政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑧:行動変容

金子 勇

kieferpix/iStock

孫の世代の経済的可能性

今から1世紀近くも前にケインズは、「孫の世代の経済的可能性」という小品を書き、100年後の世界すなわち2030年を想定した「経済的可能性」論を展開した(ケインズ、1931=2010)。

そこでは経済的な「至福」の状態という目的地への歩みは4つの要因で決まるとして、①人口の増加を抑制する能力、②戦争と内戦を回避する決意、③科学の世界で決めるのが適切な問題は科学に任せる意思、④資本蓄積のペースがあげられた。

そしていかにも経済学者らしく「資本蓄積のペースは生産と消費の差によって決まり、前の三つの要因があれば自然に解決される」(同上:219)と展望した注1)

(前回:政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑦:新型コロナ対策

満たせなかった三要因

あと8年で当時のケインズが展望した100年後になるが、人類は依然として三つの要因を手に入れていない。もっとも「人口増加の抑制」だけはいわゆるGNに該当するいくつかの国では現実化したが、GSを含む地球全体では成功していない。

「戦争と内戦の回避」については、2022年2月24日からのロシアによるウクライナ侵略戦争および国連の無力に象徴されるように、絶望的な状態にある。

そして、日本における新型コロナ対策の2年半の経験でも、国民の「行動変容」などへの科学的な取り組みはほとんど見られず、首相や知事や専門家会議による「お願い」が「政治的意思」を代替したような印象を与えている。

目的意識の欠如

ケインズは「『目的意識』とは、自分の行動について、それ自体の質や周囲に与える短期的な影響よりも、はるかな将来に生み出す結果に強い関心をもつこと」とした(同上:216)。

この100年前にいわれた「自分の行動に対する関心を遠い将来へと押し広げていく」(同上:216)重要性は現代日本国民の全体でも共有したいが、その筆頭は政治家にあるというのがこの連載「政治家の基礎力」の趣旨でもある。

孫の世代を見据えた戦略

①に関して日本ではもはや「人口増加」の夢は消えて、残されたのは「少子化する高齢社会」への科学的成果に基づく対応が継続されることにより、「孫の世代の可能性」を膨らませることだけである。

②についてはロシアによるウクライナ侵略戦争に無力だった国連改革こそが、「孫の世代の可能性」を広げる道になる。具体的には、たとえば国連分担金率で常に上位を占めながら「常任理事国」ではない日独伊が、どこまでリーダーシップが発揮できるか。

③は研究・教育成果を出している大学や研究機関の集中的再編を柱として、恒常的研究費と人的資源の再配置の見直しが急務であり、優れた学術研究者輩出のための環境整備こそが政治家の義務でもある。

行動変容ステージモデル

さて、コロナウイルス感染拡大以前から、厚生労働省の「e-ヘルスネット」では行動変容ステージモデルが紹介されてきた(2022年6月1日閲覧)。

公衆衛生学の禁煙研究から得られたこの変容モデルでは、ステージを①無関心期(6か月以内に行動を変えようと思っていない)、②関心期(6か月以内に行動を変えようと思っている)、③準備期(1か月以内に行動を変えようと思っている)、④実行期(行動を変えて6カ月未満である)、⑤維持期(行動を変えて6カ月以上である)に分けて、それぞれの状態が説明されていて、全体像は図1のようになる注2)

図1 行動変容ステージモデル
出典:厚生労働省e-ヘルスネット(閲覧日 2022年6月1日)

「行動変容」させるきっかけがない

この分類自体は納得しやすいが、残念ながら「行動」を「変容」させるきっかけへの言及に乏しい。たとえば「周りの人」という表現だけでは説明が不足していて、個人に対する外部からの全般的影響力に配慮が行き届いていない。

なぜなら、「周りの人」の範疇には、家族、親戚、友人、知人、学友、親友、親密な他者、学生時代の恩師、職場の同僚、取引先の相手、かかりつけ医、テレビや新聞を通して情報を伝える専門家、ニュースを読み上げたキャスターなど、さまざまな関係者が混在しているからである。

