こんにちは。
広がり深まる銀行危機を隠蔽するかのように、去年低迷していたハイテク大手銘柄をAI技術の進展を手がかりに買い進んで、もう一度ブル相場を再現しようと張り切っている株式市場関係者も多いようです。
しかし、私は去年あれだけ調整してもまだ割高な大手ハイテク株をAI関連銘柄として買い上がるのは無理筋と見ています。その理由をふくめて、今週と来週の2回にわたってAIをめぐる諸問題を説明させていただきたいと思います。
前途洋々なまま終わってしまう人生もあるように
まず問題なのは、AI(Artificial Intelligence、人工知能)ということば自体が、コンピューターの実用化とほぼ同時に出現し、当時から今にいたるまで「やがてとんでもない能力を持つようになる」と期待されつづけてかれこれ70~80年は経っているという事実です。
既に1950年代末には「AIには弱い(狭い)AIと強い(広い)AIがあって、前者は教えられたことを忠実にこなすだけだが、後者は人間と意味のある対話をしながら新しい解答ばかりではなく、新しい問題を発見することもできるようになる」と言われていました。
そんなにすばらしい未来が待っている分野なら、世界中の企業が惜しみなく研究開発費を投じ、世界中の研究者が様々な角度からリサーチに取り組むはずです。
ところが、企業投資はアメリカ、研究論文の刊行は中国が圧倒的に強くて、その他諸国はこの2国の後塵を拝する立場に何十年も置かれていることにさしたる痛痒を感じていないようなのです。
まず、2013~22年の10年間累計で見た世界各国のAI投資の現状から確認していきましょう。
2強と言えないこともありませんが、2位中国の投資額は1位アメリカの3分の1強に過ぎません。そして、3位イギリスとなるとアメリカのたった7%に下がってしまい、4位以下は団子状態です。
首位のアメリカは圧倒的な強さを生かして、さらに意欲的に他国を引き離す投資拡大を進めているかというと、そうでもありません。
2021年まではそういった気配も感じられたのですが、コロナ危機も去り平常どおりの経済活動がほぼ再開された2022年に、アメリカのAI投資は激減に見舞われたのです。
2013~22年の10年間の世界全体のAI投資総額推移を投資形態別に追ったグラフを見ると、コロナ騒動が勃発し経済活動もいろいろ制約を受けていた2020年にも、約53%という高い伸びを示していたことがわかります。
2021年にさらに88%増と2倍近い伸びを示したのは、首位アメリカのAI投資が600億ドルをわずかに上回る水準から一挙に1200億ドル強へと2倍を超える拡大となったことに牽引されたためです。
しかし、2022年には一転して31%の大激減となりました。ここでもまた、アメリカのAI投資が1200億ドル強から900億ドル強へと大幅に減少したことが響いています。
なぜアメリカのAI投資は2020~21年にかけての2年続きの大激増から、一転して激減してしまったのでしょうか。
次の2枚組グラフは、上段で同じ期間でのアメリカのAI投資総額の推移を示し、下段では2018~22年の各企業のAI投資拡大の意図を尋ねた調査結果を示しています。
上段グラフにインサートされた表を見ると、2021年から2022年で1件で10億ドルを超える超大型案件は4件から6件へと増えています。ですが、5~10億ドルの大型案件が13件から5件へと61.5%も減っています。
さらに、1~5億ドルの中規模案件も277件から164件へと40.8%減少しています。1件当たり1億ドル以下の小規模案件の減少率は9%から14%と小幅にとどまっています。
つまり、投資総額の減少率は投資案件数の減少率より大きかったのです。
下段では奇妙なことに気づきます。2021年の時点でAI関連企業のあいだでは翌22年にAI投資額を拡大する方針だった企業が80%を超えていたのに、実際には2022年のAI投資は大激減となってしまったのです。
去年1年間のAI投資の動向をふり返っておくだけでも、AIは決してバラ色の未来に向かってまっしぐらに突き進んでいる状態ではないことがわかります。
なぜ多くのAI企業が期初の想定に反して2022年中にAI投資を激減させたのかを探る前に、AIに関するもうひとつの懸念要因、AI論文の刊行点数や論文が引用された回数などで中国が圧倒的に強いという点もデータで確認しておきましょう。
