヴィディアということになりそうな気がします。
この記事は特定の金融商品に関する推奨や投資判断ではありません。あくまでも読みものとしてお楽しみください。
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編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2023年8月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。