日本維新の会のどこが間違っているか:足立康史氏も公明候補を応援

石破憎しのあまり、小沢一郎氏のために働いているのと同然の一部保守過激派はもちろん、政府や自民党も立憲民主党や野田佳彦の批判が十分にできず、きちんとした批判をしているのは公明党だけだということについては、昨日、『民主党政権復活を警戒しない保守派の不思議』という記事を書いた。

民主党政権復活を警戒しない保守派の不思議
最近の保守界隈は、石破政権は民主党政権より悪いというつもりか、立憲民主党を批判することを忘れてるようだ。 選挙が近づいてから、野田佳彦や立憲民主党批判の企画を持ち込んでも、読者が喜ぶのは、石破・岸田批判なのでと断られている。もはや自民...

これは、維新に対しても言える。本来なら維新が不祥事の多さや万博の不評などで評判を落としている今は、大阪での勢力回復を図るチャンスなのだが、見通しが立たない。そのなかで、少なくとも公明の4議席はまだしも希望があるからだ。

この4選選挙区には、石破首相も公明党の山口那津男前代表ともども応援に入っているし、さらに、維新から刺客を立てられたことに憤慨して政界引退を宣言した足立康史前議員も佐藤茂樹(3区)、国重徹(5区)、伊佐進一(6区)、山本香苗(16区)候補にエールを送って話題となった。

山口那津男前代表 公明党HPより

このときの、山口代表の演説では、「維新の大罪」といった趣で、批判がされている。要約すると、以下の通りだ。

  1. 維新はどこと組んで政権に参加するつもりなのかという、政権構想をまったく語っていない。
  2. 吉村知事は、公明党をぶっ潰せとか乱暴なことをいっているが、議会と協調して政治をやるべき知事のいうことでない。維新が推していた兵庫県の斎藤知事と同じ体質だ。しかも、不祥事の多さもひどい。
  3. 政策活動費についても、過去の使途については、公開しようと言わない。コレこそ裏金だ。「飲みニケーション」は大事だとか言っている党でなく、こういうお金を一切使ったことのない公明党がリードして全面廃止に導くしかない。維新は新しい政治をとなえるが、現在の幹部たちは、いちばん古い政治の体現者だ。
  4. 「八つの政策」のなかに防災・減災が位置づけられていない。大阪市民が南海トラフ地震を恐れている中で、安全を軽視過ぎている。

これをより詳しく、維新の公約の非現実性というかたちで論じたのが、伊佐進一(大阪6区)である。

いさ進一氏HPより

少し、要約して紹介したい。

【国政維新の衆院選公約、それ本当に実現可能ですか?】

選挙になると、どの政治家や政党も、あれやる、これやる、改革を進める、と公約を発表されます。しかし、過去の政権交代でもあったように、本当にそれを実現できるのかが最も重要です。とくに、維新の議員とはガチンコ討論をやりたいところですが、せめて私の以下の疑問に対してご意見を頂ければ幸いです。

維新については、肯定的に評価しているところもあります。改革の方向性について、何ら疑義をさしはさむところはありません。ますます重くなる若い世代の負担を減らし、全世代で負担を分かち合っていくことについては、与野党の立場を超えて、一致する改革の方向性だと思います。

いちばん負担が重いのは、ぎりぎり低所得者層には入らないものの、中所得者層でも所得が下の方、さらに子育て世代です。この方々の負担を減らすことについて、党派をこえて反対する人はいないと思います。

ただ維新が示される政策が私にとっては、とうてい実現可能とは思えません。「どうやってやんの?」という疑問がいっぱいなので、その疑問を払拭頂きたいと思います。

1.年金制度改革:「現役世代に偏った過度な負担を徹底的に見直し」、「積立方式あるいは税方式へと抜本的に改革」

いまの年金制度は「賦課方式」で、若者が払った年金がそのまま高齢者に支払われます。維新は、若者の負担が重いから、「積立方式」、つまり自分で払った分が積み立てられ、それが将来返ってくる制度に変更しようといいます。

