習近平エジプト訪問と台北故宮博物院宝物の中国返還

習近平のエジプト訪問と「中国5000年」

習近平がエジプトを公式訪問し、シシ大統領の案内でギザにオープンした大エジプト博物館を見学している動画が話題になっている。

かつて習近平がエジプトを訪問してから、「中国4000年」が「中国5000年」に言い方が変わったなどと言われたことがある。中国としては、エジプトより歴史が短いことはかなり悔しいことらしい。

しかし、悔しがって世界一の「大中国美術館」を10年後に建設するなどと言って、それに間に合うように台湾問題で強硬策をとったりしないのか、ちょっと心配だ。

習近平国家主席を歓待するシシ大統領夫妻 中国共産党新聞より

台湾問題の平和解決には譲り合いが必要

ただし、私は台湾問題の平和解決を図るなら、台北の故宮博物館の所蔵品のかなりの部分と旧中国銀行の資産(金塊120~130トンで時価1兆2000億円以上。外貨は約3.84億ドル。2026年の購買力では約53.9億ドル)は中国に引き渡すのが道理だという意見である。

故宮博物院 台湾観光サイトより

私は台湾が安定した自治を得るには、完全な現状維持というわけにはいかないのが道理だと思う。パーフェクトゲームに固執したら、平和的解決を目指すことにならない。だが、そこを分かっていない人が日本人には多い。現状維持というのは、中国のほぼ全面的な敗北であって、受け入れる理由がない。平和的な話し合いというのは譲り合うことである。

もちろん、関係が安定すれば、国際機関にはオブザーバーとしての参加は認めるということは可能かと思う。

その一連の交渉の中で、故宮博物院と旧中国銀行の資産は頭の体操にも好適な話題だ。

故宮博物院の宝物は誰のものか

故宮博物院にある宝物は、主として清朝宮廷のコレクションで、とくに乾隆帝が充実させたものを、蒋介石が軍艦で上海から台湾に持ち込んだものだ(私は故宮博物院の所蔵品を上海から運んだ海軍提督から、そのときの状況を詳しく聞いたことがある)。といっても根こそぎでなく、重量物や書画の巻物など脆弱なものは、割に中国に残った。

台湾の政府は、今も憲法の建前からは、中国で唯一の合法政府という看板は下ろしていないから、その意味では故宮博物院の宝物を保持することができるのだが、この唯一の中国政府だという主張は事実上しなくなっていて、何らかの形で北京の中国政府と妥協して生きる道を探る意向だ。

もちろん、戦争覚悟で独立という人もいる。しかし、台湾として中国から独立するなら、故宮博物院の所蔵品や中央銀行の資産のうち、台湾移転以前からのものは、中国政府に引き渡すのが筋だ。

しかし、もし、二つの中国となるとか、独立でなく一定の自治をもって存続するというなら、どれだけを返還するかはお話し合いだ。

故宮博物館については、全部ということでなく、70年間、大事に保持していたことも評価して割合を決めたらいい。

返還問題は平和解決の糸口になるか

かつて、李登輝の側近の何人かと意見交換して、この問題を頭の体操として議論したら、一部の人は、独立を認めてくれるなら損なくらい全部返してやるといい、別の人は大陸にあったら文革でなくなっていたから返す必要はないといった。

難しい問題だが、逆に言えば、平和的な台湾問題解決のとっかかりになるかもしれない。皆さんはどう思われるだろうか。

ちなみに台湾問題については、今年書いた本で、『誤解だらけの沖縄と領土問題(増補改定版)』(清談社)と『国家の興亡史からわかる現代地政学――西欧の衰退』(さくら舎)で、それぞれの視点から論じている。


誤解だらけの沖縄と領土問題(増補改定版)


国家の興亡史からわかる現代地政学――西欧の衰退


誤解だらけの皇位継承の真実 (清談社)


系図でたどる日本の皇族

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