消費税が減税出来ないのってレジ作ってる会社のせいなの?と思った時に読む話

城 繁幸

消費税減税(とオマケで社会保障についても)広く話し合う社会保障国民会議が続いています。

そんな中、「レジのシステムを調整するのに一年ほどかかるので短期での消費税率の上げ下げは難しい」との声が一部メーカー側から上がっています。

【参考リンク】消費税減税で税率変更、レジシステム改修に「1年程度要する」とメーカー指摘…国民会議の実務者会議

消費税減税で税率変更、レジシステム改修に「1年程度要する」とメーカー指摘…国民会議の実務者会議
【読売新聞】 政府と与野党による「社会保障国民会議」の実務者会議が8日、国会内で開かれた。今回から日本保守党が加わり、食料品の消費税減税を巡りレジシステムのメーカーや市場関係者から聞き取りを行った。メーカーからは税率変更に伴う改修作

で、さっそくおつむのちょっと弱い面々が「財務省の陰謀だ」「どこどこのスーパーの店長はすぐできるって言ってた」とヒートしてるみたいです。

っていうか、一国の経済政策ってレジの調整なんかで左右されるものなんですかね(苦笑)

重要なのはその施策の必要性であって、国、民間問わず本当に必要なものだったらお金も時間も使ったってやるべきでしょう。

そもそも、政府が立ち上げた社会保障国民会議なるものとは何なんでしょうか。広く議論するなら国会でいいじゃないかと感じている人は少なくないはず。

なぜ、国会とは別に、政府は特定テーマについて合意形成するための会議を立ち上げる必要があったんでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。

消費税を減税するには社会保障をばっさりカットするしかない

まず大前提ですけど、本気で消費税を減税するなら社会保障を、それもかなり思い切った水準でカットするしかありません。

(財務省サイトより)

一般会計の予算を見れば一目瞭然ですが、その3割超を占めているのは社会保障です。公共事業でも教育費でも、ましてや防衛予算でもありません。※1

なので今後は「まず政府はムダをなくせー」「軍事費ガー」とか言ってる人はスルーしてください。上図の隅っこを棒でつつくような話をしてるだけなので聞くだけ時間の無駄ですから。

繰り返しますが、社会保障を何とかしない限り、消費税を下げるなんてことは不可能なんです。

しかも既に日本も金利のある世界に戻ってきています。これから年々国債の利払いは膨らみ続け、予算を圧迫し続けるでしょう。※2

【参考リンク】国債利払い費、35年度に3倍超の45兆円 財務省が金利上昇時を試算

国債利払い費、35年度に3倍超の45兆円 財務省が金利上昇時を試算 - 日本経済新聞
財務省は17日、国債の利払い費が2035年度に26年度の3倍超の45.2兆円に増える可能性があるとの試算を公表した。長期金利が大きく上昇するケースを想定した。リスクを踏まえた財政運営の必要性を訴えた。財務相の諮問機関である財政制度等審議会が...

普通に考えたらむしろ今やらなきゃいけないのは消費税引き上げの議論なんですね。そのトレンドに抗ってそれを減税するのなら、メチャメチャ思い切った社会保障カットが必要になるのは明らかです。

高齢者も医療費窓口一律3割負担でもせいぜい5兆円浮くくらいなので焼け石に水ですね。75歳以上は5割負担+介護保険廃止くらいしないと無理なんじゃないですかね。

ただ「消費税減税のために、社会保障をカットいたします」とは誰も言いたくはありません。選挙で高齢者から凄い逆風くらいますから。

特に野党なんて、そもそもどこまで本気で消費税減税を考えてたのかすごく怪しい気がします。実行責任ないから適当に風呂敷広げてただけで。

そういえば最初に減税ブームを起こした立役者で、何を削減するのかと問われると「いや、我々与党じゃないから政府の事業のすべては分からない」とはぐらかし、いざ連立入りを打診され「すべて把握した上で内側から自由に手を突っ込む権利」を提示されてもやっぱり逃げた人もいましたね(苦笑)

最初から消費税減税する気なんて一ミリもなかったんでしょう。

図2(画像はイメージです。本文とは関係ありません)

まとめると「消費税減税のために社会保障をカットしましょう」とは誰も言いたくないわけです。

なら正直に「社会保障カット出来ないから消費税減税はできません」って言えばいいじゃないかと思う人もいるでしょう。

でもそれも彼らは言いたくないはず。だってそんなこと言ったら「お前ら政治家は出来ないと分かってて消費税減税を公約にしたのか!公約違反どころかただの詐欺師だろ!!」と叩かれるから。

