政治家のファッションは口ほどにモノを言う②

衛藤 幹子

前回に引き続き、政治家の衣服が表す象徴性とメッセージ機能を取り上げたい。今回はわが国会議員である。かれらのファッションは、何を語り、語らない、あるいは語れないのか。

(前回:政治家のファッションは口ほどにモノを言う①

服装によって存在感を誇示する政治家と言えば、寸分の隙もないスーツにボルサリーノハットの麻生太郎氏がまず思い浮かぶ。この麻生氏のファッション、賛否両論、評価の別れるところだ。

セレブのファッションを酷評することで有名なドン小西氏は、「老いてなおオシャレ」と麻生氏については称賛を惜しまない(週刊朝日①、2018年3月30日)。

一方、朝日新聞記者出身のファッションコラムニストの上間常正氏は、2013年2月にモスクワで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議に出発した際の同氏のスタイルを「“マフィア・スタイル”の勘違い」と、バッサリ切っ捨てた(朝日新聞DIGITAL、2013年3月1日)。

アフガニスタンのカリーム・ハリーリー副大統領と話す麻生太郎氏
出典:朝日DIGITAL

永田町のファッションアイコン、女性の代表は、政界に転じる前は芸能界に身を置き、国会議員になってからもファッション雑誌を飾った蓮舫氏だ。身に着けるのはもっぱら白と黒、とくに真っ白のジャケットは同氏のトレードマークと言ってもよい。

出典:AERA dot.

ただ、日本の女性国会議員は総じて白を好むようで、政党などのホームページにアップされている写真や国会中継で見かける女性議員の服装の色は白が多い。そのため、所属政党の低迷も相まって、その輝きに翳りがみえるのは気のせいか。先の小西氏は、10年以上白一筋のスタイルに「この人だけ置いてきぼり」と手厳しい(週刊朝日②、2020年9月3日)。

前回、私はトランプの野球帽とクリントンのパンツスーツを政治的なシンボルと位置づけた。さて、麻生氏のボルサリーノハットと蓮舫氏の白のジャケット、果たしてシンボルとして作用していると言えるのだろうか。残念ながら、答えはノーだ。

シンボルには、見知らぬ人同士を一つにまとめ、同じ目的に向かって動かす力を発揮する威力がある。野球帽とパンツスーツは、トランプとクリントン、それぞれの陣営に支持者を動員するアイテムとして働いた。だが、ボルサリーノハットと白いスーツにはそうした動員力はみられない。

たとえば、麻生氏はネット民の間でなかなかの人気らしい。しかし、麻生ファンがボルサリーノハットを被って応援集会を開いたという話は聞かない(と、思う)。日米の政治風土、システムの違いもあろうが、むしろ私はボルサリーノハットがシンボル化しないことを幸いに思う。昨年の1月6日、トランプの赤い野球帽は連邦議会議事堂を占拠し、アメリカの民主主義を揺るがす暴徒を生み出した。シンボルは諸刃の剣、恐ろしい武器になることがある。

(次回に続く)