AI研究は中国の「ひとり勝ち」
次の2枚組グラフでご確認いただけるように、自国研究者が書いた論文が他の研究者によって引用された回数の多さという点で、中国は突出しています。
世界を5つの地域に分けた上のグラフでも、2017年以来一貫して首位の座を守っています。さらに、研究施設別でいうと、中国の研究施設が1位から9位までを独占し、かろうじてアメリカのMITが10位に滑りこむという状態です。
どこか不自然ではないでしょうか。もちろん、なぜか優秀なAI研究者は中国の研究施設だけに集中しているという可能性もあります。
でも、他の分野で中国が圧倒的に強いものというと、太陽光発電パネル、リチウムイオン電池、EV(電気自動車)、数あるオピオイドの中でもとくに依存症形成リスクが高いフェンタニルと、他国では健康や環境のためにあまり大量に生産しないものが多いのです。
中国で、一時博士号取得者が激増したことがあります。
ひとりっ子政策はまだ維持されていたけれども、中国でも知的財産のストックを拡大しようという政策的配慮から「夫婦のうちひとりが博士号を持っていれば堂々と二人目、三人目の子どもを産んでもいい」という特典によって、博士号取得者を増やした時期のことです。
その頃、多くの子どもをつくりたいために博士号を取った人たちの中には、とくにこれといった課題を究めたいという意識もなくそのときどきの流行に乗ってなるべく学会誌に載せやすいテーマで論文を書く人もいます。
また、そうしたあまり独創性のある論文を書きそうもない博士たちのあいだでは、自分が理解できる論文をお互いに引用しあって学究としての業績考課にも役立てたいという相互扶助意識もあり、引用される回数の多い論文もけっこう大量に刊行していたりします。
それにしても、その程度の論文を書いている人たちが引用数でトップクラスになってしまう学術分野というのは、やはりほんとうに独創的であって、しかも多くの研究者が注目するような画期的な業績が生まれにくい分野だとは言えると思います。
ちなみに、最近のAI関連論文をテーマとなる分野ごとに集計したグラフは次のとおりです。
コンピューターに計算能力だけではなく、ものを考える能力も持たせようと思いついた研究者たちが最初に取り組んだのは、大量のデータから間違いなく一定のパターンに合致するものを拾い出す作業を覚えこませること、すなわちパターン認識でした。
そこから出発して、大量のデータから個々のサンプルをふるい分けるだけではなく、データから学んだ文章や音声、画像などを生成する方向へとAI研究は進んできたはずです。
しかし、ちょうど中国がAI論文の被引用回数で世界一の座についた2017年頃から、この分野の老舗として毎年刊行される論文の点数ではトップだけれども伸び率は低い分野だったパターン認識の伸び率が加速に転じました。
さらにマシンラーニングやデータマイニングといった反復性が高い分野の論文の刊行点数も急激に伸びています。
逆にたんなる反復学習のための教材にはとどまらない自然言語処理、人対コンピューター相互交流、言語学などに関する論文は刊行点数が横ばいにとどまったり、下落したりしています。
マスメディアなどがおもしろおかしく取り上げる「認知から生成へ」という流れはごく表層だけの現象であって、底流では基本的な機能を認知にとどめたまま、反復学習の精度を高めるというよどんだ方向に回帰してしまっているのではないでしょうか。
こうした状況を反映していると思われるのが、企業などで意欲的にAIに重要な仕事をさせる業界ほど失敗が顕在化することが多く、企業にとって重要な基幹分野から従来と同じような機能にAIの適用範囲を狭めようとしているという事実です。
意欲的にAIを使う業界ほど失敗する
まず、さまざまな業界で企業はAIにどのような役割を委ねているのかを示す2022年現在の図表からご覧ください。
この図表を見るだけだと、金融業界は自社の収益成長のキモになるはずの製品・サービスの開発をずいぶん大胆にAIに任せているという印象を受けます。
それとは対照的に、本業としてAIの研究開発を進めているハイテク各社は製品・サービスの開発はほとんどAIにやらせず、リスク管理という手堅い分野を大きくAIに委ねているように見受けられます。
ですが、金融の「先進性」もハイテクの「保守性」も、それぞれ2021年の経験に学んでやっていたことなのです。