しかし私は、全く非現実的だと思います。移行期に莫大なお金がかかるからです。これまで現役世代が払ってきた年金は、すでに高齢者に使われてしまっています。これから高齢者になる方々が約束された年金をもらうためには、今の現役世代が自分のためと、高齢者になる人の分を二重で払うなど、誰かが二重で年金を払うしかありません。必要金額は、ざっと見積もっても、年金財政の積み上げを全部取り崩しても、650兆円不足です。国家予算をすべて投入しても100兆円です。

また、個人の積み立てた分しかもらえないのであれば、長生きしてしまった「リスク」があります。誰が年金を払ってくれるんでしょうか。

また、20年後、30年後に、急激に物価があがるとか、世界的な感染症が発生するとかあったとしても、自分が払った分しかもらえないわけで、リスクを個人に負わせることになりますが、それで良いのでしょうか。

2.医療制度改革:高齢者の医療費窓口負担を「現行の9割引き」から「7割引き」、「現役世代と同じ負担割合とすることで、現役世代の社会保険料負担の軽減を図ります。」

病院の窓口負担は、高齢者は現在、一定所得以下は1割負担となっているが、これを3割負担にしようという公約です。

高齢者は、若者よりも医療にかかる機会が多いです。齢を重ねると当然です。ただでさえ大きな出費なのに、これが制度変更によって3倍になる。そうしたら、病院に行くのを我慢し、病状が悪化して、かえって医療費がかかってしまう。

現役世代はいままで高い保険料払ってきたにもかかわらず、いざ自分が高齢者となったら、急に医療費窓口負担が3倍になっているという、40代や50代の移行期の人たちにとっては、最も不利な制度となります。

また、「医療維新」では後期高齢者、75歳以上の医療費を完全に「税財源化」すると言っています。後期高齢者医療は、現在でも全部で18兆円かかっています。「税財源化」といっても、どの税金をあげるかという具体論は、国政維新の公約に言及がありません。たとえば、これをもし消費税で賄うとすれば、8%程度の増税が必要です。

3.自立する個人:最低所得保証制度(ベーシックインカム)の導入

国民一人当たり、毎月、一定の金額を配りましょうという公約です。具体的な金額は、以前、提案していた数字でいえば、月額「6~10万円」でした。

維新は、小さな政府や自己責任を志向されている。ベーシックインカム(BI)は、それを象徴するような政策です。現状の社会保障制度では、人生の様々なリスクに対して、雇用保険や医療保険、介護保険、また年金や、いざというときの生活保護というセーフティネットなど、さまざまなリスク分散の制度があります。しかし、今回の国政維新の提案は、「毎月お金をわたすので、リスクについては基本、自分で対応するように」、という制度です。

どのリスクをBIに置き換えようとしているのかの言及がありません。つまり、どの制度を無くすのかは、はっきりしていません。しかし少なくとも、「年金の積み立て方式、またはベーシックインカム」との記述があるので、年金の廃止は想定に入っているように思えます。そうすると、そもそも6~10万円の年金で、生活が成り立つのでしょうか。

財源も問題です。コロナ禍において、私も与党公明党の財政金融部会長として、どこよりも具体的に「国民一律10万円」を提言いたしました。この一回こっきりの10万円給付でも、国家財政として12兆円が必要でした。国政維新の提案は、これを毎月やるということです。単純計算として、12か月分では年間140兆円を超える財源が必要となります。国家予算が100兆円規模なのに、どこからどうやってお金を集めるというのでしょうか。

されに、BIというのは、所得が低かろうが、年金生活者だろうが、逆にお金持ちであろうが、全員6~10万円もらえます。その意味するところは、格差の拡大です。人生、さまざまなリスクがあるなかで、「月額で一定のお金をわたしているから、何があっても自分で対応してください」という社会が、本当にわれわれの望む社会なのかどうかが問われます。

