米誌の寄稿でラムザイヤー論文が批判されても、日本の主張は揺るがない

ハーバード大ロースクールのラムザイヤー教授(以下、ラ教授)の「慰安婦は売春」論文への猛攻撃が韓国内外で続く中、中央日報は27日、同大韓国系女性教授による米誌「ニューヨーカー」への寄稿「慰安婦の真実を探して」を基に、同論文の誤りを指摘する記事を掲載した。

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記事を読んでも要領を得ないので、「ニューヨーカー」を当たるとSeeking The True Story of The Comfort Womenと題するソク・ジョンなる韓国系教授の3万字余りの寄稿があった。

中央日報の記事では、「誤り」はどれもソク教授が見つけたように読めるが、実は違うようだ。それらを見つけたのは筆者が別稿触れたハーバード大のエッカートとゴードン両大教授、新手の豪州国立大のモリス・スズキ教授、ノースウェスタン大のスタンリーとリー両教授らだ。

では、彼らがラムザイヤー論文(以下、ラ論文)についてどのような指摘をしているか、紙幅の許す限り述べてみたい。ところどころ筆者のコメントを付している。

エッカートとゴードンは、ラ論文の「脚注で韓国女性が関与する契約を確認できず」、資料は日本人を「sexual work(性労働)」を伴う「酌婦」として雇うための契約の見本だったとし、日本女性の売春契約の例から、韓国女性が前線での性労働の契約をしたと推測するのは合理的でないと指摘した。

これを聞いたソク教授が指摘すると、ラ教授は「韓国女性の契約書を確保すれば『cool』だが、探せなかった」と認めた後、「きっとあなたも探せない」と述べたという。

ラ教授は韓国女性の契約書を見つけられず、日本女性の「酌婦契約」を援用した。日本政府も探したがなかった。朝鮮人の女衒が戦前の証文を残している確率は低かろう。ラ教授はこの援用の適否を「反日種族主義」の李栄薫やこの件の第一人者西岡力らの諸権威と協力して検証するのが良いと筆者は思う。

エッカートらは、「慰安所」は当時、必ずしも性的な意味にとられていず、新聞では、公園の娯楽地域、ホテル、子供用施設、温泉などに使われたとする。確かに「慰安所」だ。また慰安婦の募集広告を見て中国北部に行った日本女性が、仕事の中身に驚いたとの記事もそれを物語るというが、この女性のナイーブさを論った記事ではなかろうか。

スズキも、20年から30年代の日本のシステムを、戦時中の「慰安所」に準用するのは適切でないとし、またラ論文が引用した日本政府の「既に業界にいる売春婦だけを選ぶよう書かれた採用規則」などの文書二通の一通が、女性の一部が「誘拐に近い形」で募集されたことを示しているのを見つけたとする。だが、誰が「誘拐」したのか、肝心の主語が抜けている。

スタンリーは4人の学者仲間と協力して、女性が自発的にそこにとどまったというラ論文を「破壊」する、ラ教授が書かなかった「女性が慰安所から逃げるのを防ぐために使用される身体的暴力と脅威」についての確かな証拠を見つけた、とソク教授に述べた。

一つは、ラ教授がある本を引用して、ボルネオに行った10歳の日本人少女が「その仕事が何を伴うのかを知っていた」と書いたが、本に書いてあるのは、少女が売春宿の管理人に「あなたはそのような仕事について説明せずに、私たちをここに連れてきた」というもの。

スタンリーはラ教授が自主的な契約を説明すると主張しながら、雇用主をこの少女の「owner」と呼んだのは「奇妙」とソク教授に伝えた。ソク教授の指摘にラ教授は「なぜこのようになったのかは分からないが、私がミスをした」とし「当惑している」と話したという。単なるミスタイプではなかろうか。

ダデン教授の話は、2000年に東京で開かれた「女性国際戦犯法廷」で慰安婦らに会った時、彼女らが語った真偽不明の身の上話のことなので割愛する。

エルサレムのヘブライ大ハレル教授は、関東大震災の時に6000人の韓国人が殺されたとされる事件について、ラ論文が韓国人を犯罪集団と特徴づけ、建物を燃やし、民間人をレイプしているという「信用できない噂を繰り返している」と難じるが、これも慰安婦とは関係ない。

UCLAでゲーム理論を教えている経済学者マイケル・チェが、ラ論文の撤回を求めて述べるのは、「どの分野でも、適用しなければならない特定の学術的基準」があり、それは「何かを引用するとき、出典に忠実な方法で引用すること」と。当たり前のことで蛇足。

ソク教授は、スタンフォード大スナイダー教授が「韓国がラ教授を追えば追うほど、日本の一部は彼を受け入れたいと思うようになる」とし、「夕刊フジ」の「慰安婦は売春婦」とラ教授が書いたので「crazed Koreans」が彼を批判するよう圧力を掛けている、との記事にも触れている。

ソク教授はラ教授を支持する学者らの話も書いている。

カリフォルニア大バークレー校のメアリー・ベリー教授は、ラ教授の「研究は、厳密で注意深く整理されていて、驚嘆する」とし、その分析は「日本の評判の良い学者の主流の立場」を反映しているとしつつ、「評価は徹底的にする必要があり」、「誤りは適切に認める」ことが必要と述べる。

コロンビア大ウェインステイン教授は、「物議を醸す事実に基づいた記事を発表し、読者がどの論に説得力があるか判断できるようにすることは、学術誌にとって重要」としつつも、編集者が「根本的な事実の表現に、重大な誤りを見逃したと判断するなら撤回が適切」とする。

また韓国の極右の余り影響力のない小さなグループが、ラ教授を擁護するメールを、ソク教授を含む同大学の東アジア研究員とラ教授を批判した学生らに送り、この問題について話すことは「合理的な議論を妨げるだけで」、「韓国と日本の紛争を解決する」のに役立たないと主張した。正論ではないか。

ラ教授はソク教授に、「反日種族主義」の著者らを含む日韓の支持者15人について述べているので、このグループは別物だろう。また歴史家を自認する日本人6人が2月8日、ラ論文撤回に反対する公開書簡を出したが、ソク教授は、ほとんどが歴史の学位を持たない右翼関係者と決め付ける。

ソク教授はまた、先の「極右」グループのメールが李容洙を「偽の慰安婦」と主張したことに触れて、李容洙がラ論文を「maybe actually a blessing in disguise(実は偽装した祝福かもね)」といい、お陰で「日本が歴史を否定すればするほど、日本はより多くの注目を集める」と述べたとも書いている。

寄稿は最後に、李容洙が「日本と韓国は協力して問題を国際司法裁判所に持ち込み、証拠が、起こったことの真実を立証できるようにする」と述べたと書いて結ばれている。

忘れてもらっては困るのは、日本が一貫して主張しているのは、日本の軍や官憲が20万もの少女を強制的に連れ去りなどしていないということだ。日本は慰安婦の存在を否定などしておらず、むしろ深く同情しているからこそ、謝罪もし、金銭的支援を申し出て来た。

この観点からソク教授の寄稿を読めば、脚注の不備や契約書の援用や記述の間違いなどは専門家の検証に俟つとして、その結果、仮にラ論文が仮に取り下げられたとしても、それを以て日本が主張していることの否定などにはならない、ということだ。