社会学でいえば、流行りのソーシャルキャピタルは健康増進に有効な情報をもたらし、「準備期」を用意させる力がある注3)。そして、ソーシャルキャピタルのうちでも特別な「親密な他者」としての関係ならば、「実行期」や「維持期」を伸ばす影響力も合わせ持っている。

個人の態度変容は「親しい関係」から

大方の予想とは異なり、「準備期」から「実行期」に飛躍するのに不可欠な要件は、日常的な情報量が飛躍的に多いマスコミへの接触ではない。

むしろ「無関心期」から「維持期」までの5つの期間を通して、個人の態度変容に関しては個別の「親しい関係」からの情報が有効性を発揮する。

マスコミ情報は視聴者の行動変容をさせる力がない

残念なことに図1のモデルでは、従来のマスコミ研究の成果であった「マスコミ情報は視聴者の行動変容をさせる力がない」といった命題への配慮がなされていない。この内容は古くから学界で共有されてきた。

たとえば1960年に出された政治的トピックと非政治的トピックのコミュニケーションに関するマスコミの影響力研究で、マスコミは「補強(reinforcement)の作用因としてきわめて頻繁に機能する」(クラッパー、1960=1966:33)という結論はよく知られている。

もちろんマスコミへの接触による個人の態度面での「小さな変化」もあるが、むしろそれはそれまで個人が持ってきた行動様式である「先有傾向」を強める作用が大きく、せいぜい「新しい意見を付加する」(同上:66)に止まる。

「親密な他者」からの直接情報が行動変容には有効

クラッパーと同時代に膨大な先行研究を統合したベレルソンらも、「テレビは、主要な態度に直接影響を与えることは少ない」(ベレルソン&スタイナー、1964=1966:675)と総括していた。合わせて、テレビや新聞などが報じる説得力のある内容であっても、「受け手が持つ既存の意見を変えることよりも、そのような意見を強化する」(同上:660)として、マスコミ情報による「態度補強」を強調し、「行動変容」効果には疑問を投げかけていた。これには半世紀すぎた現在でも一定の支持があり、経験則としても納得できる。

マスコミからの情報と対人接触による情報取得は、ともに学界でのコミュニケーション論の一部として論じられている。とりわけマスコミは国民に情報内容を周知させる威力がある反面、受け手の側ではその情報による態度変容や行動変容には至らないことが定説になってきた。

並行して、ソーシャルキャピタル概念に含まれる親しくて信頼のおける人からの直接情報が、態度変容や行動変容には効果的であるという学説が広く受け入れられてきた。

「コミュニケーションの二段の流れ」への配慮

その他に行動変容を論じる際には、オピニオン・リーダーによる「コミュニケーションの二段流れによって可能になる」というカッツとラザースフェルドの命題がある。

マスコミによる「インパーソナルな内容を、パーソナルな流れにつなぐ」(同上:671)ことを意味する「コミュニケーションの二段の流れ」などの古典的な仮説は、今日の新型コロナウイルス感染予防でも有効だと思われるが、専門家会議や政府にはそのような学説への配慮が全く見られないままで推移してきた注4)

「社会のまとまり」は有益な知識獲得に役に立つ

加えて社会システムレベルでも、コロナウイルス感染予防に効果的な命題が存在する。代表的には、社会システムの結合性(system connectedness)の高さは、成員の行動変容実践に有益な知識獲得とは正の相関を示すが、変容実践を導くわけではないという発見である(Wigand,1977:161)。

ここにいう「結合性」は、個人の「粉末化」とは対極にある社会的連帯性であり、「社会と個人」という社会学の根本的な対象からすれば、「社会」に強い軸が置かれた状態を意味する。いわば社会全体のまとまりの高さを示すものである。