4.教育無償化:0歳から大学院まで、所得制限のない教育無償化を全国へ。

教育の無償化について、方向性としては十分に理解できます。しかし、教育無償化をさらに進めるならば、まず先に「教育の質の向上」が必要だと考えています。若い人材が、社会に出るのはまだいやだからと、モラトリアムで大学に行く学生まで、皆様の税金で無償化して良いものかどうかという問題意識を持っています。

もっと具体的に申し上げます。大学入試は少子化で定員割れとなっているために、入学できてしまいます。そういう学生まで、税金で無償化すべきでしょうか。それは、その生徒にとっても不幸と言わざるを得ません。むしろ、義務教育を徹底的に強化し、「一人も取り残さない教育」と同時に、小中学校であったとしても「留年できる権利」を一般化すべきと思います。

誰もが大学に行く制度をあらため、手に職をつけたい方々が技術を学ぶ教育課程も、充実すべきです。大学に行く人は、本当に大学で学びたい人、研究したい人に限るべきであって、その改革を成し得るならば、大学全員無償化もあるかもしれません。

大学における教育改革は、急務です。現在、大学世界ランキングTop100にランクインする日本の大学は、東京大学(29位)と京都大学(55位)の2校だけです。一方、中国はTop100大学に12校がランクインしています。日本の大学の改革は、まったなしです。

公約では、教育無償化に加えて、保育もすべて所得制限なく無償化と記述されています。一方で、その財源は、「財源を着実に活用できるあり方を検討」としか書かれておりません。われわれ政権与党は、つねに財源と向き合いながら、政策を実現してきました。こうした国政維新の公約の記述は、実現可能性を放棄した無責任な態度だというのは、言い過ぎでしょうか。

5.減税・成長戦略・規制改革:可処分所得を倍増させる!

「消費税・所得税・法人税の減税を断行」と書かれていました。皆さんもお気づきのように、医療改革の記述においては、「高齢者医療は税財源化」とありました。つまり、医療費を賄うために増税と言いながら、成長戦略では減税と言っているところを、どう理解すればよいのでしょうか。

具体的な成長戦略の記述も何もありません。「既得権に囚われない大胆な規制改革で産業を成長させ、給料を飛躍的に伸ばします」。こんなことだけなら、誰でも言えるのではないでしょうか。具体的な事例として挙がっているのは、「ライドシェア」だけであり、あまりに薄口に過ぎると思います。

6.政治改革:政治腐敗を浄化する

政治改革において、国政維新が取り上げているのは、企業団体献金と政策活動費の廃止です。今国会の政治資金規正法改正の議論では、維新の皆様の提案する「領収書の10年後公開」が条文に入ってしまいました。公訴の時効が5年にもかかわらず、10年後公開とは全くナンセンスだったので、我々はすぐに新しい条文を追加しました。つまり、「第三者機関による毎年の領収書のチェック」であり、これにより維新の条文を空文化することができました。

こうした議論も忘れてしまったかのように、国政維新の公約には「政策活動費の廃止」とあります。維新幹部の会見においても、10年後公開は間違いだったとおっしゃっているようです。いまされ言われても、正直、「なんであの規正法改正の時に言ってくれなかったのか!」と腹立たしい思いがいたします。公明党は、そもそも政策活動費をやってこなかったし、廃止をずっと訴えてきました。「10年後公開」の評判がさんざんだったから、すぐに態度を変えるというその姿勢が、政治の信頼を落としていると思います。

企業団体献金についても、馬場代表が国政維新の公約通り、代表質問で「企業や業界団体からは一切お金を受け取りません」といっていたが、馬場代表が業界団体から寄付をもらっていることが、すぐに判明いたしました。これを、国民の皆様がどう見るのでしょうか。「いやいや、これからは受け取りません」というなら、その質問の中で「岸田総理がこんなに医師会から献金をもらっている」と批判されておられましたが、その資格がどこにあるというのでその資格がどこにあるというのでしょうか。

