米国NIH(アメリカ国立衛生研究所)の暗黒の1日?

「One of the darkest days:NIH purges agency leadership amid mass layoffs」というタイトルの記事が4月1日のNature誌にでている。トランプ政権がNIH傘下の4つの研究所のトップを解雇したというニュース記事だ。

NIH(アメリカ国立衛生研究所)SNSより

4つの研究所は「アレルギー・感染症」「小児・発育」「マイノリティーの健康と健康格差」「看護学」の研究所だ。アレルギー・感染症研究所はコロナ流行時に当時のトランプ大統領に楯突いたファウチ所長がいた研究所だ。NIHには27の研究所・研究センターがあるが、この4つが対象となった理由はよくわからない。

この乱暴な人事権の発動は、もはや民主国家と呼べなくなった米国の象徴だ。このうち数名は、保健省管轄下のインディアン健康局への配置転換を打診されたと記事にあった。打診された場所は、アラスカ、モンタナ、オクラホマだったそうだ。日本に例えると、大企業の大都市の支店長から地方の支局長への配置転換を打診されたようなものだ。あまりにもえげつない報復的人事だ。

NIHは雇用者の4分の1に当たる2万人を削減する予定だそうだ。3月には700もの研究費を打ち切っている。前NIH所長だったMonica Bertagnolli博士は4所長の解任を取り返しのつかない大きな過ちであるとの見解を述べている。

Monica博士は私がシカゴ大学に在籍中に委員として属していた大きな臨床試験グループの責任者を務めていた。日本と米国の薬理ゲノム学研究グループでも一緒だったし、ユタ大学医学部出身ということで、話をする機会も多かった。頭脳明晰で人を率いる能力も非常に高かった人だ。

今は、多くの研究者が報復を恐れて口を閉ざしている。1月20日を境に、言論の自由であった国が、言論統制の国へと変貌した。国のトップ一人が代わると、これほどまでに大きな激震が走ることは大きな驚きだ。

高率の関税も独断と偏見のような形で決定されている。今の日本のように、予算を通すために、次々とポピュリズム的な施策を取り入れている現状では考えられないような施策の転換だ。このトランプ大統領の賭けが、吉と出るか、凶と出るかは神のみぞ知るだが、もし、うまくいけば、世界の国々が右傾化し、とんでもない世界が生まれるかもしれない。

日本はこんなやり方をするなら、日中に軸足を置くぞ・・・とプレッシャーをかければいいと思う。マスクの提唱する北米・ヨーロッパ経済圏は露骨なは白人経済圏だ。日本は中国と協力して、アジア経済圏・有色人種経済圏を構築すればいい。ディールというのはチキンゲームのようで、ビビったら負けだ。何とかできないのかこの政権を!


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2025年4月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。