皇位継承問題でやたらと麻生太郎自民党副総裁の役割を大きく見せ、また、日本会議を誹謗中傷しながら男系論はその特殊な保守思想に寄り添うものだと牽強付会する陰謀論が席巻している。
「三笠宮寬仁親王妃家に養子が取られたら、麻生さんが天皇の外戚になり、平安時代の藤原氏のようになる。政治的権力者と天皇の権威との距離がぐっと近くなって、皇族の政治的中立性が揺らぐ可能性もある」(御厨貴)
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— 月刊文藝春秋(文藝春秋PLUS) (@gekkan_bunshun) June 11, 2026
麻生太郎氏を外戚とみなす議論への疑問
たとえば、政治学者の御厨貴は三笠宮家の信子さまか彬子さまが養子をとったら、兄・伯父である麻生太郎が外戚として君臨するとかいうデマを流しているらしい。
外戚というのは天皇か、せいぜい皇太子の祖父のことだ。しかも麻生氏は90歳近くである。今回の措置で皇族の養子になる旧宮家の男子本人は、皇位継承はしないとされている。なぜなら、彼らは悠仁さまの同世代だからだ。
養子候補が皇位を継ぐという誤解
しかも、女系派は、民間企業で働いていたサラリーマンがいきなり天皇になれるはずないとか歪曲していうが、いま養子候補はまだ未成年ないし20代前半が主体である。民間女性が妃殿下になるより若い。
さらに、彼らは悠仁さまと同世代だから継承の可能性はなく、天皇になる可能性があるのは、その子供世代以下で生まれながらの皇族になるし、その時期は、悠仁さまが80代後半になる2090年代のことだ。
まさかその時まで、麻生太郎が生きているかもしれないと主張するのではないだろうか。それを、外戚として力を振るうとかいうのは、あきれ果てたデマゴーグの誹謗中傷だ。
外戚の政治介入をいうなら小和田恆氏ではないか
外戚の政治介入をいうなら、本当に問題だったのは、皇后雅子さまの父、小和田恆氏である。小和田氏は、日本の安保理常任理事会入りとか、日韓関係を仏独関係のようなものに引き上げるといった構想に特別にこだわりをもった外交官で、福田赳夫秘書官として清和会に近い極めて政治的な人だ。
それ故に、雅子さまのご成婚に反対する人もいた。政治的な人は避けるという方針のはずで、生臭い仕事をして福田赳夫秘書官だったことから、清和会と特別に深い関係があった小和田氏の娘は普通には避けたいタイプだったからだ。
小和田氏の国連大使就任をめぐる経緯
ご成婚は小和田氏が事務次官のときである。本来なら、その前に辞職してほしかったし、当時官房長官だった武村正義氏から直接聞いた話では、引退とか政治性の薄いポストを勧めたのだそうだ。しかし、本人が国連大使を望んで各方面に運動したので、しぶしぶ受け入れたのだそうだ。
小和田夫妻とは海外での少人数のセミナー参加のために2度ばかり数日間旅行したことがあるので夫妻の気質はよく知っているが、悪気とか変な私心はまったくない人だ。ただ、皇太子妃の父という立場を日本国家のために活用したいという発想か、皇太子妃の父はあまり生臭い動きをしないほうがいいというのか、どちらが正しいかといえば、後者だと言う人が多いだろう。
御厨氏は小和田氏を批判したのか
そして、安保理常任理事国入りのために国連大使となり、華やかなパーティーを開くためにハイドパークに面した豪華大使公邸を購入したといった議論の余地がある行動をしている。この公邸は国連本部から遠くてパーティーを開いても人が集まらず、後任者によって売却され、ひどい国費の無駄遣いだった。
その後は、国際司法裁判所所長というこれまた政治的なポストに就いた。
外戚としての影響力を行使し、望むポストに就き、皇室の政治介入に近い事態を招いたとしたら、これこそ問題だった。御厨氏はそれに対して苛烈な批判をしたのだろうか。そんなことは聞いたことがないが。
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コメント
この記事は鋭い。
まず、皇位継承の問題を話すときに、麻生太郎さんや「日本会議」という団体を「かげで悪いことをしている黒幕」のように決めつけるやり方には、かなり無理があると思う。
八幡さんがこの点をしっかり批判しているのは、とても説得力がある。
今回の制度の見直しで皇族の養子になる旧宮家の男の子は、悠仁さまと同じ世代だ。しかも、この本人は天皇にはならない、とはっきり決められている。天皇になる可能性があるのは、そのまた子どもの世代から先の話で、現実にそれが問題になるのは2090年代という、半世紀以上後の話だ。
そのころ、麻生さんはもう生きていない。それなのに「麻生さんが外戚として大きな力をふるう」と言うのは、時間の流れを無視した話になってしまう。八幡さんが「あきれた誹謗中傷だ」と言うのも当然だと思う。
陰謀論者のこうした主張には、証拠がまったくないのだ。
麻生さんが皇室をあやつろうとしている証拠も何ひとつ出てきたことがない。
日本会議がかげで男系の話を動かしているという証拠も何ひとつ出てきたことがない。
あるのは、「保守の勢力がうしろにいるに決まっている」という、ただの妄想だけだ。その妄想を、まるで本当のことのように言い切っているだけだ。
そもそも、「男系で皇位を受けついでいくべきだ」という考えは、新しく生まれた特殊な思想ではない。
日本の天皇は、126代にわたって、ずっとお父さん側の血すじで受けつがれてきた。
これは千年以上もつづいてきた、まぎれもない歴史の事実だ。
それを、「今の特定の団体が言い出した変な思想」のように見せて、悪口の材料に使うのは、歴史に対してとても不誠実なやり方だと思う。
こういう人たちは、男系継承が持っている歴史の重みをきちんと話し合おうとせず、
皇室の問題を、ただ今の政治の対立の中に無理やり当てはめようとしているだけなのだ。
あるのは「あの団体がきらいだ」という悪意だけだ。だれかを「かげの黒幕」に仕立て上げて、証拠もないのに決めつけて非難する。こんなやり方は悪だ。
こうした証拠ゼロの主張は――雪男を見た、とか、UFOを見た、とかいうオカルト話と、本質的には何も変わらないのである。