アメリカではオミクロン株の死亡率がデルタ株の死亡率を超える

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オミクロン株は感染力は非常に強いが、重症化リスクはデルタ株に比べて低いと報告されています。一方、重症化率が5分の1に減少したとしても、感染率が5倍となれば、重症者数は同じとなるので、オミクロン株を甘く見てはいけないと警告を発する専門家もいます。

最近のグラフで確認しますと、アメリカとイギリスでは、死亡者が増加していますので、このあたりで、感染率・死亡率・致死率を調べ、デルタ株のそれと比較してみることにしました。

計算結果を表にまとめました。感染率は、10万人・1日あたりの感染者数です。死亡率は、10万人・1日あたりの死亡者数です。期間は、各国のデルタ株とオミクロン株の波に合わせて、それぞれ設定しました。下の表は、日本を1.0とした時の比率で記載されています。データは、Worldometerより取得しています。

なお今回の解説は、正確に言いますと、現在のアメリカやイギリスのオミクロン株主体の波の死亡率と、以前のデルタ株主体の波のそれとの比較の話です。オミクロン株単独の正確な死亡率が判明したという話ではありません。誤解が生じないように、最初に補足しておきます。

感染率・死亡率・致死率のうちで、最も重要な指標は死亡率です。死亡率が上昇しますと、人口当たりの死亡者が増加して、医療が逼迫します。計算の結果、アメリカでのオミクロン株の死亡率はデルタ株のそれの5.3倍、イギリスでは2.1倍となりました。ただし、すべての国で死亡率が上昇したわけではなく、イスラエルでは0.64倍でした。表にはありませんが、南アフリカでは0.34倍、日本では現時点で0.42倍でした。なぜ国により差が生じるのか、今後分析される必要があります。

アメリカなどの死亡率が高くなった原因の一つ目は、感染率が非常に高いことです。死亡者は、高齢者と未接種者に集中していると報道されています。

二つ目の原因は、デルタ株の波が下がりきる前にオミクロン株の波が始まったことです。アメリカとイギリスの波の初期には、デルタ株による死亡とオミクロン株による死亡が混在していたと考えられます。ただし、下記のグラフが示しているように、波の進行に伴い死亡者は増加していますので、オミクロン株単独でも、死亡率が高いことは確かです。アメリカの場合、オミクロン株単独では、1.5~2.5倍くらいではないかと推測されます。

三つ目の原因は、オミクロン株関連死が増加した可能性があることです。日本でも、オミクロン株による呼吸器感染症は軽症であるが、持病の悪化に伴う入院が増加していると言われています。持病が悪化して死亡する可能性もあるわけです。コロナ発病後、持病増悪に伴って死亡した場合は、コロナ死としてカウントされていると考えられます。

 

これは、インフルエンザ関連死と同じ理屈です。インフルエンザの場合、細菌性肺炎が続発して死亡したり、感染後に持病が悪化して死亡したりした場合は、関連死ということになります。インフルエンザ関連死と新型コロナ関連死とで大きく異なる点は、前者は超過死亡より推定されるのに対して、後者は公表されている新型コロナ死に含まれているという点です。

新型コロナによる間質性肺炎による死亡と、感染後の持病悪化による死亡あるいは続発した細菌性肺炎による死亡は、本来は分けて報告されるべきです。分けて報告しなければ、精密な分析とはなりません。

国立感染症研究所で公開されている超過死亡数は、もともとはインフルエンザ関連死者数を推定するためのものでした。一方、コロナ関連死のほとんどはコロナ死に含まれていると考えられます。そのため、現在の超過死亡数の何割かは、やはり接種後死亡なのではないかと、改めて思いました。この問題は、過去に考察しましたので、今回は深追いはしません。

さて、問題は今後、日本において死亡者がどこまで増加するかです。

第6波のピークアウトは2月上旬と予想されています。グラフで見るかぎり、1月6日以降、死亡者は急激に増加しています。ピークアウトする前に、第5波の高さを超えそうな勢いがあります。去年の12月中に、高齢者の3回目接種を完了させるべきでした。以前解説したように、重症化予防効果も徐々に低下している可能性もあります。今後、高齢者の感染が増加するようであれば、第6波の死亡率が第5波のそれを超える可能性があると、私は考えます。

なお、まん延防止等重点措置と緊急事態宣言については、私は賛成でも反対でもありません。その真意については、別の機会にお話したいと思います。