出世する人

ITmedia ビジネスオンラインに『大企業の人事担当者の8割が「出世する人には共通点がある」と回答 どんな共通点?』(21年11月25日)と題された記事がありました。その『回答として多かったのは「日々の振り返りを行っている」(61.0%)、「周囲と良い人間関係を築いている」(56.1%)、「夢や信念を持っている」(53.7%)の順。「学習習慣がある」と答えた人事担当者も51.2%いた』とのことでした。

私は、世俗的な成功に執着しない人の方が、将来的に伸びて結果として世俗的成功に繋がるのではないかと思います。

日々、与えられた仕事をあたかも流水の淀みなく流れるように右から左へと唯ひたすらに片付けて行きながらも必ず、自分のしている仕事の意義を知りその大きさを分かろうと全身全霊を傾けることが大事です。そうして自分の所属している部署・会社あるいは社会にとっての、自分の仕事の意義を真に理解した上で、「より効率的に完璧にこなすにはどうしたら良いか」「出来るだけ品質の高い商品・サービスを提供するには如何なる方法があるか」「どうしたらイノベーションを起こして行くことが出来るのか」等々と、その意義を具現化すべく一生懸命に仕事に取組み続けるのです。

そしてまた佳人のみならず、佳書(…精神の糧になるような書)との出会いを大切することも大事です。佳書とは、私が私淑する安岡正篤先生の言葉を借りて言えば、「それを読むことによって、我々の呼吸・血液・体液を清くし、精神の鼓動を昴(たか)めたり、沈(おち)着かせたり、霊魂を神仏に近づけたりする書のこと」です。そうした書を味読して行けば、全人的な教養や人間学的意味における哲理・哲学が品性豊かな立派な人格形成に役立つはずです。何れにせよ「美点凝視」にこれ努め、自分が劣っている所を他から吸収すべく誠実に努力し続けて行くことが求められます。

日々の社会生活における知行合一的な実践継続で、世俗的な成功含め報われる可能性が高くなるのだろうと思います。

そもそもが『論語』にあるように、「死生命あり、富貴天に在り…生きるか死ぬかは運命によって定められ、富むか偉くなるかは天の配剤である」(顔淵第十二の五)わけですから、出世するか否かも天が適切に配すとしか言いようがありません。また、そもそも天が創りたもうた人間は皆夫々に全く違っているわけですから、「出世・昇進する社員の共通点」など有り得るはずもなく、我々が在るべきは天意を淡々と受け入れ、生きて行くということです。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2022年4月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。