兵庫県の財政に黄色信号がともった。県が発表した2025年度(令和7年度)決算見込みで、借金返済の重さを示す「実質公債費比率」の3年平均が19.2%となり、国の許可なしでは県債を発行できない「起債許可団体」の基準である18%を上回った。兵庫県が起債許可団体となるのは14年ぶりだ。
税収は過去最高、それでも財政は悪化
一見すると不思議な決算である。好調な企業業績などを背景に県税収入は約1兆280億円となり、初めて1兆円を突破。5年連続で過去最高を更新した。実質収支も約63億円の黒字となる見込みで、県の資金繰りそのものが赤字に陥っているわけではない。
それでも財政指標が悪化しているのは、過去に積み上げた県債の返済負担が重いためだ。阪神・淡路大震災の復旧・復興事業や分収造林事業の債務処理などで県債管理基金を取り崩してきたほか、低金利時代に進めた防災・減災などのインフラ投資の借金も残る。県債残高は4兆8141億円に上り、金利上昇による利払い負担も今後重くなる。
井戸県政時代の「338億円問題」も浮上
さらに財政悪化をめぐって、過去の県債処理そのものにも問題が見つかった。
県の資料によると、2020年度、公共用地先行取得等事業債490億円の借り換えに際し、土地売却による338億円の償還財源がすでに存在していた。このため本来は未売却分の152億円だけを借り換えるべきだったが、県は売却済みの338億円を含む490億円全額を借り換え、返済を先送りした。県自身が、このうち338億円について「地方財政法に抵触する起債」と整理している。
この処理によって留保されていた338億円を県債管理基金の残高から除外するなど算定方法を見直したことも、実質公債費比率を押し上げた。2025年度の最終的な3年平均は19.2%となり、起債許可団体への移行が決まった。
問題の処理が行われた2020年度は井戸敏三前知事の県政下だった。
井戸前知事らへの損害賠償を求め住民監査請求
この「338億円問題」をめぐり、新たな動きも出ている。
県監査委員事務局は、住民監査請求を受けて監査を実施する。請求は7月24日付で、監査結果は9月27日までに公表される予定だ。
住民側は、不適切な借り換えの経緯や損害額を調査するとともに、本来支払う必要がなかった利息などが生じたとして、当時県政トップだった井戸前知事や担当幹部らに損害を賠償・補填させるよう、斎藤元彦知事に勧告することを求めている。現段階では住民側の請求であり、井戸氏らの賠償責任が認定されたわけではない。
県も別途、「持続可能な財政運営検討会」に財務検証部会を設け、不適切な起債の経緯や類似事例、再発防止策を検証する方針だ。
斎藤知事は「前県政のツケ」を処理できるか
県は、早期健全化団体への転落を回避し、最終的に起債許可団体から脱却するため「公債費負担適正化計画」を2段階で進める。第1段階では2027年度以降、公共工事などの投資規模を少なくとも10%抑制し、県債管理基金の運用益確保や歳入・歳出の見直しを進める。2028年度には第2段階の計画を策定する方針だ。
今回明らかになった財政問題のすべてを井戸県政の責任とするのは単純すぎる。震災復興という兵庫県固有の事情に加え、近年の急速な金利上昇も財政を圧迫している。
しかし、2020年度の338億円の不適切な県債処理が現在の財政指標にも影響していることは重い。単なる政治的な「前任者批判」ではなく、具体的な会計処理の問題として前県政の負の遺産が表面化した形だ。
斎藤知事にとって、これからが財政改革の正念場となる。過去の不適切な処理を検証しながら、投資を抑え、基金を積み直し、金利上昇にも耐えられる財政構造に変えられるか。

兵庫県・斎藤元彦知事と井戸敏三前知事 Wikipediaより
兵庫県が問われているのは、誰が悪かったのかを争うことだけではない。斎藤県政が、前県政から引き継いだツケを実際に処理し、次の世代に新たなツケを残さずに済むかどうかである。









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