私の最新書籍である「世界のニュースを日本人は何も知らない4 – 前代未聞の事態に揺らぐ価値観」 でも指摘しましたが、日本人はひどい就労環境でもなぜか上司や会社に反撃しません。(参照:なぜ日本人は上司を襲撃しないのか?)
これは日本の特に氷河期世代が組合を作って自分の雇用主と交渉しないということと繋がっています。
日本では就職氷河期時代に正社員になれなかった人々の多くが現在中年となって非正規雇用のまま低収入に苦しんでいます。
ところが彼らはなぜか雇用する側と交渉をしようということをしないのです。
日本は民主主義国家で、労使関係に関してもかなり自由度があるのです。
日本の働く側の人は自分の権利を行使しようとしないのですが、それはおそらく彼らにどういう風に交渉すれば自分が有利になるかという知識がないからなのではないでしょうか。
非正規雇用であってもやり方によっては雇用主と交渉して賃金をあげることも不可能ではないのです。
日本は働く方が雇用側に様々な要求をしないので一向に賃金が上がりません。
他の先進国の働く人々というのは、働く方に様々な注文を付けますし、正規も専門職も高収入の人も境遇に不満があれば仕事をしなかったり手抜きをしますので、雇う方ものんびりとしていられないのです。結果的に市場の力が働いて良い人を雇うのには高い給料払って良い境遇にしなければならない、という「市場の見えざる手」が働くことになります。
この参考になるのが最近アメリカのAmazonで労働組合ができている例です。
アメリカも日本と同じく大学進学率は高いのですが、日本と同じく大学を出てもアルバイトのような仕事や正規雇用で低賃金の人がかなりいます。
最近では特に仕事の専門化が進んでいるので、文系だったり専門性が低い人は、大卒であっても、Amazonの倉庫業務やUberなどで働くことが増えているのです。
彼らの職場には高卒の人も大勢いるのですが、大卒の人達が労使関係や法律、労働者の権利などを高卒の人々に教えて、自ら労働組合を作って雇用元と交渉しているのです。
大学で社会政策や法律を学んだ若い人達が、そういった知識を使って、自分たちの境遇を良くしようとしているのです。
非常に興味深い点は彼らが既存の労働組合や左派系政党に頼らずに、自分達で何とかしようとしている点です。
政治に利用されるのを嫌うためです。また既存の組合などとは繋がりがないのもあるのでしょう。また従来の団体は年齢が高い人々に独占されており、大卒の非正規の若者の境遇を考慮しないということもあるのではないでしょうか。
労働組合や左派系の団体の中には、非正規の若い人や中年の人の境遇など目もくれず、全く関係がない事柄に熱心なところも多いのです。
大学は社会の分断をすすめると言われる一方で、大学で学んだ知識を生かして人々を助けている人達もいるわけです。
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