「愛子天皇」を国会が取り上げない本当の理由はこれだ

国会での与野党協議で、皇族数の確保についての議論が進められ、いよいよ連休明けには大詰めを迎える。その焦点は、旧宮家の男子を養子として迎える案と、女性皇族が結婚後も単独で皇室に残れるようにする案であり、その是非と比重の置き方をめぐって議論が白熱していることは、すでに「【皇位継承】男系派と女系派にあえて現実的な解決を促す」で論じた。

【皇位継承】男系派と女系派にあえて現実的な解決を促す
皇位継承問題についての衆参両院での調整が大詰めに入り、今国会で決着が付く可能性が大きくなっている。そこで、実務的な観点から、現在の状況と残された問題について、よくある誤解を排除しながら解説したい。自民党は強行突破する構えだが、皇室の問題で強...

しかし、SNSや週刊誌では、国会での議論の対象になっていない「愛子天皇」を要求する意見が、なぜか大きく扱われている。そこで、改めてなぜ愛子天皇の提案が実務の世界で相手にされていないのかを解説しておきたい。

立皇嗣の礼で確認された皇位継承の前提

まず、国会での与野党協議で愛子天皇が議論されないのは、現在の議論が、平成の天皇陛下(現上皇陛下)の退位問題の処理から始まった流れのなかにあり、その経緯のなかで秋篠宮殿下が皇嗣として確定されたことを前提にしたものだからだ。

秋篠宮文仁親王 宮内庁HP

2017年6月9日に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立し、同年6月16日に公布された。同法は、上皇陛下の退位と今上陛下の即位を実現するとともに、今上陛下の即位に伴って皇嗣となられる秋篠宮殿下について、皇室典範上、皇嗣が弟である場合にどう呼ぶかが決められていなかったため、呼び名を皇嗣殿下とし、皇太子に準ずる待遇と宮内庁の皇嗣職を設けるなど、その地位を制度的に整備した。

さらに、2019年5月1日の御代替わりにより秋篠宮殿下は皇嗣となられ、2020年11月8日には、天皇陛下がそのことを国の内外に宣明する「立皇嗣の礼」が国事行為として行われた。ここでは、天皇の場合の三種の神器に似た位置づけの「壺切りの剣」の親授が行われ、ある種の神聖な儀式をもって、事故がない限り皇位継承を引き継がれることを確定させたのである。

歴史上も、「壺切りの剣」を親授されながら、死亡以外の理由で皇位に就けなかった例はなさそうだ。微妙な例としては、藤原道長の横車で廃太子された敦明親王(小一条院)がいるが、敦明親王は、道長が壺切りの剣の親授をさせないようにして皇嗣としての地位が確定しないまま、好条件での取引を受け入れて辞退した。このほか、北朝の崇光天皇の直仁親王が皇嗣でありながら南朝の捕虜になって即位できなかった例があるが、壺切りの剣の親授があったかどうかは、混乱期なので記録も残っていない。

また、皇嗣は皇太子ではなく、外国の皇太子より下の地位などという議論は無知の結果だ。そもそも、皇太子という呼び名が過去においてどの時代でも使われてきたわけではない。また、皇太子というのは中国と日本独特の呼び名で、たとえば、欧州ではそれに当たる職名はない。一般名詞としては皇嗣(英語のクラウン・プリンス、フランス語のプランス・エリティエ)であり、慣習的には英国ではウェールズ公、フランスではドーファン、オランダではオランジュ公などと、王家ゆかりの領地名で呼ばれる。そういう意味では、英国のウィリアム王子を皇太子と呼ぶのは誤訳である。

つまり、今上陛下の皇位継承者が秋篠宮皇嗣であることは、この時の経緯で、国会により再確認されたわけで、それを数年のうちに朝令暮改するのは普通にはありえない。

愛子天皇論が制度上の議題にならない理由

そして、秋篠宮皇嗣殿下の継承者が悠仁親王であることも当然で、仮に制度を改正して女子の継承も認めるとすれば、第一は悠仁さまの第一子が女子であった場合だし、愛子さまよりも佳子さまが継承順位としては優先される。

愛子内親王 外務省HPより

こうした国会での積み重ねを前提として、皇位継承にかかる有識者会議では、皇嗣殿下と悠仁さまという既存の皇位継承予定者がおられるなかで、とりあえず20年くらいは、悠仁さまのあとが続かない場合の議論はしないことにしたのである。といっても、皇族数の確保のための増員が、その子孫が皇位継承候補となることは暗黙の了解事項ではある。

したがって、今議論しているのは、愛子さまや佳子さまの子孫に皇位継承の可能性をどこまで残すかということであって、愛子さまや佳子さま自身は候補と考えられていない。愛子天皇の可能性は、ほぼ秋篠宮皇嗣殿下が立皇嗣の礼の儀式をされたことで終止符が打たれているのである。

もちろん、皇室典範も法律であるから、これを改正できないわけではないが、すでに先述のアゴラ記事でも説明したように、法改正時にすでに生まれている人については、法改正後も順位を変更しないのが原則である。もし今後、男女を問わず長子優先にしても、適用第一号は、悠仁さまの長子が女子であった場合になる。

女系論と保守派の議論にも必要な冷静さ

また、愛子さまこそ悠仁さまより天皇にふさわしいという人もいるが、悠仁さまが幼少時から周到な帝王教育を施されているのと違って、愛子さまにはそのような配慮はされていない。学習院関係者が、学習院で学ばなかったから悠仁さまはダメだといっているだけである。

また、愛子さまの比類なき資質というが、愛子さまは大学でも最初の3年間は通学されていないし、4年目もそれほどの数の講義に出たり、学友たちと交流されたりしたわけではない。公務への参加も従来の女性皇族より控えめで、愛子さまをよく知る人はいまのところ非常に少ないはずであり、当てずっぽうの議論はいかがなものか。

また、女系を認めないと皇室は廃絶するという議論も間違いだ。むしろ、上皇陛下の子孫だけに皇位継承権を限定するということこそ、何世代かのうちに誰も皇位継承権者がいなくなる可能性が高く、浅慮だ。

一方、保守派も、愛子天皇論は中国の策略だというような陰謀論はいわないほうがいい。また、将来の問題としての女帝や女系継承を議論することまで否定するのは言い過ぎだ。私は諸外国にならって、少なくとも100人以上の皇位継承潜在候補がいるべきだと思う。


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