日本では今年はクマ被害が大変なことになっていますが、クマの攻撃動画などを見て、やっと野生動物の怖さを認識したという方も少なくないのではないでしょうか。
私がこの日本でのクマ騒動を見ていて、感じるのは日本と欧州の野生動物に対する態度の違いです。
日本だとちょっと想像しにくいのですが、実は欧州は全体的に野生動物に対して非常に厳しい対応をします。
もちろん動物愛護も盛んではありますが、それはあくまで自然界における人間と動物のバランスを保つために野生動物はある程度は管理されなければならないという考え方が根底にあります。
したがって、必要以上の駆除や残酷な扱いはやらないと言うのが前提です。
ただし、日本と徹底的に違うのは、子供が小さいうちから野生動物の怖さや人間界とは距離を保たなければならないということを教えているということです。
2025年12月9日発売の私の最新書籍である『世界のニュースを日本人は何も知らない7 フェイクだらけの時代に揺らぐ常識』でも指摘していますが、日本と欧州の教育はかなり違います。
日本だと動物に対しては可愛いねとかキャラ化することが主になっており、動物との接触は動物園や猫カフェといったところが中心ですが、欧州の場合は日本よりも自然が残っているところが都市部でも多いので、市街地に野生動物が出没することが結構あります。

エゾヒグマ Wikipediaより
例えば、イギリスの場合ではありますが、なんと首都のロンドンでさえも、街中に野生の狐やリスが出てきます。
その他に公園には鴨や白鳥がたくさんいます。アナグマやハリネズミが出ることもあります。
そしてちょっと郊外の住宅地だと、家の裏庭に鹿が出てきたり、もともとペットだったオウムが放され、その辺を飛び回っています。
狐がゴミを漁るので、ゴミ箱はかなり強固なものになっていて、必ず蓋がついています。
イギリスの場合は動物に関する悩みが野良猫やカラスではなく野良の狐です。
狐は野生のものは結構凶暴なので、家の中に入ってきて人間の食べるものを食べてしまったり、ひどい場合は寝ている赤ちゃんを噛み殺してしまうこともあります。ペットの動物も襲われます。
これが当たり前なので、ロンドンの子供でさえも小さい頃から野生動物には絶対に触ってはいけないと言うことをきつく言われます。
狐は寄生虫を媒介するエキノコックスを持っていたりしますから、とても危ないのだと言うことを子供にはよく教えなければなりません。
リスに餌付けもやりません。リスは狂犬病を持っている場合もあるので、なるべく近づきません。
さらに、欧州大陸の方や北欧に行きますと、森が日本よりも深いこともあるので、やはり野生動物がいます。
アメリカの場合も日本のテレビに登場するのは、東海岸や西海岸の都市部が多いのですが、しかし、アメリカの多くの場所と言うのは、もっと田舎のほうにあって、やはり野生動物が出るところが少なくないのです。
私が南部に住んでいたときによく出ていたのはスカンクです。スカンクも大変な匂いを発するので、近くに近寄るのはご法度です。
そして私は子供が小学生ですので、日本と他の国の教科書や学習内容を比較しますが、日本の理科では野生動物の生態やその危険性について客観的に教える過程が抜けているなと感じています。

秋田県でクマ対策支援を行う自衛隊 小泉進次郎防衛相Xより
日本の理科の過程は身近な自然や科学法則を教えるところは悪くは無いのですが、やはり「生活者」としての視点が抜けているところがあります。
日本は農業従事者の人口が減り、市街地と自然の部分の垣根が小さくなっているところも多いですから、野生動物はもっと出没するようになるでしょう。
生活の知恵として野生動物が持っている病原菌や寄生虫、どんな場合に襲撃されやすいか、どうやって駆除するかといったことは、教材化していただきたいものです。
またそれに従って、野生動物と人間の共存とは一体何なのか、メガソーラーなどの開発と野生動物の関係などといったことも包括的に教えるべきでしょう。
ここ最近の日本の学校の教科書を見ておりますと、理科教育はどうも再生可能エネルギーやエコロジーといったところにばかり実に注力しており、もっと根源的なところ、「生活者」として必要な知識やノウハウが含まれていません。それは「真の勉強」ではなく、「学んだふり」です。もっと実用性を踏まえた内容にすべきでしょう。
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