先日、小野田紀美議員(現小野田紀美大臣)は国会質問で、議員会館に入ってるお掃除ロボットは中国製であり問題があると指摘していました。これ日本ではなぜかほとんど報道されませんでしたが、私の著書である『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズでも指摘したように、実は他の先進国では何年も前からセキュリティに関する懸念として議論されており、実際にこういった機器の調達が停止になっています。

期待も高い小野田紀美議員 同議員事務所SNSより
例えばイギリス政府の場合は、2022年には政府の建物で中国メーカーであるHikvisionとDahua製造の監視カメラの設置が禁止されています。中国の新疆ウイグル自治区での大量監視と人権侵害に使用されている上に、中華人民共和国国家情報法の対象となる企業によって製造されているからです。それまでは多くの学校や政府内部、警察などで使用されていましたが、Big Brother Watchなどの団体の調査やキャンペーン、議員の活動により禁止になったのです。
参照リンク:Hikvisionを禁止する Big Brother Watch

参照リンク:英国、政府施設での中国製カメラの使用を禁止 Politico

Hikvisionの脅威に対してアクションを起こした政府はイギリスだけではありません。2025年6月にはカナダ政府は国家安全保障審査Hikvision Canada Inc.に対して国内でのすべての業務を停止を命令しています。
お掃除ロボットも監視カメラのようなセキュリティリスクが満載なのです。
例えばKPMG/Clingendaelが発表した欧州市場に投入された産業用洗浄ロボットに関する報告書において、中国のガウシアンロボティクスの高度な洗浄ロボットのセキュリティリスクが指摘されています。
参照リンク:How smart is the use of smart devices in the office? Clingendael Report (オフィスでのスマートデバイスの活用はどれほどスマートなのか?)
清掃ロボットは、空港、大学、企業、政府等様々な建物で作業を行いながらカメラやセンサーを使用してデータを収集しますが、周囲の環境や中の人々、音、動画、建物内の地図を詳細にする機種もあります。
記録データは、清掃のためだけに使われるとは限らず、どのように保存され、どこに送信されるかが不明瞭な機種もあるのです。
欧州の場合は個人情報保護が厳しいので、欧州一般データ保護規則(GDPR)によって、EUおよび欧州経済領域外への個人データの転送を規制していますが、中国製の製品の場合、それが守られているかどうか確証がありません。
さらにネットワークに繋がっている機種にはすべてリスクがあります。
ICANNのCEOであるロッド・ベッグストーム氏の提唱する「ベックストームのサイバーセキュリティ法」(Beckstrom’s Law
of Cybersecurity)によれば、ネットワークにつながっているすべてものものはハッキングされるとされます。
以下はこの法則の数式であり、どんな機器やサービスをネットワークに繋げるべきかの指標になります。
V = B – C’ – SI – L
V(Value):ネットワークの全体的な価値。
B(Benefit):ネットワーク上の取引によって生み出されるポジティブな成果と価値。
C’(Remaining Costs):セキュリティ投資や損失に関係しない、ネットワーク運用に伴うその他すべてのコスト(残余コスト)。
SI(Security Investment):損失を防ぐためのセキュリティ対策に費やされる資金と労力。
L(Losses):セキュリティの不備やサイバー攻撃の成功によって発生した実際の損失。
参照リンク:ベックストームの法でセキュリティに取り組む MITテクノロジーレビュー
EUの場合はこの様なリスクを避けるために、ネットワークに繋がる機器の認証を行うThe EU Cybersecurity Certification Scheme (EUCC)が存在していますが、日本政府も政府内や自衛隊、学校などの設置する機器について、安全保障の観点から調査を行い、北米や欧州と同等のレベルで中国製製品は排除するべきです。
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