「歴史的にはインドが世界一、中国が第2位の経済大国だった」という記事を以前に書いたことがある。そして、GDPではまだ米国が1位だが、購買力(PPP)では2014年頃に中国が1位に復帰したとみられているといったことを、『国家の興亡史からわかる現代地政学――西欧の衰退』(さくら舎)で書いた。
このところSNSの世界では、中国嫌いの人が多いので、トランプ政権と高市政権で協力して、インドも巻き込むことに成功したので、米国の優位は永遠に不変で中国は封じ込められたとか、米国と日本の株式の時価総額は圧倒的で中国に金はないから恐るるに足らずとかいう脳天気な経済論の人たちが興奮気味である。
しかし、そんな単純なものではない。先日も、キルギスで行われた上海協力機構の首脳会議では、習近平、プーチン、モディの3人組が顔を揃えたが、G7の首脳たちよりよほど安定感があった。

モディ首相とプーチン大統領(上海協力機構の首脳会議)2026年8月 クレムリンHPより
この米国主導の世界が続くかどうか、中国やインドの将来はという問題は、簡単に結論など出せるはずがないのであって、自信ありげにひとつの結論を押しつけたがる人にはうんざりなのだが、米国と中国というG2(+インド)の将来について、ああでもないこうでもないという議論をFacebookでしてみたので、そのエッセンスを書いておきたい。こういう問題はいろいろ頭の体操をしておくことが有効だ。

モディ首相とトランプ大統領 2026年6月 モディ首相Xより
GDPとPPPで見る世界経済の半世紀
まずここ半世紀くらいのGDPとPPPの推移を見ると面白い。経済規模はPPPが大事だが、国際的な舞台でさしあたって力があるかどうかは、GDPが大事だ。しかし、PPPが上がってくれば普通は少し遅れてGDPも上がってくるし、市場としては所得で測るより総量が問題であることも多い。

GDPとPPPの推移 1993年はロシアの最初の数字
そこでこんな数表を作ってみた。日本、米国、中国、インド、ロシア、ドイツの1993年(ロシアの数字が初登場なので)、2000年、2010年、2020年、2025年における、GDPとPPPの世界における順位表だが、日本の凋落と中国とインドの着実な躍進がわかる。
日本が中国にPPPで負けたのは2000年前後、GDPで2010年、中国が米国をPPPで上回ったのは2018年、インドは2050年ごろにはといわれる。GDPではゴールドマン・サックスが、中国が2035年、インドが2075年頃に米国を抜くと予測した。現在では10年ずつくらい遅れそうだが、いずれにせよ、インドがPPPでは2060年頃に、GDPでは今世紀末までには世界一になるだろうといわれている。
そんな予想は、昔から常識だったように言う人もいるが、1990年代のはじめに私が経済産業省で中国やインド担当課長をしていたときには、日本がGDPで中国に抜かれるのは2020~30年代だといわれていたし、インドには将来性がないとかいうのが霞ヶ関でも経済界でも常識だった。それを排して、少数の理解者と共に先物買いの政策をあまり目立たないように忍び込ませるのが、やっとだった。
ソ連や日本とは違う中国の「底力」
私はずっと前から言っているのだが、中国とかインドは米国にとって、ソ連や日本と比べものにならないほど怖いライバルだ。米国がPPPで中国を上回って世界一になったのは1900年くらいだが、戦後に限定しても、その覇権に対して常にチャレンジャーはいる。ソ連、日本、中国、潜在的にはインド、そして諸国連合だから少し意味が違うEUだ。
米国はソ連とか日本の挑戦を退けてきたが、中国はそれよりは手強い。なぜなら、ソ連も日本も米国に追いつくだけの底力がなかった。しかし、中国はすでにPPPベースでは世界一の経済大国だし、いずれGDPでも抜くだろう。なにしろ人口が米国の3.5倍で、その市場をしっかり確保しているから、籠城戦でもやっていける。
日本が貿易戦争で米国とチキンゲームできなかったのは、安全保障もあるが、世界に対していずれ世界一の経済大国は日本になるとはいえなかったからだ。
いま米国も中国も市場囲い込みと相手への依存を減らそうとしているが、米国が優勢とは限らない。世界の資本市場で米国に資金が流れて中国は対抗できないとか言う人がいるが、中国は企業を海外に握られたくないし、別に金を必要ともしていないから、集めないどころか排除したがっている。米国のようにマネーゲームで金を集めていいこともあるが、借金しまくることには危険もある。
中国の優位性は、市場の人口と圧倒的な理科系人材の質と量があることだ。メガソーラーなどによる発電能力の卓越もある。それに、中国市場と中国人材なくして米国がやっていけるかはかなり疑問だ。
米国が中国を排除すればインド依存が進む
中国を排除してもインドがあるではないかという人もいる。2026年2月20日のインドによる「Pax Silica(パックス・シリカ)」への正式参加は、インドが瞬間風速として米国に傾斜していることを示しているのは事実だ。

インド・モディ首相と中国・習近平国家主席 Wikipediaより
しかし、これは米国のインド依存が進むということでもある。中国人が使えなくなってインド人を使うとか、インドの投資にも期待するのはメリットもあるが、それはインドなしで米国はやっていけないことになっていく。
インドが米国をPPPやGDPで抜くのも時間の問題である。かつてインドを忌み嫌っていた米国のインドへのゴマすりには驚くが、この米国とインドの関係はいずれ逆転する。ハリス副大統領の母とかバンス副大統領夫人がヒンズー教徒だし、英国のスナック自身もそうだ。もし米印の蜜月が続いたら、米国はインド人の国になるかもしれない。
インドもいまは米国主導で我慢しているが、そう遠くない時期に中国と同じように自分が主人公になりたい、米国企業に雇われるのではなくインド企業を育てたいと舵を切るのは、すでに予想されたことだ。
日本と欧州はG3時代にどう向き合うのか
それ以外の国はどうか。日本は安全な生活の場としては悪くない。しかし、それだけだ。理科系人材、英語で仕事ができる人材がいないし、育てる気もない。私はいつも繰り返しているが、医者という安全有利な職業の存在がすべてをおかしくしている。

モディ首相と会談する高石首相 2026年7月 首相官邸HPより
ヨーロッパは正義に酔いしれた。LGBTとか難民でもそうだが、ロシアとの関係ではポーランドあたりを緩衝帯にしておくべきなのに、ウクライナやバルト3国まで西欧の勢力圏にしたいというのは無理がある。その無理を実現するために、あらゆる経済発展の機会を失っていると見える。
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