やはりコーポレートガバナンスを知ることは武器になる(と思う)

昨日、サンダースさんもコメント欄に書かれていますが、日本最大級の生協(神戸生協)の組合長が、内規違反(ゴルフ接待を受けたこと)を理由に解職されたことが報じられています(たとえば、こちらのニュースを参照)。昨年12月に内部通報があり、社内調査によって組合トップの内規違反が発覚、ただちに理事会で解職したということのようです。

コープこうべ 役員2人を解職 NHKニュースより

官僚の世界では「倫理規定に反するものとは思っていなかった」という理由が通ってしまうようですが、民間の世界では「組合長が知らなかったわけがない」ということで解職です。たとえ国家公務員倫理規程に明確には反していないとしても、そもそも(国民から違反を疑われる行為自体が、その行為の必要性を疎明できない以上は)「品位を害する行為」として厳しい処分は下されないのでしょうか(私は神戸生協の姿勢こそ評価すべきと思います)。諸々書きたいことがございますが、あまり時間がないので以下本題です。

3月6日(土)、毎月恒例のCGN(コーポレートガバナンスネットワーク)の関西自主研究会がリモートで開催されまして、業界でもトップを独走している某上場会社の取締役監査等委員である会員の方から「ひょっとしたら最強のガバナンスは監査等委員会設置会社ではないか」といったタイトルでの発表がありました。

某社の取締役会構成やスキルマトリックス、監査等委員である取締役とそうでない独立社外取締役との関係など、他社でも参考になる実例が示され、現役の社外取締役さんが多いので、質疑応答もたいへん活発でした。そして、監査等委員会設置会社には「横滑り役員さん」が多いという外形だけで、やや冷めた見方をしている私にはかなり衝撃的な内容でした。

これまで、「社外取締役を入れると企業価値が上がるか」とか「指名委員会等設置会社にすれば不正予防に効果的か」といったような、外形から実効性を検討する議論が(コーポレートガバナンスの世界では)多かったのですが、最近のこの自主研究会の発表をお聞きしていると、少し視点が違うように思えてきます。要は「今、当社にある人的資源を前提に、中長期のパフォーマンスを最大化するためには、どのようなガバナンスを選択することが当社にとって最適か」といった視点で検討することが大切だと思います。とりわけモニタリングモデル(執行と監督の分離)を意識せざるをえない状況では、自社の戦略と人的資源を意識しながらガバナンスを構築することが不可欠ではないかと。

つまり監査役会設置会社の良さ(長所)を実現できる人的資源の会社もあれば、監査等委員会設置会社の良さ(利点)を引き出しうる人的資源を持った会社もある、ということです。「指名委員会等設置会社」の長所・短所もあるわけですから、自社がその長所を引き出しうる会社なのかどうか、そこを検討する作業が必要なのかもしれない・・・ということを(この研究会で)考えさせられました。

では、それぞれの機関形態にはどんな利点があり短所があるのか、社外取締役を増やすことにはどんな効果とリスクがあるのか、やはりガバナンスを学ぶことは会社にとっては有益だと思います。それと同時に、(本気でガバナンスを議論するのであれば)自社の組織風土を客観的に見つめなおす作業も必要ではないでしょうか。


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2021年3月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。