コロナワクチン救済認定数が多いことを薬害の根拠とするべきではない

ネット上では、「コロナワクチンでは、非常に多くの副反応事例が救済認定されているため、薬害で間違いない」といった主張をしばしば目にします。 私はこの主張には賛同できません。

このような主張は、副反応に苦しむ人に常に利益をもたらすわけではなく、場合によっては害を成す危険があります。今回は、その理由について説明してみます。

反対する理由は2つあります。

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【理由1】薬害かどうかの判断は副反応検討部会の審査結果で決まるのが道理

薬害かどうかの判断は、厳密な因果関係を検証する副反応検討部会の審査結果をもってなされるべきです。この審議会でα評価事例が多数認定されれば薬害の可能性が高くなります。

一方、救済認定をする疾病・障害認定審査会は、薬害かどうかを審査する会議ではありません。厳密な因果関係の評価は必要とせず、副反応に苦しむ人を経済的に支援することが目的です。

審議会にはそれぞれの目的があります。各目的を理解した上で議論することが大切です。このことが理解できていませんと、議論が空転するだけで、建設的な議論となりません。

【理由2】救済認定数の多さを主張あるいは喧伝することは救済認定の躊躇につながる

救済認定は厳密な因果関係の評価を必要としません。認定基準はあいまいであり、政治的認定を多く含み、恣意的な認定であるとも言えます。つまり、政府の匙加減一つで簡単に認定件数は増減する可能性があるわけです。

現在は、政府は積極的に救済認定しようとしているわけですから、認定数の多さを問題にするのではなく、その方針を率直に評価するべきです。

救済認定数の多さを過度に主張あるいは喧伝したりすれば、「政府は救済認定の基準を厳しくする」のではないかと私は予想します。実際に、認定基準の難化が始まった予兆があるのです。

CBCの報道では、以前は救済認定されていた接種後の血圧上昇が認められなくなったことが報告されています。更には、最近は否認事例が増加傾向にあることが指摘されています。

政府は薬害とは認めたくないわけです。そのため、「救済認定数の多さをもって薬害とする声」が大きくなれば、救済認定数を絞るように方針転換する可能性は十分にあります。つまり、政府を追及する行為が、結果的に副反応で苦しむ人の救済認定の確率を下げてしまう危険があるのです。俯瞰的な視点を持つことが大切です。

問題とするべきことは、救済認定数の多さではなくて、α評価事例の少なさではないかと私は考えます。特に心筋炎のα評価事例が死亡事例の1件のみというのは極めて不自然です。

また、厚労省の「重大な懸念は認められない」という見解の根拠についても追究するするべきです。根拠となるデータは主にコホート研究によるものと考えられます。コホート研究のみで分析することの限界については英語論文にまとめて公表しましたが、残念なことにこの問題を理解している人はごく少数にとどまっています。

コロナワクチン副反応の問題は、闇雲に政府を批判しても解決するとは私には思えません。救済認定数の多さを問題とすることは、マイナス面があるため良策ではありません。「重大な懸念は認められない」の根拠を質し、その論理的矛盾を指摘することが突破口になると私は 考えます。