ただの再生数かs…おっと、誰かが来たようだ
石丸市長「許可なく出馬会見動画のアップは認めない」
本日、正式に #東京都知事選 への出馬を表明しました。
これが20年先の危機を回避する最後のチャンスだとみています。https://t.co/Mydv4Nt5E2あまり個別の政策について話せなかったのですが、小中学校の給食費無償化は都で実施したいと考えています。
簡単でないにしても、#安芸高田市…
— 石丸伸二(安芸高田市長) (@shinji_ishimaru) May 17, 2024
なお、許可なく会見の動画をフルでYouTubeにアップした事業者がありました。すでに削除されていますが、その動画の転載も同様に認めません。
直ちに削除して下さい。
— 石丸伸二(安芸高田市長) (@shinji_ishimaru) May 17, 2024
安芸高田市の石丸伸二市長が東京都知事選に出馬を表明する記者会見動画を自身のチャンネルでUPしたことをX(旧Twitter)で投稿しました。
次いで「許可なく会見の動画をフルでYouTubeにアップした事業者がありました。すでに削除されていますが、その動画の転載も同様に認めません。」などと投稿。
すると、コミュニティノートで指摘されていました。
著作権法40条コミュニティノートも「メディア向けなので『公開』じゃない」
現時点で公開されているコミュニティノートには著作権法40条の指摘があります。
(公開の演説等の利用)
第四十条 公開して行われた政治上の演説又は陳述並びに裁判手続及び行政審判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続をいう。第四十一条の二において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
「公開して行われた政治上の演説」だという指摘に対して石丸市長が以下反応。
この会見はメディアに向けた記者会見で、メディアの種類も限定しています。よって、第40条の出だしから該当しないという理解です。
親切な方がいらっしゃるようなので聞いてみたいのですが、「公開」とは「特定の人に限らず、広く一般に向けた」という意味で合っているのでしょうか? https://t.co/yJNeTdn2q5
— 石丸伸二(安芸高田市長) (@shinji_ishimaru) May 19, 2024
「この会見はメディアに向けた記者会見で、メディアの種類も限定しています。よって、第40条の出だしから該当しないという理解」などと言っていますが…
少なくとも自身でYouTubeにUPしている時点で全世界に「公開」してますよね。
「フルでUP」というのも「同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き」を意識しただけでしょう。
そして、そもそも「メディア向けだから公開じゃない」というのは、いったいメディアの役割というものを何だと思っているのでしょうか?
著作権法逐条講義7訂新版加戸守行による解説「報道機関が入ってれば公開と解すべき」
【著作権法逐条講義 7訂新版/著作権情報センタ-/加戸守行】には以下あります。
357頁
まず、公開されて行われた演説又は陳述とか公開の陳述とかの公開要件が一つかぶっておりますが、これは、秘密演説会における演説とか非公開審理における陳述のやうに、外部発表を前提としないがゆえに述べられた内秘性を有するものについては、自由利用を認めるのは不適当と考えられたからであります。なお、非公開の場における演説等であっても、同時に中継放送されるものであれば公開のものと当然に解すべきですし、また、特定グループの集会における演説等であっても、一般報道機関の入場が認められていれば、公開のものと解すべきでありましょう。
「特定グループの集会における演説等であっても、一般報道機関の入場が認められていれば、公開のものと解すべき」とあることからは、東京都知事選挙への出馬という公的な動きについて知らせる目的でのメディア向けの記者会見は、明確に「公開」と扱われるということになります。
※追記:ニコニコ動画で生放送していたのでこの点からも公開扱いなのは明らかです。
357頁
自由利用が認められる著作物の第1が政治上の演説又は陳述でありますが、政治上の演説・陳述というのは、単に政治に関する演説・陳述ではありませんで、政治の方向に影響を与えるような意図をもって自己の意見を述べるようなものでなければなりません。政治の方向に影響を与えるものとしては、選挙演説会、政党演説会等における演説がそうでございましょうし、国際政治問題に関するティーチ・インなどにおける発言等が政治上の陳述ということになります。政治に関するものであっても、政治問題に関する解説のように、政治上の主張が含まれていないようなものは、ここでいう政治上の陳述には該当しません。
東京都知事選挙への出馬会見は「政治の方向に影響を与えるような意図をもって自己の意見を述べる」ものなので、間違いなく「政治上の演説又は陳述」と言えます。
358頁
以上のような政治演説等や弁論陳述等は、いずれの方法によるかを問わず、利用することが認められます。ですから、第47条の6のような規定を待つまでもなく、翻訳しようと要約しようと、演説・陳述の同一性保持権を害さない限り、その利用が認められますし、印刷出版・録音等の複製であろうと、放送・有線放送・上映等の無形的利用であろうと、その利用方法を問わないで利用できるのであります。
そして、同一性保持権を害さない限り要約等も許されると明記してあります。
このことからは、いわゆる「切り抜き動画」の中でも、会見動画を適切にまとめて要約してテロップも付けたものは著作権法違反にはならない、ということになりそうです。
令和版「書いたらその社は終わりだから」報道の自由や知る権利を脅かす言論弾圧
こうしてみると、石丸市長の「許可なく会見動画をフルでYouTubeにアップは認めない」という発言は、国民による政治家の発言に関する公正な利用をも規制する【言論弾圧】ではないでしょうか?
令和版の「書いたらその社は終わりだから」とも言えるでしょう。
「一部のメディア向け記者会見だから公開じゃない」という発言は、裏返せばメディアの知る権利への奉仕たる取材の自由を認めていないということです。メディアは自己の利益のためにのみネタを集めに会見に参加しているのであり、政治家の言論の事実を国民に知らせて民主主義を実効たらしめる、という役割なんて無いのだと。
そういうことになってしまいますよ?いいんですか?
まぁ、実はマスメディアはそのような評価が適切なのかもしれない、という事案が今まさに現在進行形で展開されているわけですが…
編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年5月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。