内閣府は7月21日に平成29年度版の『経済財政白書』を発表した。白書は「回復続く経済の現状」「働き方改革と経済の活性化」「技術革新 対応と影響」の三章構成で、働き方改革と技術革新が強調された点が特徴である。
働き方改革は日本経済の活性化に資すると白書は主張する。働き方改革は労働生産性を向上し、処遇改善や労働参加の拡大は低所得者の所得を底上げして貧困率の改善につながる。テレワークの普及などICT投資の強化が求められ、また、転職が不利にならない柔軟な労働市場の確立も重要である。
新技術が世界市場を変革している。しかし、わが国企業は既存事業の改良に注力し、R&D投資を拡大せず、オープンイノベーションへの取り組みも不足している。技術革新の利益をわが国が享受するには、成長分野への人材移動を促すためリカレント教育の充実など人材への投資が求められる。ここでも白書は柔軟な労働市場の確立を強調する。
長い間続いてきたわが国の雇用制度は21世紀に適応できなくなっている。その危機感から政府は働き方改革政策を展開している。経済財政白書はこの流れを受けたものと理解できる。7月24日には初めてテレワークデーが実施された。僕らも働き方改革につながるシンポジウムを開催し、第2回も計画中である。危機感が共有され始めたのはよいことだ。
朝日新聞は紙面とは別のネット記事で「白書が示した対策は、安倍政権が進める働き方改革や人材への投資に沿った内容で、新味は薄い。」と評している。内閣府が政権の方針と異なる「新味のある提案」をできると、どうして関根慎一記者は考えたのだろうか。ちなみに朝日新聞は2001年からの10年間は経済財政白書を年平均10件程度記事にしていたが、14年は2件、15年は3件、16年は2件と最近は記事にしていない。反安倍政権を掲げる同紙が景気拡大などは報じたくないのだろう。