昨日、自民党が最悪の事態から脱するには、石破・高市両氏が和解を演出し、一緒に自民党への投票を訴えることだと書いたら、もう少し詳しく論じてほしいとあちこちから言われたので、意図するところを説明する。
現状はネット上などで、石破首相を成敗しろと保守系のインフルエンサーが騒いでいる。自民党が大敗したら、石破退陣になって高市早苗を自民党総裁にできると思っているらしいが、自民党へ投票するなと騒いだ人たちに支持される政治家が後釜になれるわけもない。
この人たちはどこに投票しろといっているかといえば、連立与党の公明党ではないらしい。合理的に考えれば、比例重複にならなかった人たちが勝ちたければ、公明のために比例で働いて、小選挙区での必勝を期するのはひとつの合理的な選択だが、そういう心理状態でないらしい。
それならばどこに行くかといえば、日本保守党は受け皿らしいが、保守党が議席を獲得して参議院選挙の比例区に多くの候補を立ててきたら、岩盤保守票のかなりは流れてしまう。
現職で衛藤晟一は引退するらしいが、佐藤正久、有村治子、和田政宗、山東昭子は再立候補しそうだし、杉田水脈や長尾たかしが立候補しそうだ。
そこへもってきて、彼らの支持層とかなりダブるはずの日本保守党の候補が加わると、常識的にはこのあたりからかなりの落選者を出しそうだ。
このうち保守党に鞍替えする候補もいるかもしれないが、いずれにせよ保守党が勢力を伸ばしたら、自民党内の保守派は弱体化すること間違いない。
先の総裁選挙では、保守党の支持者や立候補予定者のそれなりが高市支持で運動したりしていたわけで、いわば二重国籍者に攪乱されていたみたいなものだが、国政選挙では一人二票はもてないし、両方の党から立候補するわけにもいかない。
とすれば、日本保守党の成長は、自民党内の保守派の勢力を間違いなく弱体化させるだろう。
そのあたりは、参政党が保守系とはいえ、自民党の一部を切り取るというのとは少し違う。場合によっては、れいわなどと競合するのと意味が違うと思う。
高市氏は支援者に自民党への投票を呼びかけているが、支持者たちは聞く耳をもたないようだ。日本保守党の人たちは、そのうちに自民党にVIP待遇で迎えられるとでも思っているのかもしれないが、自民党の半数以上の議員に落選運動しかけておきながら、戻れるとか共闘できるとかあるはずない。
保守同士の落選運動というのは、稲田朋美元防衛相に対して、LGBT問題を稲田氏が与野党とりまとめの中心になったのを機にはじまったようなものだが、安倍派の幹部代議士に対していわば内ゲバ的な感覚で行われたものだった。
日本の政党史上でも世界を見渡しても珍しいタイプの運動だった。稲田氏に対するようなケースでいえば、かえってリベラルなイメージを獲得できて、中道寄りに票を広げられたのだが。同じことを自民党内の保守派の議員が党内リベラル派からしかけられたら、右の票が増える余地はなく、減るだけでになるのだから困ると思う。
また、自民党から維新に流れる票は多くても不思議はないが、維新も相次ぐ不祥事で勢いがない。さらに、一時自民党との連立入りを希望しているのでないかと噂されて、ますます支持を失った。また、維新が先頭に立って推した斎藤兵庫県知事のパワハラ辞任事件問題でも大きく傷ついている。
そこで隠れた受け皿になっているのが、国民民主党だ。玉木雄一郎代表が円熟して、吉村博文大阪府知事に代わるスターとなった。
ただ、いまや吉村は野党党首として堂々たる総理候補だ。仮に予測のような議席数、つまり、自公と自民系無所属からの加入でギリギリ過半数というようなことになれば、玉木氏を総理候補にする前提で小沢一郎などの工作が進むだろう。
小沢が野田佳彦を総理候補にするとも考えられず、細川護熙を首相にしたパターンでいえば、玉木氏が首相として最適任だ。
自民党支持者が国民民主党に投票するのは、まさに敵に塩を送るようなものだ。そして今回は、石破より野田の方がましだと何を勘違いしたのか立憲にまで票が流れているのだからこまったものだ。
ともかく、いま石破と高市がやるべきことは、文字通り手を取り合って並んで国民に呼びかけることしかあるまい。なんなら選挙最終日でもよい。
石破が出せる条件は、ひとつは総選挙後の内閣改造だ。いまのところ三人ほど落選するといわれているのだから、その後任は冷遇された高市支持者から出せばいい。私は高市も副総理で入閣すべきだと思う。また、あまりにも与野党の議席数が伯仲していた場合は、来年夏の同日選挙の可能性も含めてなるべく早期の解散を約束することだ。
今回の落選組の不満を解消するのは、早めの選挙以外にないからだ。伯仲国会で早めの解散をするのは、それなりの大義名分がある。
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