先進国の多くが一般論としての社会的連帯性を失い、人種、民族、言語、世代、ジェンダー、階層などに分断され、国民が粉末化して久しいが、自然災害や防犯面で被害が大きい場合は、一時的ながら社会システムはその統合性を高める機能を持っている注5)

知識伝達には複数のコミュニケーションルートが肝要

したがって、いちがいに緊急事態といっても、その国の社会システムの統合度によって対応策が変わってくることを、先行研究からの知識として把握しておきたい。

たとえ新型コロナウイルス感染予防のための知識を厚生労働省経由の官報で国民に知らせたり、マスコミのキャンペーンで周知しようとしても、粉末化した個人には届かない。なぜなら、粉末化した国民大衆間では一元的なコミュニケーションチャンネルがなく、そのルートもできないからである。

テレビや新聞とは無縁でも、インターネット環境には親しむ若者が増えた反面、時折訪ねてくる子どもや訪問看護やホームヘルパーだけとの会話しかない一人暮らし高齢者も多くなってきた。

マスコミ機能と対人伝達機能のいいとこ取り

そのような事情によりマスコミの力が肥大化した大衆社会では、新たな補助線として、個人が持つマスコミ接触量の多寡とソーシャルキャピタルとして保有する社会関係による情報伝達成果に目配りしておきたい。

繰り返すが、ここでは先行研究成果のうち、情報認知にはマスコミの機能、情報による態度変容力は対人伝達(パーソナル・コミュニケーション)に長所があるとまとめておく。

目標設定、達成行動、自己評価の総体としての行動変容

さらに細かな行動変容について、目標設定、達成行動、自己評価の3点から整理しておこう。

これには図1の「関心期」以降を具体化することになる。なぜなら、行動変容は明確な目標設定から始まるからである。しかもこの期間設定には、数カ月単位の短期目標と数年単位の長期目標の組み合わせが望ましい。

いきなり5年後の行動変容を目指すよりも、1か月後や3か月後、そして半年先に達成できる行動変容目標を積み上げていく方式が長続きして、成果も得やすい。

数値的目標が達成感を満たす

さらに目標内容は、可能なかぎり数値化したい。たとえば健康増進という目標でも、「心地よい」「頭がすっきりする」「元気になった」「目覚めが良い」「寝つきがよい」などの主観的指標でもいいが、「カラオケで2時間ずっと歌い続けられる」「連続して1日8000歩毎日歩ける」「200段の階段を休まずに登れる」「プールで30分泳げる」「1時間テニスができる」など、数字で表された客観的指標を使いたい。

そうすることで「行動変容」後の自己評価も客観性を帯びるからである。また、セルフモニタリングとしての行動記録もつけやすい。

目標が数値化されているから、短期的健康増進なら1日5000歩目標から開始できるし、1時間連続のカラオケ時間を目標として活動が始められる。すなわち、達成したい目標の修正が簡単なので、その活動が続けやすい。それがまた自己満足の評価につながる。行動変容により自らの努力への評価が高まれば、いわゆるエンパワーメント感が強まり、結果としては「維持期間」を長期化できる注6)

自分へのご褒美も

そして、節目では心理学でいう「オペラント強化」を心がけておきたい。これには自分をほめるために、自分にご褒美を与えることであり、自発的に美味しいものを食べたり、気に入った洋服を買ったり、短期旅行をしたりすることが例示できる。

これはいわゆるオペラント・コンディショニングとして、賞罰によって自発的に行動を変える過程として周知され、自分に対しての信頼感や有能感であるセルフエフィカシーといわれることもある。

社会心理学の行動変容モデル

以上の議論を補完する成果もあげておこう。社会学に隣接する社会心理学ではかなり周知の「S→O→R」モデルがあり、様々な工夫が試みられている(ラービンジャー、1972=1975:48)。いうまでもなく、

S:stimulus(刺激)
O:organization(有機体)
R:response(反応)

