日本の労働者の生産性は高い?:労働者1人あたりGDP

Feodora Chiosea/iStock

1. 労働者1人あたりGDP

前回は労働生産性の指標である労働時間あたりGDPについて、名目と実質の購買力平価換算値をご紹介しました。

今回は、もう1つの労働者1人あたりGDPについてご紹介していきます。

主要先進国の傾向で見ると、労働者1人あたりの平均労働時間はドイツ、フランス、イタリア、イギリスが短いですね。このため、労働時間あたりの生産性は、これら欧州諸国は非常に高い水準です。

一方で、日本の平均労働時間は年々短くなってはいますが、これら欧州諸国ほどではありません。アメリカは近年日本よりも平均労働時間が長い国ですし、韓国は更に長いですね。

労働時間あたりと労働者1人あたりで、これら平均労働時間がどのように影響するのかも意識しながら眺めてみましょう。

図1 労働者1人あたりGDP 名目 購買力平価換算
OECD統計データより

図1は労働者1人あたりGDPの名目 購買力平価換算値です。

日本(青)は、他の主要先進国と比較するとやや低めで推移していましたが、1990年代まではイギリスと同程度だったようです。

その後、成長率が緩やかとなり2000年代にはOECDの平均値を下回り始め、2014年からは横ばいに転じます。

2016年には韓国に抜かれていて、近年では他国との差が大きく開いているようです。

図2 労働者1人あたりGDP 名目 購買力平価換算 2022年
OECD統計データより

図2が2022年の比較です。

日本は85,544ドルで、OECD36か国中31位、G7最下位でOECD平均値を大きく下回ります。

労働時間あたりGDPが36か国中28位でしたので、年間の数値の方が順位が下がる結果ですね。既にスペイン、イスラエルや、チェコ、ポーランドなどの東欧諸国を下回る水準となっています。

他のG7か国との差も大きいですね。ノルウェーとは約2倍の差があるようです。

購買力平価によるドル換算値は、物価をアメリカ並みに揃えたうえで、数量的な規模を共通通貨ドルで金額として表現したものです。より生活実感に近い比較ができると考えていただければと思います。

年間の労働者数で割っていますので、パートタイム労働者の影響などもあると思います。

2. 労働者1人あたりGDPの実質値

次に、購買力平価換算の実質値についても見てみましょう。

図3 労働者1人あたりGDP 実質 購買力平価換算
OECD統計データより

図3が労働者1人あたりGDPの実質値(購買力平価換算)の推移です。

2015年の購買力平価で2015年の水準をドル換算(空間的実質化)し、各国の物価指数で時系列的に実質化た数値となります。各国とも名目値と比べると成長度合いが緩やかになっているのが確認できますね。

アメリカと韓国が実質でも大きく成長している様子が見て取れますが、イタリアは2000年ころからマイナス成長となります。

日本は低い水準が続いていて、2019年には韓国に抜かれています。ただし、成長率としてはドイツやイギリス、フランスと遜色はなく、平行して推移している事がわかりますね。

水準は低いですが、成長率は相応のレベルであると見て取れます。逆に差は縮まっていないのも良くわかりますね。

図4 労働者1人あたりGDP 実質 購買力平価換算 2022年
OECD統計データより

図4は2022年の水準の比較です。

日本は77,225ドルで、OECD36か国中24位、G7最下位で、OECD平均値87,443ドルを下回ります。

名目値が28位だったことと比べると、順位は上がりますが先進国で低位であることに変わりはありませんね。

労働者1人あたりだと、アメリカは非常に高い水準ですが、ドイツ、フランスはかなりアメリカと差があります。

労働時間あたりだとかなり近い水準でしたので、平均労働時間の差が出ているようですね。

3. 労働者1人あたりGDPの特徴

今回は、労働生産性のうち労働者1人あたりGDPの購買力平価換算値をご紹介しました。

日本は労働者1人あたりで見ても低い水準が続いていて、近年では先進国でもかなり低い方に位置するようです。

確かに実質成長率は他の主要先進国と遜色のないレベルですが、水準そのものが低く差は縮まっていない状況となりますね。

他国にキャッチアップしていくのであれば、さらに高い成長率が必要になると思います。

次回は、労働生産性についての要因分解を行い、各国の成長率の違いを比較してみたいと思います。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年2月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。