こちらの図表は、上で見ていただいた2022年の産業別AI採用動向が、2021年に比べてどう変わっていたかを示しています。
ハイテク・電気通信から見ていくと、2021年にはこの業界の企業の32%が製品・サービス開発に、そして28%がマーケティング・販売にAIを導入していました。そして、多くの場合AIが開発した製品・サービスや販売手法は派手にコケました。
フェイスブックがメタヴァースという仮想空間を開発していたベンチャービジネスを買収しただけではなく、社名までメタに変えたけれども業績貢献はメタメタに足を引っ張るだけだったことを想起していただければ、十分でしょう。
その結果、ハイテク・通信各社は2022年には製品・サービス開発でAIを採用している企業は7%、マーケティングで採用している企業は4%に激減した一方、リスク管理に採用する企業は前年の16%から一挙に38%にまで上昇したわけです。
2020年から21年にかけて、未上場株取得というかたちでのAI投資が約2倍、買収合併にいたっては4.6倍に伸びていたので、ハイテク業界のAI投資で仲立ちをした金融業界はそうとう儲かっていたはずです。
そして、仲介だけでこんなに儲かるなら自社でAIを活用すればもっと儲かると思って、2021年には20%だけしか製品・サービスの開発にはAIを導入していなかったのに、2022年には31%が導入するようになっていました。
2022年のアメリカ株市場が、ときどき小反騰はあっても結局は下落基調から抜け出せなかった理由は2つあると思います。
ひとつは、2021年の意欲的なAI経営のとがめが出て、米株市場全体の大黒柱となっているハイテク大手の収益成長率がかなり鈍化したことです。
もうひとつは、金融業界が今まで以上に積極的にAIに開発させたサービスを提供するようになり、収益性が低下したことです。
今年は1~2月こそ順調に回復しそうに見えましたが、3月から銀行危機が本格化したので、それでなくても収益基盤を安定性の高い融資から投資に変えてしまった大手銀行を始めとして、金融業界はそうとう大きな打撃を受けるでしょう。
金融危機のタネは、2021年のAI投資激増によって蒔かれていたのです。
消費者がAIに見る夢は実現しない
「先端技術」とはやされながらも、遅々とした歩みでしか進んでいないAIに、消費者はどんな期待を持っているのでしょうか。
複数回答の許されたアンケート調査で見るかぎり、消費者の期待がもっとも強いのは教育、あるいは新しいことを学ぶ手段として、AIが画期的に勉学の効率を上げてくれることのようです。
たしかに、たとえば語学教育などではネイティブの発音をしてくれるAIに教えてもらえば、何度同じ間違いをしても、怒りもうんざりもせず懇切丁寧に直し続けてくれそうです。何年かかってもちっとも身につかなかった外国語が今までよりずっと速く覚えられる?
ですが、それは幻想でしょう。まず、英語というたったひとつの外国語を学ぶために膨大なカネと時間をかけつづけている日本人が、在来の語学学習法に比べて顕著な改善にはならないだろうと見ています。
あとで、AI全般に対する評価を比較する表でも説明させていただきますが、日本国民はAIに対して過度の期待も持たず、過度の懸念も抱かずじつに淡々と大した変化をもたらすことはないだろうと達観しています。
その日本国民が、この調査に参加した28ヵ国の国民の中でいちばん期待値が低いのです。わずか12%だけしか画期的な変化を予測していないのですから、実際にそんなものに終わる可能性が非常に高いと思います。
もっとはるかに計量的な信頼感のあるデータも、同じ方向を示しています。
この8枚のグラフのうち、上段は「いかにも画期的な変化を起こしそうだ」という印象のある分野なので投資がどっと殺到する、でも実績がついてこないのでさっと逃げていくといった派手な上下動をくり返す分野です。
その中でも、教育テクノロジーは2020年には全分野の中でおそらく最高額の70億ドル台の投資を集めていました。
ところが、他の分野より1年早く2021年に急落したあと、2022年にも下げつづけ、ピークの約20分の1に下がっています。これはもう、AI投資家の大多数がどうにもならないと見切りを付けたと考えていいでしょう。