であり、O(有機体)は人間を含む生物体と社会システム(組織・法人、集団、全体社会)の両者に適用できる。

いうなれば、人間という有機体に、周囲からの言葉や音や景観による情報、暴力などの物理的力、気象変化としての温度、気圧、風圧、湿度が作用することが「刺激」になる。

このメカニズムは社会システムとしての組織や集団や全体社会でも同じであり、外国の金融情勢の変化や政変、それに自然災害や開戦により株価が急変することも「刺激」の一例になる。人間も法人も全体社会も適切な「刺激」がなければ、基本的「対応」機能を日常的にも遂行できない。

同じ「刺激」に同じ反応が生まれるとは限らない

もちろん人間には個性があるように、組織・法人にも伝統があり、独自の価値規範があるので、同じ「刺激」に同じ反応が生じるとは限らない。

タバコの発がん性がいくら叫ばれても無視する愛煙家はいるし、人権を重視するとは言いつつも特定民族への抑圧を止めない国もあり、国際法を無視して他国の領土・領海に侵入を繰り返す国もある。また、全世界からの拠出金で運営されていながら、公平性に欠ける国際機関もある。

態度補強と態度変容

一般に「刺激」への「反応」はさまざまであるが、行動変容に関しては2種類の分類ができる(同上:57-58)。

  1. 態度の補強
  2. 態度の変容

既に紹介したように、これまでの多くの実験や社会調査で証明されてきたのは、態度の補強にはマス・コミュニケーション(以下、マスコミと略す)の影響が強く、態度の変容にはパーソナルコミュニケーション(以下、対人接触と略す)が有効であるという知見である。

その代表的な意見は、既述したクラッパーに見られる。「パーソナル・インフルエンスは、この影響力とマス・コミュニケーションの影響力とがともに存在する場合には、マス・コミュニケーションよりもより決定的な影響を変化の方向に与える」(クラッパー、前掲書:130)がそれである。

この結論は、当時の多くの実験や文献研究の成果として得られたものである。ただし、この優位性は「決定のトピックごとにいちじるしく異なる」(同上:130)もまた正しいので、コロナウイルス感染予防に関しては独自の工夫が求められる。ここでは工夫の一部として、図1「行動変容ステージモデル」の活用とした。

マスコミ情報は態度補強に有効

通常、人間が持つ価値や規範は家族史のなかの個人生活に根差しているので、テレビで受け取るような情報では簡単に変容しない。むしろ周知の箴言「人は見えるものしか見ない」「聞こえるものしか聞かない」は正しいので、たとえ正しくてもマスコミ経由の情報は選択受容されるだけである。すなわちマスコミ情報接触により、従来持ち続けてきた態度は補強されるが、ほぼ変容しない。

加えて「行為の延期は、各人が高度に専門化し独立した大衆社会の特徴」(ラービンジャー、前掲書:59)なので、現代人の態度を変えて行動変容に導くのは難題になる。たとえば医師が処方して検査を指示しても、患者がすぐには反応せずに、「行動を延期」することは日常的である。ではどうするか。

先有傾向と選択性

この探求の補助線は4通りで、それはすべて受け手の側に関連する。一つは個人が特定テーマに関連して持つ「先有傾向」、二つ目の傾向としては、個人は興味と関心をもつマスコミ情報には接触するが、共鳴しなければ接触を回避するという「選択的接触」があげられる。

関連して三つ目は、知っていることや関心に適合した情報しか認知されない「選択的知覚」があり、その延長線上に四つ目として「選択的記憶」が存在する。いわば自分の固有の好みや関心に沿っている内容しか認知せず、記憶もしないという人間の持つ情報接触の傾向をどのように変えていくかの応用問題になる。

目標達成条件は国民の凝集力から

問題打開の可能性に富むのは、個人が所属する集団とその集団がもつ規範への働きかけにある。まずはニューカムらの命題である「目標達成は凝集力を高める」(ニューカム、ターナー、コンバース、1965=1973:552)と「目標達成は構造的統合に寄与する可能性が大きい」(同上:553)を組み合わせる。すなわち、「目標達成-凝集力-社会統合」のラインに注目する。

