文通費の「4つの争点」と「政党のやる気」

kawamura_lucy/iStock

ウクライナの報道に押されてか、文通費の「4つの争点」の改革について、政党別の具体的な考え方を確認できる報道がない。

冒頭に、報道機関に苦言を呈しておくが、ウクライナは確かに大切だが、我が国の「政治の透明性」確保の議論の経過についても、しっかり取材してほしい。報道がなければ、政治家は「楽な方」に必ず逃げる。

文通費の審議について、時事通信社の報道によると、

時事ドットコム
  • 2月8日、「文通費の見直しに関する協議会(以下「文通費協議会」とする)」の初会合が開かれた
  • 自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主、共産の6党の衆参両院の国対委員長代理らがメンバー
  • 会合は2週間に1回のペースで開催予定
  • 日割り支給、国庫返納、使途の対象、使途の公開の在り方などがテーマ
  • 今国会中に結論を得る方向

ということだ。

今回の国民民主党からのアンケートの回答や、過去の報道を精査すると、上記政党のうち「立憲民主、日本維新の会、国民民主」の3党は、すでに以下4点を網羅的に解決するための法律案を衆議院に提出している。

① 使途の制限
② 使途の公開
③ 日割り支給
④ 未使用分の国庫返納

また、私が実施したアンケートでの共産党からの回答では

共産党はこれまでも

① 独自の使途制限ルールのもと
② 領収書を伴わない形だが、独自の方法で使途公開をし
③と④についても、総論としては改革に賛成

というスタンスが確認できた。

以上から考えると

自民・公明・共産が、立憲・維新・国民3党提出の法律案に賛同するかどうか、という点が、今国会中に上記「4つの争点」を是正する法改正をできるかどうか、ということになる。

さらに、時事通信社の別の報道を見ると、「日割り支給の在り方について、3月8日の次回会合で一定の方向性を得ることで合意」とされている。

時事ドットコム

以上から、文通費協議会では、4つの争点のうち「日割り支給」の議論を優先した、ということがわかる。

「日割り支給」が最優先の争点だったかどうかは別として、一つの法律改正案を協議するため、争点ごとに結論を得るよう段取りがなされるのは当然だ。

記事では「日割り支給」の方向性を3月8日に得るとある。本協議会で協議される次の争点は、「② 使途の公開」であるべきだ。この「議題設定」こそ、文通費をめぐる問題解決の本気度がわかるポイントだ。

その理由は

  • 「② 使途の公開」が、「① 使途の制限」や「④ 未使用分の国庫返納」より重要でありかつ、すべての政党が本音では「最もやりたくないこと」だから
  • 「② 使途の公開」は、基本的に「やるかやらないか」の2択の問題であるため、結論を得やすいから

となる。

使途の公開が最重要、とするのは私個人の意見ではない。

証拠はいくらでもあげられるが、昨年12月27日の日経新聞の記事

日本経済新聞社の世論調査で国会議員の文書通信交通滞在費(文通費)を日割り支給にする改革が先送りになったことへの評価を聞いた。62%が「野党が提案したように使い道の公開義務付けも同時にすべきだった」と答えた。「自民党が提案したように日割り支給だけでも先行すべきだった」は29%にとどまった。

とあることからもわかるだろう。それが、国民の声だ。

また、公開されれば用途も国民にさらされることになるので、「文通費でキャバクラ(税金アジャース)」的な使い方は、偽悪で問題点を指摘する戦術をとる丸山議員以外は事実上できないことになる。つまり、事実上の「使途の制限」となる。

加えて、「① 使途の制限」については、党ごとに様々な事情や思惑もあり、紛糾することは必至だ。通常国会の終期が6月ということを考えると、「この件だけで時間切れ」となってしまう可能性が高い。

また、「④ 未使用分の国庫返納」については、他二つより優先順位が低いことは論を待たない。

以上から、公開の後に「使途の制限」の結論がでても、「遡及的に制限外利用の領収書は認めないという運用はしない」などの取り決めを事前にしておけば足るので、まずは「使途の公開」を最優先で議論すべきだ。

冒頭書いたが、報道各社は、省庁記者クラブの大本営発表ばかり書いていないで、本協議会の議論の経過を国民に伝えてほしい。

【関連記事】
国政政党は文通費関連法改正への考え方を示すべき
国政政党への文通費法改正アンケートの結果