SoFi鍵を握る「金融サービス事業」深掘り(前編):急伸するLPB

井上 真義

SoFiの金融サービス事業は、現在急成長を遂げている。2025年EPSガイダンス0.27~0.28ドルの2倍~3倍にあたる2026年のEPS 0.55~0.80ドルの達成も、金融サービス事業の成否にかかっていると言っても過言ではない。

今回は、金融サービス事業の現状を振り返るとともに、その成長を支える原動力を探る。

会員数・契約(アカウント)数:順調に拡大中

会員数の増加と共に契約(アカウント)数も順調な推移を見せている。

会員数1,092万人、契約(アカウント)数1,592万(2025年第1四半期末時点)

※ 契約(アカウント)数:ローン事業における融資契約数に加え、金融サービス事業における「預金」「投資」などの口座数やアカウント数、クレジットカードの発行枚数などを合算した数値。たとえば、1人の会員がローン1件、預金口座1件、投資口座1件を持っていれば、契約(アカウント)数は3。

契約(アカウント)数の内訳をみると、金融サービス事業の伸び率が高く、年々その割合を高めている。

金融サービス事業売上:構成比37%、主力事業へ台頭

金融サービス事業のアカウント数の伸びに伴い、売上も堅調に推移し、2025年第1四半期時点で金融サービス事業が全体の売上に占める割合は37%となっている。

この伸びが継続すれば、2026年にもローン事業の売上を抜く可能性が高い。したがって、この金融サービス事業の売上動向を予測することは非常に重要である。

金融サービス事業 売上内訳:非金利収入が急成長

金融サービス事業の売上の内訳をみると、金利収入も堅調に推移する一方、2024年第3四半期以降、特に非金利収入の伸びが急加速し、その割合も高まっている(SoFiの売上は金利収入と非金利収入からなる)。

※ 2024年第1四半期は金利収入80%、非金利収入20%である。

非金利収入の急成長:主因はLoan Platform Business(LPB)

金融サービス事業の非金利収入の内訳をみると、非金利収入をけん引するのは、Loan Platform Business(LPB)である。

【Loan Platform Business(LPB)とは】

法人顧客の要望に応じて、SoFiが代わりにローンを組成するビジネス。SoFiはローンの審査・組成・サービス提供を担い、実際の融資資金は提携先の企業やファンドが提供し、ローン資産はSoFiではなく相手先のバランスシートに計上される。

このスキームにより、SoFiは自ら資金リスクを負わずに手数料収入を得ることができ、資本効率を高めながら、収益源の多様化を実現している。さらに、SoFiの審査基準に満たず、従来は融資を断っていた会員に対しても、第三者のローンを紹介できるようになり、より多くのユーザーの資金ニーズに応えられる体制を整えている。

LPBがローン事業ではなく、金融サービス事業に属することに違和感を覚えるかもしれないが、ローン事業はあくまでSoFi自身が「直接」貸出を行い、SoFiのバランスシート上にローン資産が計上されるものであるため、金融サービス事業に属する形となっている。

なお、Interchange(インターチェンジ手数料)は、クレジットカードやデビットカード利用時に発生する加盟店手数料の一部をカード発行会社(=SoFi)が受け取る手数料。またBrokerage(ブローカレッジ収益)は、株式やETFなどの売買に関連する取引収益などを意味する。これらの数値も順調に伸びてはいるものの絶対値が小さいため、けん引役にはなっていない。

すなわち、LPBによる収益増加が金融サービス事業の急伸の主な要因ということになる。

高まる収益性:貢献利益率49%が示す高効率モデル

2024年第3四半期以降、利益および利益率が一段と加速していることからもLPBは効率性の高いビジネスと言える(2025年第1四半期において、貢献利益は対前年比4倍になっている)。

  • 貢献利益:売上-変動費(手数料・マーケティング費用など)。貢献利益を理解することで、どの事業がどれくらいの利益を生み、固定費の回収にどの程度役立っているかがわかる。
  • 貢献利益率:貢献利益÷売上=(売上-変動費)÷売上

次回中編では、LPBの継続的な成長の可能性とその構造的優位性に迫っていく。このLPBは「ゲームチェンジャー」になり得ると踏む。

(中編につづく)

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