日本維新の会が衆院選向け公約で高齢者の医療費窓口負担を「3割」にするという政策に対し、高齢者の不満と不信の声が渦巻いている。

この維新の政策に対し、公明党の石井啓一代表は、12日に行われた日本記者クラブ主催の「党首討論会」で「窓口での支払いを嫌って、医療にアクセスしない高齢者が圧倒的に増える。高齢者に対して、あまりにも冷たい政策ではないか」と糾弾した。

維新の公約によると「現役世代の社会保険料負担の軽減」が目的だというが、高齢者の医療費負担を増やせば、病院に行かず、重症化するリスクも増える。そうなれば結果的に現役世代の負担も増加することになるのは想像に難くない。

党首討論会では、高齢者の医療費窓口負担を3割に増やした場合、どれくらいの負担増を見込んでいるか問われた維新の馬場伸幸代表は、具体的な数字を示すことができなかった。

具体的な課題を把握せず、「改革」の名の下に無茶で乱暴な政策を打ち出すのはあまりに無責任ではないか。

補足すれば、維新が市長を出している大阪市で、ここ数年、全国平均をはるかに上回る「日本一高い介護保険料」となっている。

また、医療費、3倍負担の案の中心になったのは、参議院議員から転身して五区から立候補している梅村聡氏だと国重氏は批判している。

梅村氏SNSより

維新の不祥事については、不祥事などで、維新からは「昨年4月の統一地方選から約1年半で30人以上が離党」(4日付「産経」大阪朝刊)した。

今年だけでも、兵庫県知事がパワハラ疑惑で失職させられたほか、相模原市議が酒気帯び運転で摘発(4月)、元衆院議員が東京都新宿区で女子中学生に性的暴行を加えたとして、不同意性交容疑で逮捕(9月)と続発。ほかにも、衆院愛知5区支部長(元県議)による県知事の解職請求署名偽造で有罪判決(4月)、千葉市議による請願文書のねつ造(9月)など、公職に就く者としての資質が問われる問題が立て続けに起きている。

清和会の不記載問題など小さな問題に見えてしまう。

足立康史氏の言うことなすこと、なにもかも賛成とは限らないが、彼の維新批判はかなり的を得ている。

たとえば、Xで維新の二大公約、政治改革と社会保障改革についてこう批判している(要約)

企業団体献金の禁止

維新結党から十年以上、1)日本医師連盟など政治団体を通じた献金2)政治資金パーティー券の企業団体売り等を続けてきました。

今回の総選挙を前に批判が高まったので1)も2)も止めると言っていますが、政治資金パーティー券の「個人売り」は続けるとしているため、当該パーティー券を経営者が会社の経費で処理する(企業団体献金の)【抜け穴】を残したままとなっています。

現役世代の社会保険料の低減については、今回の衆院選公約に「高齢者の医療費窓口3割負担によって現役世代の社会保険料負担の軽減を図る」と明記していました。

高齢者医療が崩壊するとの公明党からの指摘を受けて厳しい批判が広がったため、馬場代表は、「窓口3割負担」でも・高齢者の負担は増えない・社会保険料軽減の財源にはしないと明言しましたが、そうであれば、「現役世代の社会保険料の低減」はどうやって実現するのでしょうか。【財源が示されない】ままとなっています。

以上のように、総選挙における維新の二大公約のに一つ、政治改革(=企業団体献金の禁止)には【抜け穴】があり、もう一つの社会保障改革(=現役世代の社会保険料の低減)についても【財源が示されない】という深刻な問題が残ったままなのです。

また、公明党候補と対立している維新候補について、下記の動画で論評している。

私は、それでも、自公政権にかわる別の選択肢があるとすれば、立憲はもちろん国民民主でもなく、維新の提示している方向だろうと思うし、期待もしている。いい新人候補も揃っていてそのうち何人かを応援もしている。しかし、政策についての甘さとか、候補者の不祥事についてふだんはほったらかしだが問題を起こしたら今度は精査もせずことの重大性を他の事例と比較しないで尻尾切りする未熟さは、やはり改善してほしいと思う。

【衆院選関連記事】

日本維新の会HPより