ではどうすれば全て丸く収めることが出来るのか。

それは「社会保障カット出来ないから」以外の消費税減税が難しい理由を見つけ出すこと。そしてそれを理由に「僕らは減税したかったんだけどさあ、〇〇って理由で難しいって言う人達がいるから」と言って先送りすることですね。

それも、後になって外野から突っ込まれないように、出来るだけ主要野党にも参加してもらったうえでそういう結論に導くのが理想的です。

だって会議に参加してないと後から「いやあんなの出来ない理由になってないですよ。あの人たちは単にやる気がないだけです」とか言って後ろから撃ってきそうな人とかいるじゃないですか。

図3(画像はイメージです、本文とは(以下略))

ようはアリバイ作りですね。

国会と違い規則に縛られず柔軟に運用できる“社会保障国民会議”というのは、そのアリバイを参加者みんなで生み出すためのツールだというのが筆者のスタンスです。

※1  これにくわえ社会保障にはさらに巨額の特別会計がありますがここでは省きます。
※2  この状況で国債発行しろと言っている人は単に頭がおかしい人なので無視しましょう

以降、
消費税減税に反対せざるを得ない人たち
実は歴史的転換点になるかもしれない社会保障国民会議

※詳細はメルマガにて(夜間飛行)

Q:「大手の中小の賃金格差を生み出すものとは?」
→A:「流動的な労働市場と仕事の付けられた値札があれば、理論上は差は生じません」

Q:「この転勤を乗り越えれば出世だ、と言った上司が先に定年退職したんですが」
→A:「まあサラリーマンってそういうもんじゃないですかね」

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2026年4月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。

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コメント

  1. 早川蒼真 より:

    消費税減税を本気でやるなら社会保障にメスを入れるしかない、という本論には強く賛同する。
    レジのシステム改修云々は枝葉の話であり、社会保障をカットできない以上は減税など不可能という冷徹な財政構造の指摘は正鵠を射ている。
    「政府のムダを削れ」「防衛費ガー」で済む規模の話ではなく、公共事業や防衛費の削減ではどうにもならないという見立てもリアリティがある。

    ただし、論拠として提示されているグラフは最悪である。
    「令和7年度一般会計予算歳出・歳入の構成」
    これは最悪だ。
    最悪である。社会保障改革の議論で本当に見なければならないのは、保険料や地方負担まで含めた**社会保障給付費ベースの約140兆円**の姿である。
    一般会計グラフだと国庫負担分の約38兆円しか映らず、議論のスケールが4分の1に縮んでしまう。
    注釈で特別会計に触れて逃げを打つのではなく、最初から140兆円の全体像を示すべきだ。
    最悪のグラフで最良の主張を台無しにしてはいけない。
    本当に最悪だ。

    その上で、「思い切ったカット」と言うなら具体案が要る。140兆円から削るなら、以下のような組み合わせがよいのではなかろうか。

    1. **医療費窓口負担を年齢ではなく所得・資産で決定し、高齢者も原則3割、高資産層は10割へ【日本の財政ピンチなのでしかたなし】。過剰受診を抑える。

    2. **OTC類似薬・湿布・軽症受診・重複投薬・終末期の過剰医療を保険給付から外す。**混合診療の全面解禁と薬価・診療報酬の抜本改定、病床再編もセット

    3. **介護保険は要支援・要介護1〜2の生活援助を保険給付から外し、重度者・認知症・家族介護困難者へ重点化。**軽度者は自費へ

    4. **年金支給開始年齢の75歳への段階的引き上げ。**高所得・高資産高齢者への給付は課税強化・減額。

    5. **金融資産を勘案した資産要件の本格導入。**一定以上の金融資産・不動産を持つ高齢者には年金減額・医療介護の自己負担引き上げ。

    6. 医師会に対して税金5000億円という法律を作る。

    もちろんどれも劇薬だ。
    だからこそ誰も言いたがらず、会議がアリバイ装置化する——という筆者の構図はその通りだ。
    議論の土俵を「38兆円の一般会計」ではなく「140兆円の給付費全体」に置き直し、どれを削るのかから始めるべきだ。
    本気でカットを語るなら、140兆円の全体像を前提に、血の流れる議論から逃げるべきではない。