竹中平蔵氏がXで「正社員をなくせばいい」と主張した投稿は、予想通り強い反発を呼んだ。400万以上のアクセスを集め、3000以上のリプライがついた。
「正社員をなくせばいい」私がなぜそう考えるのか。
世間ではいまだに「非正規が増えたのは竹中のせいだ」といった的外れな批判が繰り返されている。
だが、働き手のうち派遣はわずか2〜3%にすぎず、客観的なファクトすら見ようとしない感情論にすぎない。…— 竹中 平蔵 (@HeizoTakenaka) October 7, 2026
非正規増加の原因は派遣労働の自由化ではない
内容は今まで竹中氏が言ってきたことだが、不思議なのはいまだに「非正規雇用が増えたのは竹中のせいだ」という反応が多いことだ。彼もいうように労働者派遣法ができたのは1986年で、それが改正されて原則自由になったのは1999年である。
竹中氏が小泉内閣の経済財政担当相になったのは2001年だから、彼が改正したわけではなく、派遣労働で非正規が増えたわけでもない。派遣労働は労働者の2~3%で、雇用の37%を占める非正規雇用の中でも1割に満たない。
問題は「何があってもクビを切られない正社員」という特権階級にあり、人件費が固定費化した結果、企業が非正規を調整弁として使わざるをえず、雇用の二重構造が固定化した。その原因は1979年の東京高裁判決で決まった整理解雇の4要件である。
「不当解雇」でないと金銭解決できない
ここまでは経済学者の常識だが、それを「正社員をなくす」という表現で語るのは誤解のもとだ。動画でも「正規と非正規の区別をなくす」という抽象的な表現で述べているが、これでは具体的にどう法改正するのかわからない。
小泉政権時代から、解雇権濫用法理の立法化と、解雇が無効となった場合の金銭解決制度の整備は議論されていた。前者は労働契約法16条に盛り込まれたが、金銭解決の条件をめぐって労使が合意できず、後者は見送られた。
このため日本で、はまず訴訟で不当解雇と認められないと金銭解決に進めない。中小企業の労働者は泣き寝入りし、大企業は評判リスクを恐れて社内失業を抱える。だが外資系企業では「訴訟を起こさない」という誓約書を取って退職金を加算するのが一般的なので、労基法で補償額を明記すれば解決する。
解雇ルールを整備せよ
竹中氏はこの問題を「正社員をなくせ」という言葉で表現したが、正社員という制度があるわけではない。具体的にいえば、解雇ルールを整備しろということだ。そのルールとしては、以下のようなものが挙げられる。
- 解雇ルールの明確な法制化と、金銭解決制度の整備。補償額を法律に明記し、裁判依存を減らす。当事者が合意できるかどうかが重要である。
- 中途採用の拡大と、企業をまたいでも技能が通用する外部労働市場の形成。
- 仕事を失った人への再訓練支援を、個人任せにせず社会全体で支える仕組み。移行の費用と時間を支えることで、流動化への抵抗を弱める。
デンマークやオランダのフレクシキュリティ(解雇は比較的柔軟で、失業保障と再訓練を手厚くする)や、スペインが有期雇用を制限して無期雇用を増やした経験も参考になる。正社員を単に「なくす」だけでは不十分で、セーフティネットと流動性をセットで設計しなければ、政治的に成立しない。
それを阻んでいる最大の障害は正社員ギルドとしての労働組合だが、中小企業の団体である日本商工会議所も解雇ルールに反対している。タダで解雇できる今のしくみのほうがいいからだ。立憲民主党の退職金上積みはわずか2ヶ月である。
「肉屋を愛する豚」が日本的雇用慣行を守る
竹中氏が憎まれる一つの原因は、彼が小泉内閣でハードランディング路線をとり、企業倒産や失業が増えたからだろう。2003年には、大卒就職率は55%まで落ちた。

しかしこれは小泉内閣で不良債権を清算したためで、1990年代のように処理を先送りしていたら、日本経済の停滞はもっと深刻になっていただろう。だがそのときつぶれた会社や職を失った人々の怨嗟の的になったのは「小泉・竹中の構造改革」だった。
このように労使が結託して正社員の雇用を守るために賃上げを自粛する慣行が続いたことが、日本のデフレと長期低迷の最大の原因である。それを支えてきたのが「小泉・竹中改革が非正規を生んだ」という嘘をいまだに信じている情報弱者である。
退職金2ヶ月の立民党は「非正規を正社員に転換する規制強化」を求めているが、彼らが守ろうとしている日本的雇用慣行こそ貧困の原因なのだ。竹中氏を攻撃して規制強化を求める非正規労働者は「肉屋を愛する豚」である。







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