下段の4枚のうち左から3枚は、あまり意外性はないけれども使えばそれなりに効果はありそうな分野で、着実に上昇基調を維持しています。
右下のベンチャー・キャピタルは、投資家を呼び集めるために「最新のAIモデルを使って投資対象を決めています」とか宣伝しそうな雰囲気がありますが、意外に正直な連中で自分たちがやっているのは丁半賭博と割り切って、AIには見向きもしないようです。
かけ声はでかいが実績はしょぼいAI投資
それにしても、いったいAI投資はどの程度企業収益の改善に貢献しているのでしょうか。
まず驚くのは、AIを採用してもまったくコスト節減効果がなかったという企業が全体の3分の2を超えていることです。
さらに、節減効果があった企業の6~7割は10%未満のコスト削減にとどまっています。20%以上コストを削減できたと言っているのは「サービス実務」と「製品・サービスの開発」に使った企業のうちで6%、それ以外の事業領域や機能では5%以内に過ぎないのです。
売上拡大のほうでは、3分の2近くが「とにかく売上を拡大できた」と言っていますが、こちらは大部分が5%以下の増収にとどまっています。
全体として目を見張るようなコスト削減も増収も、AIの導入で達成することはむずかしそうです。
よくまあこんなすさまじいエネルギー浪費の実態をぶちまけてしまうなと感心するのが、次の2枚組グラフの上段です。
私自身は二酸化炭素の排出量が増えると、植物の生育を促進するのでむしろ歓迎すべき事態だと思っています。ただCO2何トンと測ろうと、石油何バレルと測ろうとエネルギーを浪費するのは、言語道断です。
そして、マシンラーニングモデルの中では画期的にエネルギー消費量が少ないと言われるBLOOMでさえ、人類一般より3倍以上多くのエネルギーを使って生きているアメリカ人1年分の消費量より大量のエネルギーを必要とするのですから、立派に言語道断の部類です。
もうひとつ笑ってしまうのが「AI制御によって住民が快適と思える温度を保つのに必要なコストを丸3ヵ月間で12.7%節減できた」という下段のグラフです。
「徐々に蓄積したデータによるラーニングカーブ効果で空調コストを下げられた」と称しているのですが、これって真夏から晩秋になって冷房をガンガンかけなくても済むようになったというだけのことではないでしょうか。
そこまでひどい「模範例」ではなかったとしても、アメリカ製のエアコンを日本製に変えたり、家の気密性・断熱性を高めたりするだけで、もっと早くもっと大幅なコスト節減ができることは間違いないでしょう。
AIモデルを運用することのすさまじいエネルギー消費量を考えれば、なおさらです。
日本国民のAI観はすばらしい
次にご覧いただくのが、先ほどちょっと触れたAI一般に対する理解度、信頼度、不安感をまとめた表です。
赤い枠で囲ったのが、この調査に参加した28ヵ国の中で日本国民の「イエス」回答率がいちばん低かった項目です。
最初の項目が既に驚きです。国民の6~7割が「AIとはどんなものか、よくわかっている」とおっしゃっている国もあります。私には、未だにどこまでがふつうのコンピューターでもやってのける推論機能で、どこからがAIなのかさえわかりません。
「AIは人間同様ものを考えることができる。今はまだできなくても、いずれそこまで進歩する。そうなったら、しょせん機械でしかないコンピューターと機械を超越したAIの違いもはっきりする」という未来予測のような話なのでしょうか。
私は、未来永劫にわたって「AIが人間のようにものを考える」機能を持つことはあり得ないと確信しています。
エネルギー消費量に糸目をつけなければ「ルールが有限個しかなくて、そのルールは全競技者に周知徹底されていて、改訂も必ず知らせてくれる」という囲碁や将棋やチェスの世界では、AIでもスーパーコンピューターでも人間界のナンバーワンより強いでしょう。
しかし、突然自分が知らなかったルールに出くわすこともあれば、自分がルールだと信じていたものになんの拘束力もなかったと気づかされることもあり、場所によって同じルールの持つ意味がまったく違っていたりする現実社会では、AIは判断停止状態になるでしょう。
日本国民の4割が「AIとはどんなものか、よくわかっている」と答えていることでさえ比率として高すぎる気がします。