さらに、ニューカムの旧著にあった命題、すなわち「凝集力の基礎を満足においた方が、凝集力は強い」も活用したい(ニューカム、1950=1956:641)。

これらを総合して、仮説「目標達成は凝集力を高め、構造的統合に寄与して、国民の満足を高める」を作成し、これを手掛かりにして新型コロナウイルス対策を再点検するのである。

すなわち、この半年間や1年間で、どのような目標達成が謳われたか、粉末化している国民の凝集力をどのように位置づけてきたか、政府が打ち出した政策が日本社会の構造的統合をどのように変えたか、それは国民の満足ないしは不満をどの程度もたらしたかを問いかけるのである注7)

社会的凝集性

社会学における社会的凝集性の概念は関係面と意識面に分割できる。前者にはネットワークレベルの友人、親戚、同僚、近隣などの個人的関係、および所属する組織・法人や集団の両者が該当する。具体的には親しい友人関係や知人との間でまとまっていて、同時に所属する学校や職場や地域社会での関係がうまくいっている場合に、社会的凝集性が得られるという仮説である。

次に意識面では、冠婚葬祭に典型的な居住する地域社会の中での価値観の共有、そして全体社会レベルで共有された一般的価値と規範をどの程度受け入れているかも凝集性を測定する指標になる。

それには国民としてのアイデンティティから家族や職場でのしきたりの受け止め方まで含まれ、最終的にはこれらから総合化される国民間の信頼感などが指標として使用できる。これらが社会システムを支える社会的凝集性の基盤を構成する。

ソーシャルキャピタルの力

ソーシャルキャピタルをキーワードとしてイタリアの20地域を研究したパットナムは、地域がもつ経済的な成功(成長や発展)と人々がもつボランタリーな集団密度(高い凝集力)との間にある積極的な相関を発見した(パットナム、2000=2006)。すなわち、ボランタリーな集団成員のコミュニケーションを促進したら、地域の人々の協力と経済的発展に資する社会規範における信頼が生み出され、強化されたのである。

パットナムの研究は経済的well-beingと社会的well-beingに関して、居住者の親しい関係の総称としてのソーシャルキャピタルがもつ積極的な影響力について教えてくれる。

解決への政治的意思

ただし今日的な環境問題の解決を求める際には、かつてダイヤモンドが語った嘆きにも留意しておきたい。

それは、「問題を解決するのに、新しい科学技術は必要ない。新しい技術が活躍する余地はあるだろうが、根幹の部分は、既存の解決策を適用する政治的な意思“だけ”で事足りる」(ダイヤモンド、2005=2012(下)=362~363)というものである。

翻ってコロナウイルス感染に直面した日本の2年半を点検すれば、せっかくの厚生労働省「行動変容ステージモデル」などが先行的成果として存在していたのに、「既存の解決策を適用する政治的な意思」はなかったという判断が得られる。

アベノマスク、補助金のばらまき、「うがいと手洗いとマスク」に象徴される国民への常識的「お願い」、緊急事態宣言の発出と解除、ワクチン開発、PCR検査の拡大、外出自粛への取り組みなど、どれを取っても科学的成果に依拠した「政治的意思」が見当たらない。これは大変不幸なことであった。

ケインズの「孫の世代」はもちろん、現世代が直面する「人口」、「戦争」、「科学の役割」について「政治的意思」を変えるためには、図1「行動変容ステージモデル」の応用が有効であり、各方面での具体化が求められる。

(次回:政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑨

注1)この発想は、農業でいわれるように「米を作る」のではなく、「土を作れば米ができる」に通じるものがある。

注2)ケインズのように「孫の世代」が始まるまでの60年間を射程に収めるのならば、短期的目標としては1年後と5年後を用意して、中期目標には10年後と20年後を設定する。その後の長期的目標は10年単位で継続して、最終的に60年後の達成に向けての資源投入計画を作るのである。

