立憲の泉代表は、政府が29日に「臨時国会を来月20日召集とする方針を固め、与党幹部に伝達した」との『共同電』を受けて、「まさに早期解散含み。政局でやっている感がある。経済対策、補正予算の発言も国会の開会時期も、すべて選挙対策、選挙含みで動いているんじゃないか」との認識を示した。
まさに野党の体たらくをも「代表」するかのような発言で耳を疑う。政治家は「常在戦場」といわれる様に行住坐臥すべてが政治活動であり、時の政権の使命は、国家国民の利益になる政策を実行して選挙に勝ち、然る後も政権与党が良しと考える政策を継続することだ。「政局」も「選挙含み」も大いに結構ではないか。
次の総選挙に向けては、立憲・共産を軸とする野党連携も取り沙汰されている。共産は前のめりの様だが、立憲は泉代表も含めて態度がはっきりしない。福山哲郎元幹事長辺りは「共産党との共闘は二度とごめんだ」と言ったとか。が、支持率一桁台の政党が集ったところで、烏合の衆との誹りを免れない。
来年1月13日の投票日まであと3ヶ月余りとなった台湾の総統選でも、野党の連携話が持ち上がっている。
台湾民衆党の柯文哲候補の選挙事務所が29日、公正な第三者による世論調査で柯候補と国民党侯友宜候補の支持率を比較し、負けた方が出馬を断念すべきと発表したのだ。これによって与党民進党の賴清徳候補に勝てるという訳である。
民進党系の『美麗島電子報』が9月30日、最新の世論調査結果を発表した。それに拠れば、無所属の郭台銘を含めた4候補の調査では、頼清徳:36.6%、侯友宜:21.6%、柯文哲:16.2%、郭台銘氏7.1%で、郭を除く3候補に絞った調査では、頼:39.4%、侯:23.5%、柯:9.0%となっている。
『美麗島電子報』の吳子嘉会長は、農相の更迭で輸入卵をめぐる問題の沈静化を図った与党の賴候補の支持率が安定傾向にある一方、柯候補の支持率は20%を下回っていないが、侯候補の支持率は選挙本部が設置される10月からは間違いなく上がるので、「青白合併」(青=国民党、白=民衆党)が実現する可能性はますます低くなる、と分析した。
総統選挙に大きな影響を与える中国情勢に関して、台湾国防部は24日、中国の航空機や艦艇、地上部隊が同日午前、中国福建省の東山大埕湾地域で演習を行ったことを確認したと発表した(24日『台北中央社』)。「ロイター」も「台湾周辺で中国に“異常”な動き、水陸両用部隊も演習=国防部」との記事で、22日の邱国正国防部長の談話を報じた。
台湾を揺さぶる北京の思惑が透けるが、その一方、中国の孫衛東外務次官がワシントンでダニエル・クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)と27日に会談した。『読売』に拠れば、米国側が「台湾海峡の平和と安定の重要性」に改めて言及した(米国務省)のに対し、中国側は「アジア太平洋地域における両国の前向きな交流は互いの共通の利益である」とした(中国外務省)とのことだ。
今日で高雄17日目の筆者の目には、台湾人の多くが日々平穏に過ごしているように見えるが、特にここ数年強まっている北京による種々の威嚇が、本音では独立したい台湾人の心情にさまざま影響を与えていることが、台湾国立政治大学が92年から30年にわたって毎年6月に行っている世論調査の結果から垣間見える。
先ずは「台湾人における台湾人・中国人識別傾向の分布」のグラフ(2023.7.12)。
一見して判るように「私は台湾人だ」(緑)とする者が、92年の17.6%から97年に34%に倍増、その後も増加を続けてここ数年は60%代前半を維持している一方、「私は中国人だ」とする者は92年の10.5%から4%前後にまで落ち込んだ。筆者はこれを李登輝の民主化で90年代半ばから採用された歴史教科書「認識台湾」の普及に比例したものと考えている。
次に「台湾人気の統一独立分野の傾向分布」のグラフ(2023.7.12)。
この調査では「現状維持を継続する」(青)が20年の25.58%から32.1%に急増してトップになった。94年には38.5%とダントツだった「現状を維持するかどうか今後決める」(黒)はここ数年28%台で横ばい。「独立を志向する」(緑)は20年の25.8%をピークに21.4%まで下落した。18年に12.8%だった「直ぐに統一」は19年の香港デモの影響で6%まで減った。
60%以上の者が「私が台湾人だ」とのアイデンティティーを持ちながら、ここ数年「独立を志向する」者が減ったのは、偏に「北京による威嚇」だ。習主席は昨年の党代表大会で、台湾統一に「決して武力行使を放棄せず、あらゆる必要な措置をとる選択肢を残す」と述べた。その結果、「独立志向」は1年で3ポイント減った。威嚇がなければ90%以上の台湾人が独立を望むことは想像に難くない。
最後は「台湾人の政党選好傾向の分布」のグラフ(2023.7.12)。
92年には62.3%だった「中立or無回答」が41.2%となったが、以前としても最も多い。92年に34.4%だった国民党は10%台後半まで下落したが、ここ1年は3ポイント増えている。与党民進党は政権を獲得した2000年に26%を記録した後ほぼ20%台後半で推移するも、19年の香港デモで風が吹いたお陰で一気に34%まで上昇、蔡英文は2期目を圧勝した。
国民党は、民進党陳水扁政権が2期目に入った04年から30%が半ばまで上昇し、08年に馬英九が政権を奪回したが、やはり2期目に約10ポイント落とし、その後は低落が続いている。20年に台北市長だった柯文哲が政権を目指して作った民衆党が若者を中心に12%台まで支持を増やし、国民党に挑むまでになっているのは、先述した「提携話」の通りだ。
筆者には、仮に第三者機関の世論調査で国民党候補が勝って柯文哲が降りたとしても、若者を中心とする無党派層を取り込んだ民衆党支持票が国民党にそっくり行くとは思えない。国民党=共産党と見ている高雄の知人もいるからだ。立憲も共産党と連携すれば、立憲支持者の右派票が離れるだろう。