Apple vs Google -小川浩 ( @ogawakazuhiro )

『アップルvs.グーグル』という本を、ITジャーナリストの林信行さんと書きました。月内に発売される予定ですが、Amazonでは既に予約可能になっています。

AppleとGoogleは、 現在のIT業界のツートップです。Appleはソフトウェアで制御されるハードウェアで、GoogleはクラウドによるWebアプリケーションで世界を変えてきました。そして、2009年頃からは両者の影響範囲が急速に広くなり、互いの得意領域に浸食し合うことになったことで、両者の対立構造が話題になるようになりました。

僕と林さんは2008年に『アップルとグーグル』という同テーマの本を書いており、当時はAppleとGoogleの蜜月にひびが入りつつある様子をレポートしましたが、今回は激化した対立構造の裏側にある真実と、両者の事業上の蹉跌が周囲に及ぼす影響などについて書いています。

AppleとGoogleに焦点を置いた記事は、昨今さまざまなメディアで目にします。
大抵の論調は、AppleがApp StoreやiTunes Storeで閉鎖的な態度をとり続けており、さらにOSも他社に公開しないことから、Googleが他のIT企業やモバイルベンダーとの連携をすることで、一昔の前のMSとのOS戦争の敗北の二の舞になるのでは、という指摘で終始します。
まあ、どちらにしても、MSやYahoo!を始めとする20世紀に最大の隆盛を誇った企業達の巻き返しを予測する書き方は、まず見ないのですが。(僕たちの見方はやや違うのですが、そこは本書をお読みいただくとして(笑))

しかしAppleの勢いは当分堕ちることはない、と僕たちは予測します。
逆にGoogleに関しては(まるで数年前のMSのようですが)Appleを追撃しようにも差が縮まらないことへの焦りと、FacebookとTwitterに代表されるソーシャルメディア企業の躍進に対する過度な警戒心が見え隠れしており、最近では弱々しさを感じるほどです。もちろんGoogleが弱体化しているわけではないのですが、二年くらい前までの、誰も敵わない圧倒的な脅威ではなくなったという印象です。

Appleの強さが当分続くというのは、Appleが目指している世界観が、今後数年間は続く、新しいコンセプトだからです。
まず、前述の通り、Appleが作るハードウェアは、ソフトウェアがほぼ完全に制御する世界です。日本を始め、その他のIT機器メーカーが作る商品はいまだハードウェア主導です。ハードウェアを動かすためのソフトウェア、です。しかしApple製品はiPhoneにしてもiPadにしても、ソフトウェアを使うために筐体をデザインしている。似ているようで両者は全く違います。
同時に、データはクラウドに置く方向に進み始めており、よりハードウェアを軽量化させていきます。さらにGUIから指先の直接的な操作によるNUI(ナチュラルユーザーインターフェイス)へのシフトを一気に進めつつあります。

このコンセプトは、僕の見方では、数年から十年は続き、成熟化していくものです。他の企業はこのAppleの”革命”を理解していても、まだ自社の態度を決めかねてしまっている。だからそうそう追いつけない。

前にも書きましたが、Appleは一度方向性を決めると、その方向への加速度を減じるようなレガシーなテクノロジーやしがらみを一気に切り捨てる過激さがあります。そこが彼らの革新性の秘密です。Googleも、Webですべてをコントロールするという一途な目標がありますが、最近はちょっとひよりぎみです。

ひよりっぱなしの日本企業は、今後はどうAppleに対抗するのか。
そういう問題提議が、今回の林さんとの挑戦だと思っています。