【めいろまさんインタビュー③】2025年のイギリス・アメリカ政治はどうなる?

昨年末に日本に帰国された谷本真由美さん(@May_Roma)に、今回も海外からの視点で見た日本の現状や課題についてお話を伺いました。

今回の記事は、その第3回目(全4回)です。(前回の記事はこちら

――イギリスの教育行政はうまくいっているのでしょうか。

イギリスの政治的背景が教育に与える影響についても考えさせられます。たとえば、労働党のキーア・スターマー党首は、学生時代に左翼系の活動に参加していた経歴を持ち、その政策や姿勢が教育現場に反映されているという指摘があります。ただし、スターマー首相の出身地は比較的裕福で教育水準の高い地域であり、同級生の多くがジャーナリストや政治家として成功していることを踏まえると、イギリスにおける教育格差の問題は依然として根深いといえるでしょう。

――労働党に変わってイギリスの政治は変わってきましたか。

与党と野党の双方に対する不満が高まっています。労働党は経済政策で失敗を重ねています。たとえば、コロナ禍で経済が低迷する中、国民年金と公的健康保険をあわせた国民保険料(ナショナル・インシュランス)の引き上げや、私立学校の学費に対する20%の消費税の適用など、一連の増税措置が国民に大きな負担を強いる結果となり、経済活動の停滞を招いています。

さらに、農業政策においても、政府の土地利用に関する規制強化により農地が削減され、一部の農家が廃業を余儀なくされる状況が問題視されています。このような政策に対する批判が高まり、財務大臣自身も「失敗だった」と認めたものの、彼の経歴には銀行での短期間の勤務経験しかなく、専門性の欠如が指摘されています。

スターマー党首も、裕福な家庭出身でありながら学生時代に左翼系活動に関与した経歴を持っています。そこから政治家としてのキャリアを比較的順調に歩んできました。しかし、彼の政策は抽象的であり、国民にとって具体的な解決策が見えにくいという批判が根強い状況です。

キア・ロドニー・スターマー首相インスタグラムより

――一方で、「リフォームUK」が躍進しました。

また、「リフォームUK」のナイジェル・ファラージ氏は、保守党の腐敗を批判し改革を掲げています。ファラージ氏はX(旧Twitter)やTikTokなどのソーシャルメディアを活用して支持者との接点を広げていますが、その主張が具体的な政策として結実するかどうかは未知数です。特に、元々はブレグジット党を率いていた彼の役割が終わりつつある中、SNSだけで国民の信頼を得るのは困難な状況といえるでしょう。

ナイジェル・ファラージ氏 Wikipediaより

――アメリカはいかがでしょうか。

アメリカは、物価上昇や生活コストの増加がイギリスより深刻です。家や車の価格が大幅に上昇し、燃料費も高騰しています。公務員の知人は、家計が厳しく、子どもの大学費用をどう工面するか悩んでいると話していました。特に私立大学の場合、学費や生活費を含めると年間1,000万円近くかかることもあり、公立大学であっても4年間で1,600万円以上の出費が必要です。

これらの状況を背景に、生活コストを抑える工夫が求められているものの、それを実現するには相応の投資が必要です。たとえば、教育費の問題は多くの家庭にとって深刻であり、奨学金や借金に頼る家庭が増えています。さらに、ITや金融業界でリストラが進む中、若者たちは卒業後も安定した仕事に就ける保証がなく、将来への希望を抱きにくい状況が続いています。

トランプ大統領インスタグラムより

――その反面、人手不足は深刻化しているようですが。

イギリスでも、最近の移民政策やビザの変更が問題視されています。かつて存在した大学院卒業者が卒業後に一年間イギリスに留まって就労経験が積める「トレイニービザ」は廃止され、家族を伴うビザも制限が厳しくなりました。その結果、インドや中国などからの優秀な学生や労働者がイギリスを選ばなくなり、ITやエンジニアリング分野での人材不足が深刻化しています。一方で、アメリカでは一時的にトランプ政権下で高度なスキルを持つ外国人労働者の受け入れが拡大しましたが、現在はビザ発行数が減少し、同様に人材確保が課題となっています。

また、アメリカやイギリスでは、国内の教育にも問題が山積しています。特に理系教育の水準が低く、高度な技術を要する分野では国内人材が不足し、海外からの労働者に依存せざるを得ない状況です。LGBTQやジェンダーの議論が注目を集める一方で、日常生活の基盤を整える政策への取り組みが後回しになっていることに疑問を呈する声もあります。社会的な議論が多岐にわたる中、まずは国民の生活基盤を支える政策が重要ですね。

(その4につづく)

【インタビュー】

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