注3)Kawachiらの研究(2008=2008)では、多方面からのアプローチで「健康と社会」の問題を解明しようとしている。

注4)社会学者や社会心理学者によるコロナ関連のコミュニケーション発信不足はもとより、政治家や官僚それにマスコミによる学術研究成果の軽視もまたここに窺える。

注5)この臨時の社会システムを「コミュニティ」と呼ぶこともできるが、その存在は恒常的ではなく、緊急事態に自然発生すると考えられる。なお、コミュニティの創造に関する一般論は金子(2011)を参照。

注6)このエンパワーメント感は、誰からか供給されるものではなく、自己認識(self-awareness)、自己成長(self-growth)、いくつもの資源(resources)の結果として存在する(McCall,Heumann,and Boldy.,2001:16)。

注7)このような複合テーマは、社会心理学か社会学でなければ専門的に論じることはできないであろう。

【参照文献】

  • Berelson,B.& Steiner,G.A.,1964,Human Behavior―An Inventory of Scientific Findings―,Harcourt, Brace and World Inc.(=1966 南博・社会行動研究所訳『行動科学事典』誠信書房) .
  • Diamond,J.,2005,How Societies Choose to Fail or Succeed, Viking Penguin.(=2012 楡井浩一訳『文明崩壊』(上下)草思社).
  • 金子勇,2011,『コミュニティの創造的探求』新曜社.
  • Katz, E. & Lazarsfeld ,P .F . ,1955, Personal Influence. The Free Press. (=1965 竹内郁郎訳 『パーソナル・インフルエンス』培風館).
  • Kawachi,I. Subramanian,S.V. Kim,D.,(eds.),2008,Social Capital and Health, Springer Science+Business Media,LLC.(=2008 藤沢由和ほか監訳『ソーシャル・キャピタルと健康』日本評論社).
  • Keynes,J.M.,1931,Essays in Persuasion, Macmillan & Co.(=2010 山岡洋一訳『ケインズ説得論集』日本経済新聞出版社).
  • Klapper,J.T.,1960,The Effect of Mass Communication, The Free Press.(=1966 NHK放送学研究室訳 『マス・コミュニケーションの効果』日本放送出版協会).
  • Lerbinger,O.,1972,Designs for Persuasive Communication, Prentice-Hall,Inc.(=1975 小川浩一・伊藤陽一訳『コミュニケーションの本質』新泉社),
  • McCall,Heumann,andBoldy.,2001,’Empowerment:Definitions,Applications,Problems,and Prospects.’Heumann,L.F.mcCcall,M.E.and Boldy,D.P.,(eds.)Empowering Frail Elderly People.Praeger :3-24.
  • Newcomb,T.M.,1950,Social Psychology,The Dryden Press,Inc.(=1956 森東吾・萬成博共訳『社会心理学』培風館).
  • Newcomb,T.M.,Turner,R.H.,and Converse,P.E.,1965,Social Psychology:The Study of Social Interaction, Holt,Rinehart and Winston,Inc.(=1973 古畑和孝訳『社会心理学-人間の相互作用の研究』岩波書店).
  • Putnam,R,D.,2000,Bowling Alone : The Collapse and Revival of American Community, Simon & Shuster.(=2006,柴内康文訳『孤独なボウリング』柏書房).
  • Wigand,R.T.,1977,’Communication Network Analysis in Urban Development’in Arnold,W.E.and Buley,J.L.,(eds),Urban Communication-Survival in the City,Winthrop Publishers,Inc.:137-170.

【関連記事】
政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)①:政治理念「政治とは何か」
政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)②:政治理念「ローバル時代の政治家」
政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)③:選挙制度改革
政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)④:人口史観
政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑤:少子化と社会保障
政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑥:家族と支援
政治家の基礎力(情熱・見識・責任感)⑦:新型コロナ対策