もっと不思議なのが「製品やサービスがAIを使っているか、いないかがわかる」という主張です。料理を食べて化学調味料を使っているかいないかは、おぼろげながら見当がつきます。また製品なら、どこかに「AI使用」の刻印でも押してあるのかとも思います。
しかし、実際に接客してくれるのはなま身の人間が多いサービスの場合、不細工なロボット配膳係でも出てこなければAIを使っているかどうか、どうすればわかるのでしょうか。多くのファストフード店では、ごく自然にマニュアルどおりの接客をやってのけます。
さらに謎なのは、AIの使用・不使用がわかるとどんな利点があるのかという点です。あるいはこの質問自体にどんな意味があるのかもわからない。
とにかく「AIとはわからないことだらけの概念だ」といちばんはっきり認識している日本国民が、じつは「AIを使った製品やサービスは私を不安にする」という質問へのイエス回答率はいちばん低いのです。
「AIとはどんなものか知っている」という回答と「AIを使っている企業を他企業同様信頼する」という回答にはプラスの相関性があるようです。それを図示したのが次のグラフです。
これはある意味でとても論理的な整合性のある話だと思います。
「AIとはどんなものかよく知っていて、AI利用企業を信頼する」とおっしゃる人たちの多い国は、これまで不利な立場に立たされてきた国々で、AIが人間を超えた能力によって人類を平等化してくれると期待しているのではないでしょうか。
逆に「AIはどんなものかわからないし、AIを使用している企業は信頼できない」とおっしゃる人の多い国は、先進国と呼ばれるこれまで有利な立場にあった国々が多いようです。
今までの立場が有利だっただけに、得体の知れないものによる検閲や制約を課されることに不安を感じているのでしょう。その中で日本国民は「AIのことはよくわからないけれども、あまり不安も感じていない」わけです。
「どんなに大げさな道具立てでも、しょせん人間が使うものだし、道具立てが大きければ使えるのは権力を持った連中だけだろう。よその国では大きな不安材料だが、日本では支配階級の人間は我々と同程度か、我々より低い知的能力しか持ち合わせていない。だから、だいそれたことができるはずがない」と達観しているのでしょう。
消費者が拒絶するかぎりAI専制はない
AIに対する反応を企業対消費者という視点で見ると、みごとにわかれています。
企業は市場経済の及ばない統制経済の世界です。何か仕事をして欲しいと思うたびに「この仕事を、何時間のうちにいくらで片付けてくれますか?」と競売にかけていたのでは、あまりにも交渉時間のロスが大きくなります。
そこで「あなたの労働力を時間決めでまとめ買いしますから、労働時間内は上司の命令どおり動いてください」というわけです。
参入・退出の自由がない窮屈な世界ですから、組織として円滑に運営するためにAIの助けを借りるというのは自然な発想だと思います。
ですが、労働時間外の消費者として振る舞っているときまでAIによる統制を押しつけられるのは、御免こうむりたいところです。
企業としてはなんとか消費者も従順に統制に服する存在にしてしまおうといろいろな手を使って、統制経済の領域を拡大しようとします。
上の円グラフの右下に出ている自動車の自動運転化も、そうした巧妙な手段のひとつだと思います。たぶん、消費者側もそれを本能的に察知しているので、自動運転の危険性をかなり大きく意識しているのでしょう。
そのへんでは、おそらく企業の思惑どおりに統制経済化を推進することはむずかしいでしょう。
ただ、最近の傾向としてAIの実用化を推進している立場の人たちの中から「AIが人類絶滅を企てる危険があるから、開発を一時停止すべきだ」とか「AIは汎用化すると核戦争を起こす危険がある」といった恐怖心をあおりながら消費者の味方を装う人たちも出てきました。
庶民の感じているAIへの不安と「良識あるAI開発者」が大上段に振りかざす恐怖感の違いを次のグラフでお確かめください。
この人たちは、本心から「AIにはこんなに大きな危険があるよ」と警告してくれているのでしょうか。残念ながらそうではないでしょう。
次回は後編として、彼ら「AI恐怖論者」の真意はどこにあるのか、AIと密接な関連のあるロボット開発の問題点、そして株式市場におけるAI関連銘柄の位置づけについて書きます。お楽しみに。
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