今夏も日本に帰国されためいろまさん(@May_Roma)こと谷本真由美さんに、外から見るとよくわかる日本の現状や課題に関して、色々とお話をお聞きしてきました。
今回はその第2回です(全3回)。
イギリスのエネルギー・物価事情
――イギリスのエネルギー事情は改善されましたか?
めいろまさん(以下、めいろま):イギリスは相変わらずエネルギー価格が高く、一昨年の倍額以上で、一戸建ての光熱費が月6-10万円です。アパートの場合はもっと安くなりますが、貯蓄のない家がほとんどなので支払えない人が増えています。
ガソリンの値段も高騰しているので、車を使わずに徒歩や自転車という人も少なくありません。
――日本のような対策はなされているのでしょうか?
めいろま:イギリス政府は一般家庭に対しては2022年10月から2023年3月までは、the Energy Bills Support Scheme Alternative Funding (EBSS AF)によって400ポンドの光熱費支援をおこなっていましたが、不十分であるという声が上がっています。
また単に光熱費を支援するのではなく、光熱費のカットを訴えるキャンペーンを行ったり、原子力発電所への支援を強化しています。2025年までにイギリスのエネルギーの25%を原子力でまかない、小型原子炉を進めていく予定です。
ストライキをやりすぎるイギリス。やらなさすぎる日本。
――イギリスはストライキが多いのでしょうか?
めいろま:イギリスは最高で10%近かった高いインフレーション率に賃上げが追いついていない状況なので、昨年冬から労働争議が連続しておきており、ストライキに突入する組合だらけです。
鉄道各社は長期のストライキを行い通勤できない人も続出した上に、救急隊員、救急車のコールセンター、研修医、管制官、空港の荷物運搬、空港のセキュリティ、国立大学教員、公立小中高教員、などもストライキを行っていて、ほぼ毎日どこかでストライキをやっているという状況です。
どこがストライキをやっているか、新聞が発表するストライキ・カレンダーを毎日確認しなければなりませんでした。
――逆に日本は労働争議をやらなさすぎると仰っていましたね。
めいろま:日本は労使関係がイギリスとはかなり異なり、雇われる方が経営層に待遇や賃金を交渉することが少ないので、低賃金の労働者や非正規の人々の状況がかなり厳しく、国内に「2階級の身分」が発生しています。日本も雇われる側が交渉術を身につけるべきでしょう。
――イギリスの雇用環境は悪化しているのでしょうか?
めいろま:コロナの最中に大量解雇や一時帰休となり、そのまま再雇用されなかった人がかなりいます。日本とは異なり多くの人が職を失ったため、それが社会的なストレスとして反映されています。
雇用されている人もコロナ後の経済回復が不十分な中で、ロシアにより戦争が始まって光熱費が高騰し、生活費や物価の高騰に苦しんでいます。少なくとも大量解雇が起きなかった日本はまだ遥かにマシということです。
―イギリス人はすぐクビになると仰いましたが、それに備えてはいるのでしょうか?
めいろま:コロナ禍での大量解雇があったように、イギリスでは1980年代以後は解雇規制の緩和で、クビになることが当たり前になりました。
失職が前提の社会なので、普段から転職のためのネットワーク作り、推薦状を書いてもらうために同僚や上司と良い関係を築く、新しいスキルの取得、早期引退するための資産作りに恐ろしいほど熱心です。日本のサラリーマンに全く足りていない考え方です。
(その3につづく)
- 「【めいろまさんインタビュー①】「激安ニッポン」に帰国して」はこちら
大人気の週刊めいろま、世界のニュースクリップはこちら
■
谷本真由美さん @May_Roma (めいろま)
ITコンサルタント。専門:ITガバナンス、プロセス改善、サービスレベル管理、欧州IT市場および政策調査。ITベンチャー、経営コンサル、国連専門機関情報通信官、外資系金融機関等を経て日英往復。趣味HR/HM。仕事依頼 Twitter @May_Roma