統計法第13条によって統計調査の対象者(報告者)には報告義務が課せられているが、国民・企業は必ずしも義務を果たしていない。全数調査であるはずの国勢調査ですら回答拒否者が存在する。
報告者の負担を軽減するなどの改善が必要だが、同じ集団を対象に同じように調査しないと過去との比較ができないので、新調査方法の導入は進まない。昨年、行政事業レビューで「全国消費実態調査」について議論した。僕らは家計簿アプリからデータを吸い取るするなどして若者や独身者の消費実態を把握すべきと主張したが、担当の総務省は膨大な枚数の紙形式での回答にこだわり続けた。統計調査は保守的に実施されるのである。
統計は根拠に基づく政策立案(EBPM)の基盤でもあり強化が必要である。そこで、2017年に内閣官房の下に統計改革推進会議が組織され、同年に「最終とりまとめ」が決定された。報告者負担の軽減とともに、ニーズの低い統計調査は廃止する棚卸しや、統計の品質を評価し有用性・信頼性を高めることなどが決められた。
ところで、統計担当者の人数は減少の一途をたどってきた。2008年度の本省職員数は1592名だったが、2017年度には1409名に減っている。統計改革推進会議は要員増を打ち出し、2018年1月には103名の増員計画が発表されている。
安倍政権は統計改革の推進を打ち出し体制強化にも乗り出していたが、その中で厚生労働省による不正が発覚した。民主党政権は統計担当者の定員減を放置し、厚生労働省による不正にも気づかなかった。2月4日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の長妻昭代表代行は質問の冒頭に「民主党政権も不正を把握することができなかった。深く反省する」と陳謝したそうだ。
予算委員会では、「アベノミクス偽装だ」「忖度だ」と感情的な議論が続いている。しかし、それよりも統計制度の改革を進めることのほうが重要である。野党が「最終とりまとめは不十分」として、さらに改善を進めるべき点を指摘したら、審議は建設的になるだろう。