政府は12月20日、一般会計の総額102兆6580億円となる令和2年度の予算案を閣議決定しました。
社会保障費の大幅な増加を背景に2年連続で100兆円を超え、過去最大となりました。
社会保障費は年金、医療、介護、福祉等すべてが純増であり、高齢化社会において、何も手を打たなければ今後とも増大していくことは火を見るより明らかであります。
社会保障費の抑制について先日、地域包括ケアシステムについて「模索する地域包括ケアシステムの構築~自助・互助を最大限に引き出すために~」としてエントリーしておりますのでご参考にしていただければと存じます。
予算案では消費税率引上げを8%から10%への引き上げに伴う社会保障の充実を掲げており、自治体に直接関係するところで注目すべきは「予防・健康づくりの取組の抜本的強化」として「都道府県・市町村における予防・健康づくり事業の推進等のための交付金」を公費700億円、国費700億円を新規で計上しているところです。
内閣府第27回経済・財政一体改革推進委員会資料によると保険者努力支援制度をさらに推進することとしております。
保険者努力支援制度は「2015年国保法等改正により、医療費適正化に向けた取組等に対する支援を行うため、市町村国保について保険者努力支援制度を創設し、糖尿病重症化予防などの取組の状況に応じて、交付金を交付。」としており、各自治体が住民に対して、予防・健康づくりを促すための制度です。
令和2年度は予防・健康インセンティブの強化ということで例えば予防・健康づくりに関する評価指標(特定健診・保健指導、糖尿病等の重症化予防、個人インセンティブの提供、歯科健診、がん検診)について、配点割合の引き上げなどが掲げられております。
予防により重大な事態を回避し、健康であり続けるとともに、医療費を抑制することができます。
この保険者努力支援制度で筆者が注目しているのが「歯科健診」の指標です。
歯科においては非常に興味深い研究があります。
公益社団法人日本歯科医師会の予算・税制等に関する政策懇談会資料にまとめられているのでご参照願います。
図5では歯科による口腔機能管理をしっかりとしている人達を“管理群”、していない人達を“非管理群”としております。
管理群が非管理群よりも在院日数、入院医療費がともに減少されております。
歯の健康が体全体の健康に資するということを示しています。
そこで自治体としてこの知見を活かしていくためには、成人歯科健診制度を活用することであります。
私が住む中野区においては、35〜75歳の区民が自己負担200円で問診・口腔内診査(歯、舌、粘膜などの状況)・だ液判定・咀嚼力(噛む力)判定・義歯(入れ歯)の状況を検査します。
自分の口腔機能の状況を知るためには非常に有効な手段だと考えますが、平成29年度の成人歯科健診の受診率は約2%といった状況です。
まずは自分の健康についてよく考える習慣を身に付けていただく必要があると思います。
そしてその中でも、口の健康が身体全体の健康につながり、個人のQOL(quality of life、人生の質)を上げるとともに医療費の抑制となることを理解し、ひとつの政策として進めるべきと考えます。
加藤 拓磨 中野区議会議員
1979年東京都中野区生まれ。中央大学大学院理工学研究科 土木工学専攻、博士(工学)取得。国土交通省 国土技術政策総合研究所 河川研究部 研究官、一般財団法人国土技術研究センターで気候変動、ゲリラ豪雨、防災・減災の研究に従事。2015年中野区議選で初当選(現在2期目)。公式サイト