【緊急寄稿】自公連立解消は自民党に「致命的な打撃」になる理由

公明党は9日の中央幹事会で、斉藤鉄夫代表と西田実仁幹事長に連立の今後について対応を一任した。

話がややこしいのは、① 閣外協力はする、② 是々非々で臨む、③ たとえば玉木首班の新しい政権に参加ないし協力するなど、選択肢がいろいろあるからである。

ただし、自民党としては、思い切って公明の政治資金改革案を呑み、連立維持を図ることが賢明である。国民民主との連立を成立させればよいという意見もあるが、これはかなり難しい。

① まず、国民民主と組んでも公明が抜けたら過半数にならない。

② 選挙協力をするとすれば、公明党とは11の小選挙区を譲ることで収まっているが、国民民主だと30くらい譲らなければ収まらない。しかも、公明と違って党本部が指令しても国民民主党の支持者は自民に投票してくれない。また、再来年の統一地方選挙の都道府県議会選挙でも、公明党のような選挙協力は不可能である。

③ 閣僚ポストも、本来は得票率から言えば4~5を要求できるのに、公明党は一つだけで我慢している。国民民主はそれで満足しないだろう。

④ 国民民主は次期総選挙で大幅に躍進し、立憲民主党を上回る可能性があるが、連立を組めばその可能性は低くなるため、政権参加の動機がない。

さらに、仮に公明が閣外協力だとしても、自公選挙協力をするにしても迫力がなく、公明票がどの程度確保できるかは疑問である。

こうした状況では、自民党にとって国民民主との連立は難しく、成立したとしてもあまり意味がないのではないか。また、国民民主にとっても、公明党が抜けた自民党との連立は、玉木首班で閣僚ポストをかなりもらえるのでなければ意味がない。あるとすれば、玉木政権にして公明党と閣外協力する形であろう。

高市早苗総裁(自民党HP)と斉藤鉄夫代表(公明党HP)玉木雄一郎代表(国民民主党HP)

そもそも、自公維であれば、大阪での選挙協力で維新がある程度の選挙区を明け渡し、大阪都制度について行き過ぎた要求をしなければ成立したはずである。なぜなら、維新には次期選挙で大躍進できる可能性も小さく、まして首班を取れる状況でもないからである。また、経済政策でも副都構想のように財政支出の少ないものが多い。

となると、ありうるのは、自民単独政権で公明と国民が手を携えつつ閣外協力する形だが、これではもはや政策の主導権は国公連携に移ってしまう。

私は、自民党はこの際、公明党の要求を丸呑みして連立離脱の口実をなくしてしまうのが賢明だと思う。

公明は連立維持の条件として、企業・団体献金の受け手を党本部と都道府県連に限定する規制強化案の実現と、自民派閥裏金事件の全容解明などを求めている。これは、少し工夫すれば自民党にとって呑めないものではないはずである。裏金事件で安倍会長から支持された裏金解消がなぜできなかったのか、腹をくくって誰がどうしたかを明らかにしなかったことが、この問題をややこしくした。この際、公明党に言われて渋々でも第三者機関の報告をやらせたほうが、清和会のためでもある。

企業・団体献金の受け手を限定するのは過渡期的な措置であり、保守系で政治家を目指す人たちの芽を摘まない工夫をすればクリアできるはずである。

また、萩生田氏はこの際、いったん引いたほうが長い目で見れば賢明かもしれない。自公連立維持のためにいったん身を引けば、禊としてより説得力が増し、将来的には有利になる。麻生副総裁については、過去の「公明党はガン」発言について説明したほうがよい。

高市総裁は、麻生氏に皇室典範改正を第1の仕事にしてほしいと要望している。現在、公明党は有識者会議案を支持しているが、連立が解消され、麻生氏が取りまとめを担う状況で同じように協力してくれるかという問題も出る。

ただし、もし上記のような展開になれば、公明は大勝利だが、当然、反発も強くなる。その場合は、傲らぬようによほど自重する必要がある。また、いったん連立を解消したら戻るのは容易でなく、これまでのように要求する政策が実現することもなくなる。

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