三重県の一見勝之知事は、国外への情報漏洩を防止するために県の職員の採用において「国籍要件」を復活させると発言しましたが、この件がネットで炎上していました。
【参照リンク】公務員の国籍要件「時代に逆行」 初の外国籍職員の危機感 毎日新聞

【参照リンク】「日本人に働いてもらうこと重要」外国人採用取りやめへ 三重県知事表明 排外主義は否定 産経新聞
しかし、これほど炎上するのは、実はかなりおかしなことです。
実は他の先進国でも、公務員は自国の市民権所持者に限定する、という例が結構あるからです。

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例えばアメリカの場合ですが、大統領令第11935号により、競争試験採用の連邦公務員職は原則として米国市民または米国国籍保持者のみです。
ただし、米国市民の候補者がいない場合に限り、例外的に外国籍者が採用されることもあります。
また地方自治体の場合は、合法的な就労許可がある外国籍者を採用していますが、機関や職位が機密情報へのアクセスを伴うかどうかにより、採用できない場合もあります。
【参照リンク】米国連邦規則集 第5章 行政職員
https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2012-title5-vol1/pdf/CFR-2012-title5-vol1.pdf
【参照リンク】政府機関で働くには市民権が必要ですか?

実は私の元同級生や知人にも、アメリカ政府や自治体の公務員がいますが、国務省や防衛関係の場合は、アメリカ国籍を取得した人もいます。研究者の場合も機密情報や規制の関係で、アメリカ国籍を取得しています。
国務省に勤務している同級生の場合は、発展途上国出身者が何名かいるのですが、やはり二重国籍だったりすると不都合が多いですし、いろいろ疑われたくないですからね。研究者の場合は研究資金を獲得するのに規制があったりするので、結構大変です。
カナダの場合も規制があります。ただし、国籍が絶対に必要というわけではなく、優先順位が変わります。カナダ市民、永住権保持者の順に優先で、外国籍や労働許可しかない場合は優先順位が低くなります。地方公務員については各州の規定によります。ただ、やはり機密情報に触れる場合はいろいろ規制があるので、外国籍で全部OKというわけでもないです。
【参照リンク】英国公務員国籍規則 国籍に関する規則

【参照リンク】カナダ保安情報局 募集中の求人
イギリスの場合も同様で、公務員国籍規則では、外国籍の人は公務員として雇用されることがありますが、機密性の高い情報に接する特定の職位に関しては、国籍制限が適用されます。
地方公務員は一定の柔軟性はありますが、やはり機密性の高い情報の場合は規制が適用される場合があるので、外国籍が絶対に採用されるというわけではありません。
政府も自治体も、機密情報に接触する職位の場合はセキュリティ・クリアランスが必要なわけですが、どの職位のどんな業務だとどのレベルが必要かはケースごとに異なるので、外国籍でもクリアランスを受けて許可を得ることは可能なわけです。ただし、何分ケースごとに異なるので、外国籍だと許可が下りないという場合もあります。
ちなみに自分も情報通信業界で仕事をしてきたので、特にアメリカとイギリスのセキュリティ・クリアランスには実際に関わってきたことがあるわけですが、これは相当細かくなっている上に、審査にかなり時間がかかったりするので大変です。
外国籍の場合は書類の確認とか調査も大変ですし、プロジェクトが切羽詰まっていると何か月も待っていられないので、結局外国籍の人は採用しないということもあるんですよね。
だから現場の感覚としては、公共系のプロジェクトが多いところだと最初から外国籍は採用しないということがあります。
では、それは差別になるのではないかと騒いでいる人がいるかというと、全然いないんですよ。
【参照リンク】イギリス議会 国家安全保障上の身上調査 よくある質問への回答
https://www.parliament.uk/globalassets/mps-lords–offices/offices/pass-office/psd-national-security-vetting-booklet.pdf
【参照リンク】英国法の公式オンラインデータベース 1955年外国人雇用法
まあ、その他のG7の国もだいたい同じような感じなので、一見知事が発言したことは全くおかしなことではなく、他の国で普通に行われていることなんですよ。
ですから、日本だと他の国では外国人も採用されていると言い切ってしまう左翼の人は謎ですね。法規を読んでいないのでしょうか。
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コメント
海外でも公務員に国籍要件があったり、機密情報を扱う仕事ではセキュリティ・クリアランス(適性審査)が必要だったりするのは、決して特別なことではありません。
まず、日本国内にも「国籍要件」はもともと存在しています。
たとえば国家公務員になるための採用試験は、原則として日本国籍を持っていない人は受けられないと、人事院のルールで決められています。
国籍要件は、どこかの古くさい考え方ではなく、現在の日本の公務員制度にしっかり組み込まれている仕組みなのですね。
地方公務員についても、過去に最高裁判所が判断を示しています。
簡単に言うと、「外国籍の人を地方公務員として採用するかどうか、どんな仕事や昇進まで認めるかは、それぞれの自治体が自分で決めてよい」という内容です。
つまり、「外国籍だから絶対にダメ」でもなければ、「外国籍でもどんな仕事にもつけないと差別だ」でもありません。
仕事の中身や責任の重さに応じて線を引くこと自体は、法律的にも認められているのです。
今回の三重県知事の判断も、この日本の法律の考え方の延長線上にあるものだと言えます。
ここで大事なのは、議論を「差別か、差別じゃないか」という二つに一つの単純な話にしないことだと思います。
これは【詭弁を行使する者】の常とう手段で、【差別】という何となく反論しにくい言葉を【盾】にして【詭弁】で暴れまわるのです。
記事を読んで「外国人を全部追い出せ」という話だと誤解してしまう人もいるかもしれませんが、そうではありません。
行政の中枢で重要な秘密情報を広く扱う仕事とは、分けて考える必要がある、というだけのことなのです。
日本も国全体で情報管理を厳しくする方向に動いています。
2024年には「重要経済安全保障情報の保護及び活用に関する法律」(重要経済安保情報保護法)が成立しました。
これは、国の安全保障にかかわる重要な情報を扱う人について、信頼できるかどうかを事前に審査する「セキュリティ・クリアランス」という仕組みを、日本でも本格的に取り入れていこうというものです。
つまり、三重県知事の判断は、知事一人の特別な思いつきではなく、今まさに日本全体が進めている情報管理を厳しくする流れと、ちゃんと同じ方向を向いているのです。
公務の中でも特に重要な部分については、責任と資格をきちんと定める。
守るべき中核の部分にはしっかりとしたルールが必要なのだと思います。
最後に一つだけ。記事にあるように、アメリカやイギリス、カナダといった国々でも、機密情報を扱う仕事では国籍や審査が問われるのが当たり前です。
それを「差別だ」と騒ぐ人は、それらの国にはほとんどいません。
海外を引き合いに出して「外国では誰でも公務員になれる」と語るなら、その国の実際のルールまできちんと読んでから語るべきでしょう。
事実にもとづいた冷静な議論こそが、この問題には必要だと感じます。